EP78 人知れず起こる|奇跡《ひつぜん》
何でナンバー間違っていたのに気付かなかったのか・・・・・・
ロペがマナトラッカーへと押し込まれてから数分、ゆっくりと光の粒子にまで分解されたロペは、カプセルの中でキラキラと光を反射し、その光の一部分がモヤモヤと黒い光を放ち、カプセルに充満するロペの存在を取り込もうと移動しているが、マナトラッカーによる分解を促すエネルギーの波に徐々にその姿が拡散し、消えようとしている。
「中々しつこいな」
汚れの落ちない古い洗濯機を思い出した雨宮は、ミリュにこの黒い物体についての報告を促す。
「はい、不明です、しかしこれはマナでも無く、ましてやΔエナジーでも無い、そしてΩウィルスとも違いそれ以外の何かで有る事だけが判明しました」
(・・・・・・Ωウィルスじゃないのか)
雨宮はぶよんぶよんと伸縮し、まるで苦しんでいるかのように引き攣った動きを繰り返す黒い物体を観察し、ゲームに出てくるスライムの酷いバージョンだなと、見た目の悪さを酷評し、光の粒子となったロペの様子を見守っていたのだが、その黒い物体は是が非でもロペの再構成に併せて再びその身体に再侵入しようと、打ち上げられた荒ぶる魚のように藻掻き、何とかその存在を維持しようとしているように見える。
「切り離しは可能なのか?」
「可能です、排出先をどのようにしましょうか、宇宙空間へと排出してもよろしいかと思われますが、その場合は見失ってしまう可能性もありますので、このままこの中で抵抗が出来なくなるまで放置しておくのが適当かと思われますが・・・・・・」
「情報を抜く事が出来るかどうか分からないと言う事か?」
「それも有りますが、スキャンが通りませんので何をしてくるか分からないのです。確実に消滅させる事を提案します」
このままの状態で放置すれば、この黒い物体はいずれ力を失い、マナトラッカーの分解能力によって完全に消滅するのだろうが、スキャンの通らない物からは情報を得られない、と言う事が雨宮の判断を少し鈍らせている。この黒い物体は必ず有用な情報を持っている、それだけは確信を持っている雨宮だったが、その情報と引き換えにもう一度ロペに寄生させてしまうのも憚られる。しかもそうした所で情報を得られるようになるとは限らない。メリットとデメリットを天秤に掛けた時、このデメリットは今甘んじて享受するべき物では無いとそう判断するに至る。
「・・・・・・バラせ」
「了解しました」
ミリュが手元のコンソールに何かのコマンドを打ち込むと、黒い物体は引き千切られるように伸び縮みし、徐々にその存在をすり減らし、小さくなっていく。
「なかなかの抵抗力のようですが、一体これは何なのでしょうね?」
ティオレはカプセルの小窓を覗き込み、今正に消滅の危機に瀕し暴れ狂う黒い物体の存在に思いを巡らせ、首を傾げて記憶の中を探しては見たものの特に思い当たる節は無く、次第に小さくなっていく黒い物体は、室内に響く全ての工程が終了した事を知らせる音共に、完全に消滅した。
「なかなかの質量だったように思うが、ロペは元に戻るのか?」
ミリュは頭の耳をピクリと動かし、雨宮の方を見るが彼女にとっては対して気になる事では無かったのか、返事は素っ気ない。
「多分、です。この装置も完全ではありませんし、私は元の彼女を見た事がありませんので、判断しかねますね」
「それを考えれば俺もそうかも知れない、何時からこの状態だったのかは分からないからな」
雨宮がロペに始めて出合ったのは一年と半年程前だが、それ以前の事は口で聞いている事以外は分からないし、ましてその身体の内側に寄生している存在が、何時から寄生しているのかなどと言う事は判るはずも無く、可能性としては産まれた時に既に寄生されていたのでは無いかという可能性が、この場の一致した見解だった。
「となると、これは神域を滅ぼした方の界獣に何か接点のある奴かも知れないな」
以前敵対していた牧場世界の住人達は、結局神域を滅ぼした者達とは似て非なる界獣で有る事が判明しており、攻撃性という点においては、牧場世界の勇者によって完全に統率されており、全くと言って良い程皆無であった。海王星ダンジョンにぎっしり詰まっていた界獣も、神域に至るまでにいた宇宙の界獣も、一切の抵抗がなくその場にいただけだった。だが神域を破壊した界獣は、雨宮がモニター越しに見たそれを思い出すだけで、明確に悪意と殺意の両方を持った物であるとそう感じられる程には悍ましい物だった。恐らくヴァルハランテを攻撃した界獣は神域を攻撃した物と同じ物なのでは無いかと、そんな考えすら浮かんでくるが、確たる証拠も無くそれを口に出す事は憚られた。
黒い物体が消滅し、ロペの再構成が終わった後、ゆっくりカプセルが開きロペが目を覚ました。
「・・・・・・」
(こいつ又記憶を無くしていないか・・・・・・?流石に無いよな?)
