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EP80 神の御業と昔語り

このペースではイカンと思いつつ、だらっと投稿。

 「もう一回喋ってみ?」


 「ぉおぅでぇうぅあぁああ?」


 (何となく掴めてきたが、非常に分かりづらいな)


 元々精神が元の肉体に完全に適応していた事も有ってか、新しい機能を全く生かし切れて居ない、火星人(仮)には人間の様な発声機能は無く、喉の辺りにそれらしい機能を持つ骨が存在していたのだが、それの動く音が人間の脳には非常に危険な振動を発しており、その言葉の様なものを聞いているだけで、人間は死に至る。

今回雨宮はその発声方法と同じ様なものだろうと勝手に考え、そのまま声帯と関連付けて使う様に記憶を擦り込んだのだが、非常に苦しそうで、何より聞き取り辛かった。


 人種の発声は非常に複雑な方法で構成されており、声帯だけで声を出している訳では無い。腹に力を入れ、上手に息を吐き、必要な音声の為に口と舌を動かす。複雑な工程を経て言葉は造り出される。それを簡単に結びつけるだけではやはり不可能だったのだろう、人種として生まれ変わった火星人(仮)女はどうすれば良いのか分からず、不意にその拳を口の中に突っ込んだ。


 「う~~~~」


 「待て待て待て!最初は仕方ないんだ!俺が悪かった!」


 今思えばこの行動は先程イミルを口?の中に入れてもごもごしていた時の行動に似ている。雨宮は直ぐにそれがストレスに寄るものであると気づき、急いで手を掴み咽せる彼女の背を叩いた。


 しかしこの声かけが更に彼女を混乱させる事になった。


 「うぇえ!?ぁあとうぁまにぃん!」


 耳の機能も全く人種とは違っていた様で、振動を変換し音声・音として脳に伝える機能が火星人(仮)には存在せず、初めてその入力が今その耳の間近で行われ、脳が音量調節をうまく出来なかったのだ。


 自分の声に驚き、雨宮の声に驚き、たった一人で別の世界にやって来た彼女のストレスは止まる所を知らず、目を回して気を失ってしまった。


 「悪い事をしたな・・・・・・」


 「もう少し、研究室で擦り合わせる必要が有りそうだねぇ」


 彼女の口から色々と話を聞きたいのだが、まずそれ以前の問題を解決しない事には、先へと進めない、雨宮は一旦彼女を休ませ、もう一度脳の機能についてナノマシンによる補助を入れる事をに研究者チームへと打診し、医療区画を後にした。


ーーーーーーーーーー


マギア・ラピス メインブリッジ


 「銀ちゃん結局どうするの?ルビーダンジョンもは攻略途中だけどー、あの火星人?さんも放っておけないよね?」


 「ああ、グレン・カリバーンの件もあるし、ロペ達に話を聞かなきゃいけない事もあるし・・・・・・」


 「イベント目白押しね、私も火星人見たかったなー」


 ミンティリアは自分のシートでストレッチをしながら、どうでも良さそうに目を細めて共有データを確認している。


 「急に忙しくなって面倒臭くなってきたぁ・・・・・・」


 「まぁまぁ銀河きゅん一個ずつ終わらせていこうよ」


 「じゃあ、ルビーダンジョンからタスクに入れておくねー」


 「火星人は一応拘束カプセルに入れて保護しているけど、調整が上手くいき次第連絡するわね」


 「諜報部隊に新しいミッションを発令、四名の受注を確認しました木星圏へと向かわせます、それと一人マッサマンへと先に送り込んでおきますね」


 最近のラピスはエリー、ミンティリア、ザミールの三人と、本日は非番である新庄、この四人体勢のオペレーターが基本となりつつあり、それ以外のオペレーター要員は彼女等の交代要員として穴埋めに入るようになっている。始めはたどたどしかったザミールも、今では雨宮の意志をある程度汲み取れる様になり、ミンティリアに至っては既に実家の様にくつろいでいる。エリーと新庄のオペレーター能力は頭抜けており、替えの聞かない要員となりつつある。


