EP44 いざ約束の地へ
もうすぐ夏も終わりかなぁ。
久々に新キャラ居ないわ・・・。
バスから見る景色は低速で、遅くも無く早くも無い景色をしっかり眺めることが出来るぐらいのスピードで流れていく。
バスの座席は非常にゆったりとしていて、三人ずつ座れるサイズのシートが両側に備え付けられた五十人程乗れるタイプのものだった。
「キラキラの町が近づいてきますー!」
トトは開かないバスの窓にべったりと張り付いて景色を眺めている。なんだかんだ言って正式に銀河旅団に所属することになったトトは、首輪とリードから解き放たれ自由に車内を走り回っていた。
「ととちゃーんバスの中で暴れないのよー。」
「はぁーい。」
返事は良いのだが・・・。まぁ俺達以外に誰も居ないんだから良いのかもしれないが、
ーー次は、センターストリート一番、です。お降りの方は
ぴんぽーん
ーー次、とまります。
「あっ・・。」
「とぉとぉおお!!!」
「なんとなく押したくなったのですぅー!」
こいっつはもーーー!!
「見て回りたいんだからずっと乗ったままで良いんだよ!」
このバスはコロニー内を一周している為、ずっと乗っていれば駐留軍の基地の近く、最初に乗ったバス停まで二時間程で戻ってくる。
ーーーーーーーーーー
ぷしゅー
結局下りました。
「ぎんちゃんごめんねー。」
「いいよたまには。しょった所で何も問題は無いさ。」
エリーの成長痛はナノマシンによる強制進化が現在進行形で行われている状態である。こうならないように普通は眠るのだが、エリーの場合ナノマシン達により自然な成長を演出する為にゆっくり、肉体の成長を促していたのだが、どういうわけか突然急成長を始めてしまった為、今歩けない程の痛みに襲われていると言うことだ。
「にしてもハイパーヒューマノイドは結構大変だなー。人間っぽいっちゃーそうなんだけどさー。」
アマリーは何故か俺の服の裾を掴んだままで直ぐ左側を歩いている。
頭に大きなたんこぶを作ったトトは物珍しいものが多いのか、見かけた路地に入ったり、ショーウィンドウに張り付いたり意味も無く自動ドアを開けてみたりしている。
実にせわしない。
「こんなに一気に成長するとは思わなかったのー。嬉しいんだけど何だか複雑ー。」
「僕たちは最初からほぼ完成しているから進化はボス次第かなー。」
「元のサイズの方が良いか?」
「うーん?こっちでも問題ないよ?ボスを見上げるのが新鮮で言いなーって。でも前のままでもボスは僕よりおっきかったけどね。」
まえの・・・最初のアマリーも二メートル近くあったが、俺は更に身長が高いから、巨人種を除いて俺より身長が高い種族はいなかったがねぇ。
俺達は宝飾店や洋服店アクセサリーショップなど、様々なブランドショップの並ぶ通りを除きながら、時には中に入ってゆっくりと進んでいく。
「ナノマシンで確認してるから今更だけど、やっぱり誰も居ないねー。」
そう。正直これがよく分からない。死体も無ければ白骨も無い。確かにモンスターがここで暴れたのもあるがそれはあくまで駐留軍の敷地内でだけだ。
五年たっていると完全に分解されてしまうのか?と考えてみれば答えはそんなことは無い。確かにこのコロニーにも微量のナノマシンが最初は散布されていたらしいのだが、何かあったらしくコロニー運営のログを確認しているうちに直ぐにナノマシンを散布することをやめてしまっている。
なら微生物はどうか?これも無い。有機物を分解する程の微生物がこのコロニーの中には存在していないのだ。
この中は綺麗すぎた。
