9 激しいキスとやさしいなでなで
リオンの練習は思ったより激しかった。
何度も繰り返しオカリナを吹いた。
つまり、私はキスをされるがままだった。
もう空のほとんどが闇に染まった。だけどリオンは練習をやめない。
「はあっ、はあっ」
「リオン……激しすぎっ……」
「まだ、まだまだだよ……」
お互い息も絶え絶えに言葉を交わす。そしてキスを交わす。
私、めちゃくちゃにされてる。
めちゃくちゃにキスされてる。
だけどこれはあくまでも練習。オカリナを吹くという練習なの。
私は何度もそうやって心の中で言い聞かせた。言い聞かせないと何かが暴れ出しそうだった。
それからリオンの気の済むまで、私は練習に付き合った。
心地よい音色はしばらくの間、草原を吹き抜けていた。
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リオンの練習がやっと終わり、家に帰ってきた。そして私は今日の出来事を改めて振り返る。
私は今日、何回キスをしたんだろうか。
本当に数えきれないほどキスをした。
それはそれは飽きるくらいにキスをした。
でも飽きることはないキスをリオンはしてくれた。
リオンがキスする度に音色や曲調が少し変わる。
爽やかなものから、哀しげなもの、楽しげなものなど、様々なものに変わる。
それはまるで、リオンが私を変えているようにも思えた。私はリオンによって変身させてもらっているんだと感じた。
そんな楽器吹きのリオンは、さきほどお風呂から上がってきた。濡れた髪が色っぽく、ふんわりといい匂いがする。私はドキリとした。
「はぁ~。いいお湯だった~」
「今日は本当にお疲れ様。大変だったわね」
「カリーナこそお疲れ様だよ。僕に一日付き合ってくれて」
そう言うとリオンは私をなでてきた。くすぐったい。
だけどすごく気持ちがいい。落ち着く。
誰かになでられたのなんて、子どものころ以来かもしれないな。
「気持ちいい……。ねえ、リオン。しばらくの間なでてくれない……?」
あ、つい欲望を口にしてしまった。私ったらいけないわ。リオンにドン引きされないかしら。
しかしリオンは、「いいよ。僕の練習に付き合ってくれたお礼をしてあげる」と言ってそのままなで続けてくれた。
そのなでる手つきはしっとりとおだやかで、やわらかくて、あたたかかった。リオンによって私が包まれているかのようだった。
こうして私は最高の気分に浸りながら全身をなでてもらった。そして眠りについた。
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次の日。
リオンはまたも朝早く起きた。昨日と同じく、村に朝を告げるトランペットを吹きに行くためだ。
「カリーナも一緒に行くかい?」
「今日は遠慮しておくわ。家の中でリオンのトランペットを聞きたいから」
「わかった。じゃあカリーナはお留守番しててね」
リオンがやさしく私に話しかけてくる。
でも私は今日は家の中で過ごすと決めていた。
それは、あまりにもべったりし過ぎるとリオンに悪いかな、と感じていたからだ。
それにあまりにがっつき過ぎるのもよくない。印象が悪くなる。何事もバランスが必要なの。
私は自分にそう言い聞かせていた。
そしてリオンが楽器を拭いて準備しているのを眺めていたそのときだった。
「リオーン! おっはよー!」
玄関の外から元気な女の声が聞こえてきたのだ。しかも若そうな声。
その声を聞いた瞬間、「リオン! やっぱり私も行くわ! 連れてって!」と、大きな声で叫んでいた。