 「ちょっと休んでから・・・・・・早いけど明日、明日にしよう!今日はなんか疲れた!心が!」


 「良いんじゃ無い?何だかんだ色々やっていたし、慣れない事ばかりしていたら身が持たないわよ」


 後は任せたと、雨宮は立ち上がり、自室へと足を向ける。するとここ暫く雨宮の膝の上が定位置になっていたトトが、そのまま雨宮に付いてきた。


 「ん?お前も来るか?」


 「はいです、トトも眠たいのです」


 端末の時計を見てみれば、もう既に深夜の時間帯、疲れも溜まるし、眠たくもなる・・・・・・雨宮を除いて。


ーーーーーーーーーー


マギア・ラピス 雨宮自室


ー銀河きゅん、まだ起きてる?


 雨宮が部屋の前迄来て居たロペを招き入れると、入れ替わりに十数名のクルー達が出て行く、直前まで雨宮と夜のデッドヒートを繰り広げていた者達だ。

雨宮はロペ達の中にイミルの気配を感じ、部屋の中を瞬時に片付け、普通に遊んでいたかの様にテーブルゲーム等を配置し、自然な部屋を演出する。


 「どうした?こんな夜中に」


 「寝過ぎで眠れなくなった」


 (イミルぇ・・・・・・)


 「お話の続きでもしようかなって」


 (何処までなのかねぇ)


 ブリッジから離れて数時間、部屋に残っているのはトトだけだが、トトは雨宮にしがみ付きすやすやと寝息を立てて完全に眠っている、結局雨宮はトトに手を出し、彼女は進化の眠りについているのだった。


 ロペ、イミルに続き、不結理、雪之丞の二人も連れだって部屋の中に入ってくる。


 ロペ達はそれぞれ適当な場所に腰を落ち着け、何をどう話そうかとそれぞれ考えを巡らせている様だ。


 (イミルが聞いていても問題ない話なのか?)


ー大丈夫だよ、何のことか分からないし


 (そう言うもんか?)


 イミルは昨日今日この銀河旅団の船に乗り込んだ新しい仲間では在るが、曲がりなりにも冒険者、少し侮りすぎなのでは?とそう思う雨宮だったが、三人が特に気にしていないようなので、話を始めるように促した。


 「そうだねぇ、まずは私の目的から・・・・・・で良いかな?」


 「ああ」


 正直な所雨宮には今のロペが何をしたいのか測りかねている。神域の侵攻による復讐心等が、ロペが全てを取り戻してから数ヶ月の内に、大分形を潜めてしまっているからだ。雨宮の旅の目的の一つになっているロペの復讐を手伝う、と言う事が既に無くなってしまっているのでは無いかと、そう思う事すら在る。


 「一つは、銀河きゅんとちゃんと一緒になりたかった、って言う事」


 「結婚とか夫婦に拘っていたのはそのせいか」


 「操られていたせいで何だかよく判らない内に、そういう事になってしまったんだけどねぇ」


 ロペはこの世界に転生した時から既に自身のコントロールを失っており、今回の件で漸く肉体の主導権を取り戻したのだと言う。今まで記憶が無かった原因も其処に有る。と言うより、操っていた奴はロペ本人が記憶を全力で隔離していた為に覗き見できず、ロペのこの世界での事しか知らなかったのだ。三十数年コントロールをされたままその何者かが活動をしていない睡眠時にのみ、主導権を取り戻し、雨宮をこの世界で受け入れる為の必要な事を辛うじてやってのけたのだという。


 「記憶を取り戻すと言う表現は、間違っていた訳だ」


 「そうだね、徐々に自分の身体を取り戻していったから、知っていて当然の事が伝えられるようになったってだけ・・・・・・だねぇ」


 なら何故肉体のコントロールをしていた者が、これまでそんなロペの事を野放しにしていたのか?ロペ曰く、単純に私の方が頭が良かったから、と言う事らしく、裏で工作をしている事を気付かせないように立ち回った、ロペの頭脳がこの日を迎える為の布石としてちゃんと機能していたと言う事なのだそうだ。