雨宮は再構成の後遺症か、呆けたままの表情で雨宮を見つめるロペを見て不安に駆られるのだが、そもそも彼女の記憶が混乱し、思い出せない状態になっていたのはあの黒い物体のせいなのでは無いだろうかと、そう言う思考も新たに湧き出し、今迄見ていたものがもしかすると虚構なのでは無いのかと、この後のロペの行動を固唾を呑んで待っているのだが、のそりとロペは寝台から起き出し雨宮に胸に身体を預けると、足りない、足りない、と雨宮を見上げ周りの皆は首を傾げる。
見た感じだけの判断で雰囲気が変わっており、常に高い位置で感情を保っていた今迄のロペとは違うローテンションな彼女の思考は読み取れず、雨宮もあたふたとどうすれば良いのか分からないまま、ロペの頭に手をやりロペと視線を混じり合わせ、力の入らない瞳は何処か気怠げで、雨宮の瞳の奥の何かを見ているかのような、不思議な目をしていた。
「ロペ・・・・・・だよな?」
「・・・・・・ロペ?」
ロペが自分の事だと判断するまでに間が開く、そしてロペの瞳から止め処ない涙がこぼれ落ち、何を思ったか再び雨宮の胸に顔を埋め、動かなくなった。
「・・・・・・」
(記憶を失った?あの黒い物がロペの記憶だったのか?・・・・・・分からん)
雨宮は抱きつかれるがままの状態で暫く記憶の中を探り、ロペと特別な関係にあったであろう存在を思い出し、此処へ呼び出す事にした。
(イミル、もうちょっと待っててくれな)
ーーーーーーーーーー
「ふぅ・・・・・・何事かと思えば」
「漸く観測者から逃れる事が出来た訳ですか、一番早くこの世界に来たのに貴方だけずっと監視されていたのもどうかと思うのですが」
エマとシンシアが入室するなり罵詈雑言とも言える文句をロペに垂れ流し、ロペは泣き止んで暫く雨宮の胸の中で暫くハスハスしていたのだが、じとっとした表情で二人を見るなり、偶々近くに置いてあったオリハルコンレンチをフルパワーでエマに投げつけた。
「~~~~~~!!??」
狙い過たずエマの額にクリーンヒットしたレンチはそのままの勢いで天井に跳ね返り、コンソールに向かい今回の実験データ整理とレポートを入力していたミリュの後頭部にヒットし、そのままコンソールへと額を付ける事になった。
「ちょ・・・・・・」
蹲り額を抑えたまま悶えるエマを白黒した目で見たシンシアは、次は自分かと身構えたがロペの手元には何も無く、ほっと胸をなで下ろした。
「何をするんですか!急に!」
「裏切り者」
憤るエマはロペの一言に怯み、シンシアも又何かを言いたそうにしていたが、踏み出せないままで時間が過ぎていく。
「銀河さんはまだ知らなくて良いんですよ」
(は・・・・・・?ロペ?か?)
