40 テント購入
翌日。
助けられた人たちは命に別状はなかった。
ただ祭壇で寝させられていた男は手遅れだったらしい。
連行されたのは店主と、地下にいた魔物にならなかった怪しい男二人だった。
俺たちは怪我もなかったからあの後解散となったが、後日改めて話があるらしい。
なので依頼を受けるわけにもいかず、もっとも疲れているのであまり依頼を受けるつもりもなかったが。街をブラブラすることにした。
「あー、屋台か、何か食べるか。」
「うん。」
「私はいいわ、お腹すいてないから。」
「わかった、じゃあ軽く買わせてもらうよ。キリは何にする?」
「私は串焼きかな。」
「それじゃあ同じものを一つ頼むか。」
「私は三つね。」
「了解。すみません、串焼き四つお願いします。」
「はいよ。」
串焼きを四つ受け取る。
大きめの肉だ、外側がパリッとなるまでよく焼いるが中はジューシー。
うまいな。タレがどちらかというと塩だれといった感じか、肉汁と絡み合ってとてもいい味になっている。
キリはあっという間に食べているな、シロにも食べさせているから全部食べてるわけではないが。
「シロ、おいしいか?」
「シャー。」
コクコク。
美味しいらしい、シロは塩だれもいけるのか。
そういえば肉であれば好き嫌いをしているところをそんなに見ていないな。
シロにとっては肉であることが大切で、味付けに関しては嗜好品に近いのかもしれない。
もっとも乾燥させただけの肉よりは、調理された肉のほうが喜んで食べるのは見てて明らかだから多少の好みはあるだろうが。
「さて、食べ終わったしどこか行きたいところはあるか?」
「そうね、マジックアイテムを見に行くのはどうかしら?」
「マジックアイテムか。」
「ええ、なんだかんだで今までそれほど見てないでしょう?役に立ちそうなものがあったら儲けものぐらいの気持ちよ。」
「そうだね、絶対必要っていうわけじゃないけどあれば便利なものも多いもんね。」
「それじゃあ見に行くか、俺はどんなものがあるかわからないから、楽しみだ。」
ギルドでニューシルンお勧めの魔道具屋を聞いていくことにした。
「いらっしゃい。」
ここが魔道具を置いてある店か。
パッと見ただけだとどれがどういう効果を持っているかが全く分からない。
これは、ランプか?魔道具だろうからただのランプとは違うんだろうが。
「何をお探しで?」
「あー、じつはマジックアイテムに関してはよくわからないんだ、便利そうなものがあればと思って見に来た。」
「実用性のあるものが欲しいわね。どういったものがあるのかしら?」
「そうですね、基本的なものですが火を付けるものや、水を腐らせずに長く持ち歩くことができるマジックアイテムが人気ではありますね。」
「水は魔法で解決できているからいいわ。他に夜営で役に立ちそうなものとかないかしら。」
「夜営ですとお勧めは虫よけランプですね。テントの中においておけば虫による被害は少なくなるでしょう。」
テントか、そのテントがないんだよな。
そろそろ必要じゃないか?