ナノマシンで浸食した所で綺麗になったりはしない。掃除は俺の意思があって初めて行われるのだ。俺がナノマシンで浸食した際に行ったのは動力の変更だけだ。
掃除をしているロボットみたいなものも確かに居るが、それでもここまで綺麗に保たれている原因が分からない。
外部と接する部分はかなり劣化していた。それこそ五年間放置してあった相応の経年劣化をしていたと言ってもいい。寧ろ劣化しすぎだとも思う。
外部から界獣達に攻撃されていた形跡も確認出来ていたので、外側はおかしくない。だが。
中はおかしい。何者かの力が介在していた・・・または現在進行形でしている可能性がある。
「誰か居そうなのに誰も居ないのねー。」
「そうだな。このコロニーの中は丈夫だな。」
「そんなはず無いと思うのよー。」
エリーもやはりおかしいのは気がついているようだが、コレといった明確な答えが出せないまま俺の肩の上に顎を乗せすんすん頭を嗅ぎ始めている。
「頭を嗅ぐなと言うに。」
「えへへなんとなくなのよー。」
唯々機械の動く音が定期的に聞こえるだけの町を暫く歩くと、一際煌びやかな一角に辿り着く。
「歓楽街という奴だな。」
「ラブホだなー。」
「エッチなお店がいっぱいだねー。」
「ふうまは始めてきたのですー。」
トトは小さいからなー。ってこいつも普通に成人女性ではあるのだが、見た目に引きずられて若干補正が入ってしまう。子供では無い。子供では無い・・・・。
「裏通りに入っちまったみたいだな。」
「おにーちゃんおにーちゃん!ベッドがいっぱいあるよー!」
お金を入れるだけで自動的に鍵を貸し出してくれるタイプのラブホにトトが勝手に行ってしまう・・・。っておにーちゃんってなんやねん・・・。
「やめんか。こら。試しに端末でお金を払おうとするな。アマリーも止めろよ。」
「やぁ~何だか面白そうだからやらせてみても良いのかなーって。」
入りもしないホテルの金を払うとか誰得だよ。
「金がもったいないからやめろって。・・・。」
ん?そういえばここのコロニーは今ナノマシンで全て作り替えてしまったから、別に外部に送金される訳じゃないしどっかにプールされて・・・。
って俺の口座に入ってくるように設定されてるじゃ無いかこれ。何の意味があるんだよ。自分で払って自分の財布に戻ってくるっておままごとかな?
「そういえばこう言う建物って後で返せって言われたりしないのかな?」
元を正してみればこの施設を作った人間も居るかもしれないし、どっかの会社が管理しているのかもしれない。だがそれは別に本人達から連絡が無ければ俺自身には解らんが・・・。もう既に全部ナノマシンなんだから極端に言えば元がどうあれ全部俺の所有物なんだがな。
「ここが安全だと解ればもしかしたらそう言う奴も出てくるかもしれないな。とは言えこんな誰も居ないコロニーの建物の所有権を主張したい奴なんているのかね?」
「そりゃー居るでしょうよ。どこかに売ればお金になるだろうし、後でややこしくなりそうだねぇ。」
うーむ。確かに・・・。まぁなるようになるか。
「今なるようになるかって考えたでしょーぎんちゃん。」
相変わらず鋭いやっちゃなー。
「駄目かな?」
「変に目立っちゃうからちゃんとしなくちゃ駄目なのよー。登記の問題とかもあるし税金だってもしかしたらまだ払っているかもしれないでしょ?まぁそれは政府の問題なんだけど。コロニーの返還に関しては応じる必要は無いけど、民間人に対しての対応は間違えると後がきっと大変なのよー?」
と、ぺらぺらと難しいことを話し出したエリーの方を見て、トトもアマリーもぽかーんと口を開けて頭から湯気を出している。
「???」
