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ぽんこつ女神のテラリウム  作者: 忌野希和
ぽんこつ女神は騒々しい
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大陸に歴史あり

 ランルクトーザ王国アスイトフ領初代領主ハーマインは、その身一つでアスイトフ平原に巣食う魔獣を全て討伐し開拓した豪傑である。


 神無き大陸カンナウルトルムにおいて、ランルクトーザ王国は人種の版図の中では最も西部に位置する辺境国だ。

 当時アスイトフ平原は国の西端に隣接していて、建国以来魔獣が支配する未踏地帯だった。


 平原と隣接しているエクスルーア領の貴族の三男坊だったハーマインは、幼少の頃から体が大きく武芸に長けていた。

 長男が家督を継ぎ、次男はその予備。

 三男以降は自領を出て自立するという貴族の慣習に漏れず、ハーマインもその持ち前の武芸で生計を立てることにした。


 しかし周囲から見て以外だったのは、てっきり王都へ上京して騎士を目指すかと思いきや、ハーマインが自領で冒険者を始めたことだった。


 ハーマインが冒険者になって五年。

 二十歳を迎える頃には、並みの大人より頭三つ分は大きい体と、武芸への天賦の才でもってめきめきと冒険者としての頭角を現していた。

 そして冒険者としての名を上げれば上げるほど、周りからは騎士にならなかったことを惜しむ声が度々聞こえるようになった。


 同じ武勇でも冒険者と騎士では大きな差がある。

 冒険者としての武勇も勿論素晴らしいのだが、それはあくまで一人の冒険者としての評価だ。


 対して騎士としての武勇は個人の栄誉に収まらず、他国からの自国の評価に繋がる。

 その国に優秀な騎士が居れば、国自体も優秀に見られるというわけだ。


 武勇が極まれば国王より領地を与えらえれ、領主として君臨することもありえる。

 エクスルーア家は国内でも有数の良家だったため、ハーマインには領主たりえる武勇と家格が備わっていた。


 腕っぷしが強ければ誰でも領主になれるわけではない。

 貴族社会ゆえに貴族として、しかも良家に生まれたという事実こそが、最も尊ばれる才能なのである。


 ではなぜハーマインは騎士にならなかったのか。

 それは彼に近しいものだけが知っていた。

 ハーマインは極度に人見知りな性格で、協調性に欠けていた。


 コミュ障でボッチ気質だったのだ。


 冒険者としての活躍も単独での魔獣討伐が大半を占め、パーティーとしての成果は殆ど無い。

 巷での評判は寡黙で孤高だが、よく言ったものだ。


 幸いにも人見知りならぬ魔獣見知りはしなかったので、魔獣相手なら容赦無く屠ることができた。

 貴族社会というのは騙し騙される人間の皮を被った魔獣が蠢く世界である。

 そんな魔窟で生きるくらいなら、ハーマインとしては普通の魔獣と殺し合っていたほうがよっぽど気が楽だった。


 騎士よりは楽とはいえ、冒険者でも他者との関わりが完全に無くなるわけではない。

 今からでも遅くないから騎士になれと家族に諭されることもあった。

 人付き合いを嫌がり逃げれば逃げるほど、ハーマインの活動拠点は人里を離れて西へ移動を続ける。


 やがて魔獣が跋扈するアスイトフ平原に辿り着いた。

 そして自分以外に人の居ない平原に引き籠り続けた結果、齢三十になる頃には単独でその平原から全ての魔獣を一掃してしまった。


 流石に人類未踏の地を開拓した英雄を国が放っておくことは無い。

 ハーマインは国王の王命により、アスイトフ平原の新たな領主として強制的に据えられてしまう。


 更に時期を同じくして、押しかけ女房のようにやってきた地母神の信徒である聖女を伴侶にして、人生の後半は貴族としての生活を送ることになった。

 自慢のコミュ障が炸裂するかと思われたが、押しかけ女房の尻に敷かれ……もとい内助もあって、君臨すれども統治せずを見事に実践し、晩年は優秀な領主として日々を送る。


 大往生の後、彼の功績は讃えられ大きな地下墓地が建設され、愛用の武具と共に永い眠りに着く事となった。

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