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EP81 捻れた現実

纏まった休みが欲しいです

sideロペ・キャッシュマン


 結局銀河さんの記憶は戻る事は無かった。三人で過去の話をした所でやはり、彼の記憶は既に消去された事が確認出来ただけで、そのシステムは越える事が出来なかった。これはロペとして過去、数多の世界を渡り歩いてきた私にも解明できないことの一つだった。世界が世界で在る事、何故世界が存在するのか、各世界の存在する意義、其れ等は経験を得る事で辿り着き、知る事が出来た。その経験を持って器となり得る世界を造った、多くの世界からの流入が在った事は誤算だったが、結果的に銀河さんの為になった事も在って許容する事が出来る、しかしその状態を放置しておく事は出来ない、この世界が出来てからまだ千年も経たない、しかし出来て間もない頃から技術から人まで様々なファクターが他世界から流入し、この世界は他の世界よりも限りなく大きな器を以て全てを受け入れてきた。しかし無限では無い、世界の巨大化には時間が掛かる、今現在の事を考えれば、流入するファクターが多すぎて最終的に世界の許容量の拡大が追いつかなくなり、器が破損し世界の消滅を招く事になる。


 しかし世界とはそもそも破壊と再生を定期的に行い代謝し、リソースの循環を行う。バランスの崩れた世界は破滅する他に道が無い・・・・・・筈だった。


 それを回避する事が出来る存在が生まれたのだ。


 それが雨宮銀河。世界の均衡を保ち整える存在、ワールドバランサー。


 世界の情勢を見るのでは無い、世界その物の構成を見て、均一化し、保つ。


 今迄誰にも見えず、感じられず、認識出来なかったΔエナジー、世界を世界たらしめるその存在は、この第三世界にて初めて認識され、この世界を確たる世界として確定させ、揺るぎない未来を実現する。奇跡の様なその存在を自在に操り、只一人それを認識する事が出来る雨宮銀河。


 始まりこそ不慮の事故に見舞われてしまったが、世界に入れば自然とその役割を果たす。だがその優先順位は私には分からない。銀河さんはこの世界を楽しむ為に目に付いた物に飛びついている・・・・・・と、本人はそう言っているのだが、私から改めて見てみれば、緊急性の高い物で尚且つ彼の目に付いた事から順番に解決していくし、自分で世界の乱れを確認した上で其処へ向かっていく事を決定したりもしている。それはもはや只世界を救っているだけじゃ無いのかな?でも本人が楽しそうなのでまぁ・・・・・・良いのかなぁ?しかも余所の世界までわざわざ行って、駄目だと思ったらさっさと切り捨てて行きもしないし、必要な物があればギリギリまでその世界に止まったり、無意識なんだろうけど困っているクルー達を側に置いたり、死にかけている人達を進化させて普通に生活させたり・・・・・・。


 本当に我が侭してるのは、女ばっかり集めてるって事位じゃ無いかな?あとは・・・・・・ちょっとサディストって位?ああ・・・・・・ロボットも大好きだね・・・・・・。

もっと色々しても良いんだけど、世界って規模で考えたら、そんなにまだ対した事はしていないから、修整力を働かせる必要も無いし、そもそもこの世界はそれを最初か織り込み済みだから、好きに暴れてくれても良いんだけど、元々そう言う人じゃ無かったなぁ。

記憶が戻って欲しいって言うのは私の我が侭だけれど、銀河きゅんだけ何も知らないって言うのはやっぱりアンフェアだよ。

教えてあげたいんだけど、情報って言うのはやっぱり引っかかるんだよね、システムに。

それを集めるシステム、それの尻尾をやっと掴んだ。・・・・・・銀河きゅんが、偶然(・・)

私は絶対必然だったと思っているんだけどね。


ーーーーーーーーーー


マギア・ラピス メインブリッジ


 「ロペちゃん?」


 「エリー、このプログラムを全艦に配備してくれる?」


 「又変なのじゃ無くて?」


 「もう違うよ、なんかごめんね」


 「ん~~?ロペちゃんなんか変わった?」


 「ロペになっただけだょ」


 「ほー・・・・・・?ほんじゃこれは何のプログラム?」


 「次元窟(じげんくつ)探査システムだょ、異世界に繋がる穴を探知するレーダープログラムなんだけど、今迄これの事をすっかり忘れていてね、銀河きゅんは自分で感知しちゃうから。皆仕事居るでしょ?」


