第296話「更なる試練」
#第296話「更なる試練」
透子さんから先日の北海道でのダンジョン氾濫、更には最新の使役モンスターのFS推移の研究状況について聞いた。
宝箱は自力で出さないと駄目ということでお金だけでは解決しない。そこで自衛隊の人員を出してもらったがそこでも問題が出ているらしい。
「自力で出した金箱から出た使役モンスターならば名付けすることで確実にFS2に遷移すると思ったけど現実には半数の50%程度。そこで原因は何でだろうと思っていろいろと調べたんだ」
「その結果、おそらくはハンターの使役モンスターに対する気持ちによる差なのだろうという仮説に達したんだ。想いが弱いとFS遷移はしない可能性がある」
自分が出した宝箱の使役モンスターだとFS遷移の確率はかなり上がる。
しかし使役モンスターに単純に名付し触れ合うだけではFS遷移はしないのかもしれないらしい。
やはり「可愛い」「守りたい」「一緒に戦いたい」などの感情の強さが、遷移率に影響している可能性が高いだろう、という話だった。
まあ、それはそうだろうとしか言えない。俺は使役モンスターに対する気持ちはかなり強かったからね。全員FS遷移したのはそのためだろうと思う。
だって一人の討伐はしんどかった。仲間がいた方が断然、楽しい。使役モンスターが出た時は感動したものだ。
そして話に聞いた手順から考えると、おそらくは自衛隊の上からは使役モンスターが出たら名付けして触れ合うようにとかの命令が出たことだろう。
その命令通りに、仕方なく名づけしたぐらいだったのかもしれない。
俺の感覚で言えば、命令でやらされているとかだとかなり厳しいと思う。とは言え、この辺りはまだ統計を取っている最中らしいけどね。
自衛隊の上の人も大変だ。上層部からの指示の与え方も工夫が必要のようだ。
そう思っていたら透子さんは更に続けた。
「まだその先にも問題があるんだ。使役モンスターの育成がとにかく難しい」
なんと、まだ問題があるのか。
ようやく使役モンスターが出て更にはFS2まで到達して一安心かと言えばそうでもないらしい。
そこから次は使役モンスターの育成になる。次のFS遷移はレベルアップが最低限必要だろうからね。
そして、これがまた難しく難儀しているとのことだ。
現実に実践している自衛隊員によると、自分が頑張るのは何とかなるが使役モンスターにスライムを1万体討伐させることがとにかく厳しいとのこと。
「自衛隊の人は根性があるからスライム1万体討伐して金箱に辿り着ける人はそれなりに多いんだ。そこは普通の人とは全く違う。たいしたものだ。同一レベルモンスター1万体討伐での、金箱出現の再現性もほぼ間違いないと見ていい」
「でもね。その次の段階、すなわち使役モンスターにスライムを1万体討伐させるというのは、彼らにとってもかなり難しいらしい。自分がやるのはなんとかなっても、使役モンスターに同じことをさせるのが大変ということだね」
次の段階、すなわちFS2からFS3への推移は使役モンスターのレベルアップが必要最低条件と思われる。しかし、それがかなり大変で躓いているのか。
根性のある自衛隊員であっても進んでいないとのことだ。
それもそうか。自分で1万体倒すのも大変だけど、そこは根性と体力さえあれば何とかなる。
しかし、それを使役モンスターにやらそうと思ったら更に大変、相当な忍耐力が必要のような気がする。
どんな仕事でも同じだ。自分でやるよりも他人にやらせる方が明らかに大変。場合によっては相当な我慢が必要になるかも。例えば仕事ができない部下とかだったらノルマを達成させるのは、自分がそのままやるよりも何倍もきついだろう。
俺の場合は使役モンスターと討伐を一緒に楽しめたからいいけど、そうでなければかなりの苦痛かもしれない。
使役モンスターと協力して一緒に討伐を進める。言葉にするとただそれだけのことが、一般的には想像以上に難易度が高いようだ。
使役モンスターとの信頼関係、連携強化、危険判断などなど。
俺が当たり前にやってきたことは、そこまで当たり前ではなかったらしい。そりゃそうか、いくら知能が上がったとは言え完全なるコミュニケーションはできないからな。
その結果、現在のところ、予算と人員を大幅に増強したにも関わらずFS3到達者はゼロというのが実情らしい。
研究は少しずつ前進している。だが道のりはまだまだ遠い。
そう考えると――
俺のケースはやはり特殊だったのだろうね。異常だと言われるとちょっとむかつくけど他の人から見れば異常な状況なのかもしれない。
多額の資金と組織的研究をもってしても再現できないことを、俺は独力でやってきたらしい。たまたまかもしれないけど凄いことをしてきたのかな。
そしてその次の段階、すなわちFS2からFS3に移行するために透子さんは俺たちの1つのお願いをしてきた。
それは自衛隊の現在の状況を見てアドバイスが欲しいというものだった。
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