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異世界に逃げ込んだ犯罪者をPKするのが仕事です――ヒデンスター・ノヴァで命を狩る者  作者: 鳩夜(HATOYA)
第二部 第二章 犯罪者狩り編

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118/119

EP118 迅速に

 ブラックリスト・ランキング1位

 レヴァイン・スローター


 風は吹かない。

 鳥も鳴かない。

 ただ、一振りの剣が空気を断つ音だけが響いていた。


 レヴァイン・スローターは、淡々と草原エリアの村中央通りを歩いていた。

 剣の重さに変化はなく、振るたびに返り血だけが赤い弧を描く。

 殺気も気配もない。

 彼にとって、目の前の“人間”は敵でも獲物でもない――ただの雑草だった。


 男が悲鳴を上げかけた瞬間に首が飛ぶ。

 母親が子を抱えて逃げるより早く、胴が斬り裂かれる。

 足音すら殺すような無音の殺戮が、何十人、何百人と続く。


 村の中心に着いたとき、彼はようやく剣を下ろした。

 動くものは――何一つ残っていなかった。


「……終わり」


 その声に、喜びも興奮もない。

 ただ事務作業を一つ片付けたような、乾いた響きだけだった。


 そのとき。


「――ほう。これはまた……えげつないことをしとるのう。」


 柔らかい声が、背後から落ちた。


 レヴァインはゆっくり振り返る。

 そこには、小柄な褐色肌の女――キューイが立っていた。


「この村におった人族、どうした?」


 キューイの問いは静かだった。

 しかし内側には、確かな怒気が宿っている。


 レヴァインは淡々と答えた。


「全員処理した。」


 その一言で、空気が裂けた。

 キューイの表情が、怒気すら通り越して無音の「憤怒」で満ちる。


「……そうか。

 おぬし、死にたいらしいの。」


 キューイは拳を構えた。

 レヴァインはそんな彼女に一瞥をくれ、わずかに首をかしげた。


「武器は? ……丸腰か?」


「わしの武器は――拳じゃ。」


 その瞬間、レヴァインの眼がわずかに細くなる。


「なら、死ね。」


 彼は赤緑のキューブを取り出し、空間に押し当てる。

 複数の紋様が即座に展開し、光が走った。


「ツインルイン・カスケード」


 網のように重なった衝撃波と斬撃がキューイへ降り注ぐ。

 地面は割れ、家屋は吹き飛び、塵が舞う。


 だが――


 塵の中心に立つキューイは、微動だにしていなかった。


「ひよっこが……」


 キューイは一歩歩み出る。


「天力を帯びていないスペルなど、効かぬわ。」


「な……に……?」


 レヴァインの顔色が変わる。

 初めて、彼の感情が揺れた。


「ま、まさか……天族!?」


 逃げなければ――

 そう思った瞬間には、もう遅かった。


 キューイの姿が消え、視界が赤く揺らぐ。


 次の瞬間には、

 キューイが目の前にいた。


「遅い。」


 一撃。


 それは拳を振るったというより、

 空間そのものが殴られたような衝撃だった。


 レヴァインの身体は音もなく砕け散り、

 粉となって虚空に消えた。


 残ったのは、漂う粒子と沈黙だけ。


 キューイは拳を下ろし、村全体を見渡した。


「……こんな地獄、放ってはおけん。」


 風のない村に、彼女の声だけが静かに響いていた。

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