39 地下での戦闘
『ギィヤアアアアァァァァ!!!!』
目を突き刺されたのは大ダメージだったんだろう。
一歩、二歩と後ろに下がる。
だがこのチャンスを逃す手はない。
「チャンスだ!攻めるぞ!」
「わかった!」
「私はもう少しためないと撃てないわ!」
「撃てるようになったら頼む!」
顔が上がっている、なら喉を斬る。
くっ、ここもなかなか硬い、うまくいけば一撃で決められる場所だが俺の力では一撃では無理だ。
それでもなるべく手傷を負わせるように切り裂いていく。
キリは飛び上がって背中のダメージを受けているところにハンマーを振り下ろしているな。すごい衝撃だ。
『くぅ!いい気に!なるなあぁ!!!』
「ぐっ!」
「うわっ。」
くそ、もう少し切り付けてやりたかったが少し距離を取られてしまったか。
背後にスペースが少なくなったからかキリもこっちに合流した。
「どうだ?」
「ダメージは与えてると思う。しぶといね。」
「だな。片目は奪ったがその後のチャンスを生かしきれなかった。」
「動きも鈍くなってきてるし十分役割は果たしてると思うんだけどね。」
「あぁ、問題はあっちか」
そう、残りの二頭が結構拮抗しているのが問題だ。
騎士はさすがというべきか、鱗ごと切り裂く腕を持っているらしく、戦えているんだが、衛兵がいまいち戦力になっていない感じだ。
それでも押し気味なのはさすがといったところか。
もう一つのハンターのパーティーが少しマズい。
怪我人が出ていて何とか時間を稼ぎながら戦っているという感じだ。
出来ることなら俺たちが早めに倒して支援に回れればいいんだが、そうやすやすとはいかないだろう。
「仕方ない。もう少し踏ん張るか。」
「そうだね。」
相手の片目を奪ったことで正面からでもいくらかやりやすくなった、死角に回り込ませてもらおう。
やることは変わらない、なるべく死角から足首を切って動きを鈍くしていく。
それと同時にエリィの魔法の準備ができるまでの時間稼ぎだ。
敵はキリのほうに向いているな、もうなりふり構っていられないのか腕を振り回している。
あたったらシャレにならない、動きを鈍らせるためにも脇に剣を突き刺す、突き刺す、突き刺す!
よし、今のはなかなかのダメージだろう、明らかに動きが鈍くなった。
こっちを向いたらキリのハンマーでドカンだ。
と同時にエリィの魔法の準備が完了した。
「いくわよ!」
「頼む!」
爆音と同時にエリィの魔法の数々が相手の顔面に吸い込まれていく。
牙が飛び散っているのが見える。
エリィの魔法が落ち着いたころには相手はピクリとも動かなくなっていた。
よし、とりあえずこっちは片付いた。次はどっちにいくか。
騎士は問題ない、少しずつ有利になっている。
衛兵は敵の人間を捕縛し終えたみたいだな。なら騎士のところへ援軍に行くだろう。
となるともう一つのパーティーと変わるか、けが人も増えているしな。
「よし、むこうを代わりに受け持つぞ、もちろん無理をしない範囲で!」
「わかった!」
「わかったわ!」
そこでは前線のタンク役が何とか持ちこたえているような状況だった。
離脱者は剣士二人、残りは回復役とタンク役の二人だけ。
ひたすら耐えるしかない状況に見える。
なら早めに変わったほうがいい。
「こちらは終わりました!代わりに受け持ちますので回復を!」
「っ!わかった、助かる!」
剣で足を切り付けていき標的をこっちにする。
剣士二人が回復で復帰できれば心強いがおそらくは難しいだろう。
チラッと見た感じでは結構重いけがに見えた。
さてこの魔物、さっき戦った魔物より一回り大きい。
だがさすがというべきか前足の片方が無くなっている、剣士のどちらかがやったんだろう。
俺にはその腕がないだけに憧れを覚える。
「戦い方はさっきと同じ!無理はしないぞ!」
「「了解。」」
爪の攻撃が片足しかないのはだいぶ楽だ、踏み込みもできないから噛みつくことも難しいだろうし。
ここでも回避重視で体力を削らせてもらおう。
俺の力でとどめを刺すのは難しいからな、残った足を斬り続けさせてもらうぜ。
キリは背中にハンマーを叩き込んでるな。
確かに片足がない状況なら余裕をもって叩き込めるのかもしれない。
俺はチクチクと後ろ脚を斬ったり、攻撃をかわしてから前足を斬ったりする。
でっかいトカゲのような顔でも表情ってのはわかるもんなんだな、元が人間だったからか?
