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ツッコム俺の身にもなってくれ!!  作者: 楽椎名
ザ・ラスト・ステージ!! 三年生編!!
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空とマッドサイエンティスト

 科学室の工房で一人、三年D組の担任となった清水義孝は何を思いついた訳でもなく飲んだ者の容姿を美しくする薬を精製していた。

 義孝は白衣の胸ポケットから栄養ドリンク大の空き瓶を取り出しフラスコに入っている黒に近い緑色をしたその不気味な液体を慎重に注いでいく。

 一滴残さず入れた後、彼は静かに瓶に蓋をした。

 それと同時に、後方にある科学室の扉が開かれる。

 扉を開いたであろう人物は「失礼します」と言って義孝の聖域に足を踏み入れてきた。

「何の様だ?」

 ドスの効いた低い声で言ってきた義孝に対し、少年は「おや? これはこれは我らが担任、清水義孝先生ではありませんか。 こんな所で会うとは奇遇ですねぇ?」とあたかもそこに彼がいるとは思わなかったと言わんばかりの演技をした。

「しらばっくれやがって……」と義孝は舌打ちをしながら「何の用だ? 東野院空」と言って彼を睨みつけた。

「何の用だと言われても、俺はただ」と言葉の途中に「断る」と義孝が被せた。

 すると空は肩を竦めて「つれないですね」と不敵に笑った。

「もう、お前と関わる理由も無いからな。 東野院財閥の一人息子、東野院空」

 その言葉に、空は目を大きく見開いた。

 そしてそれは次第に狂気に満ちた笑みをへと変わる。

「やっぱり、解っちゃいました?」

「東野院と言う性であれだけの金を用意できるのは他に無いからな」

 それで、と義孝は言葉を続けた。

「お前は何故この学校に入学してきた?」

「ここには面白い『人種』が沢山いる。 カボチャ頭、狼少年、魔女、フランケンシュタイン、能力者、魔王……」

 そして、と空はある一人の少年を思い浮かべて言葉を続ける。

「世界の王の器を持つ者……」

 彼が口にしたフレーズに義孝は僅かに片眉を上げた。

「世界の王の器だと……? そんな者が実際に存在すると言うのか?」

 義孝の問いに、空は口を横に広げながら首を静かに縦に振った。

「まさか、そいつは前生徒会長、神藤進か?」

 すると空は「いいえ」と首を横に振って否定した。

「自分だとは言わないのだな」

 対して空は「まさか!」と両手を広げ「そもそも僕にその素質があるのならこの世界なんて生まれたその時から制服していますよ」と笑ってみせた。

「まあ、少なくともお前の様な人間にそんな素質を神が与える訳がないだろうな」

「違いありません」と空は笑った。

「少し喋り過ぎましたね。 ブツも買い取らせて貰えない様ですし、そろそろ御暇(おいとま)しますよ」

「二度と個人的な理由で俺の目の前に現れるな」

「それは無理な相談ってヤツですよ」

 空はそう言って義孝の聖域から立ち去っていった。

 彼が二度と現れない事を義孝は切に願った。


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