風紀委員長の襲来
私立橘高等学校が生徒会長、神藤進がまたも入学式でやらかして去年よりも更なる盛り上がりを魅せて数日が経った昼休み。
クラスメイトは新しい仲間と打ち解け合い、去年クラスメイトであった友達と一緒に会話を交わしたりしている姿が見える。
大地たちも例外ではない。
彼らはいつもの様に一か所に集まってそれぞれ持参して来た弁当を口に運びながら談笑している。
「ってか人数多くないかっ!?」
大地の発言に皆、素っ頓狂な表情を浮かべた。
そう、いつもの面子に加えて、最弱の正義の味方、ジャスティス・正義に下臣兼自称侍の宮本一騎。 そして異端者の菅原葵と金子雪姫。
四人増えて八人である。
「それがどうかしたのか?」と言う空の言葉に「いや、人数多いなって思っただけだ」と大地は椅子に座る。
「まあ、賑やかで良いではないか」
月華のその言葉に隣に座る陽子が同意するようにうんうんと首を縦に振る。
「こんなに大勢で食べる昼食は初めてだよ」とジャスティスが口にするとその右隣に座る一騎が「拙者は一月から大地殿たちと昼食を共にしている候」と何故か得意気に胸を張った。
「まさかこうして『普通の友達』と昼食を共にする日が来るとはな……」と葵は箸で挟んでいる蛸の形をしたウインナーを眺めながら呟いた。
それに続く様に「とても喜ばしい事ね」と彼の隣に座っている金子が卵焼きを頬張りながら同意した。
『普通の友達』と言うフレーズに大地はまるで可哀想な者を見るような目で二人を見た。
その時、大地たちの近くにある扉が勢いよく開かれた。
何事だとクラスメイトたちは一斉にそちらに視線を向ける。
わざと足音を鳴らしながら入ってくるは短く切り揃えた黒い髪に、制服を綺麗に着こなした、これから獲物を仕留めにいくような鋭い目つきをした男子生徒だった。
その殺気立った少年に身の危険を感じたのか、大地を含めたグループの男子陣は立ち上がり身構えた。
厳つい男子生徒はズカズカと大地の前に移動し「テメェが西野大地カ?」と高圧的な態度で聴いてきた。
大地は冷静を保ちながら「そうですが、貴方は?」と聞き返す。
「俺ァ、土御門良平。 風紀委員長だ」
何と柄の悪い風紀委員長だ、と大地たちはあえて口にしなかった。
落ち着いた様子で大地は「俺に何か用ですか?」と問うと土御門はチッ! と大きく舌を鳴らしながら「おらヨ!」と一枚のメモ用紙を渡してきた。
何だこれは? と思いながら大地は中身を開くとそこには電話番号とメールアドレスが記されていた。
渡してきた当の本人はどこか照れた様子で頭を掻きながら「す、進ちゃんたちからテメェ等の事を聞いたんダ。 今度あのバカ二人を誘う時は俺も呼ベ。 べっ、別に羨ましいからとかそんなんじゃないからナッ! か、勘違いすんなよ!? バァーカッ!」と誰得だと言わんばかりの勝気な態度を取りながら大地たちの前から立ち去った。
辺りが沈黙に包まれる。
暫くして月華が「やっぱり大地って男にモテるよな」と言うと「モテてねぇよ! 男にモテても嬉しくねぇよ!」と大地は否定するのであった。




