待ちに待ったクラス替え
目覚まし時計が部屋中に鳴り響く。
大地はベッドで横になったまま素早く腕を伸ばして時計の鐘を止めてムクリと起き上がり、カレンダーに目を向ける。
四月某日。 新学期が始まる。
大地は怠そうにベッドから起き上がり、リビングへと向かった。
「おはよう、大地」
聞き慣れた声が耳に入る。
キッチンで朝食を作っている母の声だ。
大地は「おはよう」と返して洗面所へと向かい、洗顔をしてリビングにあるテーブルの椅子に座る。
それと同時に母が「はい、おまちどうさま」と作った朝食を並べる。
「いただきます」と大地は箸を手に取り朝食を摂るのであった。
全てを食べ終えると大地は「ごちそうさま」と使った食器をシンクに移し、再び洗面所へと向かい、歯磨きをする。
磨き終えて大地は自分の部屋へと戻り、制服へと着替えた。
大地は姿見の前に立ち、自分の制服姿を見る。
今日から二年生! 今日から、今日から……。
脳内に親友が得意気な顔をしている姿が浮かび上がる。
また一年間アイツに振り回されるのか……。
そう思うと大地は憂鬱な気分になり、頭を抱え深い溜息を吐いた。
暫くして、意を決したのか大地は「よしっ!」と通学鞄を手に取り家を出る。
それと同時に隣の家に住む大地の親友、東野院空が現れる。
今日も校則破りな金色の髪が輝いている様に見えた。
「オスッ! 大地! オラ東野院空! これから一緒に○ラゴン○―ルを探しに行くぞ!」
「うわっ、凄ぇワクワクしねぇ」
大地の返しに「なにそれ!? 酷くねっ!?」と空は嘆いた。
そんな彼に「早く行くぞ」と言って大地は先に学校へと歩を進める。
「おい、ちょお待てよぉっ!」と某弁護士風に空は彼の跡をついて行ったのだった。
「おはよう、大地くん、空くん!」
学校の下駄箱へと辿り着くと、守ってあげたくなる女の子ナンバーワンの陽子に声を掛けられた。
彼女に続く様に「二人とも、おはよう」と隣にいるふつくしい女の子ナンバーワンの月華が挨拶をしてきた。
空と大地は「おはよう」といつもの様に返した。
「き、今日はクラス替えだね?」
どこか緊張した面持ちで陽子が口にする。
「同じクラスだと良いな」と言う月華の言葉に「そうだな」と空と大地は同意した。
それから廊下の壁に張り出されているクラス表を見て、大地は瞳を大きく見開いた。
「皆また同じクラスだね!」と安心した様子で喜びの声を上げる陽子。
「今年度も宜しくな」と月華はクールな感じで言った。
「今年度もよろしこ!」と空が軽く笑った。
対して大地は「ああ……」と呟くような声で返事をするもそのクラス表に目を離せないでいた。
別に、このいつもの面子とは喜ばしい事に同じクラスである。
問題は他のクラスメイトであった。
「やあ、空、大地」
横から声を掛けて来るは黒い髪を七三分けにした黒縁眼鏡を掛けている最弱の正義の味方、ジャスティス・正義。
「どうやら同じクラスになったようだね? 今年度も宜しく!」
そう言って右手を差し伸べてきたのでそっと握り返す空と大地。
彼が自分と同じクラスと言うのは大地にとって何ら問題では無い。
「大地殿!」
武士の様に声を掛けて来るは大地の下臣兼自称侍の宮本一騎。
彼はいつもの様に長い黒髪を一つ結びで止めており、部活の時間でもないのに剣道の胴着を着ている。
「どうやら、拙者、大地殿たちと同じクラスだそうです! 今年度も宜しくお願い致します!」
一騎はそう言って綺麗な一礼をした。
「ああ、宜しく……」と大地はどこか気が遠くなる様な感覚を覚える。
今年度も空だけでなく、このなんちゃって侍に付き纏われると思うと大地は溜息を吐かずにはいられなかった。
「空、大地」
最後に声を掛けて来るは何とも言えない痛いオーラを発しているヴィジュアル系男子、菅原葵。
隣には彼の数少ない友達であろう白く長い髪が特徴的な金子雪姫がいる。
何を隠そう、この二人も大地たちと同じクラスと言う事実。
「今年度は同じクラスだな。 宜しく頼む」
少し棘のあるその物言いはどこか違和感を覚えるのは気のせいではない、と大地は思った。
いつもの面子、最弱の正義の味方、下臣兼自称侍、異端な二人組。
今年度は波乱の一年になりそうだ。
そう思うと大地は頭を抱えずにはいられなかった。




