第199話「朝倉と首相、大臣との極秘会合」
#第199話「朝倉と首相、大臣との極秘会合」
朝倉は、首相と防衛大臣に「至急、極秘の件で話がある」として面会を求めた。
応じたのは、日本初の女性でかつ最年少の女性首相――高泉早智子、そして彼女を支える若き防衛大臣、大泉純二。
実は首相と大臣の2共にハンター経験者、国政の場にいても現場感覚を失わない人物たちだ。
(もしかしたらどこかで聞いたことがある名前かもしれないがそれは気のせいだろう。それは忘れた方がいい)
人払いが済んだ会議室。扉が閉まり、室内にいるのは3人だけとなっている。朝倉の希望で、秘書官すら退室している。本来ではありえない異例な状況だった。
その重い沈黙を破ったのは首相の高泉だった。
「で、話というのは何かしら?」
朝倉はできるだけ冷静に答えた。
「――陣馬高原ダンジョンの件で、お話があります」
その一言で空気が一変した。
近ごろ国会でも問題視され追及を受けている「イレギュラーな事故」
横須賀ダンジョンに続く2度目の氾濫の件だ。最初の氾濫については何とか「イレギュラーな事故」ということで押し通し野党からの追及もさほどなかったが、さすがに2度目ともなると空気を読まない若手議員が吠える。そうすると野党のトップも追及に加わざるを得ないという状況で面倒なことになっていた。
首相としても防衛大臣としても話の内容が内容だけに「イレギュラーな事故」としか言えなかった。
情報規制が敷かれ、表向きは「偶発的な事故」として報道されているが、疑う人間は日に日に増している。最近では日本の各地でデモが起きておりそれも悩みのタネだった。
都心に近いダンジョンはA~Cランクで24時間監視、D、Eランクも夜間12時間体制が秘密裏に決まっているが……正直、予算がもたない。同時に自衛隊の予算も増額が必要という事情もあるからだ。その予算を得ようと思うと、どこかで正直に情報を出さないといけないがそうすれば大混乱になることは目に見えている。2人共に頭が痛い状況だった。
大泉がここ最近は渋い顔となっているのだが、それも仕方がないだろう。自衛隊増強も含めれば必要な予算の増額は数兆円規模。情報公開するまでどうやってやりくりするのか?とてもではないが無理な状況だった。
「確か陣馬高原ダンジョンの氾濫では自衛隊が到着した時にはすでにモンスターが全滅していたんだよな」と大泉。
高泉もため息をつく。
「たいした被害もないうちにモンスターが倒されたのは良いけれど、原因が分からないのは困るわね……」
そこで朝倉が、静かに切り出した。
「――モンスターを倒した人物がすでに判明しています」
室内に緊張が走る。
「なぜ、それを黙っていた!」
大泉が声を荒げた。
しかし、高泉は冷静だった。
「……事情があるのでしょう。続けて」
朝倉はすべてを語った。まずは若きハンター、結城蓮の存在、現在レベル5、実力はレベル6に匹敵する若きエースとも言える存在について伝えた。
「少し話は長くなります。まずは将来有望な若手・レン君から紹介しましょう。彼は21歳、ハンター歴3年程度でですがすでにレベル5、おそらくはレベル6相当の実力を持つと思われます」
「へぇ、21歳でレベル5なの。しかも実力はレベル6相当なら本物ね。それはかなり凄いわ。将来有望ね」と高泉。
「確かに凄い青年だ。できれば協力してもらいたいものだな」と大泉も呼応した。
実は首相と大臣の2人、共にレベル6のハンター仲間だ。だからハンター関連の知識もあり、詳細な解説は不要で話が早い。レベル5なのにレベル6相当の若手がいるとなるとこういった反応になる。
共に戦闘大好きで頻繁に影武者を立ててはダンジョンに潜っているのでSPも真剣に困っている状況だった。
共にダンジョン関連の話題で感心することはあっても、たいていのことでは驚くこともない。だが、その次の朝倉の言葉には驚愕するしかなかった。
「そのレン君は使役モンスター5体を従えています。うち3体はレベル5、2体はレベル4です。さらに――その5体は全て人化が可能、更にレベル5の3体は人間の姿でダンジョンの外に出られます。そして、陣馬高原ダンジョンの氾濫を鎮めたのはその中の1体です」
「「えっ!!!」」2人共に声が裏返った。さすがに予想もできないあり得ない報告だったからだ。
もしかしたら秘密部隊などが出動してその部隊が秘密裏にモンスターを倒したのかと考えていた。
ただし圧倒的な力でモンスターが倒されたと聞いておりそのような戦力は少なくとも日本にはない。なので訳が分からない状況だったがここに答えが提示された。
しかしその答えがとんでもない話だ。いろいろと理解が追いつかない。
「世間ではモンスター同士の同士討ちでは? などといろいろな説が騒がれていますが倒したのはリンという名前の使役モンスターです」
「倒したのが使役モンスターだと? そもそも使役モンスターが人化だと……馬鹿な、そんな話は聞いたことがない」
驚く大泉に、高泉も同調する。
「海外で使役モンスターが人化するという報告があると聞いたことがあるけど、都市伝説のようなものだったわ。まさかそれが本当だということ? でもそれを証明できるものは何かあるの?」
2人共にダンジョンについては詳しいが常識人である。使役モンスターをレベルアップさせるなんて考えたことはない。その使役モンスターが倒すなんて意味が不明、だがとりあえず思いつくことを質問していった。
そこで朝倉はタブレットを取り出し、映像を再生した。
画面には、水色の髪の女性――ラムが映っていた。
「この映像の中央、水色の髪の女性、見た目はどう見ても人間ですが使役モンスターで名前はラムと言います。彼女に注目してください」と朝倉は静かに語った。
画面では朝倉がコインのようなものをその女性に投げた。そこで2人は信じられないものを見ることになった。
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