第349話「葉山の休日と観光」
#第349話「葉山の休日と観光」
高泉首相と大泉防衛大臣がダンジョンに潜る日が近づき、俺は弟の樹と妹の葵にも話をして一緒に連れて行くことにした。
二人とも当日と翌日が休みということで、せっかくならと二連泊の予定を組んだ。
その話を聞いたエリナさんが、「私も行くわ」と名乗り出てくれた。ただし理由は、俺たちがダンジョンに潜っている間、樹と葵の面倒を見るためだという。
確かに俺たちが不在の間、二人を見てくれる大人がいるのは心強い。とはいえ、もう高校生だ。そこまで手がかかる年齢ではない。
それでも「何かあってからでは遅いでしょう」と言ってくれるエリナさんには頭が上がらない。
日本でも有数のレベル7ハンターに子守りのような役目を任せてしまうことに、正直恐縮してしまう。
しかし、その話を聞いた樹と葵は大喜びだった。
「えっ、本当にエリナさんも来るの!?」
「すごい……一緒に旅行できるなんて夢みたい!」
超有名人であるエリナさんと行動を共にできるのだから、無理もない反応だろう。
そして当日。俺たちはダンジョンでの軽い調整を終えた後、早めに切り上げて湘南方面へと移動した。移動には大型の貸切車が用意されており、その快適さがありがたかった。
向かった先は、葉山にある風情ある温泉ホテルだった。
俺は温泉に入るのがほぼ初めてで、到着した時点から胸が高鳴っていた。樹と葵も同じ気持ちだったようで、館内を見回しては楽しそうにしている。
用意された部屋は広々とした大部屋で、まるで合宿のような雰囲気だ。みんなリラックスした表情を浮かべ、自然と笑顔がこぼれていた。
ひと息ついた後、俺と樹はさっそく温泉の男風呂へ向かった。
大きな湯船に浸かった瞬間、思わず声が漏れた。
「はぁ……これ、最高だな……」
どうやら今日は空いているようで男湯にいるのは俺と樹の二人だけ。贅沢すぎる状況だ。
そして、改めて考えると、俺たちのクランは女性メンバーが圧倒的に多い。こうして男同士でゆっくり話す時間も貴重だ。
せっかくの機会なので、俺は樹に聞いてみた。
「なあ樹、好きな子とかいるのか?」
すると樹は一瞬固まり、少し顔を赤らめながら答えた。
「い、いるけど……今は言えない」
「そっか。まあ、そのうち紹介してくれるのを楽しみにしてるよ」
少し残念ではあるが、思春期らしい反応に思わず微笑んでしまう。風呂から上がってしばらくすると、女性陣も戻ってきた。
湯上がりの皆はいつも以上に華やかで、思わず目を奪われる。使役モンスターの5人もそれぞれ特徴があって魅力的だ。
ルナもクールビューティーというのだろうか。浴衣姿になっても隙がなく冷静さを感じるところはさすがだ。
そして、そんな女性陣の中でも、ひよりの姿は格別だった。ふと目が合い、思わず照れてしまう。
「な、何よその顔。のぼせたの?」
「いや、温泉が良すぎてさ……」
ごまかすのに少し苦労したのは内緒だ。まあ気付いているだろうけどね。
その後は、待ちに待った夕食の時間。テーブルには新鮮な刺身や焼き魚、煮付け、天ぷらなど、海の幸をふんだんに使った豪華な料理が並んでいた。
「すごい……これ全部食べていいの!?」と葵。
「旅館のご飯って、こんなに豪華なんだな……」と樹も感動している。
俺も同じように感動していたが、兄の威厳も必要だと思って、特に興奮した姿を見せずに普通に食べていた。とは言え、本当においしかった。温泉ホテルの食事は凄い。
普段はマンションでの食事が中心だから、こうしてゆったりとした空間で味わう食事は格別だ。楽しい会話と美味しい料理に、心も体も満たされていくのを感じた。
思えばずっと忙しくしていた。樹と葵にもあまり構うことができなかったので申し訳なかったな。
こんな贅沢で穏やかな時間を過ごせているのも、高泉首相と大泉防衛大臣のダンジョン同行の話があったからこそだ。最初はちょっとびっくりしたけど二人には感謝したい。もちろん、朝倉さんにもね。
食後は再び温泉に入り、心地よい疲れとともに一日を締めくくった。
翌日は朝から観光をした。
江の島を散策し、鎌倉では歴史ある寺社や風情ある街並みを楽しんだ。食べ歩きをしたり、お土産を選んだりと、皆で過ごす時間は本当に楽しかった。テレビやインターネットでしか見たことがない光景がそこに広がっていたからね。
そして昼過ぎ。エリナさん、樹、葵の三人は先に葉山の旅館へ戻ることになった。俺たちは時間を調整しつつ、夕方からの本番に備える。
――いよいよだ。
夕方からは、高泉首相と大泉防衛大臣と共に葉山ダンジョンへ潜る。
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、空気は徐々に引き締まっていく。俺は少しずつ気持ちを切り替えた。
まずはしっかりと役目を果たそう。
おそらくは今日も六階層での攻略だろう。俺たちの実力ではぎりぎりだ。しかも葉山ダンジョンは俺たちにとっては初のダンジョンということもあり油断はできない。
間違っても高泉首相と大泉防衛大臣に迷惑をかけないように頑張ろう。
そう心に誓い、俺たちはダンジョンに向かっていった。
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