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EP43 選択肢は不注意の香り

( ゜д゜)ハッ!章分け出来てないんじゃ無いかっていうかやってないな。

 アトと火風は魔法に特化している訳では無いが、非常に魔力と相性の良い存在である事は間違いない。それ故にアトはシャバにいた頃から膨大な数の魔法書を読みあさり、禁断魔法と一般的に呼ばれている様な魔法にまで手を出している。

そしてその教え子である火風も又禁断魔法の使い手の一人だった。


 火風とアトの周りに霧のような薄暗い魔力が纏わり付くように集まり、火風の両手を通じてこの世界にあってはならないものが呼び出される。


 「破滅の吐息。」


 火風の伸ばした右手を伝い黒い何かがモンスターの絡みつく。火風の手を離れた黒い何かはモンスターの穴という穴からその内側に入り込み、あっという間に枯れ果てた植物のように干上がっていく。


 「怖気の投網。」


 アトの手のひらからゆっくりと飛び出したビー玉のような黒い球体が数え切れない程無数に分裂し、大型のモンスターへと向かっていく。

そしてその球体は接触して破裂。肌を浸透し血管から内側に入り込み全身の血管を限界まで浮かび上がらせて・・・限界を迎えると、一瞬にしてモンスター達の全身が真っ黒になり、命ある者は銀河旅団のクルー達だけになった。


 「魔法って言うのは凄いモノだなー、」


 「「言いたいことはそれだけですかっ!」」


 コッファやシーニャのように魔法とは縁遠い生活をしてきた機人種寄りの人間にとっては、今見たような所謂大量殺戮魔法は恐怖の対象でしか無い。

しかもマナとの親和性の高いエルフとのハーフであるシーニャは、ある程度離れているにもかかわらず鳥肌を立たせて俺の後ろに隠れている。


 「あんなに濃密な魔力はめったに無いですよ!?何ですかあの魔法!?魔法怖い!」


 「主よあの禁呪は中々に危険なものです。あまりお近づきになりませんよう。」


 ダンジョンの中では他のクルー達よりあらゆる面で優秀だったティオレは常に俺の前を進んでいたが、寧ろ先に行きすぎて全然一緒にいた気がしない。

かくいうシーニャにしてもそうだ。この二人はちょっと実戦慣れしすぎてはいませんかね?

 だが二人の腕の中にも先ほどダンジョン一層で見つけたモンスターの子供?が抱えられている。


ーーーーー


グランドー・バッターアウッ ゼロ歳 雄 リトルウルフ 海王星ダンジョン シーニャ・ヴェバル・ジュピター


HP 30/30


MP 5/5


アビリティ

 遠吠え


ギンオウ ゼロ歳 雌 リトルキャッフー 海王星ダンジョン ティオレ・アンク


HP 250/250


MP 100/100


アビリティ

 メイクアップ


 毛繕い


 怨恨呪法Lv1


ーーーーー


 ネーミングセンスよ。


 お前達は一体何を目指してそんな名前を付けたんだ。そしてティオレ・・・その子は雌なんじゃ無いのか?

その名前で本当に良いのか?本人?猫?は全然気にした風では無いが、女子にマサルとかツヨシとか名付けるようなもんじゃ無いのか?


 「よーしよし・・・ギンオウは可愛いなぁ・・・。」


 戦いそっちのけでこねくり回している・・・。

俺にもちょっと触らせて欲しいんだが・・・。猫たんはぁはぁ・・・。


 「主よ中々に強そうな猫でしたので、つい連れてきてしまいました!」


 ずいっと俺の目の前ににゃんこが差し出されるが・・・こう言う時は・・・身を隠すんだっ!


 |彡サッ


 「主よ・・・猫はお嫌いですか?」


 「ちがうっ!大好きだっ!」


 では何故・・・?とティオレは捨てられた子犬のように此方を見てくるが、残念俺は猫アレルギーだ・・・・あれ?


 「前とはもう身体が違うんだった。」


 「??」


 そうだ。猫アレルギーだったのは前世での話で、この身体にそんな物は無かったのだわ。


 「えぇい・・・レンダ・・・ちょっとごめんな。」


 (お気遣い無くー。)


 俺は差し出されたにゃんこにそっと人差し指を差し出す。


 すんすんと臭いを嗅ぐにゃんこ・・・


ぺろぺろ


 おぉう・・・ネコジータザラザーラ・・・。


かぷっ


 !?


