表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/22

8 お気に入りの場所でキスをする

「はぁ、今日はなんだか疲れたわ」

「いろんなところに連れ回してしまったからね。ごめんよ」


 夕方過ぎになり、私たちはやっと家に帰ってきた。

 ソファでくつろぐリオン、おままごとセット風のベッドでくつろぐ私。

 そして、二人とも同じタイミングで「はぁ~」と一つ大きなため息をもらす。

 そのあとリオンがつぶやいた。


「あれからオカリナの授業もすることになるなんて予想外だったね。しかもこれから週一回授業するようになるなんて……」


 実はあのあと、リオンは何度もオカリナを吹くハメになり、さらには授業までさせられていた。つまり、私としてはキスの連発。キス祭りだったわけである。

 だけど、リオンとのキスは正直言って嬉しかったとはいえ、さすがに何回も連続でやると疲れた。心身ともに疲労感が溜まった。また、それはリオンも同じようだった。


 しかし子どもたちに好評だったために、今後も週一回の授業が組まれることになったのだ。それは感謝しないといけない。

 それと今後も授業では疲れるかもしれないけど、やっぱりキスできるのは嬉しい。


「リオンは週一回の私とのキスは嫌?」

「え? いや、その、嫌ってわけじゃないよ」


 リオンはあたふたしながら答える。私の質問がいじわるだったかしら。


「嫌ってわけじゃないなら、一体どんなわけよ」

「僕は心配なんだよ。カリーナの負担になってないかが」


 リオンは私を気遣ってくれていた。

こういうやさしいところって、リオンの素敵な部分よね。私は気分が良くなり、


「別に私は負担になってないわよ。むしろ……いえ、気にしないで」

「そう、それならよかったよ。あ、僕も負担にはなってないからね」


 リオンは負担になってないと答えた。

 私は内心ほっとする。もし負担になってたら、週一回やってくるキスが辛いものになっていたかもしれないから。


「それにしてもリオンって何でも吹けるのね」

「なんでもってわけではないよ。僕も吹けないものはたくさんある。だから練習が必要なんだ」

「へえ、リオンでも吹けないものがあるのね。それにちゃんと練習してるんだ」

「そうだよ、練習しないとすぐに腕が落ちるんだ。だから、これからは練習のためにオカリナも吹かないといけない。だってオカリナの授業をしないといけなくなったからね」


 なんですって?

 練習のためにオカリナを吹かないといけない?

 それって、週一回の授業以外にもキスできるってことよね?


 このとき私は、リオンとキスする回数が多くなることを喜んでしまった。心の中で。自分で言うのもなんだけど、悪い女ね、本当に。


 するとそのとき、「カリーナ、今日はまだ大丈夫かい? 元気ある?」と、リオンが尋ねてきた。


「ええ、まだ大丈夫ではあるけれど、一体どうしたの?」

「さっそくだけど、今から練習したいんだ。いいかな?」

「もちろんいいわよ!」

「ほ、本当に元気だね」


 あっ、しまった。ついがっついて返答してしまった。そんな私の反応を受けたリオンは、ちょっと引いているように見えた。



--



 練習をするために私たちは再び外出した。そして村はずれにある広大な草原に来ていた。この草原から見えるのは、プレーリーの村と遠くにぽつんと見えるお城だけだ。あのお城は恐らくマルシェ城だろう。


 私は空を見た。

 空は夕暮れ時で、昼と夜が混ざったあいまいな橙色で染まっていた。不思議な気持ちにさせる色だと思った。


「この草原は僕のお気に入りの場所なんだ。静かで広くて、誰にも邪魔されない。最高の練習場所なんだよ」

「うん、いい場所ね。私のお気に入りになったわ」

「本当かい!? それはよかった!」


 明らかにリオンはテンションが上がった。私のお気に入りになったと言っただけで。こういうときのリオンってすごく可愛く見えるわね。


「よーし! やる気が出てきた! 今日は日が暮れるまで練習するぞ!」


 リオンはそう言うと、勢いのままオカリナを吹いた。


 こうして通算何度目かわからないキスを交わした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