 「銀河きゅんの眷属になる時、あいつは銀河きゅんの方へ移ろうとしていたんだけど失敗したんだ、その時に半分以上コントロールを取り戻す事が出来たから、もう常に喧嘩状態でねぇ・・・・・・」


 肉体の中で精神が喧嘩をしているとか言われても・・・・・・と思った雨宮だったが、自身にも毛色は違うが似たような経験が有ったなと、目を閉じて苦い思い出を拭い去る。


 雨宮の操るナノマシン、そのサーバーの中には数億人の精神が保存されている。何度かその精神体と語り合う事を試した雨宮だったが一方的に怒りを向けられたり、意味の無い誹りを受けたりする事も有った。人は二人居れば意見も違うと、雨宮は身を以て経験をしていた。


 「お互い気が抜けないから、ずっとテンション高かったような気がするょ・・・・・・。何だかそれを思い出すだけで疲労感を感じるねぇ」


 「成る程な・・・・・・」


 因みにロペの事は火星人(仮)とは別の話なんだそうな。


 「誰に操られていたとかロペは分かっていたのか?」


 「・・・・・・それも此処で話したかった事でねぇ?」


 「まぁ其処から先は私が話した方が良いかな」


 不結理は四人掛けのテーブルの上に座り、足を組んで事の成り行きを見守っていたが、出番が来たとばかりに、雨宮の前に進み出て手が少し届かないぐらいの距離で床に座り、今の雨宮では知りようのない話を語り始めた。


 「エスパーズドリームって言う組織が有ってね」


 「ほー・・・・・・?」


 名前からして怪しい組織の名前を出されて雨宮は、どう言葉を返せば良いだろうかと悩みそうになっていたが、言葉を少し切っただけで話はまだまだ続くようだ。


 「その組織は所謂超能力者と呼ばれる人間、この世界で言うと人種・・・・・・かな、だけが構成員として居る組織で、世界に対して宣戦布告をするって言うかなりネジのぶっ飛んだ組織だった訳よ」


 「世界ねぇ?何処の?」


 雨宮は聞いても良かったのかな?と口に出してから少し考えたが、不結理は既に言葉を選んでいたらしく、サラッとその返事は返ってくる。


 「原初世界、私達が初めて産まれた世界、第四系列世界軸原初世界」


 「原初世界ってのは聞いた事が無いな」


 「それはそうよ、そんな言葉この世界には無いもの、システム的に触れられない様になっているのよ」


 「成る程ねぇ、システムによる隠蔽か・・・・・・いや、思考誘導か?」


 「まぁ似た様なものよ、で、私達はその組織と戦っていたのね」


 「ほう、何でって聞いて良いのか?」


 「うん。私達はそいつらとは別の組織、銀河研究会って言う宇宙を研究したり、違う惑星に行ったり・・・・・・まぁ宇宙に関する様々な事を知りたいって言うそう言う組織の一員だったのよ」


 「うちゅう」


 「そう、まぁ設立者がそう思うのにも理由が有るんだけど、それは私が言って良い事じゃないから割愛するわね」


 (システムとかそういう事じゃ無さそうだ)


 不結理は雨宮をジッと見つめて話を少し止めていたが、気が済んだのか続きが始まる。


 「で、私達はそれを調べていく内に、エスパーズドリームって言うのが何故か邪魔をしてきてね?」


 「・・・・・・」


 (何故か・・・・・・ねぇ)