 猫は舐めて柔らかくしてからかむ。だがここを越えるんだ!


 ・・・


 ひとしきり雨宮の指を囓った猫は飽きたのか、ふいっと余所を向いて、ナ~と一鳴き。


 「ふむ?降ろすのか?」


 ティオレに何かを伝えたらしくそっと地面に降ろされる猫は魔力を溜、大きく鳴いた。


 「ニャーーーーーーーーーーーン!」


ビリビリっ


 美汐並み・・・とまではいかないが、凄まじい大きさの鳴き声が辺りに響き渡り、激しい閃光と共に子猫の姿が変わる。

しかしその変化を隠す閃光は雨宮には全く効果のないものだった。


 「変身シーンて実際に見えてしまうと酷い絵だな・・・。」


 まるでモンスター・・・いやモンスターなんだが。背中がバリッと避けたと思ったら手とか足とかがニューって出てきて、ぬらぬらとなんかの液体にぬれた生き物が這い出して・・・。


 「って人間じゃねーか。」


 「「「「「「「え?」」」」」」」


 突然の激しい閃光に未だ視力の回復しない周りのクルー達は何が起こったのか雨宮を通じて理解した。


 「ちょ・・・グロ・・・。」


 「うっ・・・。」


 これがメイクアップ・・・?とか言うアビリティの効果なのか・・・?


 雨宮の見た視覚情報をそのまま閲覧した火風とジュリオーネが口元を押さえて目を背けるが、見えている情報は目で見ている訳ではない。上位者である雨宮から送付された情報に対して拒否権が無い為、その情報を無理矢理見せつけられているままで、更に追い打ちをかけられている。


 ジュリオーネは物陰に走り去った。


 「あいつもグロ耐性無いのなー。」


 「主よ・・・そう言う問題では無いかと・・・。」


 今の今まで暖かい子猫を抱いていたティオレは両手をプルプル震わせ元がダークエルフ主である為にわかりにくいが、非常に青白い顔色になっている。


 そして俺は抜け殻のような猫・・・で有ったはずの皮?のようなものに一瞬注目し、その側でころがる小柄な少女に目をやる。

年の頃は十歳ぐらいだろうか?水色のツインテールに・・・全裸。事案かな・・・?


 「ティオレ・・・これは一体?」


 「わ・・・分かりません。ダンジョンは不思議でいっぱいです。」


 思った以上に混乱しているティオレだったが直ぐに肩から下げた小さい鞄の中から、タオルをとりだし全身の液体を拭き取り自分と同じデザインの銀河旅団の制服を着せる。


 「子供サイズとかよく有ったな?」


 「エリーと似たようなものだったのでお下がりです。」


 最近のエリーはみるみる成長しているらしく、合う度に若干身長が伸びている。だが無理矢理成長している感は拭えないらしく、成長痛のようなものに悩まされているらしい。

身体の節々がきしむように痛いとニコニコしながら俺の膝の上に座って来た時のことを思い出した。


 「寝ているな・・・。」


 「元が猫だからねぇ?」


 キャッフーって猫なのかね?


 「まぁ良い。取り敢えず戦闘は終わった。ティオレはそいつの面倒をちゃんと見ろよ?」


 「了解です。」


ーーーーーーーーーー


旧連合軍司令部グラウンド


 「以上が今回の戦闘の報告となります。」


 「そうか・・・。」


 報告に来た三番艦の艦長リトリナ・アイマールは肩を落とし申し訳なさそうに辺りの状況と、何故こうなったのかと言うことの顛末を報告してくれた。


 そもそもロペによってこんな乱戦になる前に交代するように指示が飛んでいたはずなのに、何故こうなったか・・・。

実に単純な話だ。指示を出したのが遅かっただけだった。

既に指示を出そうと雨宮が提案していたあの時、一番艦と二番艦のクルー達の体力は限界を超えていて、撤退することが出来なかったのだ。

その上で三番艦と四番艦へと交代の指示が飛んだ為、只単に合流しただけになり四つの部隊が全員入り乱れることになってしまった。

そのせいでガ・レイブを始めとする機動部隊はまともに攻撃すら出来ず空中をうろうろするばかりとなり、白兵部隊は怪我人を大勢出しそれぞれの艦の医療チームはフル稼働する羽目になっている。