 「成る程ー、レベルアップも大事だよねー」


 「それもそうなんだけど、ダンジョンが貫通してる可能性があるんだょ」


 「うへぇ!?え?どういう事?」


 指示通り全ての艦へとプログラムを送信し、折り返しされた質問に答える為に端末を操作していたエリーは、話を聞きながらズルッと椅子から滑り落ちる。


 「自然発生するダンジョンって言うのは、この世界の余剰マナが溜まって出来るのが普通なんだけど、異世界からゲートを使って無理矢理この世界に来ようとしている奴らが、ダンジョンを使って世界に穴を開ける事が・・・・・・いっぱい有ってね」


 世界に溢れる余剰マナが、一点に集中する事で局地的に世界のバランスが崩れる事が有る。これを修整する為にΔエナジーが集まり、バランスが取れる瞬間に副産物としてマナとΔエナジーの複合体の一つであるダンジョンが産まれる。大きすぎるそのエネルギーを内包する存在として、勇者や魔王、惑星や太陽等様々有るが、勇者や魔王は世界のシステムライブラリに登録された存在としてしか誕生出来ず、誕生までに別のプロセスを経る必要が有り可能性は無い。惑星や太陽などの星々も同じ理由で登録する必要が有り、管理者権限を持つ者がリソースの調整をしつつバランスを考えて機械的に配置しなければならず、不確定要素を含ませるとあっという間にバランスが崩れ周辺へと波及、被害が拡大してしまう。その為消去法的にダンジョンが出来る事が確定している。このシステムを利用して異世界から第三世界へと無理矢理マナを注入し、意図的にバランスを崩しつつ、自世界で産まれたダンジョンを強制的に成長させ、世界の壁を貫通させる。だがこの方法は世界にとって大きなリスクを伴う。


 第三世界にとっては、リソースを受け入れる余力がある為に、世界の壁に出来た穴を塞ぐだけで良いのだが、流入を試みる世界の方は違う。


 自らの世界にある限られたリソースの大部分を使わなければ、そもそも世界の壁に穴を開ける事が出来ない為に、世界全ての力を注ぎ込む必要が有り、そもそも実行に移す必要性は通常の状態では無い。だが逆に、それをすると言う事は、明確な侵攻侵略の意志が有り、尚且つ失敗しても余力がある状態の世界で有ると言う事が前提となる。

偶然世界に穴が開くと言う事は無いのだ。


 だがここ最近はそんな余力のある世界では無く、滅びを迎える事が決定してしまった閉鎖世界が、最後の力を振り絞り死兵となって侵略を試みる事が連続している。

これはこれで由々しき自体で有り、放置出来ない事でも有る。位置的に近い世界が連続して消滅すると言う事は、その世界に残ったマナが周りの世界に散り、世界のバランスを崩す事に繋がる。其処から先は世界の管理者の手腕で何とでもなるのだが、経験値の低い世界の管理者はあっさりと世界から逃げ出し、崩壊を止める事も無く、崩壊の予兆を知らせる事も無く、連鎖的に周りの世界へと不利益を散蒔きいずこかへと去って行く。ヴァルハランテの管理者は自分の世界から締め出されて消滅し、牧場世界の管理者は行方不明、第二発展世界の管理者も行方不明、第五双性世界は管理者の能力が足らず崩壊一歩手前で辛うじて堪えているのだが、世界の中に崩壊を促すようなことをする存在が紛れ込んでいる事も有り、不覚にも世界を支える柱の外部管理者であるエマ、雪之丞を失ってしまった。


 「異世界・・・・・・ヴァルハラダンジョンね、アレもそういう事?」


 「そう、月のダンジョンもそう、ヴァルハランテは無くなったけど、月の方はまだまだ繋がったままだからねぇ、その内そっちに行くし、それ以外の物も確認はしておかないとなって。ウチのクルー達なら、行って穴を塞ぐぐらい出来る様になると思うし」


