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【男の意地3】マイルールは信念。相手に理解されないことも多々ある

頭の中で細山の声がぐわんぐわんと反響する。


かなり強烈な攻撃を食らってしまった。


頭も強く打ったし、もしかしたら結構ヤバいのじゃないだろうか。


最初はイケると思ったんだがなぁ…。


せっかく椿さんに特訓付き合ってもらったのに。


椿さん、これ知ったらがっかりするかもなぁ。


谷崎さんは、さっきいい感じで拳をぶつけてくれたのにな。


ちょっと認めてくれたような感じだったのに、悔しいなぁ。


もしかしたらまた、辛辣なこと言われるかもしれないな。


細山は、もう俺のことなんか眼中になさそうだ。


このまま吉村達を追いかけていくんだろうな。


吉村達なら倒してくれるとは思うのだけど…



それは…



「それは、かっこ悪すぎるよなぁ…!!」


膝が震えるのを、なんとか手で押さえつける。


呼吸も苦しい。


視界もグラグラする。


だけど、ここで行かせてしまうのは、男が廃る!!


「今のを耐えられるほどタフには見えなかったが。」


歩みを止めて再び細山がこちらを向く。


「立ち上がるなら、容赦はできんぞ。」


ツカツカと歩み寄ってくる細山は、言葉とは裏腹に若干の躊躇のようなものも感じられる。


「いいから…来いよ。」


辛うじて声を絞り出したところを、右脚を振りかぶって側頭部に振り下ろしてくる。


ギリギリで腕を挟み込みダメージを減らしたものの、成す術もなく地面と再会させられる。


「お前は十分戦った。もう立ち上がるな。」


ありがたい限りだ。今度は意識も奪われていないし、追撃もまだ来ない。


なるほどね…ただ考えもなく起き上がっても勝算は薄いか。


細山が去らないくらいのギリギリの時間まで身体を落ち着かせよう。


とにかくまずは呼吸を整えて…頭を打ったのはキツいが意識もハッキリしてきた。


今度はこちらの様子を窺っているのか、すぐに去ろうとはしない。これは好都合だ。


じっくり作戦を練らせて貰おう。


細山の攻撃パターンは、変幻自在の腕を使った攻撃。特に右腕での攻撃に自信を置いているのか、右始動が多い。


最初の奇襲は、腕を使った技は効かないことを印象づけるためのものだった。


特訓はしたが、100パーセント防ぎきれる自信はない。と言うより、最初の1回に全賭けしていたと言っても良い。


前回のように意識を落とされてはどうしようもないから、そもそもあの技を封印させるのが目的だった。


2回目の攻撃の時は、得意技を防がれたからか必要以上にスピードを上げてきて、手首の変化をさせる間もなかった。


速いと言っても灯里の動きに慣れている身としては、むしろ単調な分、好都合だった。


2回、右のみの攻撃を防いだことで両手からの足技へと攻撃パターンを変えてきた。


そして最後は、こちらがフラフラにも関わらずわざわざ蹴りを使ってきた。


ダメージを食らったが、むしろ作戦としてはうまくいった結果だったのかもしれない。


細山は右を防がれることを警戒している。きっと足でくる。


ならば、足を捕まえて破壊してやる。


…よし、呼吸も整った、頭は痛いがいくらか落ち着いた。


よろめきながらも再び起き上がると、細山もこちらへと間合いを詰めてきた。


1つじゃ不十分だ、2つ。


蹴りと左腕、この2つを警戒するんだ。


右はこないとヤマを張る!!!


「…以前より良い魂になった。」


そう呟くや否や、疾風のように細山が飛び込んでくる。


…!!


左!!!


竹がしなるように弧を描いて左腕が襲い掛かってくるのをなんとか右腕でガードする。


正直、掴む余力はもうない、だが、左腕を防がれたということはそのまま…


案の定、こちらの左わき腹に衝撃が来る。


右の中段回し蹴り。


めちゃくちゃ痛いッ…


めちゃくちゃ痛いけどッ…!!!


そのまま左腕を落とし、脇に細山の足を挟み込んだ。


「お前も、食らえ!!!」


そのまま飛びつき、細山の大腿部をこちらの両足で挟み込む。


そのまま足首を両手を使い極め、手前に引くように捻る。


名前も思い出せない、プロレスの技だが、名前なんかどうでもいい!


「これは吉村の分だっ!!!!」


思い切り力を込めたその時、深緑の波が出現し、激しく吹っ飛ばされた。


白龍撃並みの威力かな、なんて頭のどこかで冷静に分析しながら、この戦いが終わったことを感じた。



激しく塀に叩きつけられた身体はしばらくは動けそうにない。


このまま細山を行かせてしまうんだろうな。やっぱりダメだったか。



引きずったような足音が近づいてくるのを感じた。


身体は動かせないが、恐らく細山だろうという予測はついた。


「神楽坂。」


もう、応答する力もない。


「…お前の勝ちだ。」


細山は静かに告げた。


「だから、勝者は泣くな。」


足を引きずる音が遠くへと離れていくのを感じた。


頬を伝うものが妙に熱く感じた。




ここまで読んでくださってありがとうございます。


面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!


今後ともよろしくお願いします!!

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