 「これは俺のせいだなー・・・。ここまで体力が無いとは思ってなかった。後クルーを偏らせすぎだったか。」


 「それも有るかもしれないけどぉ。もっと早くこっちに連絡して欲しかったねぇ。」


 皆何故か、自身の限界まで戦い続け倒れるまで戦うことをやめなかった。そこまでしなくても良かったのだし、寧ろもっと安全に戦って欲しかったのだが、そんな雨宮の考えなど一切伝えられていないものだから、勝つことが必要だと、雨宮の期待に応える必要があると誰一人、戦いをやめられなかった。


 「・・・。ひょっとして私が指示を出したから?銀河きゅんだったら皆言うこと聞いてたかなぁ?」


 ロペの懸念も分からなくは無い。だが組織となった以上そんなことは許されることでは無いのだが・・・。


 「コッファ・・・。分析をしてみてくれ。何か気になることはあるか?」


 「はいー・・・。あ・・・あー。」


 演算や数字のスペシャリストでもある機人種がベースのコッファは、情報の扱いに非常に長けている。

雨宮に分析を任されたコッファは直ぐに今回の戦闘における失敗の原因を一目見て直ぐに見抜いた。


 「これあれですねー。ナノマシン病っていうか・・・私達全員に感染する奴って言うか・・・。」


 雨宮の脳裏にΩウィルスのことが頭をよぎったが結論は別のようだった。


 「リンクシステムの不備ですねーこれ。眷属の一部が興奮しちゃってその情報がその傘下にあるクルー達に伝染しちゃってるみたいです。」


 雨宮とロペは頭を抱えた。それもその筈このリンクシステムはこの二人の作った素人プログラムだ。

ウルトラロボットクリエイターやレイブのOS、そう言ったものを作るよりもっと前に素人のロペ主導でド素人の雨宮が完成させた・・・ハッキリ言えば出来損ないのものだった。


 「「ごめんなさい。」」


 「えぇ?」


 コッファもまさか情報伝達の基幹部でもあるリンクシステムを作ったのが二人の素人だとは思ってもいなかったようで、苦虫をかみつぶしたような顔になっている。


 「次からは私みたいなプロに任せてくださいねー?」


 「「すみませんでした。」」


 俺とロペは素直に平謝りするしか無かった。最近ちょっと調子に乗る癖を直そうとしていた二人だったが、そう考える以前のことについてあまり考えが及んでいなかった事で詰めの甘さを思い知る結果となった。


 「じゃぁ取り敢えずマスターはここのナノマシン掌握をして貰って・・・ロペさんは人を集めて貰って良いですか?ちゃんとしたものを作りますのでー。」


 「「おなしゃす。」」


 ロペは速やかに端末から適正のあるクルーピックアップし、コッファにリストを渡し人員の確保を行う。俺は・・・。


 「何だか久しぶりに大きな力を使う気がする。」


 (ご主人様頑張って!)


