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【白紙の世界3】相手が悪くないと分かったら素直に謝ることは大事なこと

昨夜は夢のようだった。


牛まみれ、そう、牛まみれだ。


今までの人生はせいぜい、牛の糞にまみれるのが関の山だったのが、肉にまみれたのだ。


思い出すだけでも凄かった。


こんな感じだったか…?


ポリポリ…


沢庵に魔法をかけてみたが、どうにも味の深みが足りない。


「やはり今夜も研究のために行くしかないか」


誰かに言い訳をするかのように独り言を呟くと、トントンと扉を叩く音がする。


うるさいなぁ、2軒隣の悪ガキの太一か?


『本日休業』って札がかけてあるでしょうが。


あいつは居留守をしたら延々と居座るからな、早々にガツンと言って研究のために出かけねば。


「おい、今日は休業って書いてあるだろうが!」


ドアを開けるや否や怒鳴ると、驚いた顔をした男、誠一郎(せいいちろう)とやらがいた。


3日連続ともなるとさすがに怪しすぎる。何が目的だこいつは。


「あ、すみません、休業なのは承知していたのですけれど、別件でご相談がありまして」


なんだろう、昨日買ったものを不良品としていちゃもんつけて返金させるつもりだろうか。


残念ながら昨日のお金は既に半分ほど使ってしまっていて、返せと言われても返すアテがない。


「返品とかは基本的に承っておりませんが」


「あ、それは昨日聞きました。」


じゃあ他に何の用が…?


「改めまして、自己紹介させていただいてもよろしいですか?」


さすがに自己紹介するなとは言えないが、聞いたら戻れないようなヤのつく人だったらどうしよう。


「私、こう言う者です。」


男はすっと名刺を差し出してくる。


『谷崎重工業 取締役副社長 谷崎誠一郎』


谷崎重工業と言えば、鉄鋼業を初めとし、あらゆる業種に積極的に参入している超大企業だ。


そんな大企業の副社長、さらに言うなら名前から察するに社長の息子か何かだろう。


それがこんなボロくて、うさん臭くて、沢庵を後生大事にしているようなお店に何の用があると言うのだ。


見下して…お恵みくださるつもりならば不愉快だというのが正直な気持ちである。


「はいはい、天下の谷崎の副社長様がこんなところに何の御用ですか?」


早く帰って欲しい。私は忙しいのだ。


「実はこの店の魔法雑貨のファンになってしまいまして。」


相変わらず爽やかな笑顔を向けてくる。


この笑顔を見る度に惨めな気持ちになる。


「はいはい、お世辞でもありがたいですね。」


帰って欲しい気持ち全開で嫌味を返すと


「お世辞ではないですよ!」


と、真っ直ぐな瞳で返してくる。


嫌味のなさが逆に嫌味だ。


「それでこの度はお願いがありまして、もし良ければこのお店と提携させていただけないでしょうか。」


提携。聞こえは良いが体の良い下請けとかそんなところだろう。


大企業なんて隙あらば力なきところから生かさず殺さず甘い汁を吸い取り続けるんだ。


「契約金はこのくらいでいかがでしょう?」


そこには見たこともないような金額が提示されていた。


毎日すき焼きを好きなだけ食べても大丈夫なだけの額。


だけど


「馬鹿にしないでください。そうやって大金をチラつかせれば誰でも簡単に言うこと聞くと思ったら大間違いですよ。」


もし本当に売れる勝算があって声をかけてくれていたのであればありがたい話でもあっただろう。


ここで断ってしまったことを後に後悔するかもしれないだろう。


けれども、昨晩この男が見せた無邪気な様子、純粋に魔法に興味を持って楽しんでくれていたと思っていたのに。


商売のための打算的な行動だったとしたら、凄く…


なんでもない。あんな男がどう思ってようが関係はないのだ。


「いや、そんなつもりでは…」


初めて焦った顔を見せてきたが、どんな顔でも見たくはない。


早く帰って欲しかった。


「今日はもう帰ってください。」


冷静にそう伝えると、


「また、改めて挨拶をさせてもらいにきますね…」


と、意気消沈して男は去っていった。



ここまで読んでくださってありがとうございます。


面白かったら「いいね」「ブックマーク」などしていただけたらありがたいです!


今後ともよろしくお願いします!!

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