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悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


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第70話『ライバルと友と』【魔族姫編⑩】

 事件の翌日。学園の大講堂には、教師陣と生徒代表が集められていた。

 壇上には学園長、その脇に王都から派遣された文官の姿もある。

 空気は重く、ざわめきは小さく。

 議題は一つ――「クロス組一年生たちの異常な力について」だった。


「昨夜、仮面の一団が校内で捕縛されました。」

 学園長が朗々と告げる。

「彼らは“クロス組の新入生は人ならざる者だ”と吹聴し、証拠を作り出そうとしたようです。」


 ざわめきが広がる。

 中には「やはり……」と呟く声もあった。


「しかし!」

 カイが立ち上がり、壇上に歩み出た。

「証拠は何もない。あるんは、こいつらが仲間を守るために必死で戦った、っちゅう事実や!」


 ルーティアが続いて声を張り上げた。

「昨日、彼らを攫おうとしたのは陰謀派閥の残党です! 仲間を守る姿を、私はこの目で見ました!」


 リリシアも一歩前に出る。

「私たちは、ただ学びたいのです。式を、理を、共に――それだけです。」


 堂内は静まり返り、やがてひとりの教師が口を開いた。

「……私は見た。彼らが互いに支え合い、結界を張るのを。あれは人を傷つけるための力ではなかった。」


「俺もだ。」

 別の教師が頷く。

「力があること自体は問題ではない。それをどう使うかだろう。」


 賛同の声が次々と上がり、やがて文官も頷いた。

「――監視は必要ですが、即座に排除すべき理由はないと判断します。」


 会議は終わり、空気は重苦しさから少し解けた。


◆◇◆


 講堂を出るとき、ルーティアとリリシアの肩が自然に並んだ。

「あなた、昨日の共闘……なかなか悪くなかったですわ。」

「あなたこそ。背中を預けても、安心できました。」

 二人は顔を見合わせ、くすっと笑う。


 その様子に、カイがぽりぽりと頭を掻いた。

「おーい。昨日まで“私の席よ”とか言うてたん、どこのどいつや。」

「旦那様は私のものですわ!」

「先生は私の師です!」

 二人が同時に言い放ち、またもや漫才のような空気が広がる。

 通りかかった生徒たちが笑い声をこぼし、拍手する者までいた。


◆◇◆


 その日の夕方。

 クロス組の教室には、二年も一年も入り混じって机を寄せ合っていた。

 ルーティアが剣の手入れをしながら言う。

「……私、あなたのことを完全には嫌えないかもしれません。」

「私もです。あなたがいるから、競えるのです。」

 リリシアは静かに答える。


「……なんや、ええ感じにまとまっとるやないか。」

 カイが苦笑して飴玉を机に二つ置いた。

「ほれ。友情のご褒美や。」


「ありがとう、カイ。」

「ありがとうございます、先生。」

 同時に伸びた手が、飴玉を受け取る。

 視線が交差し、また笑い合った。


(結局……ワイは逃げられへんのやろな。)

 窓の外に広がる夕焼けを見ながら、カイは心の中でそう呟いた。

 蒼と紫紺、二つの瞳の火花は、敵対ではなく競い合いへ。

 ライバルであり、友でもある――そんな不思議な関係が、今まさに芽吹いていた。

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