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ツッコム俺の身にもなってくれ!!  作者: 楽椎名
ザ・ラスト・ステージ!! 三年生編!!
78/80

ハッピーバレンタイン

 目覚まし時計の鐘が部屋中に鳴り響く。

 大地はそのまま腕を伸ばしそれを止め、ゆっくりと上半身を起こした。

 カレンダーに目を通す。

 今日は二月一四日、バレンタインデーだ。

 チャンスは今日しかない。

 決意に満ちた瞳で大地はベッドから降り、制服へと着替える。

 しっかり身だしなみを整えた後、大地はリビングへと移動した。

「おはよう」

 聞き慣れた声が耳に入り込む。

 大地は目を向ける事なく「おはよう」と軽く返して食卓に着いた。

 暫くして、大地の母が台所で作った朝食を食卓に並べていく。

 それと同時にリビングの扉の方から「おはよう」と欠伸をしながらリアが寝間着のまま入ってきた。

 母は「丁度良かったわ。 今朝食が出来たところなの。 顔を洗って一緒に食べて」と言った。

 リアは「ウム」と洗面所に顔を洗った後、食卓に着いた。

「いただきます」

 三人は共に合掌して朝食を摂り始める。

 そして大地とリアが朝食を食べ終えると、「片付けておくから、歯を磨いて言っておいで」と母が気を利かせた。

 二人は「ありがとう」とお礼を言って洗面台で歯を磨き、大地は玄関でリアが着替えてくるのを待った。

 少しして、「待たせたな」と制服に着替えたリアと、御付きの執事が降りてきた。

「では、向かうかの」

 リアがそう言うと「行ってらっしゃいませ」と執事が頭を下げる。

 対して大地は「行ってきます」と一礼して家を出た。

 それと同時に隣の家に住む空がいつもの様に大きなビニール袋を片手に出てきた。

「押忍! オラ東野院空。 今からバレンタインチョコを集めに行くぞ! ワクワクすっぞ!」といつもの調子で言う彼に対して「別にワクワクもドキドキもしない」と大地は軽くあしらった。

 その様子を見ていたリアは「相変わらずじゃのう」と呆れる様に鼻で息を吐いた。

 空は大地の手元を見て、いつものビニール袋が無い事に気がついた。

 それに関して何かを察したのか、空は含んだ笑みを零し、大地に「上手くいくと良いな?」と言った。

「そうだな」と大地は答え、何とも言えない不安を抱えたまま二人と共に学校へと向かうのだった。



 学校の玄関に辿り着いた大地一行。

 大地と空は下駄箱を空けるとそこにはいつもの様に大量のバレンタインチョコが詰められていた。

 空は黙って大地の下駄箱に入っているチョコレートごとビニール袋に詰め込んだ。

「おはよう」と後方から月華が声を掛けてきた。

「おはよう」と月華の隣にいる陽子が声を掛けてきた。

 対して空、大地、リアの三人は「おはよう」と返した。

「あれ? 大地くん、今日はビニール袋持ってきてないんだね?」と大地の手元を見て言う陽子。

「陽子」と大地は真剣な表情を浮かべながら彼女の肩に手を置く。

 すると陽子は「は、はひっ!」と頬を朱に染めた。

「今日は陽子に大事な用がある。 昼休み一緒に着いてきて貰って良いか?」

 大地の言葉に、陽子は若干戸惑うも「う、うん……」とそれを承諾した。

 その様子を見ていた月華は、そうか、想いを告げるのだな、とどこか寂しそうな表情を浮かべながら微笑み、そっと自分の思い人に渡す愛の結晶を渡すのを止めたのだった。



 昼休み。

 陽子を屋上へと連れてきた大地。

 冷たい風が二人の頬を撫でる。

 二人は互いの顔を見つめ合う。

 沈黙が走る。

 大地と言えど、やはりこう言った行為を行うのに緊張するのだろう。

 そんな彼に後押しする様に冷たい風が優しく吹いた。

「陽子、率直に言わせてもらうな」

 彼のその言葉に、陽子は胸を高鳴らせたまま、静かに頷いた。

「陽子、俺は……。 俺は陽子が好きだ。 もし俺で良ければ、どうか付き合ってほしい」

 そう言って大地は深く頭を下げた。

 もっと他にも良い言葉があったのではないかと少し後悔する大地。

「頭を上げて、大地くん」

 陽子の言葉を素直に聞いてそっと頭を上げる大地。

 彼女の顔はリンゴの様に赤かった。 目元にはうっすら涙が浮かんでいる。

「私で良ければ、宜しくお願いします……!」

 彼女の涙が零れそうになったその時、大地は素早く陽子を優しく抱きしめた。

 こうして二人は結ばれた。

 そんな二人を祝福する様に冷たい風が優しく吹いたのだった。


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