「つ・つまりどういうことなんだってばよ?」
「周りの人の迷惑になることはあんまりしない方が良いのーってことー。」
「「なるほど!」」
しかしそうだな。あ。そうだそうだ。俺にはアレがあるじゃ無いか。
「最悪全部買い取ってしまえば良いじゃ無いか。」
「おかねあるのー?」
「なんかさー見てくれよこれ。」
俺はエリーに銀行の口座を開いたページを見せる。普通はそういう事はしちゃいけません。エリーのことは信頼しているんだぜ・・・多分。
「ぎんちゃんあんまりいう・・・。ほぇ!?」
「ぼすー!僕にも見せて・・・ふぁ!」
「数字がいっぱいなのですー。」
ジェニのキャッシュマンエレクトロニクスに、情報とデータを売りさばいた時の金額よりも何故か大分金額が増えているのがよく分からないが、こんだけありゃ丸ごとコロニーを一個買うことだって出来るだろ。
「資源惑星を買ってもおつりが来るのー。」
「こんな金額見たこと無いぜ・・・。むぅー。」
きゅー
何だか可愛らしいおなかの音。
「飯か・・・。流石に生ものはナノマシンで再現してもなぁ・・・。」
「飲食店も沢山有るはずだけどー。流石に全部腐っていると思うのよー。」
もちろんそう言うものは全部ナノマシンで既に分解済みだ。ナノマシンは有機物を再現する時、元になる要素であるタンパク質や水ビタミンやミネラルなどそう言ったものを使って作るのであって、無機物を再現する時のようにナノマシン自体を構成要素として作り上げるのとはちょっと違う。流石にナノマシンを食っても大した栄養にはならないのだ。
「一度ラピスに帰ろうか。」
「「「はーい。」」」
ーーーーーーーーーー
タクシーに乗って旧駐留軍基地に戻ると、何故か敷地のど真ん中に赤いドアが設置されていたので扉を開けてみると、そこは・・・。
「ふっしぎー?」
トトが首をかしげて辺りをキョロキョロと見回して匂いを嗅いでいる。
「空間魔法をエンチャントした扉なのねー。」
「「あぁー。」」
俺とアマリーは手をぽんと叩き合点が行ったとこくこくと頷いていた。
因みに秘密の道具を思い出したのは秘密だ。
「空間魔法なんて使える奴いたんだな。」
「エクちゃんもエトちゃんも使えるしー。アンちゃんもつかえるのよー。」
エクシリスにエクトラス、その二人は解るがアンジーもか。
「他の艦にも居るのよー?」
「便利な魔法だなー。」
「素質があれば出来るようになるのよー。」
素質か・・・。俺にはそういうの有るんだろうか?どっちかというとナノマシン的に魔法はあまり得意ではなさそうに感じるんだが、ものは考えようなのかね?
くいくい
ん?
「おなかすいたのですー。」
そうだな。その為に帰ってきたんだった。なんだかんだでまだトトが銀河旅団に入ってからそんなに時間がたっていないこともあって、眷属化はしていない。そう言う気にならないというのが一番だが、何だろう?
トトはこのままでも良いんじゃ無いかな?とか思ってしまっている俺も居るが、ここに居る以上眷属化していないと逆に危ない気もする。
この子は見た目以上に強かに考えを張り巡らせている、そんな気配を俺は感じているんだが、今迄見ていた中ではワザとすっころんでいたりもしないし、真面目だし猫派の俺から見ても可愛らしくはある。
ってそれは関係ないか。詳しくは解らないが自分の意思で銀河旅団へと踏み込んできたのでは無いかとそう思える。
これを意図してやっているのだとしたら、相当腕の立つ諜報員だなぁ。
「エリーもそのまま飯食いに行くかぁ。」
「はーぃ。」
ーーーーーーーーーー
マギア・ラピス 食堂
・・・・。あれっ!?広い!?
