【白紙の世界11】名前をつけることはイメージするためには大事なのですよ
『魂を彩る魔法』は、心に強く思ったものを具現化する魔法だ。
表面的な感情ではなく、奥底から強く心に思ったものだけが具現化できる。
もっと言うと、魂を具現化する魔法だ。
だが魂を具現化するにはリスクもある。
魂を体から出しすぎると肉体にも疲労が現れ、ついには動けなくなってしまう。
だけど、既に液化している魔法は杖がなくても少量の魔力で効果を十分に発揮できる。
迷っている暇はない。
少量、頭からかけて心に強く思う。
『カツン…カツン…』
妙にあの女の歩く音が癇に障る。
こちらの挙動に気が付いた女は警戒心を露にする。
「あら、何かまだ抵抗しようとしているのかしら?」
女の右手には新たな魔法の瓶。
氷の瓶の横に置いていた『消えない炎』の魔法あたりだろう。
あれをかけられるとかなりマズい。
マズいが、だからこそ冷静に、そして強く明確に…。
「今、願うのは…」
「うるさい!!死になさい!!」
女が液体をかけてきたが、一瞬、こっちのイメージが具現化するのが早かった。
「『悪を貫く聖なる剣』!!!」
かざした両手から具現化した光の剣が発射される。
そのまま光の剣は風圧で炎の液体をはじき、女の体の真芯をとらえ、貫いた。
衝撃で女も後方へ吹っ飛ばされる。
なんとか助かった、助かったが、恐らくあの女は助からない。
だができれば殺人は勘弁だ。治せるなら治してやるか。
そんなことを考える予定だった。
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「『悪を貫く聖なる剣』!!!」
かざした両手から具現化した光の剣が発射される。
しかし女は知っていたかのように横に飛んでそれを避けた。
「惜しかったわねぇ!!」
女の左手で何かが砕けた。
「あれは…!」
『1秒だけ時が戻せる砂時計』
あれも盗まれていたのか。ということは、恐らくは1秒だけ『やり直された』はず。
「前言ったことは撤回するわ。」
『カッカッカッ…』
足早にこちらに駆け寄ってきた女は私の髪の毛を掴み、顔面に膝を入れる。
「ぐっ」
血の匂いがツンと充満する。
「あなたの魔法は役に立つわねぇ!!」
今度は拳を振り上げている。
拳から守るように手を前に突き出すと
「降参してもやめてあげないから」
と容赦なく拳を振り下ろしてくる。
「調子に、乗るな…」
明確に何かをイメージする余裕はなかった
が、魂を具現化し損ねた物質がどろどろの液体となって手のひらから大量に放出された。
失敗作の波が今度は女を棚に叩きつける。
「やはり人の魂の具現化はまだ不安定なものね…」
クラクラする。
クラクラするが、なんとか凌いだ。
今のうちに杖を取っておきたいが、女を拘束した方が安全な気もする。
どうしよう。あまり悩んでいても女が起き上がってきてしまう。
杖か…
拘束か…
…えぇい、杖を取ってこよう。魂の出来損ないに埋もれている間に!
ふらふらする体をおして、なんとかテーブルの方へ走ろうとした時だった。
何かに腕を、足を絡め取られた。
「本当に、あなたって天才ね。」
なんとか後ろを振り向くと、女の体から青白く光る、軟体動物の腕のような触手のようなものが飛び出していた。
「こんな素敵な能力を授けてくれたんだもの」
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