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EP60 遠慮がちな淑女達

雨降ってまだまだ寒い。桜は散っちゃうなぁ。


ー雨宮銀河ー


 雨宮は地下へと続く階段を下り、辺りが小奇麗に片付き不自然な迄に綺麗になっていることに気付いた。


 「わざわざ綺麗にしてから進んだのかねこれ?」


 「それ何の意味があるんだ?」


 「わかんねーから聞いてんだろ~?」


 久しぶりに雨宮にどうこうしたゲイルは、自身のスキル


 「そんなの俺が判るわけねーだろ。」


 どうでもいいようなやり取りが雨宮達の足音の中に消え、完全に階段を降りたところで、通路の奥から戦闘中と思われる喧騒が聞こえる。


 「もう始まってんな。」


 ティオレとレビルバンを先頭に、固まって進む雨宮達四人、そしてその後ろには七番艦の眷属クルー達が続く。


ーーーーーーーーーー


 先んじて地下に進んだチームキャッシュマンは既に、各々の武器を手にクロスチャーチルと思われる全身を銀色の甲冑で覆った者達と戦闘に入っている。

有象無象の者達と思い込んでいた彼女たちの前に手練れの集団が現れ、思わぬ苦戦を強いられている。


 「予想外と言えば予想外なんだけど、ちょっと侮っていたかなー。」


 「どうやら先ほど一人で現れた者が特別弱かっただけのようですわね。」


 銀色に輝く身の丈より三倍はあるかと思われる極長の大剣を振るう、甲冑の戦士は眷属の一人に飛び掛かられるも、その取り回しの悪そうな剣で苦も無く捌き、エストたちに向けて剣を向ける。


 「侵入者よ、悪いことは言わん、ここより先は聖域、立ち去れ。」


 「そんなこと言って、周りも別に負けてないよ。」


 エストの言葉を強がりと取ったのか、戦士は肩で笑い剣を下ろした。


 「そうか?私にはそうは見えんが。」


 実際の所未知の相手に対して侮って掛ると言う様な事は、彼女等にはほぼ無いと言っていい。しかしこう苦戦しているのは、彼女達の連れてきた眷属クルーが実は初の実戦ということも関係している。

 彼女達の中にはある程度の常識というものが存在しており、自らの手に入れた力がその常識の範疇を逸脱していることも理解している。そこを考えると、この小さな小惑星を改造して作られたこの基地が、そう頑強では無いと言う事も既にナノマシンによって判明しており、力に慣れていないのに手加減をしなければならないと、無駄に負担を強いられていた。


 「困ったなぁ、本気を出せって言えないね?壁をぶち抜いちゃう。」


 「本当にそれをやったら、バトルドレスの間に合わなかった一般クルーが死んじゃうからねぇ。」


 現在の混成部隊には、バトルドレスを装備した眷属クルーの他に、バトルドレスを使っているが完全に使いこなせていない一般クルーと、キャンディと同じく普通の宇宙服を強化した、強化宇宙服を着た一般クルーこの三種が混在している。勿論強化してあるとは言え宇宙()なので、破損が即死に繋がる可能性も有り自信のある者だけが選抜され、作戦に参加していた。


 「まぁ皆の事を信じよう。君の相手は私がしてあげるよ。」


 「何だと?女か?」


 フルフェイスの下でエストの表情筋が軽く痙攣した。


 「それがどうかしたかい?」


 エストは二十代の初め頃、冒険者ギルドにて一度騒ぎを起こしていた。その原因となった一言を目の前の戦士は放ったのだ。

ちょっとしたトラウマと共に男性に対する多少の嫌悪感、そして何より怒りが当時は抑えきれず、若いエストは柔らかい物腰ながらも不用意に絡んできた冒険者を再起不能へと追い込んだ。そんな過去を思い出す。


 「僕の性別で君に何か迷惑が掛かっているのかな?」


 周りにいるキャンディや、アーニーはその過去を知っている為、もしかすると今エストは怒っているのかも知れないとそう思い、徐々にパメラを伴い彼女から離れていく。


 「君に何か不都合があるのかな?」


 話が前に進まなくなった事を確認したアーニーは、エストの怒りを確認、他のクルー達に入り口周辺まで撤退するように指示を出す。


 「何か問題が?」


 七番艦のクルーがアーニーの元へ戻り、当然の疑問を口にする。その右手には中身の入った(・・・・・・)兜を掴んでいる。


 「あんまり溜め込んで欲しくないんだよねー。」


 「成る程。」


 短いやりとりが終わる頃には、全てのクルーがエストから離れた位置に下がり、いつの間に取り出したのかエストはミスリル製のロングソードと小盾を取り出し、ロングソードを床に軽く叩き付け、ガチンガチンと鬱屈した思いを垂れ流していた。こんな事をすれば刃先が潰れてしまうのは当然なのだが、不得手と言っていたナノマシン操作によって、彼女は無意識に潰れた刃をリアルタイムで修復し、金属の床に深い溝を造っていた。