おかしいな?こんなに広かったっけ?前はもっと狭かった気がするんだが・・・。
雨宮はざわざわと賑わう食堂の中をぐるっと見渡してみるが、何処をどう見ても広い。以前美汐がぐっちゃぐちゃにしてしまった時から考えても優に五倍は広くなっている。
「エリー?食堂ってこんなに広かったっけ?」
そう訪ねた雨宮の質問に対する返事が無く、アマリーもエリーもぽかーんとあちこち見渡してここは何処だと首をせわしなく動かし把握に努めている。
「そ・そんなはずないとおもうのよー?もっともっとせまかったはずなのよー?」
「入り口からキッチンまで一分もかからなかった筈なんだけどなー・・・?」
アマリーがそういうのも解る。入り口に立ち尽くす俺達から見てもキッチンに誰か居るのは解るし・・・そう。キッチンなんて言うレベルのものじゃ無い。正に中坊・・・じゃない厨房といえるレベルの広さの調理スペースが見える。
端から端までなっがいカウンターが・・・ってどっかで見たことあるな。
俺は記憶をひねり出し一つ思い当たるものがあった。
「ここはヘルフレムの食堂に似ているな・・・。」
「そういえばそうだねー。」
しかもあの厨房にいるのはセイラー・・・また捕まったかな?と、ちょっとしたデジャブを感じてしまう。
「と・・・とにかくいこうか。」
「広い食堂なのですー。こういう所は初めてなのですー!」
とか言いながらも若干他のクルー達からの視線に不安を感じるのか、俺の手を握ってくるトト。
広さのお陰か行列などは出来ていないようで直ぐにカウンターの前に来ることが出来た。
「おーい。」
カウンター越しに見る厨房の中は既にラッシュの時間帯が終わったのか、まばらに給仕官・・・食堂担当のクルーが掃除や片付けをしているのが窺える、
「おー。雨宮じゃ無いか!飯か?・・・ん?子供を拾ってきたのか?」
「トトは子供じゃ無いのですー。」
「僕もアマリーだぞ?確かに大分小さくなったけど。」
セイラーはアマリーにはもちろん面識がある。それ故以前目にした姿とは全く違う外見のアマリーのことに気がつかなかった。
「小さくなって・・・。」
「親戚のおばちゃんみたいに言うな!」
「おにーちゃんご飯食べても良いのです?」
「あぁそうだな。四人分くれ。」
俺がそう言うと顎に手を当てて首をかしげるセイラーは、ぽんっと手を叩き以前のことを思い出したようだった、
「そっか。もうドカ食いしなくても良くなったんだっけか。」
「そういう事だ。人数分な。」
「分かった。ちょっとまってて。」
今日のメニューはとんかつ定食か・・・。その内メニューの中から選ぶようなスタイルに出来れば良いな。
「ん。四人分な。」
「ほっかほかなのですー!」
トトは先に席に座らせたエリーの分と自分の分の定食をのせたお盆を両手で軽く持ち上げ、汁物をこぼさないように器用に配膳し席に着いた、
「うーん。THE和食。」
「その内ビュッフェスタイルに切り替えるつもりなんだが・・・許可を貰っても良いか?」
おー。そういうのも有りだな!
「うんうん。いいともさ。予算はあるんだろ?存分にやってくれ。」
「予算もそうなんだが・・・厨房に立てる人員が少なすぎるんだ。セレクションで入ってきた奴らは皆機動とか白兵とかそっちの方にとられてしまっただろ?
支援クルーがだんだん減っている気がするんだが?」
おっとぉ?