 「そいつらが余りにも簡単に人を殺すものだから、まぁ、戦争に成る訳よ」


 「戦争ってのは又大きな話だな」


 「まぁ組織同士の規模がどっちも大きかったから・・・・・・何て言うかな、所謂世界大戦・・・・・・みたいに成っちゃったのよ」


 「「・・・・・・」」


 ロペと雪之丞は二人共苦々しい顔を隠そうともせず、過去を思い出し物思いにふけっている。


 「勿論止めようとはしたんだけどね、私はその途中で死んじゃって、まぁ・・・・・・色々あって今此処に至るって言う訳よ」


 「でまぁ話を戻すとね、そのエスパーズドリームの中に、他人の精神に寄生する能力を持っていた女がいてね・・・・・・そいつが蓮華・・・・・・ロペの身体を操っていた奴って訳」


 (成る程な・・・・・・)


 「そいつはロペと一緒に長い時間を掛けてこの世界を作ったのよ、で・・・・・・」


 ここからはどうぞ、と不結理はロペへと話の続きを促した。


 「途中でそいつは狂っちゃって、私は其処から一人でこの世界を作る為に必要な事をやっていたんだけど、ずっと生きては居たらしくて、この世界に転生する時になって正気を取り戻したんだょ・・・・・・。もしかしたらずっと正気で居て、この時を待っていたのかも知れなかったんだけどねぇ」


 その女の詳細は解き明かすのにかなりの時間を要すると、研究者チームから報告が上がってきておりサーバーの中で隔離され抵抗をしているらしい。


 女のデータ量は非常に大きく、第三世界の人間を基準とすると、数百倍以上の容量を要しその存在が高密度精神生命体で有る事が、雨宮の中で確定的になった。


 「そいつを分析するのには時間が掛かるみたいだから、又長期タスクがふえるな・・・・・・」


 「私達としてはそんな事が可能だって言うのが、驚愕なんだけどね」


 「ナノマシンに不可能は無い・・・・・・と思う」


 雨宮は自信たっぷりにそう言うが、自身の理解の及ばない所にナノマシンが適応されない事も分かってはいる為に、少しその自信も揺らいでいる。


 「で、エスパーズドリームと戦争をして、私は死んで・・・・・・」


 「わたくしと蓮華さん、他にも何人か主要メンバーはいましたが、最終的に銀河研究会は敗北し、原初世界から追い出されてしまいました」


 世界を二分する程の勢力のぶつかり合いは、世界そのものを大きく傷付け、拭い去る事の出来ない傷跡を世界に残した。


 「ですが・・・・・・」


 「銀河きゅん・・・・・・は本来その世界で死ぬはずじゃ無かったんだょ。でも死んでしまったから、原初世界は銀河きゅんを血眼になって探し回っているんだね」


 (なんで俺を・・・・・・)


 「薄々気付いているかも知れないけど、銀河きゅんは唯一無二の存在な訳で、何処の世界にも異世同位体が存在しないから、代わりが誰にも出来ない存在なんだね」


 「それはつまり・・・・・・」


 「原初世界が消滅の危機に瀕した時に銀河きゅんが居ないと、その世界を元に派生した全ての世界が無くなってしまうんだね。此処はその原初世界とは別の系列世界だから、関係無いっちゃ関係無いんだけど、まぁ当事者達は気が気じゃ無いだろうね」


 「俺に何が出来るのかねぇ?」


 「まぁその状態じゃ何も出来ないから、行った所でどうしようかってなるだけだと思うけど、探している側はそうは思っていないから、何でもやってくるだろうね」


 「迷惑な話だなぁ」


 (と言う事は、だ。極論だが今迄のトラブルの原因は全部俺自身に有って、そのせいでそいつらが俺を見つけた・・・・・・とか?充分可能性はあるが・・・・・・)


 雨宮はこれ迄の事を思い返し、既知の外にあるとしか思えない人物や、出来事があった事を思い出す。界獣達の進行度合いの時系列の狂い、ヴァルハランテの歴史、第五双性世界にやって来た謎の組織、そして火星人(仮)。調べてみても情報が足りない為に結論の出ない出来事、其れ等がそのエスパーズドリームとか言う奴らの仕業である可能性、今はこじつけに過ぎないが、話し合いの中で不結理達も可能性が無いとは言え無いと言い、その理由として・・・・・・。