 「ふ・・・性別にコンプレックスでもあるのか?」


 「性別で差別するのかい?最低だね?」


 都合良く戦士が折れてくれれば全員で押していけるのだが、そういう事も無く、徐々にエストの怒りが高まり、収まりが付かない所まで来ていた。


 「うん、掛かって来なよ、凄く不愉快だ。」


 「はははははっ!逃げても良いのだ・」


 更に挑発を重ねる戦士の言葉が終わらないうちに、エストはロングソードを横薙ぎに一閃し、真空刃を伴う突風を放つ。


 「逃げても良いんだよ?どうせ無駄だけど。」


 「・・・。」


 エストの生み出した真空刃は広い空間を余すところなく滑空し、一定の力を持ち合わせていない戦士達を横に両断、上半身と下半身に分かれた戦士達の身体が余波によって聖域と呼ばれていた白い建物のシミとして彩られていく。


 「おめでたい柄になったね、聖域。」


 「貴様・・・!?」


 想像を絶する攻撃に蹈鞴(たたら)を踏みながらも踏みとどまった戦士は、散々たる惨状を目の当たりにし、虎の尾を踏んだ事を理解した。

しかし何かの事情があるのか、踏みとどまった戦士は覚悟を決め、エストへと剣を構え全力で突進する。


 「ぬぉおおおおおおおぁ!!」


 「遊んでる?」


 エストは金属製のブーツをけたたましく鳴らし、猛烈な勢いで突進してくる戦士を一凪で叩き伏せ、敢えて切らずに床へ転がした。

激しく床に叩き付けられた戦士の兜が飛び、素顔が露わになるとその顔面に網目状の傷口が開き、派手に噴き出した血液と共に戦士の口から痛みによる絶叫が走る。


 「うわぁあああああああああああああああああああ!!」


 「痛いの?まぁ痛いよね?痛くしてるし。」


 太い眉に高い鼻が特徴と癒えるその男であったが、その眉はそぎ落とされ、鼻は縞柄に裂け肉が見える。全ての傷が急所を避け、強い痛みが走るように調整された斬撃が、男の全身を切り刻んでいく。もはやフルプレートの鎧など存在しないかの様な有様で、銀色に光沢を放っていた筈が、既に赤黒く血で汚れ、骨も腱も避けた肉だけを裂く精密且つ残酷な剣が、止む事無く繰り返される。


 「痛い!いたいぃいいいい!!」


 全身を切り刻まれるがまま床にシミを作っていく男は、プライドも何も既に手放し、乙女のように泣きじゃくり悲鳴を上げる。


 「痛みに耐性の無い人なのかなー?」


 「流石にドン引きですわ。」


 全身から液体という液体を吹きだし、死も目前となった男を一瞥したキャンディは、姉の振り切れた怒りを静めるべく後ろからゆっくりと近付いていく。


 何とか巻き込まれずに近付いたキャンディの手には金属バットが握られ、その射程圏内に入ると速やかに振りかぶり、バットによるヘッドショットでエストを弾き飛ばし、漸く嵐のような斬撃が止まる。もはや先ほどまでの自信に満ちあふれた戦士の姿は無く、痛みと失血で肉体の制御を完全に手放したまま、嗚咽し泣きじゃくる子供のようになっていた。


 「その位になさい、お姉様。」


 「おーおー派手にやったなー。」


 「あ、銀河おにーさん。やほー。」


 のんびりと歩いてやって来た雨宮は、血糊が伸び汚れた床を見ながら誰が何をしたかと思いを馳せる。ナノマシンによって情報を仕入れれはそれだけで直ぐ判る事では有るのだが、敢えてそれをせずに辺りをぐるっと見渡してみと、その血糊の先に山となって積み重なった銀の鎧を身につけた戦士達が、壊れたマネキンのように悲惨な姿をさらしていた。


 「ブルドーザーでも走ったのか?」


 雨宮はクスリと笑い、エストがもじもじとキャンディの後ろへと隠れた。比較的小柄なエストではあるが、バトルドレスを着ている為隠れる事は出来ず、その肩越しに雨宮をチラチラと観察し、自らの暴れた後の惨状を改めて確認し赤面した。そのフルフェイスの下は、ナノマシンの計るパラメーターによって、数字として周りの眷属には知られている。


