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【白紙の世界5】お茶の味は分かりやすく値段に比例するよね

「凄い、とても不思議な味だ…」


谷崎とやらは出したお茶を一口飲むと驚いた顔をして呟いた。


先祖代々伝わる特製の魔法茶。飲むと口の中に星空の味が広がるというものだ。


インク1瓶分の価値は十分にあるお茶だ。これで貸し借りはなしということで。


「なんというか、口の中に星空が広がるような感じがする…」


この感覚が分かるとは、ただの嫌味なボンボンではなかったか。


少しだけ感心した。金の匂いを嗅ぎつけてきただけではなさそうだ。


「その名も『星空の味のお茶』ですからね。」


ちょっと試してみようかな。


「それでは、こちらはどうですか?」


今度は私のオリジナルブレンド。何の味か分かるかな。


「これは…奇妙なことを言うかもしれませんが…」


谷崎は驚いたような、複雑な顔をして言う。


「時空とか、時間、歴史、未来、そんな味がします。」


今度はこちらが驚いた。ピタリと言い当てるとは。


「これまでの楽しかった時や悲しかった時の気持ち、そしてこれから体験するであろう未来が混ざり合った不思議な味…それから」


谷崎は一呼吸おいて、そしていつもの爽やかな笑顔でつづけた。


「相田さんの味、ですか?」


谷崎は私の何を知っているというのだ、といつもならば怒鳴り散らしそうなところだが大正解なのでとても複雑な気持ちだ。


何故か少し顔が熱い。風邪でも引いたかな…。


「…私の、オリジナルブレンド『時の味のお茶』です。」


正解を言うと谷崎はにっこり笑って


「とても美味しいです。ご馳走様でした。」


と告げる。


これだけで決めるのは安直かもしれないが、理解あるビジネスパートナーとしてはアリな気がする。


今日出した魔法のお茶は、人によっては全く何の味か分からないものだ。


この感覚を理解できるということは、谷崎もきっと本当に魔法が大好きな人なのだろう。


話だけでも聞いてみるか。


「それで、改めて今日はどういったご用件で?」


谷崎もこちらの空気が緩んだのを感じたのか、嬉しそうに鞄から資料を取り出す。


「相田さんの魔法雑貨なのですが、もっと多くの人にこの素晴らしさを伝えたいと思いまして…」


うまくビジネスの話に持っていかれた気がするが、何故か今度は悪い気がしない。


「つきましては、魔法雑貨をこのように宣伝して…」


谷崎が取り出したのはチラシだった。


『日々を彩る魔法で』


煌びやかなタイトルに、アンティークな雰囲気で魔法雑貨の絵が掲載されている。


悔しいが、自分が作った商品の絵なのに谷崎の持ってきたチラシの方が圧倒的に魅力的に見える。


「見せ方ひとつでイメージがガラッと変わるものなのね…」


その呟きを聞いた谷崎は、手を顎に当てて少し考え込む動作をすると


「少し、商品の配置を変えてもよいですか?」


と許可を求めてくる。


「どうぞ。」


許可を与えると、谷崎はアクセサリーが並ぶ机をテキパキといじり始めた。


鞄から取り出したボードを立たせ、そこに打たれた鋲にネックレス類をかける。


また、ブローチは不規則な段差のある箱の上に乗せて、横にランプを置いて光を当てて目立たせる。


同様にいくつか展示用の小道具を使い、10分ほどで机の上が一変した。


「せっかく素敵な商品なので、お客さんの目を引くように配置してみました。」


今まで自分の展示の仕方が如何に乱雑だったのか思い知らされた。

自分の商品の輝きが、今までの何倍にも感じる。

例えるならば、展示の魔法。


「いや、素直に驚きました。こんなに変わるものなのですね」


「差し出がましいかと思いましたが、そう言っていただけるとありがたいです。」


そう言うとまた、いつもの爽やかな笑顔を見せてくれた。


すっかり興味が湧いた私は、谷崎と手を組むことを受け入れることにした。



ここまで読んでくださってありがとうございます。


面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!


今後ともよろしくお願いします!!

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