【白紙の世界4】付けペンってセンスいるよね
今日は沢庵と白米で1日が始まった。
こう言っては何だが、牛肉はたまに食べられるから美味しいわけで、連日食べてはありがたみも薄れてしまう。
沢庵の食感は沢庵の味だから合うところもあり。
今日は何も足さず引かずのシンプルな沢庵。
これだけで白米が進むんだからコスパも最高だ。
気分が乗らないし今日はもう、お店は開けないで研究に没頭しよう。
ウサギの腕に乾燥トカゲの粉末、ミョウガ、ししゃもの骨…
これらを絶妙な配合でかき混ぜて…
とどめにイメージを集中、魔力を開放…
できた、少し良いことが起こるかもしれない薬。
過度な幸運を魔法で得ると自分が駄目になってしまう。
だから、嫌なことがあった時にちょっとだけ気分転換に使う魔法。
良いことが起こるかどうか分からないのが、くじのようなワクワク感もある。
はぁー、少しスッキリした。
そうだ、この魔法を壺にかけて『幸運の壺』として売り出すのはどうだろう。
説明のメッセージカードも添えて…
『家に置いておくだけで良いことがあるかも』
これは良い、壺シリーズなら魔よけの壺とかもアリかも。
うーん、冴えている。早速良いことがあったなぁ。
そう思っている矢先に、扉をノックする音が聞こえる。
はぁ…くじ引き感覚はハズレもあるから困る。
万が一、違う人の可能性もあるから無視するわけにはいかないけど、多分あの人だろうなぁ…。
扉越しに応対してみることにする。
「…どちら様ですか?」
「こんにちは、谷崎です。」
やっぱりか…
「今日は休業日です。お引き取りください。」
「分かりました。では開店まで待たせていただきますね!」
休業『日』だから少なくとも今日は開店するつもりはないのだが、最低でも1日は待つつもりだろうか。
いや、どうせ1時間もすれば不毛さに気づいて帰るだろう。
無視して自分の研究に没頭しよう。
・
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「あ、インク切れ。」
誰に語るでもなく独り言が漏れる。
商品用の魔法アクセサリーをいくつか作り、説明のメッセージカードを書いていたのだが、これでは業務が進まない。
早々に買いに行かねばと、ろくに身支度もせずに財布だけ持って家をでようとした。
『ガチャ カランカラン』
「あ、どうも!」
谷崎…お前、まだいたのか。かれこれ5時間は立っているぞ。
「そろそろ開店ですか?」
「本日は休業ですって。」
「そうでしたね、どこかお出かけですか?」
もう、面倒くさいな。
「インクが切れたから買いに行くんです。それでは!」
そそくさと去ろうとする。が、
「あ、インクならここにありますよ!」
と、何故か懐からインクの小瓶を出してくる。
何こいつ、インク持ち歩いてるの?
「知らない人にタダでインク貰うなと祖母から言いつけられていますので。」
咄嗟にめちゃくちゃな嘘をついてしまった。
しかしこれでいい加減、避けているのも分かってくれるだろう。
「そういえば、お名前を聞いていませんでしたね。魔法屋さんのお名前は何ですか?」
~~~ッ!!ああ言えばこう言う!しかも断りづらい爽やかスマイル。
ここで断ったら私が悪い人みたいじゃないか。
名前教えたら帰ってくれないかね。
「相田 恵美です。では、さようなら」
さらば谷崎、もう会うこともあるまい。
「はい、それでは」
スッ、とインクを渡してくる。
「これで、お互い知ってる者同士ですよね」
少し小首を傾けながら言ってくる。
はぁ、ここまで強情とは。
「…中に入ってください。インクのお礼にお茶くらい出しますんで。」
それこそ、お世話になったら礼をしろと祖母には言いつけられている。
谷崎とやらはパァッと顔を明るくして
「お邪魔します!」
と入ってきた。変なやつ。
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