鬱陶しそうに、そして多少のダメージに顔を歪めながら攻撃してくる。
前足が片方ないからまだよかったが、両方とも健在だったらさっきのより大きい分、避けることができたか怪しいな。
「たぁ!」
キリがハンマーをどんどん叩き込んでいく。
後ろをとれていれば余裕があるみたいだな、見習いたいものだ。
俺も足の一本でも切り飛ばせれば様になるんだろうが、今は無理。
練習あるのみだ。
それでも回り込んでからの切り付けは安定してきた、後ろ脚の一本が使い物にならなくなるのもそう遠くないだろう。
「すまない、待たせたな。今そちらに向かう!」
騎士が魔物を倒したらしい。
ほとんど一対一で倒したのはさすがといったところか。
こっちは大分ダメージを与えているからな、騎士が来ればそう時間もかからないだろう。
「エリィ!魔法はよほどの時以外は使わなくていい!」
「わかったわ!」
エリィは魔力の制御が苦手だからパーティー以外の人がいると使いにくいんだよな。
連携が取れてないと魔法に当たりに行っちゃうかもしれないし。
パーティーとしては火力がすごいからいつも助けてもらってるけど。
「あと少しといったところだな。よし、よくやったぞ!」
そこからは楽勝だった。
俺とキリが隙をついて攻撃して、騎士が正面からでも鱗ごと切り裂いてダメージを与えていく。
さすがは騎士、剣の扱いが上手いんだろう。
慌てることなく冷静に残りの前足を斬り飛ばしてから、首にとどめの一撃を入れて戦いは終わった。
「ふぅ。皆ご苦労だった。もう敵はいないだろうとは思うが怪我人も出ている、捕縛されている人もいるからこれ以上の行動は難しいだろう。戻るにしても人手が足りない。増援を呼んでくるのがいいだろう、しばらくはここで待機する。君、事情を話して増援を呼んできてくれ。」
「わかりました。」
衛兵の一人が増援を呼びに出口に向かう。
怪我人はハンター二人、衛兵三人か。
死者が出なかったのは奇跡的といってもいいだろうな。
「この怪しげな杯はどうします?」
「うむ、証拠となるものだからな、一応持っていこう。」
「ではお任せします。」
動きっぱなしだったからな、少しでも休んでおこう。
シロ、お水頂戴。
「二人ともお疲れ様、さすがに疲れたな。」
「そうだね、今回はちょっと疲れたよ。」
「私は魔法を撃っただけだからまだ大丈夫よ。二人ともお疲れ様ね。」
「姉さんの魔法も凄かったね。あれでだいぶ助かったよ。」
「ふふ、それくらいはやらないとね。タメが長いのにダメージにならなかったら申し訳ないわ。」
もう少し魔力の扱いが上手くなればもっとタメも素早く、凄い威力になるんだろうな。
俺たちも少しずつ強くなってるんだから、そこらへんも期待できるだろう。
「それにしても人が魔物になるなんてヤバイアイテムもあるもんだな。」
「まず表には出回らないアイテムでしょうね。どこから手に入れたのかは知らないけど、真っ当なものではないのは確かよ。」
「うん。ああいったものは禁止されているはずだもんね。」
「なるほど、それだけやばい奴らだったってことは何となくわかった。できればもう二度と関わりあいたくはないな。」
「そうね。」
後は縛られていた人たちが行方不明者と一致したら事件は解決か。
俺たちにできることはしたつもりだし、後は上の人にお任せしよう。