 「エスパーの中に世界を越えられる可能性が有る奴が一人だけ居たのよね」


 「・・・・・・どうやって?」


 「それは流石にエスパーじゃないから私達には判らないけどぉ、異世界から何かを持ってくるって言う能力を持っている奴がいてね?私はそいつに殺されたのよ」


 不結理はその能力者を拾得者(ごみひろい)と呼び、何かを引き換えにし、異世界から光線銃の様な物を取り出し、それで不結理の心臓を貫いたのだという。


 「悔しいから、死の間際に全力で呪ってやったんだけどね。そのせいであいつ、自分の能力をコントロール出来ない様になっている筈よ」


 (もしかしてそのせいで色々事件が起こっているとか・・・・・・それは流石に無いか)


 自分のトラブル体質を他人のせいにして終おうかと思った雨宮だったのだが、飽くまでも可能性に過ぎず、その考えを無かった事にする。


 「まぁ話を戻すけど、目的の一つはそれで、もう一つは世界を作りたかったんだょ」


 「世界を?」


 急に壮大な話しになってきたと身構える雨宮だったが、特に気にした様子の無いロペは話を続ける。


 「銀河きゅんが楽しめる世界をね」


 ロペの目的は雨宮銀河の為だけの世界、それを自らの手で作り出す事だった。彼女は銀河研究会が滅んだ後、魔法使いとして世界を旅し、世界の真理に辿り着いた。

その真理へと至る過程で人としての存在を失い、輪廻転生の輪から外れる事になった。しかしそれすら真理に至った存在には只の過程に過ぎず、自らの意思で世界を渡り、世界そのものを生み出す為の準備を気が遠くなる程の時間を掛けて行い、その過程で様々な敵と出会い、様々な運命と出会い、永遠とも呼べる時間の果てにこの試験用第三超広域開拓世界を造り出し、世界が育つのを待った。


 しかしその世界は他のあらゆる世界の管理者及び世界軸管理委員会から目を付けられている様で、本来ならあり得ない無許可な世界移動の為のゲートを開かれ、数多の世界からアクセスが出来る様になってしまっていた。出来たての世界は、滅びの確定した世界からは輝く宝石の様に魅力的に映り、争いの絶えない世界からは希望の光の様に感じられ、平和の終わらない世界からは壊しても良いおもちゃの様に思えた。

様々な世界から第三超広域開拓世界へと流入が始まり、第三世界も又その流入を受け入れ、みるみるうちに巨大な一つの世界へと進化を続けていく事になった。


 世界はロペの、蓮華の理想とは大きく乖離し、何度も何度も作り直しをするつもりであったが、彼女の精神に巣くうもう一人の女はそれを阻止し、精神生命体を損傷して正気を失った。


 ロペは過去を語る事で、抜け落ちた記憶を取り戻し、雨宮に分離した精神生命体の保護を願い出た。


 「彼女は私を一人にしないでくれたんだょ、だから消さないであげて欲しぃんだ」


 「そんな事は考えてない、情報が欲しいだけだからな」


 不結理と雪之丞はロペの過去を聞き納得の表情でこれまで何故そんな事が出来たのかを理解した。


 「良くもまぁそんなに手間の掛かる事を出来たものよね、そりゃ誰にも知られない様にしようとすれば回りくどい事にもなるでしょうけど、途方もないわね・・・・・・」


 「私達が何度も生まれ変わっている時に、貴女はそれをずっと一人でやっていたのですね」


 「だから一人じゃ無かったんだってば」


 人間が一人で孤独に耐えうる時間とはどれだけの物だろうか?厳密にはロペはそうでは無かったが、誰にも相談せず一個の肉体でそれを続け、永遠とも呼べる時間を過ごす事等、誰にでも出来る事では無い。


 「彼女が居たから私は今此処に居る、彼女の事も少しずつ思い出してきたんだ」


 「エスパー・・・・・・ですよね?」


 「そう、彼女はエスパーズドリームの最高幹部の一人、『ロストボディ』天使響(あまつかひびき)


