表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢が攻略対象ではないオレに夢中なのだが?!  作者: naomikoryo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/136

第127話『風の結晶、剣の軌道』【魔王城での決戦編⑪】

 沈黙が、戦場を包んでいた。


 術式の爆光が消え、崩れ落ちた“聲魔”グラヴェルの本体――

 その黒核は、確かに砕けかけていた。


 だが、完全には消えていない。

 あの“聲”は今も残っている。


 リリシアはその前に立ち、風の輪を収束させていた。

 背中の黒翼が、空気をかき乱すように揺れながらも、彼女の体は魔族の姿には戻らない。

 それは彼女自身が、自分で制御している証だった。


「……お前は、誰だ?」


 かすれた“聲”が、黒核の内から響く。

 名を持たぬ魔の意識が、なおも問いかける。


「私は、リリシア・グレモール・クロス組所属」


 リリシアは、凛とした声で答えた。


「魔王の娘であり、先生の教え子。そして――」


 少し振り返る。

背後には、剣を手に立ち上がったルーティアと、倒れかけたカイを支える魔王の姿。


 「――ここにいる、皆の仲間です」


 風が唸った。

 彼女の周囲に、目には見えない数式の“風の結晶”が漂い始める。

 かつてカイが教えた、風の魔法の“角を面に変える式”。


 それを、リリシアは――再構築していた。


◆◇◆


(先生がくれた式は、ただの力じゃない)


(“戻りたい”という想いも、“怖い”という気持ちも、全部、受け止めて丸めて……)


(私は、ただの魔族じゃない。人でも、魔でもなく……今の私は、私なのよ)


「――いきます」


 リリシアが指を鳴らした瞬間、風の結晶がその場に広がった。


 それはまるで、数百枚の透明な鏡が舞うよう。

 風圧の乱反射と数式の干渉で、敵の魔力を全方向から折り返し、撹乱し、無効化する。


 “聲魔”の残響が咆哮を上げる。

 黒核から放たれる呪詛の波が、正面からリリシアを襲う。


 だが、その瞬間――

 ルーティアが跳んだ。


「任せなさい!」


 紅剣の軌道が、一閃。

 呪詛の黒い軌道を――真っ二つに断ち切った。


 その剣には、火の式が宿っていた。

 カイがかつて伝えた“炎の方程式”を、ルーティアが自らの剣技に融合させたもの。


「今です、リリシア!」


「ええ――!」


 二人の声が、空中で交差する。

 風と剣が連動し、数式が回転を始める。


 最終魔術、風の結晶剣――《ヴィンド=オーヴァ》が、リリシアの手の中に姿を現した。


 それは、風が刃となって束ねられた、透明な剣。

 振れば見えず、音もない。

 ただ、その先にあるものを――消す。


「これが、先生から教わった式……私の全部です」


 リリシアが剣を構えた。

 そして――一歩、踏み込む。


◆◇◆


 一撃。


 それはまるで、風が通り過ぎたかのような、静かな斬撃だった。

 だが次の瞬間、“聲魔”の黒核が悲鳴のような音を上げ、内側から砕けた。


 「ッ……!」


 リリシアがその余波を受けて後方に吹き飛ばされかけた、その時。


 「ナイスカット、リリシア!」


 カイが、理手ではない右手で彼女の手を掴み、引き寄せた。

 そのまま、力いっぱい抱きしめる。


「……先生……?」


「ようやったな。せやけど、まだ終わりやないで」


 カイは、そのまま空を見た。


 “聲魔”の黒核が砕けたにもかかわらず――

 そこには、なおも“聲”の名残が漂っていた。


 形はない。言葉もない。

 それはもう、ただの“呪い”の残骸だ。


 だが、放っておけば、どこかに寄生し、また誰かを壊すかもしれない。


「今度こそ、終わらせる」


 カイは再び、ルーティアとリリシアの手を取った。

 三人の魔力が、再びひとつに――


 光が溢れ出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