「減ってるのか?」
「減ったさ!ムラサメは最近全然食堂に顔を出さなくなったし、今給仕士官が私しか居ないんだよ。」
「キャンは?あいつはどうした?」
「キャンはいる。居るけどあいつはまだ掛け持ちだから殆どここには来れないんだ。実質私一人だぞ?今手伝ってくれているのもボランティアだからな?ちゃんと給与計算してやれよ?」
うわぁ・・・。これはイカン。しかしどうしたものか・・・。
「セレクションで来た人材をこっちにも回してくれよ。軍人ばっかりじゃ無いんだろ?」
「確かにそうだが・・・。セレクションに来るような奴らはそう言う目的の奴らばっかりだったからなぁ。」
毎日の食事に関してどういう事になっているのか正直あんまり把握していなかった。俺自身は戦闘でも無い限り殆ど食事をする必要がなくなってしまったことも原因だが、何故誰もそのことに気がつかなかったのか・・・。
「何とかならないかな?このままじゃ私はあんまり役に立てないぞ?いや、給仕官が嫌な訳じゃ無いんだが噂でな?」
「うわさ?」
「うん。水星に行くって聞いたからさ。その時はちょっと暇を貰おうと思っていたんだ。」
「里帰りか?」
「いや。里は無い。只水星ダンジョンのことが気になってな?」
「ダンジョンのこと?」
「うむ。あそこには巨人と天使が闊歩するダンジョンなんだが、最近はそのどちらも襲ってこないのだという話を聞いてな。何かあったのではと。」
「ほぉー。何か気になることがあるんだな?」
「そうなんだ・・・あぁまだ言っていなかったな。私は・・・取り敢えず飯でも食いながら話そうか。」
既に席についてガッついているトトとアマリー。エリーは律儀に俺が来るまで待ってくれているようだ。
ーーーーーーーーーー
「悪い。話し込んでしまった。」
「なんのおはなししていたのー?」
俺は話をしながらも箸に手を伸ばし味噌汁をすする。うまい。
「ウムそれは私が話すよ。」
セイラーも自分の食事を持ってきたようで、同じように味噌汁を一口すすり話始める。
「うん。うまい。でな。水星ダンジョンのモンスターのことなんだが。」
「あちっ。うん。」
「第三世界側との同盟が締結されたらしいんだが、それによって天使と巨人が新たにこの世界でも人類として認められたらしくてな?まぁ・・・以前にも同盟の話があったらしいんだがそれが今になってしまったのは私のせいなんだ。」
「?」
「どういうことなのー?」
「私は以前冒険者をしていたんだ。水星ダンジョンで。」
「おー。」
「それであの水星ダンジョンには巨人と天使以外のモンスター・・・いや今はモンスターじゃ無いか。まぁとにかく巨人と天使以外は殆ど居なくてな?レベルを上げるのにも元々強い天使や巨人を倒さなくてはいけなかったんだが・・・普通の人間にはハッキリ言って無理だ。余所のダンジョンで強くなった中級ぐらいの冒険者が腕試しにくるのが通例だったんだが、私は其処でしか戦ったことが無くってな。」
「・・・。」
「私が初めてダンジョンに入った時にな。瀕死の巨人を見つけてとどめを刺したんだ。幸運だと思ったよ。」
サクッ
衣が軽く肉厚の肉も柔らかい。
「だがそれはちょっと私の、一般人だった私の身体にはとても良くなかったみたいでな。」
「マナ中毒になったのねー?」
「そういう事だ。」
マナ中毒とは魔力の含有量の少ない一般人、ダンジョンでの経験がないものが陥る中毒症状で、原因は一度に大量のマナを身体に吸収してしまうことで起こる。
ダンジョンの外ではマナは命ある者から抜け出てしまえば、世界に還りその内どこかまたどこかでこの世界に何らかの形で還元される。
しかしダンジョンの中ではその還元が行われず、近くに居る生き物、この場合はとどめを刺したセイラーの元へと吸収される。
マナとは純粋なエネルギーの一つで、生きとし生けるものの思いを受け形を変える。強くなりたいという思いを受けてダンジョンの中ではレベルアップ現象という人間の存在そのものを強化する・・・要するに力が強くなったり足が速くなったりするのだ。
「そこから先の記憶が曖昧でな?気がついたらバーサーカーミミルなんて呼ばれたいた。」
「中々凄いあだ名だな。」
米がうまい。
「で、その気がついた所がまた問題でね?」
「うまうまー。」
トトの頭を取り敢えず撫でる。
「おいしーのですー!」
「そうか、ありがとう。慌てて喉を詰まらせるなよ。」
「はーい!」
「え・・と。そうだ。気がついた所からだな。私が自我を取り戻したのが、巨人と天使の同盟と第三世界側の・・・連合政府の和平交渉のただ中だったんだ。」
「なんでそんなとこに。」
「私も分からないんだが、恐らく戦う為に飛び込んだだけだったんだろうな。無責任かもしれないが其処まで殆ど意識が無かったものだから止めようも無かったんだ。」
ずずず
「で?」
「うん。私はその場にいた天使と巨人を皆殺しにしていた。」
ぶふっ!