 その名前を聞いた二人は、何をバカな!とロペに視線を向けるが、ロペは素知らぬ顔で話を続ける。


 「彼女は私の近くに来るまでは、ずっと銀河きゅんの側に居てね、銀河きゅんを守ろうとしてくれたんだけど、間に合わなくってさ」


 「側に・・・・・・?え?まさか」


 「え?天使響(あまつかひびき)って私も見つけられなかったんだけど」


 雪之丞は心当たりがあったらしく、もしかしてと呟いては居るが、確信には至らずその考えを引っ込めた。


 「まぁ彼女の事は銀河きゅんに任せるけど・・・・・・ね?」


 「わかった」


 雨宮を通じ、ナノマシンサーバーへと情報を送る事で、天使響(あまつかひびき)へと手心を加える様に願い出たロペだったが、サーバーの中では既に雨宮の指示によりリファンリアが動いており、彼女の精神生命体の修復作業は終了し、同時に新たな肉体を構成する様に提案がリファンリアから為され、雨宮はその肉体を人種として設定精神生命体からの情報提供により、当時の肉体の再現に成功した。


 雨宮自身は問題が無い様で有れば、新しい肉体を作り上げようかとも思ったが、エスパーと言うこの世界に存在しない存在と整合するか不明な段階で、危険な事はやめろと研究者チームから注意されていた。


 「まさか・・・・・・今此処に作るつもり?新しく?人間を!?」


 不結理は正に神の所業を実行しようとしている雨宮に対し、驚愕の目を向けるが、既にロペから情報を得ている雪之丞や、ロペからはせめて悩めよと言わんばかりのジト目が刺さる。


 「分解に抵抗するのを無理矢理こじ開ける時間より、直接聞いた方が早いと思ってな?」


 「それはそうかも知れませんが、おかしくなってしまったのでは無いのですか?」


 「まぁ銀河きゅんの事だから、外に出すって事はその辺は片が付いたんでしょ」


 「まぁ・・・・・・」


 井戸端で世間話でもする様に、ロペと雪之丞は目の前にナノマシンで作られた光を眩しそうに見つめ、その光が徐々に人の形を成していくのを見守っている。

イミルはと言うと・・・・・・。


 「何の話をしているのかよく判らない」


 「う~ん、何て説明するかなぁ?」


 全く以て蚊帳の外だったイミルは話を邪魔する事無く、雨宮の膝の上で会話を聞いていたのだが、自分と全く関係ない事と言う事もあるが、そもそも異世界の事など知る由も無く、それぞれの反応を興味深く見るに止まる、しかしやはり蚊帳の外は少し寂しいらしく、話の流れが切れた所でちょっと声を上げてみたのだ。


 「わかりやすくして欲しい」


 「そうですわね・・・・・・私達三人は異世界から生まれ変わって、この世界で偶然「偶然じゃ無いょ」あら?」


 雪之丞が説明を始めて間もなくロペがその言葉を遮る。ロペは記憶の整理が徐々に出来てきたのか、自分が何をこの世界に求めていたのかそれを改めて理解した。


 「皆がここに来る事は最初から決まっていたんだょ、この世界を作る時にちゃんと紐付けしていたからね・・・・・・だから原初世界は輪廻がまともに起こらなくて徐々に衰退しつつあるだろうけど、別の世界軸だから関係ないよね」


 ロペは原初世界・・・・・・俺達が最初に産まれた世界の仲間達全員の精神生命体に、この世界に転生する為のデータを刻み込んでいたと言い、その精神性生命体・・・・・・即ちマナが原初世界から確実に流出する事が最初から決まっていた(決めていた)と言った。この話を聞いた雨宮は原初世界が今辿る運命を知り、どうした物かと肉体の構成を行いながら頭を捻る。