チラッと二人を見る、悩んでいるようだ。
今は我慢しているが正直、虫の音や虫がくっついてくることに悩まされているのは三人同じだ。女性である二人はよく我慢しているなと思う。
ちなみに俺としては買っても問題ないと思っている、何せあるかないかで快適さが違うんだから。
おまけにこの虫よけランプ、大きさがそこまでない。むしろ小さいくらいだ。
持ち運びにはそれほど問題にならないだろうと思う。
テントも小さめのものを選べば許容範囲だろう。
「なぁ、この際テントごと買ったらどうだ?快適な休息は必要なことだと思うんだが。」
「うーん。」
「それもわかるんだけど、そうね・・・買いましょうか。」
「姉さん?」
「ちょっともったいない気もするんだけど、体調はしっかり管理しないと危ないでしょう?お金も一時期に比べれば余裕があるから、いいんじゃないかしら?」
「うーん、姉さんがそう言うなら。」
エリィは賛成、キリも消極的賛成といったところか。
それなら買ってしまおう。
「それじゃあ虫よけランプをお願いします。」
「ありがとうございます。」
お金を払って店を出る。
これで少しでも虫による被害が少なくなるんなら問題ないだろう。
「後はテントだな。」
「うん。なるべく持ち運びがしやすいタイプにしようね。」
「そうね、私たちは三人なんだから一人は見張りとして二人が寝ることができれば問題ないわ。」
「え?俺も一緒に寝るの?」
そう聞いたら呆れた顔を向けられた。
「テントを二つも持ち歩くつもりだったの?」
「それならこの話は無しになるわね、荷物の量が増えすぎるもの。」
「いや、男と女だとマズいだろ。」
「そんなこと気にしてられないよ。」
「何もしなければいいのよ、簡単なことでしょう。」
簡単に言ってくれる。
キリはまぁ子どもみたいな見た目だからいいとして、エリィは美人なお姉さんだ。
気まずいことになるぞ。俺はそこまで神経が太くないんだ。
でもテントを買わない選択肢はない。
虫よけランプは買っちゃったんだから。
俺が頑張るしかない、すぐに寝てしまえば大丈夫だろう。
うん、腹をくくろう。疲れていれば寝れるもんさ。
そんなことを考えている間に道具屋に着いた。
「らっしゃい。」
「テントあるかしら?」
「ありますよ、どのようなテントをお探しで?」
「二人寝ることができればいいわ、後は持ち運びがしやすいものがいいわね。」
「へい、それならこんなのはどうでしょう。最新式で防寒も備えてます。中も柔らかくて寝やすいですよ。」
「そこまでのものじゃなくていいわ。少し古くてもいいから普通に使えそうなものを教えてもらえるかしら?」
「それならこっちはどうですか?防寒はついてませんが自動的に畳む機能が付いてます。ただ、その機能の試作品という面もあって他の性能はごく普通ですね。値段は勉強させてもらいますよ。」
「そう。二人から見たらどうかしら?」
「俺は問題ないように見える。」
「うん。同じく。」
「決まりね。それを頂戴。」
「ありがとうございます。」
自動的に畳む機能ってのはどうなんだろうか、便利そうだからいいか。
結構あっさり決まったな。
なるべく大事に使っていきたいものだ。
二つ合わせると決して安い買い物ではないからな、キリが渋ったのもわかる。
代金を払って店を出る。
「これで俺たちもまともな夜営ができるようになったわけだ。」
「そうだね。ちょっともったいなかった気もするけど。」
「ふふ、これからまた稼がないとね。」
「いや、そこまで切羽詰まってはいないと思うが。」
「美味しいもの食べたいし。」
「お酒も飲みたいわ。」
「あぁ、そうだな。」
それなら頑張らなくっちゃならないな。
俺も珍しいコーヒーがあれば飲みたいし。
この街でも探してみるか?
ニューシルンに着いてから結構あわただしかったからそれくらいの時間をとってもいいよな?
いや、いくつか依頼を受けてからのほうがいいか、そうしないと二人が食べたり飲んだりしにくいかもしれない。
とりあえず呼び出されて用事が終わったらいくつか依頼を受けよう。
後は久々にスパーリングにでも付き合ってもらうか。
今日はまだ少し時間があるしな。
今回もいい戦闘経験をつめたんだ、その感覚を忘れないうちにお願いしよう。
「キリ、まだ少し時間があるから俺の練習に付き合ってくれ。」
「うん。いいよ。」
「それじゃあ私も魔力の操作の練習でもしようかしらね。」
「じゃあ街から出て少し歩いたところにしよう。」
「うん。」
俺は簡易的な木の剣を、キリはこん棒をもって対峙する。
先手はキリ。
ギリギリで避けることができた。
けど反撃するほどの余裕がない。
気のせいかパワーだけじゃなくスピードも上がってるな。
俺も負けてられない、次はこちらから仕掛ける。
キリは身をよじって回避する、と同時にこん棒でカウンターを仕掛けてくる。
今までならこれで終わっていただろうが今日はそのカウンターに対して剣で防御が間に合った。
―バキィ!
そう、防御は間に合ったんだが木の剣は跡形もなく吹き飛ばされて、哀れ木の藻屑となってしまった。
これって防げないんじゃないか?
少なくとも俺の力だと真剣を使ってたとしても吹き飛ばされていた気がする。
キリのこん棒が目の前に出される。
降参だ。
力では圧倒的な差があるけど今まで間に合わなかった防御が間に合うようになったんだ。
プラスに捉えておこう。
その後何度も模擬試合をやったが一度も惜しいと思う場面すら作れなかった。
悔しい。