「「なんで!?」」
エリーとアマリーが味噌汁を吹き出した。
「びっくりした。いや。其処は何とも。ただ、恐らくそこで私が自我を取り戻したのは役目を果たしたからなのだろう。」
「役目・・・?」
「うむ。雨宮ももう気がついているのだろう?勇者システムについて。」
ここでそれが出てくるか。
「恐らくだ、恐らくだが勇者システムの敷いたルールの中にそう言うものを阻害するもがあったのだろう。
そして今は雨宮によってシステムの介入は出来なくなった。だから今改めて第三世界となんと言ったか・・・。」
「ヴァルハランテ、だったか。」
「そう。巨人と天使の世界との和平が結ばれることになったんだろう。理由は今のところ私には分からないが、あれほど第三世界側の人類を目の敵にしていた巨人と天使が和平を結ぶなんて、何かあったに違いないと思ってね?」
そういえばテツもヴァルハランテの出身だったっけ。
「水星ダンジョンか・・・。ダンジョンとしての旨味は無さそうだなー。」
「まぁそれはもう仕方が無いんじゃ無いかなぁ。平和が一番だよ。」
「ふうまも天使さんと巨人さんに会ってみたいのですー。」
「巨人はその辺にいっぱいいるだろ。」
銀河旅団の中にいる巨人種は女性ばっかりだから、ゲートの前にいたドランドゥオとグゥルメィク以外の男の巨人はテツしか見たこと無いな。
「まだあったことが無いのですー。」
トトの犬尻尾がしゅーんと萎れる。俺がその尻尾を持ってフリフリしてみると、自ら尻尾を振り出した。
自由に動かせるのね、尻尾。
「やらなきゃいけないことと、やりたいことと、やっといた方が良いことと、色々あるなぁ。」
「そっちはいつも忙しそうだな。」
「どうなんだろうな。まぁ支援クルーについては・・・。」
「うん。私が手配しておくのよー。」
「それは助かる。あぁあと・・・。」
「わかってるって。水星ダンジョンに行く時には声をかけるから。」
「頼む。さて。食べ終わったら片付けるから食器をまとめてくれよ?」
「「「はーい。」」」「ん。」
うん。安定して旨い。ごちそうさま。
「ぎんちゃん?」
最近俺運動不足気味かな?なんて思うがそうでもないよな?神域でも対して役に立ってなかったし、セレクションの準備をしたぐらいで・・・後は皆の相手をしていたぐらい・・・。
うん。運動不足とか無いか。
「いや・・・何時になったら俺はレベルを上げられるのかなーっておもってさ。」
「もう水星では難しいかもしれないのねー。」
セイラーはトトに手伝って貰い食事の終わった俺達の食器を下げに厨房へと戻っていった。
よく見ると周りにはもう殆ど人が居ない。休憩中の数人が飲み物を片手に此方をチラチラ見て居るぐらいだ。
「・・・行くか。水星。」
「ん!了解なのー。」
「水星に行くのです?巨人せんべい食べられますか?」
なんだそれ・・・。めっちゃ気になるやんけ・・・。
「そうだな。見つけたら食ってみるか。」
「はいなのですー!」
ーーーーーーーーーー
マギア・ラピス メインブリッジ
「水星ダンジョンへ向かう。」
「いきなりだな雨宮。」
「そうでも無い。前から決めていた。仲間になってくれるって言う奴も迎えに行かないといけないしな。」
あいつらは元気にしているだろうか。セイラーから和平交渉が締結したと話を聞いたが・・・。
「銀河きゅんネプトラティアはどうするの?」
「バーさんに任せようと思う。ジェニ?何か問題があるか?」
「ないね。こっちでも連合政府の知り合いと話をしているから、その内生存圏がまたここまで広がる筈さ。ネプトラティアとその周辺の衛星は銀河旅団が所有権を主張することも伝えてある。文句は言わせないよ。任せな!」
「ん。じゃあ俺達はこれから水星圏へと向かう。神域の方はどうだ?」
気にしてくれてるんだと、ロペのにへらとした笑顔が花を咲かせる。
「問題ないよ。アイリーンを調整役にしておいてきたけど良いかな?どうせラピスと繋がっているから何時でもイントたんと交代出来るし。」
「分かった。じゃあ何も問題無さそうだな。」
俺は改めて艦長席に座りシートに体重を預ける。すると視座の上にトトが座ってくる。
「出発なのです?」
「ふぅー。」
「全艦水星圏へ向けて発進する。」
締まらんのう。
エリーは結局あの後まだ身体が痛むらしく俺が部屋まで連れて行って寝かせてきた。
それとは別に今日のブリッジには見慣れない顔がちらほらいる。
「ミンティリアさん艦内に通達を。」
イントが側についてあれこれ教えているのは結局セレクションを勝ち抜いたミンティリアと・・・。
「え・・えっと。」
「各部署にシステムチェックの報告を促すんだ。」
新庄が側についているのはトリプルミルクティの一人、ザミール。
「ぜ・全艦に通達、報告義務のある部署は順次報告を開始して下さい。」
何ともまぁ初々しい。というかこの間ここに来たばっかりなのにメインブリッジに訓練に来させるとか鬼畜じゃね?