 「ワンワンッ」


 ガーニー姉妹が俺を癒やしてくれる。犬の姉は俺の周りをぐるぐるとせわしなく回ってとっても歩きにくい。

プリリンの妹は俺がしっかり両手で抱えている腕の中で、ぷるぷるとはしゃいでいる。


ーーーーーーーーーー


ナノマシン群体に通達、現座標に存在するコロニーのナノマシン化を行う。


周辺の衛星も対象に含める。実行。


ーーマスターの命令を受信実行します。


ーー位相差空間より群体の派遣を開始・・・接触。


ーーマスターの保有エネルギー上昇により浸食効率が上がっています。


ーー呼称ネプトラティアのナノマシン化が完了しました。構造の再構成及び新規構築が可能です。


ーー周辺衛星への浸食を開始。衛星の検索・・・百二十二。


ーー全工程の終了まで二分。


ーー周辺衛星の浸食に成功・・・全工程の終了をお知らせします。


ーーーーーーーーーー


 「おわり。」


 「はやっ。」


 コンコンと地面をノックし何かが変わったのかと確認をしてみたアトだったが、特に変化を感じ取れなかったようだ。


 「旦那ー。これって何が変わったんだ?」


 なにがって・・・。


 「いろいろやってみ?」


 「ほぇー?」


 そう言いながら俺はグラウンドの真ん中にこのコロニーにも使用されていたミスリルを使い、青くキンキラ光るロペの裸婦像を作った。


 「はー。これまたりっぱな・・・。」


 見上げる程巨大な像は女豹のポーズをとっている上、何故か尻尾が生え猫耳まで付いている。完全に趣味の領域だな。


 周りのクルー達も片付けの終わった者達はバトルドレスのフルフェイスを外し、像の周りに集まってきた。


 「おぉー。」「すっごい。」「ふむふむ・・・。」「細部まで・・・。」「形が良い・・・。」


 「こらぁーーーー!」


 と、皆して鑑賞会のようになった所でロペが走り込んでやってくると右手を叩き付けるように像に触れ、サクッと分解してしまった。


 「よく出来ていたんだけどなぁ。」


 「一人でたのしんでっ!」


 返す勢いで詰め寄られた俺はまぁまぁと、ロペをいさめて誰一人いなくなったネプトラティアの市街地へと足を向けた。


ーーーーーーーーーー


ネプトラティア センターストリート


 何というか未来的というか、SFというか。電力が完全に通い細部に至るまで完全に息を吹き返したネプトラティアの市街地は、今丁度夜・・・と呼ぶ時間帯だった。


 「ネオンが凄いですね。何だか猫型ロボットでもいそうな気がします。」


 「そうな。狸みたいな奴な。」


 俺と火風は昔アニメで見た青い奴を思い浮かべていた。


 「最先端というとこういう風になっていくのかねぇ?」


 「でもここも五年前で全てが止まってしまったはずですから。今となっては古き遺物・・とでもいうものなのでは無いのでしょうか。」


 ふむ・・・。誰もいないが・・・車は・・と言うかホバークラフトみたいなものは何故か定期的に片側八車線の道路を行き来している。

大型のバスみたいなものと、タクシーみたいな小型のものが結構な数行き交っている。全ての車両が一定のスピードで一定の間隔を開け、完全にプログラムに従って動いているようにも見える。


 「ボス。散策に出かけますか?」


 ん?あれ?


 「アマリー?何故ここに?」


 先ほど報告に来ていたイオリスとリトリナは、艦長と言うこともあり報告が終わると直ぐに戻って言ってしまった。

ダンジョンについてきていたクルー達も、火風を除いてそれぞれ手伝いに向かわせている。

今側にいるのはティオレと火風・・・そして何故かアマリーと犬っこがいる。


 「トトが散歩に行きたいって聞かなくって。」


 「嘘ですぅ!そんなこと言ってませんー!また引きずってこられただけですぅー!」


 口実かよ!


 「でも重力の下でお散歩は久しぶりなのです。」


 重力っつっても疑似重力だがな。結局艦内と何が違うかって話なんだがなぁ。


 「やっぱり変な臭いなのです。」


 そう。以前アトレーティオタイプのコロニーやフリースコロニーでもあったが、この世界のコロニー内の空気は何故か微量の臭いが付いているのだ。

ナノマシンによる情報では、この臭いを付けないと常に生臭い臭いの空気にさらされるらしく、浄化プラントと呼ばれる酸素を供給する施設のアップデートが必要との事だった。


 「浄化設備がまだ其処までの性能じゃ無いって事なのかね?」


 「元の空気の匂いが臭いって事ですか?」


 「ちょっと試してみるか・・・。」


 アマリーは何かを感じ取ったらしく、思いっきり胸いっぱいに空気を吸い込み口に手を当て鼻をつまんだ。


 えーっと・・・浄化プラントのフレーバー添加をおふっと・・・。


 「何か変化はあったか?」


 「今のところ何もありませんね?」


 「普通の変な臭いなので・・・ギャン!!!」


 一番鼻の良いトトが突如鼻を押さえてのたうち回る。


 「ぐえほっっ!クサッ・・・うぇほっ!!」


 ・・・乙女の口から出るもんじゃ無いな・・・!!!!!!!??????


