裸の突き合……、突き合い!!
橙色に染まっている木材で出来た空間で、六人の漢たちはベンチに腰を掛け、黙々と多大な汗を流していた。
内三名を除く他三名は、今にも飛び出したい気持ちで心がいっぱいであった。
しかし、景品を賭けている以上、それは出来ない。
その三名はメンツの一人に視線を送る。
目に映る彼は、まだいける口なのか、余裕の表情を浮かべていた。 他二名も同じ様な顔をしていた。
すでに自分の限界の要領をオーバーしている三人は互いに睨み合っていた。
お前ら二人のどちらか先に出ろ、と。
何故、この様な状況に陥ってしまったのかを遡ること約三十分前。
温泉の前で、メンバー全員が集結し、空を筆頭に中へと入って行った。
それぞれ受付で代金の支払いとロッカーの鍵を受け取り終え、更衣室へと入り、衣服を脱ぎ取る。
腰にタオルを巻き付け、浴場の中へと足を踏み込む。
皆、身体の汚れを洗い流して浴槽へと浸かる。
あぁ、と気持ち良さそうに声を漏らしながら温泉を堪能していると、不意に空が口を開いた。
「そうだ、ゲームをしよう」
また始まった、と大地は頭を抱える。
「どんなゲームをするんだ?」とジャスティスが聴くと、空は「あれだよ」とサウナルームを指差した。
「全員、あのサウナルームの中に入って忍耐力を競う。 先に外に出た人間が負けだ」
という空の説明に「面白うそうだな!」とちっとも面白くないノリに乗る私立橘高等学校が生徒会長、神藤進。
「罰ゲームは?」
大地は念の為に聴くと、空は「勿論、皆に飲み物を奢って貰う!」と言って白い歯を見せながら親指を立てた。
「面白そうだな。 やるか!」と九十九が立ち上がった。
「戦士たる者、どんな勝負であれ、背を見せる事は許されない」と痛い発言をしながら菅原が立ち上がった。
「この勝負、負けられない……。 ジャスティスの名に懸けて!」と珍しく訳の解らない発言をしながら立ち上がるジャスティス。
またしても逃げ場が無くなった大地は仕方なくその(闇の)ゲームに参加するのであった。
そして現在に至る。
大量の汗が頬を滴り床へと落ちる。
体力は消耗していく一方、大地、菅原、ジャスティスの三人はお互いに相手をどうこのサウナルームから退室させるかを模索する。
すると、その中の一人、大地が何かを思いついたのか、菅原とジャスティスに「二人とも、少し良い案がある」と声を掛け、視線を自分に集める。
「俺たち三人、もう体力の限界だ。 しかし、他の三人は御覧の通り、余裕綽々としている。 このまま、根競べをしたところで、俺たち三人の中の一人は下手をすれば死んでしまう可能性もある」
そこでだ、と大地は拳を振り上げ言葉を続ける。
「俺たち三人でじゃんけんをしよう。 一回勝負。 負けた者がこのサウナルームから出る。 オーケー?」
大地の要件に「オッケィ!」と菅原とジャスティスは親指を立てて承諾した。
「行くぞ! ジャンケンッ!」
ポンッ! と大地はグーを出した。
他の二人はパーを出していた。
予想外の結果に、三人の中で気まずい沈黙が走る。
その後の事は、心中をお察し願いたい。