操縦桿を握るアンジーの側にも補助席を取り付けた奴が一人食い入るように耳を傾けている。
「成る程。テクニカルな操縦が可能なのであるな。」
「そうですわ。ハッキリ言ってぶつかった所で此方が当たり負けることはありませんから失敗を恐れる必要もありません。」
「だが繊細な動きが必要だと。」
「ええ。」
小さな補助席に似つかわしくない巨体。レビルバン。奴も自ら志願して操縦桿を握るべく訓練を受けている。
セレクションのマシンの操縦技術を見る限り、センスはありそうだ。
皆がそれぞれ役割を果たしている。こういうのも悪くない。
ーーまもなく当艦は水星圏へ向けて出発します。
!?
ーーあれ?ちがう?CAじゃない?あれ?
おいおいおい・・・。機内放送かよ・・・。
「フィッシュオアビーフ?」
俺がミンティリアをからかってやると慌ててカンペを見て、真面目な放送内容を指さしたイントの誘導に従い改めて放送が始まる。
ーー全クルーに通達します。これより水星ダンジョンへ向けて出発します。到着は七日後です。ローテーションを確認の上出発後の調整を各部署で行って下さい。
指名されたクルーは水星圏へと到着後、ブリッジへと出頭改めて総帥からの指示を仰いで下さい。
・・・。まもなく発艦します全クルーは最寄りのシートにて安全を確保、安定軌道に入り次第業務へと戻って下さい。以上。
「ぜ・・全艦システムオールグリーンでっす!」
かみかみやんけザミール。
「良し。全艦発進、水星圏へ向けて出発。」
銀河旅団有するマギアシリーズ十隻の艦隊は音も無く動き出し、ディメンションスリップ航法を開始、異空間を通って水星圏へと向かって出発するのだった。
水星ダンジョン
ヴァルハラダンジョンとも呼ばれている。その名前の由来はダンジョン第一層の雄大な景色のせい。彼方まで広がる大草原、そしてその遠方に見えるまだ誰も到達したことのない大きな城「まるで神話の神々の世界アスガルドの様だ」という冒険者の発言から、神のダンジョンとも呼ばれている。主な出現モンスターはゴーレム、そして、人類ではないのかとも言われている巨人や天使。
ヴァルハラダンジョンは一層のみで形成されている平面ダンジョンで、その広さは計り知れないがその一部に異世界へとつながるゲートがありヴァルハラゲートと呼ばれるそのゲートには常に二人の門番が居る。
冒険者達はその実力を試され見事門番を納得させゲートをくぐった者は巨人族天使族の故郷、第四極小世界ヴァルハランテへと侵入を許されるが決して歓迎されているわけでは無い為、ゲートへ辿り着く前よりも遙かに多い数のモンスターや
侵入者を排除するべく現れる巨人族天使族とも戦う羽目になる。