 「う”ぉ”ぇ”っ”」


 激しく生理的嫌悪感を催す激臭が鼻から、口から侵入してくる。この臭いは鼻を刺激するだけでは無い。粘膜という粘膜を刺激してくる。

雨宮の肺と胃袋が波打つ感覚を感じ取るが、意識が遠のきそうになる前に何とかフレーバー添加装置をオンに戻し周辺の空気の臭いをナノマシンで分解した。


ぽかぽかぽか


 「ひどいのですー!しぬかとおもったのですぅー!」


 涙目になりながらも何とか意識を手放さなかったトトは雨宮に当たり散らし、ぷんすこと文句を言ってくる。


 「ぶはぁ!もう大丈夫そうだね?」


 「お前判ってたのかもしかして・・・。」


 「・・・ちょっとね・・・。あーーーー!いたいいたいい!!」


 身体が変化して頭の角が無くなったアマリーの頭に両拳をぐりぐりねじり込んでやった。


 はっ!


 「かかz・・・Oh」


 駄目だな・・・。メディーック!


 ・・・?おかしいな、誰も来ない。


ーーぎんちゃん?何したの?皆倒れたよ?


 「あぁエリー。火風が倒れて・・・ってみんな?」


ーーお外で働いてる皆が一斉に倒れちゃって、何人かは大丈夫みたいなんだけど。

  何でかバイオハザードマークが出ているのよー?


 えぇ・・・?


 「ぼすぅ。もしかしてそのフレーバー添加装置ってさ、匂いだけじゃ無いんじゃ無い?添加するの。」


 まさかぁ・・・。


 「いやごめん。消毒とかもしているものだったわ。」


 そりゃそうかぁ。匂い付けるだけのマシンなのに何でこんなに巨大なんだと思ったわ。ビル一棟分ぐらいのサイズだからおかしいと思ったわぁ。


ーー取り敢えずかかちゃんは回収に向かうのよー。


 「あぁ。ナノマシンで皆を起こしてやってくれ。リンクシステムは・・・。」


ーー絶賛メンテナンス中なのよー。


 さいですか・・・。


ーー雨宮。エリーさんに代わりにそっちに行ってもらうから・・・変なことするなよ・・・?せめて一言言ってからにしてくれ。


 「わかった。」


ーーーーーーーーーー


 火風の回収班と共にやってきたエリーは、以前と比べて大分・・・いやめちゃくちゃ変わってね?


 「ぎんちゃん~?」


 話し方は以前のまま変わっていないが、外見が・・・。おかしいな?こんなに早く成長するものか・・・?


 少し前までイントよりも全然身長の低かったエリーだが、そうだな百四十有るか無いかぐらいだったはずだ。しかしどうだろう、今は明らかに百七十ぐらい有るんだが。あれ?

そんなに急にデカくなるか・・・?


