【白紙の世界13】マジカル☆ファンタジー開幕♪
多分、刃物か何かを具現化しようとしたんじゃないかな?と思う。
けど、何をしようとしていても関係ないかな。
「跪いて『彩華さん』」
全ての行動がキャンセルされ、『彩華さん』は両手を地面につき跪いた。
さっきまであんなに偉そうにしていたのがウソみたい。
本当にブザマだな、って思う。
「何を…したのよ…!」
まだまだ元気みたい。
せめて喋れなくなるくらいは痛めつけたいな。
それまで生きててくれるかな?
「何をしたってきいてるでしょうが!!!」
うるさいなぁ、どう痛みつけるか考えているんだから。
「『彩華さん』地面とキスでもしてて」
スッ、と軽く右手首を下すジェスチャーをすると、『彩華さん』はビタンと地面に顔面を打ち付けた。
「あらあら、今度は『彩華さん』がカエルみたいね」
笑いがこみあげてくる。
どうしてこんな女に気を遣ってきたのだろう。
こんなに気分がイイなら、最初から力を開放しておけばよかった。
ヒキガエルに散々暴言も吐かれたし、絶望感を植え付けるのも良いわね。
「『彩華さん』、あなた魔法の才能はあるわ。正直、私よりセンスあると思うの。」
地面に顔が引っ付いたままなので表情が分からないのがつまらないけど続けちゃう。
「『魂の具現化』もいきなりやってのけるなんて、ほんっとうに天才だと思う!魔女直々に太鼓判押しちゃう。」
大きなハンコを具現化!額にでも押してあげようとしたら顔を突っ伏している。
せっかく『太鼓判』を押してあげようと思ったのに。
「『彩華さん』顔を上げて」
今度は顔を上げた『彩華さん』の額に『太鼓判』を押してあげる。
「やめろ、このブス!!」
地面に打ち付けて真っ赤な顔の人に言われてもねぇ。
『ペッ…!』
『彩華さん』が唾を吐いてきたけれど、私に当たるわけがない。
魔力の圧でそのまま地面に垂直に落ちていった。
「それで、さっきの話の続きなのだけど、『彩華さん』あなたは天才だわ。だけど」
「人間レベルでね!」
青くなる顔を見ると、『彩華さん』も意味が分かったみたい。
「今の私は『魔女』なの。人間じゃどう背伸びしても敵わないわ。」
スッと『彩華さん』のおでこに、親指とわっかを作った中指を当てる。
『ピンッ』
かるぅ~~くデコピンをしてあげたら、ぶっ飛んじゃった。
「『ガバッ』」
変な鳴き声。カバさんか何かの自己紹介?
そうだ、実験してみよう。
空中に舞っている最中に命令するとどうなるのかしら?
「『彩華さん』地面に落ちなさい」
弧を描いて吹っ飛んでいた『彩華さん』が、急降下して地面に叩きつけられた。
「キャハハ!すごーい!物理法則とか完全無視!」
楽しい。魔法ってなんて楽しいんでしょう!
『彩華さん』はすでに反抗する気力もなくなったのか、地面から起き上がってこない。
「『彩華さん』こっちへ来て!」
立ち上がることはできないのか、ズルズルと足を引きずりながら『彩華さん』がこちらへ飛んできた。
そのままバタリと地面に落ちる。
「ね?凄いでしょ?魔女の力って」
聞いてるのかな?聞こえていないかも。まぁいっか。聞かせよう。
「『彩華さん』ちゃんと聞いて。今のは『服従の魔法』なの。」
応える様子はないが、聞こえているはずなので続ける。
「古来より人には『本当の名前』があって、それで呼ばれると逆らえなくなる魔法もあるの。」
「…」
『彩華さん』はちっとも反応しない。
「今の人達って不便よね、『本当の名前』しか持っていないんだから。」
聞こえているんだよね。
「だから、高い魔力を持つ人が『本当の名前』で呼ぶと逆らえなくなるわけで」
『彩華さん』ならそろそろ言い返してきそうじゃない。
「けれど、『服従の魔法』は禁忌の魔法だから本当は使ったらいけなくて」
ちゃんと聞いてよ…
「そもそも、本当の魔女の力自体が禁忌中の禁忌だから、ここまでさせた『彩華さん』が悪いわけで」
いい加減起き上がってよ。
「だから、本当に死んだりしないでよ!」
銀髪が元の黒よりの赤色に戻り、人間の姿に戻るのを感じる。
だからイヤだったんだ、完全な魔女になると魔女本来の残虐性が出てきてしまう。
…私は、
人殺しはしたくなかった。
そしてこの最悪のタイミングで、研究室のドアが開く音が響いた。
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