第365話「崩れた安全神話」
#第365話「崩れた安全神話」
A国は当初、国内で発生したレベル4モンスターの氾濫情報を伏せようとしていた。
世界の混乱を防ぐためだ。この情報が知れ渡ったらパニックは避けられないだろうとの判断だった。
しかしA国は自由主義国家。
大きな戦闘があったことは明らかで隠しきれる状況ではなかった。次第に内部から情報公開を求める勢力が現れ、メディアも動き始めた。
そうして現場の映像が拡散されるのに時間はかからなかった。
そして、世界は知ることになったのだ。
レベル4以上のモンスターには、現在主流の軍用ドローンでは全くと言っていいほど対抗できないという事実を。
「あのモンスターは何なのだ? ドローンの攻撃が全く通用していないじゃないか?」
「偽映像ではないのか? これまでは何の問題もなくドローンでモンスターを全滅出来ていたじゃないか」
流れ出る映像の情報が信じられず様々な声が聞かれた。
しかしながら映像は本物だ。そして、敵がこれまでよりも1つレベルが高いレベル4モンスターの場合においてはドローンの攻撃だけでは通用しないことが知れ渡った。
メディアは次々と取り上げ、ダンジョンから氾濫するモンスターに関する議論は白熱した。
最初はドローンの性能の問題ではないのかという声が聞かれた。
しかし、映像に出ていたA国製ドローンはそれなりに高性能のものだ。精密誘導、強力な爆装、優れた制御技術。それでも通用しなかった。
では、仮にC国製ドローンならどうか。C国製のドローンは安価で大量生産向きだ。その一方で性能面ではA国製にやや劣ると見られている。
つまり、C国製であっても、レベル4モンスターを制圧することは困難。
数を揃えることだけを考えればA国製ドローンよりも対応しやすいが、レベル4モンスターに対してはやはり無力である可能性が高い。
その結論に至るのは避けられなかった。そしてメディアに出てくる専門家の見解は絶望的なものが増えていった。
月に一度開催される世界会議は、当然のように紛糾した。
今回はA国国内での発生だった。対応も比較的早く、新兵器も投入、更には軍の出動もあったので最終的にはなんとか鎮圧できた。
しかしながら、それはA国だったからこそだ。
これが他国だったらどうなっていただろうか?ドローンをようやく揃えた、軍の防衛体制の整っていない国で発生していたならばひとたまりもないであろう。
最悪の場合、レベル4モンスターの氾濫は国家そのものが崩壊する可能性すらある。
「今後、世界での対応はどうする? 今回はA国だからぎりぎり対応できたと言っていいだろう。他国では絶対に無理だ」
「いや、今回はたまたま田舎で都市から距離があったから助かっている。都市部のダンジョンであればA国でも厳しいだろう。どの国でも対応は困難だ」
出てくる話は絶望的なものばかり。
各国の代表は顔を次第に曇らせた。現状では打つ手が全くない。
できるだけドローンを多く生産し取り寄せることぐらいはできるがそれが精一杯だ。
しかしながら、それだけではレベル4モンスターに対しては無力の可能性が高い。
そこで出た結論は一つだった。
「ドローンのさらなる高性能化に全力を挙げる」
ドローンの性能を上げてレベル4モンスターに対抗するしかない。しかし、それで間に合うのか。現状、世界にあるドローンよりも一段上の高威力型でもレベル4モンスターには無力だったのだ。最低でも、その上の性能が必要になる。
今からの開発で間に合うのか?
誰も確信を持てない状況だった。それができるならば最初からしているという話だ。
多くの国では現状、実質的な対抗策はない。もうダンジョンからの氾濫が発生しないことを祈るしかないという状況であった。すなわち運任せに近い。
そんな会議の中で、朝倉は一人で静かに考えていた。
とうとうレベル4モンスターの氾濫が起きた。それが比較的近いうちに起きること自体は予想はしていた。
だが、世界の動揺は想定以上だ。
朝倉もレベル4モンスターに対し、ここまで対応に苦慮するとは思っていなかった。現状のドローンでも何とかぎりぎり対応できるのではないかと思っていた。
しかし現実は非情だった。
完全に世界のダンジョン対応の準備不足が露呈した形と言える。レベル4でこの騒ぎ。
ここで更にレベル5が発生したらどうなるというのか?国どころではない。世界規模の話になるだろう。
最悪は人類存亡の危機に発展するかもしれない。
日本には、レンたちという切り札がある。
だが、それでも紙一重だ。都市部でレベル4モンスターの氾濫が起きたら間に合わない。レンたちがいくら急行しても、被害をゼロにはできないだろう。
まずは都市部ダンジョンではレベル4以上のハンターに監視してもらうしかないだろうか。しかしそれは人員的に見てかなり厳しい。今でも手一杯の状況だ。
レンたちの運用の見直しが必要かもしれない。だが、それは同時にレンたちの存在を公にすることが必要になるかもしれない。
情報公開すれば間違いなく世界から引っ張りだこになるだろう。それはどうしても避けたい。
そうして、朝倉は深く息を吐いた。世界は、確実に次の段階へ進み始めている。彼は静かに頭を抱えたのだった。
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