ーーーーーーーーーー


ー雨宮銀河ー


 「あら銀河さん、もう追いついてしまいましたか。」


 キャンディは何かありましたか?とでも言いたげにその後ろに姉を隠したまま、雨宮に近付き軽く状況を報告する。


 「どうなった?」


 「まだ中は見ていませんわ。そこそこの力を持った兵士達がいるようですので、下位のクルー達に突入させて良い物かどうか判断しかねていましたの。」


 雨宮は、バトルドレスを身につけたクルー達が例え下位の者達、一般クルーであったとしても計算上は余計なことをしなければ早々死ぬことは無い、と報告を受けている為先に指示を出しておかなかったことを少し後悔した。しかし、今回突入したクルー達は一般クルーも混じっているとは言え、その者達も下位クルーの中でも最上位に位置する能力の持ち主達、心配こそしていないもののバトルドレスを身につけていない者達が多く見受けられることが、雨宮の首を傾げさせる。


 「普通の宇宙服・・・だな?」


 「一応銀河旅団製ミスリル繊維の強化宇宙服なのですけれども、バトルドレスと比べてしまえば心許ない物ですね。」


 七番艦に配備された、雨宮直属研究スタッフ達によって製造されている最新技術研究室特製のミスリル繊維、市場に出回ればメートル数万クレジットは下らない、上着など作ろう物なら一着数千万クレジットはするであろう販売額になる事が考えられる。ミスリル繊維は魔導率という魔力を通し、保持する能力が非常に高く、繊維状に加工することで防刃能力も格段に跳ね上がる。惜しむらくは伸縮性に乏しいと言うことであろうか、下着として生産すればいざという時の守りになりそうではあるが、なんせ伸びない物だから体型が変わったが最後、着脱が難しくなり、切って脱ごうとしても前述の防刃性能のお陰で切ることも出来ない拘束具と化す。

又ミスリルは劣化しにくい素材としても認められており、一生物の武具素材として重宝されている。が、如何せん現状第三世界の加工技術では商業国家のみでの独占技術として、一般市場に加工済みのミスリルが出回ることはほぼ無い。寄って商業国家以外の国ではミスリルの原石を販売し、加工済みミスリルを購入する、若しくは信用出来る工房へと加工を依頼する、などする他にミスリルを手に入れる手段が無い。


 しかし、銀河旅団ではそう言った技術を高いレベルで保持している商業国家出身者が数多く所属している為に、その技術を発展させることなど造作も無い事であった。


 「エンチャントもしてありますし、宇宙空間でも問題なく活動が出来ますが、如何せんその・・・。」


 キャンディにとってはボディラインがハッキリと出てしまうデザインが、少々お気に召さないようで雨宮の視線の行く先を用心深く観察しているようだ。


 「確かにウルテニウムと比較すると、ミスリルでは心許ないか。」


 雨宮が周りに集まってきたクルー達に向かい、「心配なら下がるか?」と問いかけると、そんなことしませんときゃいきゃい姦しい喧噪に包まれ、戦場とはとても思えないのんびり空間に変わる。


 「ツーマンセルで行くか。」


 「それなら安心かもね。」


 敢えて恥ずかしがっていたエストに声をかけなかったことに業を煮やしたのか、ぐいっと隠れていたキャンディの後ろから出てきたエストは、雨宮に近付き周りの目を気にすることも無く雨宮の腕に腕を絡めた。


 「にゅふ。」


 「ロペ?」


 「うん。あれ。」


 雨宮の後ろからそんなやり取りを眺めていたロペの指さす先には、聖域と呼ばれていた場所の入り口が口を開けていた。そしてその中から先ほどと同じ銀の鎧に身を包んだクロスチャーチルの兵士と思われる一団が姿を現した。


 「なんと言うことだ・・・。」


 先頭を切って飛び出してきた細身のプレートメイルに身を包んだ兵士は、辺りを見渡した後、聖域の壁に積み重なった残骸を遠目に眺め唖然とする。


 「おっ?あいつだけなんか偉そうだな。」


 「百人長ってとこかねぇ?確かにちょっと強そうなそうでも無いような・・・。」


 「私達が戦った者達は対したことは無かったのですが、あの青みがかったプレートメイルはミスリル合金ですわね。」


 「まぁ、ウチの純ミスリルと比べるとなぁ。」


 「「「「それは比べるなし。」」」」


 銀河旅団の眷属クルー達のお気に入り、純ミスリル製の刃物はオリハルコニウムの元になったオリハルコン製の武具でさえ、切り裂ける数字を弾き出している。

多少ミスリルが混じっているとは言え、銀製の防具など紙のような物だ。先ほどまでシルヴァタイトと呼ばれる月ダンジョンのみで産出する金属の武器を使っていたキャンディも、その懐にはミスリルのナイフを隠し持っている。と言うより、今此処にいるクルー達全員の懐には大なり小なりミスリルのナイフが暖められている。