 「いたた・・・まだ成長痛が痛いのよー。」


 「そりゃそんだけデカくなりゃ痛いわ。」


 無理して歩いてこなくても良かったのに。


 「最近全然お外に出てなかったから、ちょっと出たかったのー。」


 ホント眷属って凄い成長率だな。ものすごい破壊力ですはい。以前のままなら俺はしゃがんで丁度良いぐらいだったんだが、今はそこまでしなくても全然問題ない。

ロペと同じぐらいにはなっているだろうか?だが・・・・胸が・・・。


 「・・・?ぎんちゃんのえっちー。ちょっと肩がこるのよねー。大きくなって欲しかったけど、こんなに大きくなるとは思わなかったのー。」


 自分の身体が痛いのもかまわずうりうりと、アンデスメロンを押しつけてくるエリー。最高です。


 改めて話を聞いてみるとやはり突然身体が大きくなったらしく、痛みと不慣れな視界で歩くのも一苦労なのだという。何故来たし。

しかしこうなっては見て回るのが大変・・・。


 「あの車乗れるのかな?」


 アマリーが歩道の際に立ち「ヘイタークシー!」と小さい身体をめいいっぱい伸ばしてブンブン手を振っている。


 「お。」


 すると一台の車がアマリーの前に止まり、扉が開いた。


 俺はエリーを抱き上げ車の中に押し込む。


 「ちょっとちっちゃいなこの車・・・。」


 二メートルオーバーの俺には普通サイズの車はやはり小さい。天井に頭ががっつり当たるどころの話じゃ無い。斜めにならないと座ることすら出来ん。


 「バスの方にしようぜ・・・な?」


 「エリーはだいじょーぶなのよー?」


 「すまん。」


 俺は改めて車からエリーを抱き上げ、バス停と思われる所に立ち寄る。


 「こう言うのって時間が決まっているのかね?」


 「トトの国では時刻表があったのですー。」


 しかし本来有るべき時刻表は無く、その代わりにボタンが一つ押して下さいと言わんばかりのものがある。


 「ぽちっ!」


 「あ!こらトト!」


 いぬっこ・・・いきなり押しやがった。


 ボタンを押して一分程が経っただろうか、バス停にバスが止まり扉が開いた。


ーー端末、を、リーダーにかざして下さい。ご利用の、人数、を、選んで下さい。


 「あぁ。無人なんだなそういえばそうか。トト、腰のホルダーから俺の端末を出してくれ。」


 「はーい。」


 トトは俺の言わんとする所をなんとなく判ってくれたらしく、俺の端末をリーダーへとかざし、表示された利用人数を3と押した。


 「おいっ!!」


 「馬鹿犬っ!四人だろ!」


 「指が滑ったのですぅー。」


 確かにトトの押した画面には非常に境界線の曖昧な数字が並んでいるが・・・。


 「それでも間違えねーよ!!」


ーー三名、様、で、よろしいでしょうか?


 音声ガイダンスが確認を促してくることに安堵した雨宮は、アマリーに目配せし犬っこを席へと向かわせる。


ーーとりけし、を、確認しました。もう一度、ご利用人数、を、押して下さい。


 「全く・・・何で間違えたんだ・・・?」


ーー三名、様、でよろしいでしょうか?


 「なんでやねん!!」


 「ちがっ!四押した!四押したよ!!」


 俺はセンサーの位置を確認し、アマリーを俺の代わりにセンサーの位置に立たせ、エリーを席に座らせて戻ってくる。


 「ホントにちゃんと押したんだな?」


 「ホントだってー!」


 アマリーが俺の服を引っ張りながら自分は悪くないと必死に弁明するが雨宮も流石におかしいとは思っているようだ。


 「・・・じゃあ一個ずらして五だな。」


ーー四名、様、でよろしいでしょうか?


 「ほらーーーーぁ!!!」


 「わかったわかった!解ったからもう座れ。」


ーーごゆっくり、どうぞ。


 まったく・・・観光に出るだけでどんだけ時間が掛かってんだか・・・。


 雨宮立ちを乗せたバスはゆっくりと走り出し、ネオンの輝く夜の市街地へと向かっていく。

トト・風魔 犬獣人種 22歳 銀河旅団零番艦ラピス所属マスコット


 商業国家所属、コロニーマンジマルの一角には小さなコンビニがある。そのコンビニの名前は『Fooマート』

たった三時間しか開店していないそのコンビニにはとても美しい四姉妹が居るという噂が広がり、夜中の一時から四時までの三時間普通の商品が十倍から百倍程の値段で売られているという。

ある人は鉛筆一本を五千クレジットで購入したと言い。またある人はアイスを一万クレジットで一つ購入したとか。

 そんな不思議なコンビニの経営はとても傾いているらしく、常に長女は悲鳴を上げているとか。

 そんな中四姉妹の天使と言われるのがトト・風魔である。彼女は一所にじっとしていられない性格のお陰で店に出ることは無く、実家の道場で様々な術を仕込まれていた。

コンビニでは色々なものを販売している。そんな中でとある漢から雨宮の情報を売って欲しいと言われた長女は、トトを雨宮の元へ派遣彼女は割とあっさりマギア・ラピスへと侵入、雨宮に対して普通に話しかけ侵入者として何故か手元に置かれることになった。

 しかし彼女は雨宮の側に居ることを良しとしてしまい、銀河旅団入団セレクションへと自ら参加、最終戦で普通に寝入ってしまい医務室で目を覚ます。

初めて自ら選んだ道を踏み外したと勘違いしたトトは、号泣。雨宮にしがみつきその心境を吐露する。


 「もうおうちに帰りたくないのですぅーーー!!」

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