第26話『戦陵祭開幕! クロス組の快進撃』【学園行事編:戦陵祭③】
秋の空は青く澄み渡り、王立ロゼリア学園の大広場には巨大な観客席が組まれていた。
王都からも貴族や市民が詰めかけ、戦陵祭はすでに“王国の一大イベント”と化している。
「うわぁ……すごい人だ……」
「お祭りみたいですね!」
クロス組の生徒たちは、緊張と興奮でそわそわしていた。
壇上に学園長が立ち、声を張り上げる。
「本年度、戦陵祭をここに開幕する! 剣技の部、魔法の部、それぞれ力を尽くせ!」
大歓声が広場を揺らした。
だが――クロス組の名前が呼ばれた瞬間、あちこちから微妙なざわめきが走った。
「え、あのクラス魔法の部は禁止になったんだろ?」
「そうそう。だから仕方なく剣で出るらしい」
「剣なんてまともに振れないだろうに」
嘲り混じりの視線。
生徒たちの肩が少しだけ縮こまる。
「なぁに、気にすんな」
カイは軽く笑って肩を叩いた。
「他人の目はデータや。データは結果でひっくり返したらええ」
「先生……!」
その言葉に、生徒たちの顔に決意が戻る。
◆◇◆
第一試合。
クロス組代表の一人が剣を構え、相手は武闘特化クラスの生徒。
「おいおい、そっちのクラスは魔法の落ちこぼれだろ? 剣で勝てるわけないさ!」
相手が挑発する。
審判の合図。
「始めッ!」
相手が大きく振りかぶった瞬間――クロス組の生徒はすっと腰を落とし、角度30度の突きを放った。
ズバァン!
防御をすり抜け、木剣の切っ先が相手の胸板に突き刺さる。
「ぐはっ……!?」
観客席がざわめき、審判が驚きつつも叫ぶ。
「勝者、クロス組!」
「……まぐれだ!」
「そうだ、偶然当たっただけだ!」
◆◇◆
ざわつく中、第二試合。
別の生徒が出る。
開始と同時に相手が突進するが、カイの「角度45度、半歩後ろ!」の声に従い、
ベクトル通りに振った一撃で相手の剣を弾き飛ばした。
「な、なんだと……!?」
観客席から驚嘆の声。
◆◇◆
続く第三、第四試合も同じ。
数式とパターンを駆使したクロス組の剣技は、無駄がなく美しい動きで相手を圧倒した。
「な、なんで……! 魔法クラスなのに!」
「剣が……整ってる……!」
観客の空気が次第に変わっていく。
◆◇◆
そして第五試合。
ルーティアが出場した。
「ふん、私の剣は誰にも止められないわ!」
相手は剣術に自信のある三年生。
観客も「さすがにこれは無理だろう」とざわめく。
審判の合図。
相手が素早く突きを繰り出すが――
ルーティアはカイの声を聞いた。
「角度75度! 重心は後ろ!」
ズバァン!
彼女の剣が相手の攻撃を受け流し、そのまま逆袈裟に叩き込む。
相手はたまらず剣を落とした。
「勝者、クロス組!」
「きゃあああ! ルーティア様ーー!!」
観客席から黄色い歓声。
クロス組の初戦は、全勝で突破。
会場の空気は一変していた。
「なんだあのクラスは……!」
「数式で剣を操っている……!」
「教師がただ者じゃない……!」
カイは肩を竦めて笑った。
「ほらな? データは結果で塗り替えるんや」
ルーティアは胸を張り、カイの腕に絡みつく。
「当然よ! だって私たちは“カイ先生の生徒”なんだから!」
「おいおい、試合中やぞ!」
「関係ないわ! 私は堂々と勝者の奥様気分になるの!」
「だから奥様言うな!」
観客席は笑いに包まれ、クロス組の名は一気に学園中に響き渡った。