 「え?まだ出来ませんよね?」


 「マナトラッカーなんて物が出来るんだょ?銀河きゅんが作らないはず無いじゃん、私が出来るって言うし」


 「作らせるの間違いじゃ無いの?」


 ミンティリアは苦々しい笑いをロペに向けながら、アヒルの様に口を作ったままで、のろけてる?と苦言を呈する。


 「気になったらやるよ、銀河きゅんだし」


 「確かにねー」


 現在進行形で異世界からの攻撃を受け続けている第三世界、今のままでも直ぐにどうこうなるという様な話は無いとロペは言うが、それと同時に、世界が攻撃されると言う事はどういう事か、ロペは雨宮の居ないブリッジで語る。


 「最近ファムたんの具合が良くないの」


 「あんまりブリッジに遊びに来なくなったですしね」


 ザミールは遊びにと言うが、本人はブリッジの様々な業務を学び、空きが無い事もあってそこに居るだけと言う時間が有ったが、ザミールよりオペレーターの経験は長い。ハイパーヒューマノイドから既にウルテマヒューマノイド化し、ネシアと同等の能力を手に入れた彼女は二分されているとは言え、高密度精神生命体を内包する存在でありその能力は、普通の眷属として進化したザミールとは比較にならないレベルの高さを持っている。それを彼女が気付く事は恐らく無いだろう。

ザミールが此処に居る事が異例と考える方が、幹部クルーからしてみたら普通なのだ。

 

 「穴こそまだ空いていないけど、攻撃を試みている世界が複数有って、結構なダメージが蓄積されているみたい。まぁ銀河きゅんの側に居る限り大丈夫と言えば大丈夫だし、いざとなれば新しい柱を作れば良いだけなんだけど・・・・・・其処は銀河きゅんが何て言うかなぁ」


 「だから今は開きっぱなしになっている月のダンジョンを潰しに行くのね?」


 「潰したいのはやまやまだけど、潰れちゃうと共和国が滅んじゃうから、ちゃんとしたゲートを作るか、穴だけを塞ぐ」


 「空いていても問題は無いって事~?」


 「問題はあるよ、空いている間はずっとこっちにリソースが流れ込んできているんだからね、その内世界が融合しちゃう」


 「それってなんか問題なの?」


 「何て説明しようかなぁ・・・・・・」


 世界が繋がっている状態では、マナだけでは無く、Δエナジーも流れ込んでくると言う。Δエナジーが世界から失われると言う事は、世界のバランスが維持出来なくなり、消滅すると言う事、だが世界が繋がっているままで消滅を迎えた世界のリソースは、全て流れ込む先の世界へと吸収され、融合する。

ヴァルハランテと牧場世界のリソースは、第三超広域開拓世界へと完全に吸収され、やがて消えた世界は無かった事になり、存在その物を忘れ去られ、人々の記憶から消えていく。


 第三世界へと流れ込んだ二つの要素は、流れ込んだ量によって様々な事象を引き起こす、マナが多ければΔエナジーを生産する為にマナを消費し勇者や聖女等が生まれ、世界全体を発展させ多くの生物がΔエナジーを世界へと開放する。Δエナジーが多ければ急速にマナを生産する為に魔王や邪神が生まれ、世界規模で死病が蔓延したり、多くの生き物が死ぬ様な事態になり、文明の衰退を引き起こす事もある。


 融合をする事は決して悪いことばかりでは無い、寧ろそのメリットを求めて他の世界を強制的に融合し、滅ぼしていく事も過去に起こった事例があると言う。


 「さっき言ったみたいに滅びそうな世界がリソースを奪う為に、他の世界を無理矢理融合する事も有ったりするんだけど、私個人の意見としてはリスクに見合う物じゃ無いかなーって思う」