溌剌とし元気の源かと思える様なロペしか知らない雨宮は、今のロペが如何しても今迄のロペとは思えず、つい確認をしてしまうのだが、その返事は中々帰ってくる事は無く、じろりとロペはシンシアを睨み付け、ヘタレ、と一言だけ彼女に投げかけた。
「ろぺ?だよな?説明してくれるとありがたいんだが」
雨宮は辛うじてその一言だけ発すると、ぐるんと視界が回転し気が付いた時には開いた寝台に座らされている。
「初めましてじゃないですよ」
「分かってる」
(記憶を取り戻してからって事だよな?)
「そう言う意味でも無いです」
「???」
「私は・・・・・・」「その前に私達から名乗った方が良いですよね」
涙目になりながらも何とか立ち上がり、額を手で押さえたままのエマと、又何かを投げつけてくるのでは無いかと警戒したままのシンシアは、雨宮の前に正座し、周りの眷属が何が起こっているのかと顔を見合わせている空間で、自分達の名前は今呼ばれている物では無いと、本当の名前は違うのだとそう言った。
雨宮がスキャンした時に出てくるのは、今呼んでいるロペ、エマ、シンシア、そのままであるが、事実では無いという。
「エマというのは、通り名のような物で、えーっと、間違いでは無いのですが、その・・・・・・」
もじもじと言い淀むエマを見かねたロペの手から、寝台に置いてあった枕が投げつけられ、「さっさと言う」と再び睨み付けられる。
「な・・・・・・雪崩、雪之丞と申します。姿形は・・・・・・」「ナノマシンを使って変えられるでしょ」
「・・・・・・」
ブロンドのエルフの姿をしていたエマだったのだが、ナノマシンによってその姿を変えると、明るい茶髪のショートに切れ長の目、身長百八十はある姿に変わり、雨宮の前に恥ずかしそうにその身をさらした。
しかし雨宮の中にその記憶は無く、何故エマが恥ずかしそうにしているのかも理解出来なかった。
(・・・・・・こっちが本当の姿って事か?)
「次は私で良いのよね?私は雨宮不結理貴方の・・・・・・義理の妹です・・・・・・と言っても一緒だった世界はずっと昔の事だし、貴方も何も知らないでしょうけどね」
シンシアは適当に名乗っただけだと、その名前はもう良いと言って捨て、雨宮と同じ姓を名乗り、義理の妹だと言う。
彼女が言うには雨宮は不結理が産まれた世界でのもう一つの家族の一人息子、つまり当時雨宮の父親が不倫して産まれたのが自分で、雨宮が両親の死後不結理の家庭に引き取られたと言い、詳しく説明をしたのだがやはりそれも雨宮は何も知らず、首を傾げるだけだった。
「アンタも名乗りなさいよ」
不結理は雪之丞の後ろに隠れたまま顔だけのぞき込み、ロペに正体を現せとヤジを飛ばす。
「私は・・・・・・髙鐘・・・・・・蓮華だった」
聞いた名前を反芻してみた雨宮だったが、結局覚えが無くその名前を覚え止めておくだけになった。
「三人とも過去の俺の事を知っているって事か?」
「そだよ、むかーし昔の話だけどね、因みに言うと、その頃は銀河きゅんも始めは雨宮銀河じゃ無かったんだけどね」
「そうなのか・・・・・・としか言えん」
(全然知らんがな)
「まぁそうでしょうね、あの世界にいたのはもう何世界も前の話ですし、銀河さんは世界を渡る度に記憶を失うのですから」
「それはそれで便利なのか不便なのか・・・・・・」
「一応記憶を取り戻す事が出来るような・・・・・・そうね、此処で言うアーティファクトみたいな物も存在はしているのよ」
「ほぉ」
(あんまり興味なさそうねぇ)
「必要が有るのなら興味も出てくるだろうし、気にもなるだろうが、今はそれどころじゃ無いだろう」
「確かにそうね、イミルちゃん助けてあげないと、アレはBESでしょ?放っておくと死ぬわよ」
「マジかよ・・・・・・まぁ確かにあのままだとそうなるか」
(BESって何だ・・・・・・)
「私達が身体を観ておきますので、銀河さんは行ってきてください」
