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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第二部 第一章 開拓編

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EP88 二つの目標

 俺のやるべきことは、大きく分けて二つだ。


 一つ目は、この島の開拓。

 設備を整え、できるだけ早く神器化結晶石の生産体制を整える必要がある。

 その大まかな流れはこうだ――木材や鉱石、石などの素材を探索し、収集キューブで吸収する。


 その素材をエネルギー変換装置で分解し、エネルギーとしてストック。


 必要なエネルギーが揃ったら、ようやく建設に取り掛かる。


 俺は手のひらサイズの収集キューブを手に取り、目の前にそびえる大木の前に立った。

 軽く深呼吸をしてから、そっと幹に押し当てる。


「――スキャン開始」


 低い電子音が響き、キューブは大木をなぞるように淡く光を放つ。

 スキャンが完了すると、キューブはふわりと宙に浮かび、大木の横で静止した。

 次の瞬間、巨木は粒子状に分解され、光の流れとなってキューブの中へと吸い込まれていく。


「おお……これは本当に楽だな」


 岩も同じ手順で吸収できる。

 ただし、木や岩のサイズによっては完全に収集が終わるまでに30分前後かかるのが難点だ。

 それでも、わざわざ切って運んで加工する地道な作業に比べれば、圧倒的に効率的だった。


「収集キューブをもっと増やして、同時に複数動かせるようにしたいな……」


 そう考えながら、キューブが作業を続けるのを見守る。


 二つ目の課題――天力の修行だ。


 これはキューイから聞かされていた。

 修行は三つの段階に分かれている。


【第一段階】


 キューブを複数同時に出現させること。

 基本的にキューブは一つしか展開できないが、天力を極めれば複数個を同時に扱えるようになる。

 そうなれば、スペルの同時発動が可能になる。



【第二段階】


 キューブを天力で浮遊・操作させること。

 現状、スペルを放つときはキューブを必ず手に持つ必要がある。

 だが、天力で周囲に停滞させられれば、両手を空けたまま無詠唱でスペルを放つことができる。



【第三段階】


 スペルを創生すること。

 自分のキューブの特性を深く理解し、天力を絡めて新たなスペルを開発する。

 現在使える「ディスラプションカット」と「ゼロフラクチャー」は、いわゆる“ベーシックスペル”。


 これは天力を宿さない初期機能で、強力ではあるが伸びしろがない。

 このままではグローバル世界では限界が来る――キューイの忠告を、改めて思い出す。


「まずは……第一段階、か」


 収集キューブが素材を吸い込んでいる間、その時間を修行にあてることにした。

 しかし、どの程度の時間が必要なのか――そこまで聞いておくべきだったな。


「まあ、やるしかないか」


 俺は深く息を吐き、再び天力の流れに集中した。

 こうして、素材集めと修行を並行して進める日々が始まった。


・・・

・・


 未来都市を思わせる広大な訓練場――そこはグローバル世界未来人族・本国訓練所だった。


 床も壁も厚い鉄板で覆われ、頭上には無数の電子パネルが宙に浮かび、光のラインが交錯する。

 白と青を基調とした眩しいほどの空間には、滑らかな曲線を持つAIロボットたちが、音もなく動き回り訓練生の補助を行っている。

 近未来の美術館のように整然としていながらも、そこには常に緊張感が張り詰めていた。


 その中央に、レスターと共に転送されてきた三十名の異色キューブ保持者たちが立ち尽くしていた。

 異色者――彼らはその異様なキューブの輝きゆえに一目で区別できた。


 レスターは片手をポケットに突っ込み、面倒くさそうな態度で口を開いた。


「さて、お前ら……いや、“異色者”たちとでも呼ばせてもらおうか。

まずはおめでとうだ。めでたく天族になり、寿命って概念がなくなった。

永遠の命――なんて聞くと夢みてぇだろうが……」


 彼はそこでニヤリと笑い、指を一本突き立てる。


「だが、現状それ“だけ”だ。寿命がなくても、殺されたら普通に死ぬ。

だから――生き残る術を叩き込む必要がある」


 レスターが指し示した先、訓練場の奥には立体映像のホログラムが浮かび上がり、

 「修業段階」と書かれた三つのステップが表示された。


 そこに映し出されていた訓練内容はハトヤがキューイから聞いている内容と全く同じであった。


 レスターは一呼吸おいて続けた。


「まずは第一段階だ。最初に天力を安定して操れるようになった二人を“幹部候補”として選抜する。

そいつらには最初の任務を与える。――人族が開拓中の島に行って、“先導者”を殺すんだ。」


 ざわめく異色者たち。

 その中からひときわ目立つ青年――ヴィランツが一歩踏み出し、鋭い目でレスターを見据えた。


「質問です。第一段階の修業を終えるのがどのくらいか分かりませんが……今すぐにでも襲撃することは不可能なんですか?

すでに転移はできるんですよね? それなら最強のレスターさんが乗り込めば――」


「ははっ!」


 レスターは豪快に笑い飛ばした。


「その攻めっ気、嫌いじゃねぇよ。でもな、無理だ。俺が本気出して島を破壊できるなら、わざわざお前らを集めてねぇ。

そもそもだ――島に転移するには十分な天力が必要だ。今のお前らじゃ転移装置に乗ってもピクリとも反応しねぇよ」


 そして、肩をすくめながら付け加える。


「もうひとつ理由がある。俺たち“未来人族”は、管理者に目を付けられてんだ。もし俺が島に行ったら――即座に消されるだろうな」


「管理者……?」


 異色者たちの間に緊張が走る。


 レスターの表情は一変し、真剣さが滲んだ。


「“純天族”と呼ばれる存在だ。普段は決して姿を見せねぇが、何か重大な変化があれば、すぐに現れて状況を是正する。

俺たちはあの種族を、“神と俺たちの間に立つ高位存在”として認識している」


 彼は淡々と続けた。


「だが――お前らは人族だった。島に降り立つのも計画のうちだったから、存在に違和感はない。

普通に入島し、任務を果たせるはずだ」


 少し考え込みながら、ヴィランツが問い返す。


「修業にはどれくらいかかるんです?」


 レスターは天井の電子パネルを見上げ、指を折りながら答えた。


「凡人で第一段階に一年、第二段階に十年、第三段階は……人による。

すぐに“創生”できる奴もいれば、百年経っても無理な奴もいる。……ましてお前らは“異色”だ。時間がかかるのは覚悟しておけ」


「一年……!」


 ざわめく異色者たちに、レスターはにやりと笑った。


「安心しろ、凡人での話だ。だが俺も悠長には待ってられねぇ。せめて十か月以内に二人は第一段階を突破しろ。そうすりゃすぐにでも任務を開始できる」


 その瞬間、訓練場に緊張と熱気が満ちた。


 レスターは一歩前に出て、挑発するような視線を投げる。


「さぁ、始めるぞ! “複数個”と聞いてビビるかもしれねぇが、最初は二個出せりゃ十分だ。

俺だって最大で三〜四個が限界だ。二個出せた時点で、お前の天力は一人前だ」


 その言葉に応えるように、異色者たちは声を上げた。

 その声は訓練所全体に響き渡り、未来的な空間を震わせた――。

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