 「そうなの?」


 融合を実現する為には、吸収先の世界の柱、第三世界で言うファムとネシアを広大な世界から探し出し、自分の世界に連れて帰り、侵攻にリソースの大半を使って疲労困憊な状態の自世界の柱と融合させる事になるのだが、自分の世界が消えない為には吸収し、存続する側の世界の柱が主体となり融合を実行しなくてはならず、疲労困憊な状態の柱は世界を安定させる為に全力を尽くし続けている状態でも有る。しかもそんな状態のまま世界は繋がりっぱなしで、タイムリミットも存在する。

時間を掛ければリソースの流出により自然消滅を迎える事になる上に、融合を手助けする事は管理者レベルの存在でも出来ない。

しかも吸収される側の柱も無抵抗では無い、そしてその抵抗が融合の最大のリスクであり障害でもある。そもそも消滅寸前の世界の柱は弱く脆い、逆に十分なリソースを蓄えた世界の柱は、守りも堅く、攻撃だってする。しかも柱の中にはそもそも世界から出る事が出来ない様な柱も存在し、外に出る事で消滅し、諸共消えて無くなる事もある。


 第五双性世界等を支える樹木型の柱は、そもそも定点から動かす事も出来ない。融合する為には弱った柱自らが出向き、世界の激しい抵抗を乗り越え、何処に有るかも分からない世界の神域へと手探りで到達する事が求められる・・・・・・が、そんな事をするリソースが有る位なら、世界は滅んだりしないし、頭を下げてリソースを分けて貰う方が平和的に解決出来、尚且つ世界の発展にも繋がる可能性がある。


 だが中には第三世界へと実際に侵攻してきた牧場世界の様に、世界の中に済む人間が産まれた世界を捨てて迄世界を越えてくる事もある。

そう言った存在は大抵の場合柱へと到達する事も出来ず、世界を越える前に消滅するのだが、界獣という世界を越えられる存在を生み出し強引に世界の壁を突破し、第三世界へと入植を果たした。


 「滅ぶから全てを賭けて死ぬ気で来るか、余裕があるから奪いに来るか、その二つが主流かな」


 「それ以外にも有るんだ・・・・・・」


 ミンティリアは自身の世界が無くなる際に、世界に残った最後の力を使い転生を果たし第三世界に産まれ直した。文字通り死ぬ気で世界を移動したのだ。


 「有るよー、只潰したいから、とか、管理者を奪いに来るって言うパターンもあるね」


 そんな話を聞いているエリーが、ふと疑問をロペへと投げかける。


 「根本的な話なんだけど~・・・・・・世界に穴を開けたりするのは分かるんだけど、どうしてこの世界にリソースが流れ込んでくるの?こっちから出ていったりはしないの?」


 「ん、良いとこに気が付いた」


 世界には優先順位と言う物が決められている、大きく強く発展している世界はより長く存続される事を望まれ、存続の為に格付けられる優先順位が上がっていく。

逆に滅びの確定した閉鎖世界は格付けから外され、世界を再構築する為に処理の対象となる。また、閉鎖世界とならずとも、管理者が無能で世界が衰退している状況にある世界は格付けが徐々に下がり、リソースが足らず世界に穴が空いたり、不確定要素による世界の危機が起こった場合、優先順位の高い世界を存続させる為に、リソースを奪われ、最終的に閉鎖世界となる。


 「じゃぁこの世界は優先順位型が高いって事なのね~」


 「・・・・・・おしいっ」


 「ほぇ?」


 「この世界は優先順位外に設定されているの」


 「え?それじゃぁ・・・・・・」


 「ちちち、優先順位とか言う前時代的なシステムは適応外なんだー」


 「「「???」」」


 「じゃあどういう事?」


 「この世界は根源世界に設定してあるし、設定は銀河きゅんにしか変えられない」


 「根源世界?」


 「そう根源、これ大事」


 第三超広域開拓世界は、数多存在する世界とは存在その物が違う。ロペはそう言いたかったのだが、単語自体の意味が伝わらなかった為、三人は首を傾げ聞く事に徹する事にした。