雨宮は入り口付近に立っているエクスとヒューニ、そしてティオレに合図を送ると、何処から取り出したのか、ドリームダイバーをそれぞれに手渡し、四人は近くにあるベッドへと横たわる。
「ろ・・・・・・髙鐘さん?」
「何で今更そんな呼び方なのぉ?ロペでいいょ・・・・・・」
知らない名前が出るだけで何故か他人行儀になってしまう雨宮だったが、今にも泣きそうになっているロペを見て改めて言い直した。
「ロペも行くか?」「行く」
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イミルの夢
「イミル~もう朝よ~」
目を覚ましたイミルは、お腹を刺激する心地よい臭いと、カーテンの隙間から漏れる朝日の光が丁度目の辺りを刺激し、眩し朝に目を細める。
(・・・・・・何処此処)
イミルは辺りを見渡してカーテンを開け放つと、多少の見覚えがある建物が窓の外に見える。
「大統領府・・・・・・?マッサマンなの?」
工業都市マッサマンでは、円形コロニーを採用しており、その中心に位置する大統領府、そしてその周りには高級住宅街や高級商店街等、比較的高所得者層が住まいを構え、中心部から離れていく程所得が下がるとされている。そしてこの家はかなり大統領府に近かった。
(趣味の悪い建物・・・・・・)
覚えの無い部屋に覚えの無い場所、そして着た覚えの無いパジャマ。全てに見覚えが無く、違和感しか無い。
(・・・・・・夢?にしてはハッキリとしているし、触った質感も普通・・・・・・)
イミルはベッドを触り本棚を触り、ドアに手をかけ扉を開ける。すると急に扉が開いた事に驚いた女性が、目をまん丸に見開いてからイミルの視線に合わせてかがみ込む。
「おはよう」
「お・おはよう・・・・・・」
(さ・・・・・・サンディ?)
彼女は門を開く者のリーダーアントンの妻、サンディ・山崎。十二歳の子供を凄い勢いでイミルに自慢してきた事が記憶に新しい。
「朝ご飯、出来てるよ」
「う・うん」
で?と言った様子でサンディを見るイミルは、改めてこの部屋が古宿の一室では無く、戸建ての一般住宅の一室で有る事に気付いた。
イミルが起きてきた事が分かったサンディは、そのまま背を向けどこかへ歩き去って行く。
(??)
「え?」
結局何をしに来たのかイミルには理解できず、取り敢えず後を付いていくと広々としたリビングには、アントン、そしてアントンの二人の子供達が、リビングテーブルの席に着き、朝ご飯を食べ始めていた。
「イミル!早く食べないと遅刻するぞ!」
そう言って声を掛けてきたのは、アントンの長男、ジャミ、今年中等部に上がり少し身長も伸びてきた。彼はイミルに対して憧れに近い感情を持っていて、自分と同じ年齢なのに既に冒険者として戦っている、そう言った背景を彼は好ましく思っているらしい。
(遅刻?え?私が?)
イミルの頭の中には時間を決めてある出来事がコレといって思いつかず、ギルドへ行って依頼を受けるのも必ず行かなければならないという訳では無く、携帯デバイスから簡単な依頼を探して現地へと直行し、クライアントからサインを貰って生産する事も位しか頭になかった。その為に時間などいつも気にしていないイミルは遅刻すると言われた理由が分からず首を傾げるが、ふと気付くと自分服装が何時の間にか変わっており、若干丈の短いスカートの学生服へと替わっていた。
(なにこれひらひらでぱんつ見える)
明らかに短すぎるスカートの丈は、何処からどう見ても夜のお店で店員の女性が来て居るアレなのだが、上着のブレザーは普通の学生服で見た事の無いエンブレムが遇われている。踵を返し元の部屋に戻ろうとするのだが、元の部屋のある方向へと進む事が出来ず、見えない壁に阻まれ戻る事が出来なかった。
イミルは仕方なく促されるままに朝食の並べられたテーブル席に着き、訝しげな表情を浮かべながらもベーコンエッグと思われる何かを口へと運ぶ。
(味がしない・・・・・・やっぱり夢?)
