第285話「リンのレベルアップと五分の二の力」
#第285話「リンのレベルアップと五分の二の力」
今日は使役モンスターのラムに続いてリンがレベル6にレベルアップする日だ。
この手のイベントになると、毎回のように顔を出す人がいる。そうあの人だ。
「今日も楽しみだなぁ! 必ず行くからね!」
満面の笑みでそう言う透子さん。一方で、エリナさんは不参加のようだ。エリナさんとしては一度、その現象を見れば十分らしい。
まあ、それもいつもの感じだ。透子さんは毎回現場で見たがる。研究者なので当然なのかもしれない。ちょっとした変化も見逃してはいけないからね。
一方でエリナさんは一度見たり体験したりすればそれで満足、あとは状況の確認さえできればいいので報告だけはお願いねという感じだ。
そして今日はレベルアップの日ということで、討伐は8人(3人+5体)のフルメンバーになる。
経験値を積む間は効率を考えて2グループに分かれているが今日だけは1グループにまとまって討伐する形ということだ。
リンを中心に、全員でフォローする形で進めていく。
普段は2グループに分かれて動いているから全員で1グループになると正直かなり余裕がある。敵モンスター、オークなどの討伐は特に問題なく進んだ。
そして――
何体かのオークを倒した、その時だった。
リンの動きが、ぴたりと止まった。いつものパターンだ。おそらくはレベルアップしたのだろう。
俺は早速、リンに確認した。
「リン、もしかしてレベルアップしたのか?」
「はい、今しがたレベルアップしましたです。レンさん、ありがとうございますです!」
そう言いいながらリンが勢いよく抱きついてきた。
毎回のこととはいえ、こうやって綺麗でかわいい子に抱きつかれるのはどうにも慣れない。
「リン、おめでとう」
そう声をかけると、みんなも次々と寄ってきて俺とリンに抱き着いていく。そしてどかからともかく「おめでとう」との祝福の声が。
――結果、わちゃくちゃだ。まあいつものことだが他のメンバーのレベルアップをみんなして素直に喜べるのは本当にいいことだ。嫉妬やねたみがあると大変だからね。
ともかく。
リンも無事、レベル6に到達した。
そして、やはりFSもラムと同じように遷移した。
FS遷移による変化は二つ。まず一つ目はダンジョン外でも念話が可能になるとのことだ。
「……うん、これは想定内。ラムと同じだ。外でも念話できるのは大きいけどね」
問題は――もう一つだ。
リンのFS遷移による2つ目の変化もラムと同様の効果を持っていた。
ダンジョン外でも俺、ひより、ルナの3人がダンジョン内の力の五分の一を保持できるというものだ。
つまり――
「ラムとリンで、五分の二ってことか」
ラムがレベルアップした時にそういうパターになることは想定していたが、どうやらその予想通りになったようだ。
確認のため、俺たちは一度ダンジョンの外に出た。
……やっぱり、違和感がある。
視界が、さらに澄んだ。遠くのものが、よりくっきり見える。動体視力も、確実に上がっている感覚があった。
「おそらく、スピードも、パワーも……上がってるな」
ただし、前回ほどの衝撃ではない。
やはりゼロから五分の一になった時の変化とは違う。
すでに大きな力に慣れている状態で、そこからの上積みだからだろう。変化への対応は前回よりも問題なくできそうだ。
「とはいえ……」
ひよりが慎重な表情になる。
「やっぱり、うっかりすると物を壊しそう」
「そうだな、より慎重になるとしよう」
ある程度は慣れているとは言え、力が増えた分、日常生活はより注意した方がいいだろう。間違いなく今まで以上に慎重に動く必要がある。
その後は朝倉さんにもリンがレベル6にレベルアップし、FS遷移したことを伝えた。
ラムと同じように念話が可能になり、更には一緒に討伐に参加いているメンバー俺、ひより、ルナの3人がダンジョン外でもダンジョン内の五分の一の力を開放できるという状況を報告した。すなわちラムとリンを合わせて五分の二になるということだ。
朝倉さんは「おめでとう。この調子で引き続き頑張って欲しい」と喜んでくれた。
ただし今回は対面での連絡はない。次回の定期連絡で、まとめて説明することになった。
というわけで――
ラムとリン、二体の使役モンスターがレベル6に到達しFSが解放されたことで俺、ひより、ルナの3人はダンジョン内の力の五分の二を、外でも使えるようになった。
正直、もう十分すぎる戦力だ。
……だが。
「万全を期すなら、まだだな」とルナがいう。さすがルナだ、油断はない。
ロア、ルフ、クー。
残る使役モンスターたちのレベルアップも、急ぐべきだろう。使役モンスター全員がレベルアップすれば五分の五=1、すなわちダンジョン内と同じ力がダンジョン外でも使えるようになる。
そうすればダンジョンが氾濫してもダンジョン外での討伐がより楽になる。
そのためにも着実に、そして確実に。使役モンスター全員のレベルアップを急ごうと思う。
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