 「原初世界って言う世界があってね?其処の一つが元々根源世界として設定されていたんだけど・・・・・・」


 「まってまって、根源世界ってなにー?」


 「あー、根源世界って言うのは新たに産まれる世界の土台となる世界の事なんだょ。今迄産まれてきた世界は、原初世界から派生して産まれた世界なんだけど、この世界が生まれた後の世界は、この第三超広域開拓世界が元になって産まれてくる事になるんだょ・・・・・・で」


 「この世界は、全ての世界より優先される」


 「「「!?」」」


 「何が有っても、この世界は終わらないんだょ」


 苦労したなぁ、と遠い目をしてしみじみ語るロペを、周りの三人はしんじられねぇ、と何をしたらそうなるんだと完全に引いてしまっている。


 「え?それってどういう事?」


 「文字通りの意味だょ」


 詳しく語るには長くなりすぎるからと、解りやすく噛み砕いて言うロペの言葉は、とても短く尚且つ抽象的ではあるが、存在が確認出来ない物の代名詞としてもその言葉は有名である。


 「永遠」


 「「「えいえん」」」


 「そう、銀河きゅんが望む限りこの世界は永遠に続く」


 つい先日盗られそうにはなったけどね・・・・・・。と、眉に皺を寄せ頬を膨らませていじけてみせるロペだったが、その時は銀河きゅん居なかったし。とそれが全てだと話を終わらせた。


 「情報の共有はどうしよーか」


 「幹部クラスだけで良いよ、こんな事教えてもどうしようも無いし」


 「りょーかいなの」


 情報の共有は速やかに行われ、眷属の中でも特に雨宮に近いクルー達にだけ共有出来る特殊な情報共有セクターへと、配置された先程の情報は瞬く間に共有され、幹部クルー全員の知る所となった。


ーーーーーーーーーー


 「ん?」


 雨宮が完全に眠っている時は、ロペかジェニがブリッジに居る事が多いのだが。銀河帝国が本当に出来てしまった物だから、ジェニは世界中各方面の識者との調整を行わなくてはならず、十数名の専門知識、経験を持つ眷属を引き連れ、国家としての調整作業を現在進行形で行っている。既に彼女は無睡眠で数ヶ月は連続活動中だ。


 (ジェニちゃんがとうとう眠りに入ったかぁ・・・・・・流石にエネルギーが有っても精神が意識をシャットアウトするかぁ。ナノマシンはちゃんと動いていたみたいで良かったけど・・・・・・この間の調整は一体誰が?)


 「おはよう?」


 目を擦りながらイミルとトトがブリッジへと何故かやって来て、ロペの肘置きに置かれた袖を引く。


 「ん、ご飯食べよう」「お腹空いたのです」


 トトは雨宮の前に居ると、必要以上に甘えてしまうらしく、自制しなくてはと時々ロペの所へとやって来てその所作を盗もうとし、こうやって食事に誘ってくるのだが、以前のロペは全く参考にならなかったらしいが、それでもロペをナンバーツーと考えてか雨宮が居ない時は側を離れようとしない。


 イミルとは何か通じ合う所が有ったのか、先日の二人は同じベッドで眠り、連れ立って此処へとやって来た。


 「そうだねぇ」


 (ジェニちゃんも銀河きゅんも丁度居なくて・・・・・・どうしたものかなぁ)


ー私が代わりをやろうか?


 (不結理ん・・・・・・んー・・・・・・あっ)


 「二人共先に食堂に行ってて、ちょっとしてから行くから」


 「「はーい」」


 トトは眷属と言う事も有り、ロペが誰かと通信をしていることを察知し、イミルを連れてブリッジを後にした。


 (一応聞いておこうと思ったんだけど、不結理んって私達の知っている不結理んと違う人だよね?)


ー違う?え?


 (やっぱり・・・・・・なんか話が微妙におかしいと思ったんだよ)


ーえ?え?


 (だってさ、原初世界には不結理んは居なかったし。)


ー????え?え?どういう事?


 (不結理んの居た世界は試験用第二広域開拓世界・・・・・・かな?)


ーそんなはずは・・・・・・?


 (家族構成は?)


ーお父さんとお母さんと・・・・・・あれ?


 (他には?)


