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騒動の裏側 3



ライセンス契約が成立した後、ヴェルナー財団はすぐさま現地調査に向けた準備を開始した。


最初に行われたのは、調査対象となる区域の正確な確認だ。

対象地は日本国内の離島。かつて軍事施設が置かれていた地域である。


島には、当時の建造物の痕跡や、現在は使用されていない古い構造物が今も残されていた。


しかし、旧軍施設の跡地だからといって、そこに古代の遺物が存在すると決まったわけではない。


地形や土地利用の歴史を調べることと、遺物の年代を確定することは、全く別の作業だった。


財団は、現地の土地管理者や関係機関への確認を着実に進め、調査に必要な手続きについて専門家の助言を受けた。


文化財に関する法令、土地の管理状況、安全上の問題、そして調査方法の適切性。


それぞれについて徹底的な確認を行い、必要な許可と協力体制が整った段階で、ついに調査日程が決定された。


調査チームには、考古学の研究者、保存処理の専門家、そして地形調査の担当者が名を連ねた。


財団の目的は、ただ何かを見つけることだけではない。


もし物体が発見された場合、それがどのような状態で、どのような環境に置かれていたのかを克明に記録することもまた、極めて重要な任務だった。


*


調査初日。

島の天候は晴れていたが、海から吹きつける風はかなり強かった。


調査責任者は現場に到着すると、まず全員に安全上の注意を周知した。


「古い施設の周辺には、崩落の危険がある場所もあります。許可された区域からは絶対に外れないこと。構造物に不用意に触れないこと。少しでも異常があれば、すぐに報告してください」


調査は、地表の観察と記録から始まった。


提供された座標の周辺には、地形の変化や人工的な構造を疑わせる箇所が存在していた。


だが、そこに何が眠っているのかは、まだ誰も分からない。

調査員たちは、過去の古地図と現在の地形を注意深く比較し、地表の特徴を一つずつ記録していった。


その後、許可された方法と範囲に従って、地中の状況についても確認が進められた。


数時間後——ついに動きがあった。

調査員の一人が、記録用の端末を手にしたまま、明らかに興奮した面持ちで責任者のもとへ走ってきたのだ!


「責任者、こちらを確認していただけますか……っ!」


画面に表示されていたのは、調査対象区域の一部で得られた、尋常ではない明確な反応データだった。


周辺の地形データと照らし合わせても、人工物が存在する可能性は極めて高かった。


「位置を再確認してください! 測定条件も漏れなく記録に残しておきましょう」


責任者は努めて冷静に、しかし隠しきれない緊張感とともに指示を出した。


その後の再確認により、地中に何かが眠っている確率はほぼ確実となった。

だが、調査チームは焦って掘り進めるような真似はしなかった。


物体の状態を傷つけずに確認するためには、適切な手順を完璧に踏む必要があったからだ。


追加の準備を行い、専門家の立ち会いのもとで慎重に掘り進めた結果——ついに土中から、金属製の物体が姿を現した。


さらに驚くべきことに、その目と鼻の先から、印章のようにも見える小型の物体が発見されたのだ。

その表面には、あまりにも特徴的な加工が施されていた。


「本当に出てきたぞ……!」


調査員たちは息をのむ間も無く、周囲の土壌との関係、発見時の位置、物体の向き、表面の状態を記録した。

取り上げる前の状態を写真と精密な測量データで保存し、しかるべき手順に従って大切に物体を取り扱った。


「……これ、印章に似ていますね」


若い研究者が、上ずった声でぽつりと呟いた。


「そう見えますね。ただし、用途についてはまだ分かりません」


保存処理の専門家が、興奮を抑え込むように答える。


「材質も、製作年代も、使用された地域も、現時点では確定できません。まずは保存状態を確認して、適切な分析方法を検討しましょう」


発見された物体は厳重に記録されたうえで、専門家の管理下に置かれた。

それが一体何であるかを判断するためには、まだ膨大な調査が必要だった。


印章のような形をしているからといって、すぐに古代の金印だと断定することはできない。


金属製に見えるからといって、材質が金であるとも限らないのだ。


ましてや、歴史的な権力者に関係する品であると結論づけるには、さらに多くの証拠が必要だった。


しかし、調査チームが持ち帰った記録には、研究者たちを唸らせる興味深い点が幾つも含まれていた。

物体の形状。表面の加工。刻まれた記号。そして周囲の環境。


それらはすべて、専門的な分析を進める価値のある、圧倒的な特徴だった。


調査責任者は、最初の報告書にこう記した。


『――複数の人工物とみられる物体を確認した。うち一つは印章状の形態を持つ。年代、材質、用途、歴史的背景については、今後の分析と関連資料の検討を要する』


それは、過度な飾りのない淡々とした報告だった。


だが、科学的な記録としては、世界を揺るがすかもしれない大きな大きな第一歩だった。


*


数日後、調査結果の一部が公表された。


ヴェルナー財団は、発見された物体の写真と、調査の概要を公開した。


発表文では、年代や用途を断定するような表現は徹底して避けられていた。

それでも、世界各地の研究者や報道機関が瞬時に大バズリのごとく反応した。


とりわけ注目を集めたのは、発見そのものに加えて、あの『Treasure Radar』が事前に示していた座標との関係だった。


アプリの座標は、単なる既存の歴史的な名所を示していたわけではなかったのだ。


指定されたピンポイントの区域から、実際に詳しく調べる価値のある本物の人工物が掘り出されたのである。


ただし、これが奇跡的な精度なのか、それとも再現性のあるテクノロジーなのかについては、まだ検証の余地があった。


ある研究者は、その発表を読んでこう述べた。


「一つの成功例は重要です。しかし、技術の信頼性を評価するには、複数の事例と検証可能な記録が必要です。今回の結果を出発点として、さらに調べるべきでしょう」


その衝撃的な知らせは、ヴァルハラ研究所内でもすぐさま共有された。


研究所は、『Treasure Radar』の評価を正式に「一段階」引き上げた。


もはや、単なる話題性の高いオカルトアプリとして片付けることなど不可能だ。


――少なくとも、今後の研究対象として継続的に観察する価値がある。

その確信めいた判断が、研究所内で正式に決定されたのだった。



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