「どぉ?今日はバッチリ焼けたと思うのよー」
「そうだね・・・・・・」
口の中に入れても全くの無味、何故か臭いだけは口の中からも焼きたてほやほやの臭いが立ち上ってくるのだが、咀嚼してみようにも噛み切れずまるで臭いのする消しゴムをかんでいるような、いやそれでもまだ消しゴムの味がしないだけまだマシなのだろう。もごもごと周りの全員が普通に口に運び、飲み込み食事を続けているのがイミルには不思議でたまらない。
(これは何・・・・・・?食品サンプル?)
虐めかと疑いもしてみたが、口に入れたそれを呑み込む事も出来ず、立ち上がったイミルは取り敢えず外に出て吐き出そうと、玄関から外へと飛び出すが、景色の無い歪んだ空間に飛び出し、立ち尽くす。
(何此処・・・・・・?)
咄嗟に後ろを振り向いたのだが既に先程の家は無く、視界がおかしくなったような錯覚を覚える程の歪みに三半規管が揺さぶられ、ふらりと倒れそうになる。
(ぺっ・・・・・・目がおかしくなりそう)
口の中でもごもごしていた何かを吐き出し、目を瞑って精神を統一する。こう言うよく判らない時は、瞑想をすると何か思いつくとクレアに聞かされていたイミルは、それに従い心を静かに押し殺し、耳が痛くなる程の静寂の中、何かが割れるような小さな音が聞こえる。
ー何・・・・・・空間に裂け目が
ガラス窓が割れるかのような騒がしい音と共に、数人の人間の気配を感じ取ったイミルは、今更ながら、先程のアントン一家には全く気配が無かったと思い至った。
「よぅ、待たせた・・・・・・か?」
ふるふると首を振り、そんな事無いと思うと雨宮に伝えると、イミルはその手を取り、夢の中でも確かな暖かさを感じる事に胸の中がじんわりと暖かくなる。
「夢の中て、なんや変な空間やねぇ」
「三半規管の訓練に丁度良い・・・・・・かも?」
「寧ろ変になりそうだぞ?」
「イミルたんハスハス」
ロペだけ飛び込んできた途端イミルに抱きつき、その鍛え上げられた身体に顔を埋める。
「てい」
くすぐったかったのか、ロペの脳天にチョップの裁定を下し、雨宮達が砕いた空間の先へと視線を向ける。
「あそこから出られる?」
「そうだな、出られるが・・・・・・」
雨宮から手を離したイミルは、ロペにひょいっと抱えられ、雨宮達の視線が向く無の空間へと視線を落とすが、イミルには何も見えないようで、不思議そうにロペの横顔を見る。その表情は初めに見たロペのそれと少しばかり違って見え、嫌悪感や、忌避の感情を剥き出しにしたロペの表情は、張り付いたような笑顔であった時よりも、より人間らしく、イミルには頼もしく見えた。
「アレを引き摺り出して、分解してからだねぇ」
ーくっ、私が見えるというのか
「見えはしないが、其処に異物が混入しているのは分かるな」
ーはっ、この空間で何かしてみろ、その子供の精神が壊れるぞ?