 「そうだな・・・。カーメル。」


 「はっ!此処に!」


 先ほどアーニーの前に敵兵士の首を持ったまま現れたクルーが、雨宮の前に膝を付き指示を待つ。

カーメル・ラーメル、九番艦所属の教導官にして同艦の白兵部隊の指揮官でもある、元人種の金星軍ベテラン将校であった眷属だ。

彼女もクロスチャーチルには思う所があるらしく、突入部隊の選出に際して猛プッシュで自分達を売り込んできた事が雨宮の記憶には新しい。


 「どのぐらいの奴がちょうどいいと思う?」


 「ハッ、セブンクルーでは相手になりません。ナインクルーに相手をさせてみるのもよろしいかと。」

 

 (独特の言い方だな・・・。コンビニの店員かよ。)


 雨宮は心の中でツッコミを入れながらも、遠慮をしているのか少し遠巻きな位置に居る九番艦のクルー達を流すように眺め、一人のクルーに目を留めた。


 「其処の・・・えーと・・・あー。ゼンコ、ほんでそっちの・・・ベニ?」


 「はいっ!」「はいはいはいはいはい!!!」


 掻き消えるように雨宮の前に移動したゼンコこと眷属ゼンコニス・アンバーマンと、必死に走ってくる一般クルーベニコ・ジャンジー。

二人は一つのユニットとして始めから行動を共にしているので、新しく誰かとくっつける必要が無い。

 

 このゼンコは、銀河旅団になる前からラピスにてエクスやヒューニと共に眷属になった比較的古参の眷属クルーで、バトルドレスのブーツの裏側に小型のローラーを仕込み、前世にいた子供のようにコロコロと不動の姿勢で艦内を滑走しているのを見たことがあった。


 「二人でアレを全部相手に出来るか?」


 「「えっ・・・。」」


 雨宮の側に寄ってきた二人は雨宮の一言に愕き、もじもじと悩みどうして良いものかと言い淀む。


 「えっと・・・無理じゃね・・・?」


 「私はいけるかも・・・?」


 無理そうだと言うベニコはバトルドレスの生産が間に合わなかった為、武器こそ有るものの、強化宇宙服にミスリルの手甲を無理矢理くっつけて、その手甲には鋭利な六本の刃物が付いている。獣人種と言うこともあり身体能力は折り紙付きだが、その熱くなり安い性格から、集団戦闘には向いていないのではという評価もある。

 逆にゼンコは少数精鋭のテロリスト集団『世界の終焉』にて高額の賞金をかけられる程の猛者である。ベニコのスタイルと違い、両腕に魔力増幅機構を備えたサブマシンガンを抱えており、近・中距離の戦いを得意とするスピードファイターだ。


 「ん?」


 そして雨宮がよくよくゼンコのサブマシンガンを観察すると、贅沢な事にミスリル合金によって作られた物であると言う事が判った。


 「えと・・ミスリルとムーンライトの合金で作ってあります。こうすると魔導率が高い位置でキープ出来るのと、頑丈になるので紋章をエンチャントするのが簡単になるんです。」


 成る程と雨宮が感心してその銃を観察していると、後で持って行きます。とじっくり自分の愛銃を観察されたゼンコははにかみながら、雨宮から一歩離れた。

公私は弁えていると言う事だろうか。


 「でもちょっと不安です。」


 ベニコの言う事も最もだろう、だが雨宮には直感的に大丈夫だろうという考えが湧き、ふと周囲を見渡すと其処にゲイルがレビルバンと共にウォーミングアップをしているのを発見する。とても暑苦しい。


 「俺も参加して良いか!?そろそろ働かねーと見回りばっかりじゃ仕事してる気になんねーんだよ、」


 「殿、私もそろそろ身体を動かしたいと。」


 (うん。オーバーキル。)


 「良いんじゃね?」


 そんな投げやりな雨宮の応対に文句を付けながらも、ゲイルはバトルドレスのマスクを閉じ、レビルバンは見た事の無いスーツを身に纏い臨戦態勢に入った。


 「漢とは拳で語る者。鎧などと言う無粋な物は要らない。海桜神拳(かいおうしんけん)の力、説くと見るが良い。」


 (なんかかっこいい。流石は宇宙刑事(コスモデカ)!)


