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【白紙の世界10】ヒステリックな人って本当に苦手なんですよ

谷崎が来てくれるまであと2時間と少しってところだろうか。


ただ魔法見せるだけだとあっけないな。


プロジェクトも無事に終わりそうだし、お祝いも兼ねてちょっと良いお茶でも出そうか。


たまには魔法を使っていない、単に美味しいお茶。


そうだ、お茶そのものの味を一緒に楽しもう。


それだとお茶菓子も欲しいな。


かすていらはもうなかったかな?


流行りのアイスクリンなどどうだろう。


暖かいお茶と合うかな?溶けちゃうかな?


今日は暑いから谷崎が来るまで溶けないように、魔法で熱エネルギーを奪っておくか。




お陰様で沢庵飯だけの毎日からも脱出できた。


私は恵まれている。


魔法の研究が出来るだけで幸せだったのに。


今は好きなだけ牛肉も食べられるし、お菓子だって買える。


それに。


谷崎が来てくれる。


鬼ババはこれを知ったら怒るだろうな。


けれど、やましいことをするわけでもないし、谷崎は私に対してそういった感情はない。


ないはず、だよね。


ないのかな。




まぁ…それも今夜で分かる。



『カチャッ…』



ドアを開く音が聞こえる。


もう谷崎が来たのか。思いのほか早いな。


おもてなしの準備もまだだったのだけど、急いできてくれたのかな。


「思ったより早かったね!」


そう声をかけてドアの方を覗き込むと、そこにいたのは



鬼ババだった。




「こんばんは、恵美さん。ご機嫌いかが?」


えらく上機嫌だ。この女のこんな上機嫌な姿を見たことなどない。


「…こんな田舎くさいところに何かご用ですか?」


お皿を当てられたおでこがうずく。嫌な予感しかしない。


「いえいえ、プロジェクトの成功をお祝いしたくてちょっと立ち寄ってみたのよ。」


下手な嘘にもほどがある。こいつがそんな女なわけがない。


杖…は向こうのテーブルに置いてきてしまった。


大きな魔法は使えない。


簡単な魔法なら…


「(真実を書き写せ…)」


背の後ろに隠した手の指でくるりと円を描くと光速で魔法が飛び出す。


感情を色で見る魔法。


スッと女の胸を通り抜けた魔法が女の背後の壁にぶつかると、墨汁でもぶちまけたかのようにドス黒い色が壁一面に広がる。


完全にクロじゃないか。


こいつはもしかして、邪魔な私を排除しにきたのだろうか。


「お祝いにプレゼントを持ってきたの。」


ゴソゴソと鞄の中から何か取り出そうとしている。


また皿でも投げる気か?


それとももっと危険な、例えばダイナマイトとか。


爆発物の類は危険だ、なんとか杖を取らないと。


だがどうする。背後を向けるのも危険だ。


こうなると爆発物じゃないことを願うしかない。


それ以外なら、投げてくる瞬間に咄嗟にかわすしかない。


わずかな時間で色々な思考が廻った。


そのわずかな時間で鞄の中から目的のものを見つけ終えたのか、女は何か取り出した。


「あなたのモノなんだけどね!!」


投げるモーション…かと思いきや飛び出してきたのは液体だった。


酸!?


咄嗟に避けるが液体が右手と右足にわずかにかかる。


かかった量がわずかにも関わらず、液体は急激に効果を発揮した。


みるみるうちに右手と右足が凍る。


まずいのは右足。地面ごと凍ってしまったようだ。


「あなたの魔法って優秀なのね!」


高笑いしながら女は空になった瓶を放り投げて、今度は別の瓶を取り出す。


これは私の魔法か。液体化していたものを盗まれていたのか。


なんて迂闊な。平和ボケしすぎていた。


以前だったら研究室とはいえ魔法を他人の家に置きっぱなしになどしなかった。


自分の魔法とは言え、『溶けない氷の魔法』の解除は簡単ではない。


それなりの力がいる。魔力を垂れ流すだけでなく、しっかり媒体を通して力を増幅して出す魔法が。


なんとか、杖を取らないと。


「風の精霊…」


「させないわよ!!」


『ガンッ』


女の蹴りが腹にめり込む。


思わず苦しさでかがみこむと、追い打ちに顔面を殴られる。


吹っ飛ばされるかと思いきや、足の氷のせいで吹っ飛ぶこともできない。


とにかく、時間を稼ぎたい。


動かせる左手で魔法を発動しようとすると、女の靴の(かかと)、ヒールで左手を踏みつけられる。


「ぎゃっ…」


「あはっ、蛙が潰れたような声ね!」


サディスト…こちらの苦しむ様子を見て心底嬉しそうにしている。


グリグリとヒールで左手を踏みつけながら女は続ける。


「どう?私が受けた屈辱はこんなものじゃないのよ?」


腕に穴が空くんじゃないかと思うほど踏みつけられた後、今度は顔面をサッカーボールのように蹴り上げられた。


幸か不幸か、蹴られて吹っ飛びそうになると、溶けない氷も今度は床から剥がれることはできたようだ。


しかしその『幸』とは裏腹に、魔法瓶を多く収納している棚に頭から叩きつけられる『不幸』が起こった。


これは多分ヤバいやつだ。視界がかすむ。頭がグラグラする。


このままじゃ本当に殺される。


杖…杖は…


はっきりしない視界、手探りで掴んだものを取り上げる。


液化した魔法の入った瓶。何か使える魔法であってくれ…。


目を凝らしてラベルを見てみると、奇しくも今夜の主役となる予定だった魔法だった。


『魂を彩る魔法』



ここまで読んでくださってありがとうございます。


面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!


今後ともよろしくお願いします!!

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