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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第二部 第一章 開拓編

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EP86 グローバル世界に降り立つ!

 目を開けた瞬間、視界に飛び込んできたのは、見渡す限りの大自然だった。

 澄んだ空気、どこまでも続く青空、遠くで鳥が鳴いている。

 だが、そんな風景に感動する暇もない。


「……なんだ、これ……」


 全身が熱い。

 だが不快ではなく、むしろ体の奥底から力が湧き上がってくるような、不思議な感覚だった。

 この感覚……そうだ、以前レベル10のボスと戦った時に発揮した、あの“力”に近い。


 試しにキューブを取り出し、声に出してみた。


「カオスアビス!」


 しかし、何も起きない。

 沈黙したままのキューブを見つめ、ため息をつく。


「やっぱり、キューイの言った通りか……。あのスペルは俺の力じゃなく、誰かの残滓だったんだな」


 気を取り直して、キューブのアイテムリストを開く。

 そこで、すぐに違和感に気が付いた。


「……ローカル世界アイテムまとめ?」


 新しくできたフォルダ。その中に、これまで集めた全てのアイテムが収納されている。

 だが――取り出そうとしても、反応がない。


「は? ……ローカル世界のアイテム、こっちじゃ使えないのか!?」


 嫌な汗が背中を伝う。

 その瞬間、頭をよぎったのは――はむまるの存在だった。


「……はむまる! お前、まさか……!」


 慌ててペット装備欄を確認する。しかし、リストにははむまるの名前がない。

 視界が滲み、喉の奥がぎゅっと締め付けられる。


「嘘だろ……」


 ――ごそ、ごそ。


 胸ポケットのあたりで小さな動き。

 慌てて覗き込むと、そこには――いつものはむまるがいた。


「は、はむまるっ!!」


「キュ!」


 元気な鳴き声。

 その声を聞いた瞬間、こみ上げる安堵感に膝が崩れそうになった。


 どうやら装備扱いではなく、“完全な生物”として存在するようになったらしい。


「よかった……本当に、よかった」


 安堵も束の間。

 はむまるがふと動きを止め、全身を淡い光で包まれ始めた。


「ど、ど、ど……どうした!?」


 光は一層強くなり、眩しさで目を開けていられない。

 そして――光が弾けた。

 そこに立っていたのは、俺の胸ポケットに収まっていた小さなはむまる……ではなかった。

 体長3メートルほど、馬よりもひとまわり大きい、もふもふの巨大はむまるだった。


「は、はむまる……進化したのか?」


 原因は不明だが、おそらく天力の影響だろう。

 謎が深まるばかりだが、今はそれより――この衝動が勝った。


 俺は勢いよく、その大きな背中に飛びついた。

 ふわふわで、程よく温かい毛並み。

 抱きしめた瞬間、胸の奥から笑いがこみ上げてくる。


「まさか、はむまるをこんな風に抱きしめられる日が来るとはな……!」


「キュ!」


「……ん? 乗れってか?」


「キュウ!」


 促されるまま、俺は巨大はむまるの背中にまたがった。

 視線がぐっと高くなり、自然と笑みがこぼれる。


「じゃあ、ちょっと周囲を回ってみるか!」


 軽く合図を送ると、はむまるは滑るように走り出した。

 その動きは信じられないほど滑らかで、小回りも利く。

 瞬発力も凄まじく、障害物を難なく回避していく。


「速ぇ……!」


 速度はおそらく時速100キロ近く。馬なんか比べ物にならない

 風を切る感覚に、思わず笑みがこぼれた。


(……これ、鞍とか作らないと振り落とされるな)


 新たな相棒として頼もしいこと、この上ない。


 ――そして、このタイミングで気付いてしまった。


「……あ、俺……全裸だ。」


 ローカルのアイテムが全部消えている為、当然の結果だった。

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