第291話「上の人の重圧」
#第291話「上の人の重圧」
(レン視点に戻ります)
北海道・鹿部町の駒ヶ岳ダンジョンから氾濫したモンスターを討伐し、俺たちはヘリで立川駐屯地へと戻っていた。
機内では、自衛隊のダンジョン特殊部隊の人たちと自然と会話が弾んだ。
話を聞くと、自衛隊の人達も相当に緊張していたらしい。
……全然そんなふうには見えなかったけどな。
終始、落ち着いた対応だった。流れるような動きと会話で俺たちを導いてくれていたと思う。
緊張していてもしっかりとした対応ができる。やはりそれが自衛隊というプロの姿なのだろうね。
俺、個人の話で言えばとにかく無我夢中だったと思う。はやる気持ちを抑えきれず早く動きたい、早く倒したいとずっと前のめりだった。
かなりのハイテンションで冷静ではなかった。恐らく、それは周りの人にも伝わったことだろう。
そういった緊張を全く見せない自衛隊の人達はさすがだ。
もし仮に彼らが緊張しているように見えたら俺も普段の力を出せなかった可能性もある。やはり、たいしたものだと思う。
そして、今回の共闘で感じたことがある。俺たちはこれまでの“協力関係”から本当の意味で“仲間”になったように思う。冗談も言ってくれるようにもなったしね。
同じ現場で、同じ緊張を共有し同じ空気を吸って一緒に戦った。
俺たちが何の問題もなく動けるようにずっと気を使ってくれた。本当にいい人たちだ。
俺はつくづく思う。
本当に人に恵まれているよな。俺の周りはいい大人ばかりだ。常に大きな背中を見せてくれる人ばかり。
だからこそ、成長を止めるわけにはいかないとも思う。
助けられる側だけじゃ駄目だ。やはり助けられる人間にならないとね。あんな感じで背中を見せられる強い人間になりたい。
そんなことを考えているうちに、ヘリは立川駐屯地へ到着した。
そして、降りた瞬間――俺は固まってしまった。
なんと、そこにいたのは。
・高泉首相
・大泉防衛大臣
・そして自衛隊トップ、幕僚長の高倉さん
・さらに朝倉さん、エリナさん、黒澤さんまで揃っている
そうそうたるメンバーだ。
……何事?
すると、その場にいた全員が拍手で迎えてくれた。いやいやいや。俺から見ればはるか雲の上の人たちなんですけど?
拍手で迎えられるとか、ちょっと意味が分からない。
事情を少し聞いてようやく理解した。
函館は本気で危ないと考えていたらしい。
レベル3のベア系モンスター三百体、俺たちから見ると、冷静に対処すればなんとかなる相手だが、これまでの地球上でのモンスター氾濫規模としては最大級だったとのこと。
レベル3になると、その一体一体がライフルではなかなか止めきれない。
となると重火器が必要。だがそれも弾薬が尽きれば、防衛線は突破される可能性が高くなる。
函館市内に侵入すれば大惨事。それが、政府の見立てだったという。それを未然に防いだことで本当に安心したのだという。
……そういうことか。
だからこその、この歓迎か。
特に大泉防衛大臣のテンションがすごかった。佐伯隊長や岩崎さんに次々と「よくやってくれた」と声をかけ、次々にハグしていく。
さすがに女性隊員には握手だけに控えていたが、その勢いは止まらない。
そして。
なぜか俺の前にもやってきた。
「ありがとう。よくやってくれた。本当にたいしたものだ! 感謝する」
そう言って、軽くハグされた。
……は?
日本のトップクラスの人にハグされるとは……。
ちょっと感激してしまった。
できれば記念撮影をお願いしたいと思っている人なんだが。
その後は更に詳細な状況を教えてもらった。ダンジョンからモンスターが氾濫したという連絡を受けて、すぐに緊急対策会議が作られたとのこと。
次々と対策が打たれたが厳しい状況なので誰も安堵できなかったらしい。長期戦になる可能性も考えられたところに、いきなり「全個体撃破」という連絡が入り、喜ぶよりも驚きが多かったとのこと。
大泉防衛大臣も最悪のケースやその手の連絡も想定していただけに感情が爆発したとのこと。
それでちょっとおかしなテンションになっているらしい。
ただしその緊急対策会議のメンバーの中でも俺たちがモンスターを退治したのをしっているのは高泉首相、大泉防衛大臣、幕僚長の高倉さんの3人のみ。
他のメンバーは今でも理由が分からず困惑しているのだそうだ。そうか、俺たちのことは偉い人の中でもまだ秘密になっているのだな。
それにしても大変だ。
上に立つ人間ほど、最悪の事態を想定して動く必要があり、その緊張はとんでもないことだろう。おかしなテンションになるのも分かる。
俺のようにとにかく「倒せばいい」だけでは済まない。
いくつもの可能性を考え、失敗をも想定し、その上で決断する。もちろん失敗したら責められ、責任を負う必要もあるだろう。
それは、命令通りに動けばいいだけの俺がまだ背負っていない重みだ。
今回、俺たちは大きな仕事をしたが、それはこういった偉い人がレールをしいてくれているからだ。
そもそも、ダンジョンの氾濫を確認し迅速に連絡した人、その連絡を受けてトップに確認し指示を出した人などもいるだろう。
それぞれの人の迅速かつ正確な働きがあったからこそ、俺は何も考えずに動くことができた。直接倒したのは俺たちの功績ではあるけど、その陰には多くの人が動いていた。だからこそモンスターを討伐できたのだ。
今回はとにかくうまくいった。
でも、当然のことながら浮かれてばかりはいられないだろう。
今後はどうなるか分からない。もっと強いモンスター。もっと多い数の氾濫もあるかもしれない。
それが氾濫したら?
まだ足りない、もっと強くならないといけない。それが今の俺の役割だろう、そう強く思った。
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