 「滅ぶじゃん、原初世界」


 「其処まででは無いと思うんだけどなぁ」


 程度の程は知れた物では無いのだが、それでも巨大組織の人間全員を転生させると言う事は、世界そのものに相当な負担を強制する事に他ならず、雨宮は多分駄目なんじゃ無いかなと、足りない情報を抜いたままでそう判断する。


 「銀河研究会?だっけかどの位人数が居たんだ?」


 「・・・・・・世界全体で七百万人位かなぁ・・・・・・」


 「そんなに少ないはず無いでしょうに!?」


 「そうだよ!私が死ぬ前の時点で二億は居たはずだよ!!」


 「「え~そんなに~?」」


 雨宮とイミルは余りにも規模の大きくなった話しに、少ないだの多いだのと言う認識が乱れるのを感じ、想像が出来なくなってきている。


 「銀河研究会は地球上だけで無く、地球衛星軌道上、月、火星に多くの拠点を持っていて、その拠点に居る全員が銀河研究会の構成員なんだよ。この世界程めちゃくちゃな規模でこそ無いけれど、それでも宇宙に進出して間も無い事を考えたら、相当な物だと思うけどなぁ」


 (既に宇宙で生活が始まっていたのなら、これからだったんだろうなぁ)


 ロペの目的や雨宮が疑問に思っていた事等、多くの話が三人の口から語られはした物の、雨宮自身の中にはそれは無く、何処か他人事の様に感じられ、イミル程では無い物の、ちょっとした疎外感に包まれつつあった。


 「ふ~ん・・・・・・じゃぁ、その二億人の人はこの世界に来るって事?」


 イミルは一生懸命話を聞き、何とか会話に参加しようと質問を投げかける。その姿を雨宮は目を細めて眺める事で、ちょっとした癒やしを得ていた。


 (がんばっちょるイミルたん萌)


 「来るというか、もう居るというか」


 「「「「は?」」」」


 ロペを除いた全員の声がシンクロし、ロペは頬を指で掻きながら、分かってて集めているのかと思ったと雨宮に投げかける。


 そしてロペは言う。


 「銀河旅団に今居るクルーの大半は元々銀河研究会の転生者達だよ」


 全員死んでるのかよ!と頭の中でツッコミを入れる雨宮だったが、言われてみれば、銀河研究会について聞いた後で在る今ならば、心当たりもある。

何故皆が皆雨宮に付いてくる事に疑問すら持たないのかと、何故雨宮に抱かれる事に疑問を持たないのかと、雨宮のむちゃくちゃな行動を何故許すのかと。


 「元々、そう言う星の下に産まれた者達だったのですね」


 「記憶を引き継いでいる人は殆ど居ないだろうけど、銀河きゅんの(精神生命体)に引き寄せられて皆此処に集まってくるんだょ。(精神生命体)で感じるんだろうね、自分の居るべき場所を」


 思い出す記憶の無い雨宮は、与えられた情報で推測し、そういう事も有るんだと納得こそしない物の、間違っている様な気はせず、ふと自分の頬を伝う涙に気が付いた。


 (俺の精神生命体は何かを覚えているのか)


 ぽたりと頭の上に落ちてきた雫を不思議に思うイミルだったが、その雨宮の顔を見るようなことはせず、深くため息を一つつき、雨宮の胸に背を預け、話し・・・・・・終わった?と首を傾げるのだった。


天使響(あまつかひびき)??歳 人種 エスパーズドリーム所属


 気の遠くなる程の時間髙鐘蓮華(たかがねれんげ)(現ロペ・キャッシュマン)に寄生していた高密度精神生命体。


 観測者雨宮不結理(あまみやふゆり)が十年掛けて探していたエスパーズドリームの最高幹部の一人だったが、生涯を掛けての捜索も実らず、見つける事は出来なかった。


拾得者(ごみひろい)??歳 人種 エスパーズドリーム所属


 代償を糧に異世界から物質を引き寄せる能力者、観察者として天使響(あまつかひびき)を探していた不結理を殺害し、その殺害と引き換えに不結理に呪われ、能力をコントロール出来なくなった。

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