 「お前達も覚悟は出来たか。」


 「「うっす!」」


 軽くレビルバンに毒された女二人とおっさん二人はそれぞれ別れ、整列をしようとしているクロスチャーチルの兵士達へと向かい、飛び込んでいった。

ゼンコニス・アンバーマン 二十八歳 ハイパーヒューマノイド(元機人種)九番艦フェトラ所属


 白髪で細身、両腕と両足が生体機械の元機人種だった眷属クルー。


 彼女は学生時代、生体機械部分である両足を事故で失い、義足を手に入れることも出来なかった為に車椅子での生活を余儀なくされていた。

それ以来引きこもりがちな生活を続け、高等学校卒業後、海賊の襲撃に遭い居住コロニーが占拠された時に、奴隷として様々な場所に売却され、下卑た者達の慰み者として太陽系中を流されて生きてきたが、心を閉ざすことで辛うじて自我を保っていた。

 そんな過去がありつつも奴隷商によって売却先に移送中、『世界の終焉』によって襲撃を受け奴隷から解放され、テロリストとして活動を開始する。

エクスは膝から下の亡くなった彼女の足を小型戦闘車両へと接続、様々な武装を搭載可能な戦闘車両は彼女の殺傷能力を拡大するのに余り有るアイテムだった。

数年をかけて身体になれた彼女は、自動小銃を愛用し、蜂の巣にした相手を足で挽肉にするその様を『轢女』として恐れられ、多額の懸賞金をかけられるテロリストへと成長した。


 彼女は『世界の終焉』の中では群を抜いて運が悪く、彼女等がヘルフレムへと移送される原因となった事件の際、宇宙船の外装をメンテナンスしていた彼女は、丁度飛んできた旧型宇宙船の装甲板と、自分達の宇宙船の間に挟まれ、瀕死の重傷を負ってヘルフレム医療房へと収監された。

エクスが忘れずに脱出の際彼女を回収した為、間一髪の所でヘルフレム脱出に間に合ったが、その際に彼女の足代わりになっていた、非武装化された戦闘車両は失われており、トイレ戦争で泣きを見た。


 銀河旅団再編後に七番艦から九番艦へと配置転換され、そこで親友となるベニコ・ジャンジーと出合う。

 七番艦に居た際に彼女は既に眷属化され、自らの足も取り戻していた。そのことをベニコに話した所、どうやったら眷属になれるのかと詰め寄られ、事細かに詳細を話すことになった。そんなこんなで仲良くなったベニコを雨宮に紹介すべく、ラピスへと根回しをしているとかいないとか。


 趣味はバイク、好きな食べ物は佃煮、主食の米と共に食べる為の佃煮を常に探し求めている。

最近のお気に入りは、シジミの佃煮。


ベニコ・ジャンジー 二十五歳 猫機人キャットマキナ 九番艦フェトラ所属


 黒髪ボブで細身に小柄、猫の獣人と機人種のハーフ。


 銀河旅団セレクション上位入賞者として銀河旅団へと入隊、金星圏居住コロニー『ハンツマン』からやって来た元カジノディーラー。


 彼女は仕事中偶然銀河旅団の噂を聞き、噂の元になった客に突撃、銀河旅団入団セレクションの情報を手に入れ、参加を打診、面白そうだという理由で参加を断られなかった。

 その後、速やかに会社を辞めセレクションに参加するもほぼ無力な一般人の彼女は、魔力操作以外の実技をまともに突破出来ず失格を覚悟していたが、彼女のスキルに目を付けた雨宮は、ペーパーテストで優秀な成績を取っていた彼女を上位入賞者として、銀河旅団内で鍛え上げることを想定し、合格となった。


 それから彼女はアト、ロペ、ティオレ、イファリスに因る強化訓練を受け一般人を遙かに凌駕する戦士へと進化した。


 趣味は反復横跳び、好きな食べ物は天然ブリの刺身。彼女の所属していたカジノは個々にかなりの収入格差のあるカジノで、最低賃金ギリギリの補償額で生活もままならない社員も多く、彼女も又そう言う人間であった。そんな中彼女に入れ込み、彼女の付くテーブルに頻繁に通ってくる冒険者が、偶然手に入れた天然のブリの切り身を差し入れ、魚の魅力にはまったものの、自分の預貯金をはたいた所で全く手が出ず、養殖物も数ヶ月に一度しか手に入れることが出来なかった。

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