梅雨と魔王
目覚まし時計の鐘が部屋全体に響き渡る。
日頃の学校生活で疲弊しきっている大地は少ない体力を振り絞って腕を伸ばしてそれを止める。
今日は幸いな事に土曜日。 学校は休日。 そしてそれを利用すべく再び眠りにつこうと近くにある抱き枕に腕を通す。
そこで、大地はある違和感に気付く。
俺、抱き枕使っていたっけ?
タオルケットを剥ぎ取ると、
「おはよう、大地」
どこか恍惚とした表情で横になっているリアがいた。
「何故お前がここにいる?」
大地の問いにリアは「なに、驚かせてやろうと思って朝一で潜り込んでおいた」と答えた。
それに対して大地は、子どもが親、兄弟に驚かせようとしているものかと切り替えて特に気にしないことにした。
「それにしても……」とリアは何かを思い出したかの様に口を開く。
「お主、意外と包容力があるの」
刹那、大地の背中に悪寒が走った。
鳥肌が次々と立つのが解る。
「そう言った発言は控えておけ」と言う大地の言葉に理解出来なかったのか、リアは「何故じゃ? 本当の事を言ったまでだぞ?」と可愛らしく首を傾げた。
自分の思いが伝わらない大地は呆れる様にハァッと深く溜息を吐いた。
「そう言えば聞きたい事があるのだが」とリアは窓の方へと視線を向けて言葉を続ける。
「この国はこの時期になると頻繁に雨が降るのか?」
その問いに大地はリアが外国の王家の者だと言う事を思い出す。
「ああ、そうだ。 梅雨と言ってな、五月から七月の上旬にまで渡って雨が頻繁に振り続ける」
その代り、ジメジメとした空気で色々と家の中が大変になるのだがな、と苦い笑みを浮かべる。
「こんなに雨が続くと鬱蒼とした気分にならんか?」
どこか憂鬱な雰囲気を醸し出すリアに対し、「そうでもないぞ? 少なくとも、俺は嫌いじゃない」と大地は言った。
対してリアはどこか感心する様に「それは何故じゃ?」と聴くと、大地は不敵な笑みを浮かべながら「それはな……」と口にしたその時、「大地! リアちゃん! 朝ごはんよ!」とリビングの方へと聞き慣れた声が耳に入る。
「後で聞かせてやるよ」
大地はそう言ってリアと共にリビングへと向かったのだった。