ー・・・・・・あれ?あれ?思い出せない・・・・・・


 (そりゃそうだよ、前世の銀河きゅんには実の両親と妹が居たけど、原初世界の銀河きゅんは・・・・・・一人で暮らしていたからね。前世では血の繋がりの有る従姉妹は千里ちゃんとその両親だけ、原初世界では・・・・・・私の家族だけだったから)


ーえ?じゃあ私は・・・・・・?


 (落ち着いて、存在が揺らいでいるよ)


ー・・・・・・不安になる事を言ってきたのはそっちじゃ無い・・・・・・


 不結理の不満が有り有りと伝わってくるが、意に介した様子は無くロペの話は続く。


 (以前に銀河きゅんが、自分の力を前世で一回使った事が有るって言っていたのよね)


ーそれが何か有るの?


 (有る・・・・・・と言うかそれしか原因が考えられないんだけれどね)


ー・・・・・・


 (銀河きゅんの力・・・・・・意図的に使うアクティブスキルの方は、取り返しが付かないんだよね、そんで、銀河きゅんには元々異世同位体が存在しない)


ーうんうん


 (それで、銀河きゅんはスキルを使って生死の境を彷徨ったって言ってた。銀河きゅんは元々原初世界の生まれだから、その身体に超高密度精神生命体を宿している)


ー・・・・・・


 (普通に考えたら・・・・・・って私の普通だけど、まぁそれは良いか。スキルを一回使っただけで死にかけるとか流石にあり得ない、リミッターとかも在るし、だからそれが有る想定で考えると、意図的にそれだけ大きな規模の力の使い方をしたって事だと思うんだよね)


ー死にかける位ってどんなのさ・・・・・・


 (私も調べた訳じゃないから確定した話じゃ無いけど、多分銀河きゅん世界をもう一個作ったんじゃ無いかな?)


ーええ!?


 (多分だよ多分。それで銀河きゅんはもう一つの方の世界に移動した・・・・・・しなきゃいけなかったのかも知れないね)


ー何か有ったって事?


 (多分ね、その位力を使ったら流石に銀河きゅんでも力尽きてもおかしくない・・・・・・っていう話)


 何かが原因で雨宮は世界を造り、更に世界を移動する。この世界ではマギアシリーズの戦艦や界獣を使う事で漸く可能となる現象だ。

 

ー何かって・・・・・・?


 (それは解らないょ?試験用第二広域開拓世界で何が有ったか知っているのは、その世界に居た人間だけだし・・・・・・最後にあの世界に居たのは誰だろうか)


ー知らないよー


 (斗捌(とべつ)・・・・・・みたいだね)


斗捌(とべつ)ってあの研究者チームの?


 (そう、彼があの世界で一番最後に死んだ身内だから、話を聞いてみたら分かるよね)


ー会った事ないんだけど・・・・・・


 (呼んでみようか・・・・・・朝ご飯食べた後でね)


ー分かった、そっちに行くね

根源世界


 外側の世界から零番世界と呼ばれていた不可侵の世界、現段階で全ての世界の土台となっていた世界であり、科学や魔術、超能力や奇跡等様々な要素(リソース)を孕んだ滅ばない世界と呼ばれていたが、ロペのシステムアンロックによってその永遠は失われ、現在の状況は大きく変化の一途を辿っている様だ。


 但し新しい世界が産まれる際は、管理者によってその要素(リソース)は取捨選択され、毛色の違う世界になっていく。


 今はロペによって試験用第三超広域世界が根源世界として設定されており、永遠を約束された世界となっているが、それを知っているのは当のロペ本人と、その周りで話を聞いていた者達のみとなっている為、他の世界には伝わる事は無い。


 ロペはリソースを有限として話をしていたが、根源世界となった時点でリソースの限界は取り払われ、名実共に全ての世界の中心となりつつ在る。それ故にこれまでも多くの世界を吸収しながらも、大きな揺らぎを起こす事も無く、世界の自浄能力のみで揺らぎを沈静化させる事が出来ていた。


 なお、この世界に多くの種族が存在するのはそれだけ多くの世界を吸収し、リソースを獲得してきた為である。


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