「はン!何を夢みたいな事ぬかしとるの?そんな事出来る訳無いやろ?」
ー・・・・・・せいぜいあg
ターン・・・・・・
「えーっ!?」
見る事も出来ない何かが何かを言い終わる前に、ヒューニの有るはずの無い銃から弾丸が飛び出し、見えない何かを貫いたのであろう事が窺えるのだが、それを視認する事は誰にも出来ず、雨宮は力尽きたであろうそれを、イミルの精神を傷付けないように分解する。
「ふぅ・・・・・・問題なかったか?」
(あの銃はどっから出てきたんだろうか・・・・・・)
「うん、平気」
こくこくと可愛らしく首を振って肯定の意を示したイミルは、ニコリと雨宮に向かって笑顔の華を届け、ロペの腕の中から飛び降りる。
「これ以上この中で何かをしてやる事は出来ないが、戻ってこれるな?」
「うん、クレアは大丈夫?」
「次はそっちに行くつもりだ」
「じゃあ私も行くからまってて」
イミルは雨宮にそう伝えると、何も無い空間にベッドを作り出し、その中へと飛び込んだ。
「「「「「おやすみ」」」」」
霞むように消えていく空間から脱出した雨宮達は、ゴーグル型の機器を一旦外し、イミルが起きるのを確認すると、雨宮はイミルに同じ物を渡し、再び横になる。
ーロペ・キャッシュマン
(3)ウルテマヒューマノイド化
数多の経験を経て準備を整え、雨宮に触れた時、全ての存在が収束し一つになった唯一のロペ。
ウルテマヒューマノイド化した事により本来有るべき姿に戻る事が可能になったが、彼女の思惑と現状がかけ離れてしまっている事が瞬時に判明、軽く絶望を覚えるも修正は可能だと思い直し、改めて雨宮の存在するこの世界を堪能しようと計画を練っている。
進化後間も無いが元々の彼女は雨宮と同じ高密度精神生命体という、第三世界内には存在しない上位存在であり、悠久の時を過ごしてきた世界の管理者である。
垣間見た光景は一体何だったのか。それは彼女のみぞ知る。
(4)髙鐘 蓮華 ??歳 元銀河研究会幹部
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ーエマ
(2)ウルテマエルフ化 七千歳over 無職
銀河旅団に留まる事となり、クルーとして第三世界の事を知ろうと、多くのクルー達に教えを請うていたが、雨宮の適当に作った肉体に精神生命体が適応せず、多少馴染んだ所で、肉体に限界が来た為、雨宮に再構成を願い出た。
再構成後、全く違う人物の様になってしまったが、雨宮に付き従う気持ちに偽りは無く、若干ロペと反目し合う立ち位置に立つ事も。
ハイエルフ→βエルフ種→エルフ種→ウルテマエルフ種と、長い時を経て様々な肉体を渡り歩いた事によって、それぞれの種族スキルを手に入れ、戦闘能力は非常に高く、元になったハイエルフ種は、エルフの中でも飛び抜けて肉体が脆弱な存在であったが、ウルテマエルフ種となる事で、脆弱性を完全に排除、魔力とオーラ、両方を使う事が出来る様になった。
彼女の存在については謎が多く、雨宮が解析した肉体からは彼女そのものの存在を推測する事は出来ず、シンシアとも仲良く話をしている所を目撃されている。
E・M・A end master administrator 終末の管理者
(3)雪崩 雪之丞 ??歳 元銀河研究会幹部
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シンシア ??歳 人間? ????
極限状態のシンシィ・ルーが、雨宮の設定したルールを自ら逸脱する事を選択した時、三つ首の巨人によって取り込まれてしまったピュリアの精神生命体と共鳴し、同じ精神生命体を持つ二人は一つになった。
ピュリアは前世のシンシィであり、シンシィはピュリアの生まれ変わり、即ち聖女である。しかし、シンシィは聖女の資格を持ちながら、そこに至らず、相反する存在とも言える勇者として、勇者システムの管理下に置かれていたが、未知のシステム、聖女システムの管理下に置かれていたピュリアの精神生命体と共に、雨宮の作り上げたナノマシン、そしてΩウィルスによって、二つの精神生命体は融合した。
融合したその存在は未知であり、既存の存在として雨宮のデータベースに記録されたが、一個の別個体として生まれ変わり、雨宮のナノマシンから切り離された。
なお、雨宮と同界層に位置する存在であり、ナノマシンによるスキャンを拒否する事の出来る存在。
雨宮は彼女の存在に既視感を覚えたが、雨宮の記憶の中に彼女の存在は無く、特定するには至らなかった。
(-)雨宮 不結理ひ・み・つ歳 人間に決まってるでしょ 元銀河研究会幹部
未知の存在による干渉を感知、通信を切断します。




