王都:事後報告でした!
最近多くの人がこのお話を見てくれて、閲覧数が上がって嬉しい限りです!!
このお話で終章・・・かもしれません。その場合は、次話でこの話を『終章』とさせて頂きます。
次話投稿は一週間以内です!
ゆっくりと眼を開き周囲を見渡してみれば、そこは薄暗くジメッとしていて、床がひんやりと冷たく、よく見てみれば小さな虫が這っているのがわかる。
別段虫が大嫌いと言う事はないけど、それでも不快であることに変わりはない。
風は一切吹くことはなく、頬を撫でるのは自分の額から流れる汗だけ・・・。
身体をモゾモゾと動かして、ここに入れられたのは何時間前だったのか等と考えてみるが、かなりの時間軟禁されているのはわかる。
直ぐに出して貰える筈だとずっと待ち続けているが、この何時間一向に人が来る気配がない。
出ようと思えば出れない事はないが、いらぬ誤解を与えるだけだし、大人しく助けがくるのを待つしかないだろう。
そうして何度吐いたかわからない大きなため息を狭い空間の中に漏らし、ジッと誰かが来るのを待ち続ける。
ギィ
どこからか立て付けの悪い扉が開かれる音が耳に届く、その瞬間薄暗いその場所に一筋の光の柱が降り注ぐ、相当埃が舞っていたのだろう白んで見えるその光の向こう側から、見覚えのある顔が此方へと歩いてくるのが見える。
冷たい鉄の棒に囲まれた牢屋の中に入れられている俺の姿を見て、先頭を歩いていた女性の顔に安堵とも呆れとも取れない溜息が漏れる。
「色々と聞きたいことはあるのだけれど・・・どうしてこんな事になってるのよ」
「それは俺が聞きたいんだけどなぁ・・・。取り敢えず助けて貰えませんか?」
光に照らし出された燃えるような赤い髪に、凛々しい目をした如何にも騎士と言わんばかりの女性・・・サテラは隣に立っていた衛士に、知り合いだと告げると、衛士は直ぐ様鍵を取り出して開錠する。
ゆっくりと牢屋の中から出ると、そこには困った顔でこちらをジッと見つめるミリエラに、衛士にムスッとした顔を向けているモミジ、いつもと変わらないが俺の待遇に少々不満を抱いているハルウとナーヴィ、そしてよくわからない筋肉モリモリのおじさんがそこに立っていた・・・どなた!?
そして、視線を下の方にずらしてみれば、ミリエラとサテラの間にやせ細った男の子・・・女の子が怯えながら自分の目を覗き込んでいた。
・・・確か、この子は
「・・・えっと、ダンジョンで助けた子だよね?」
そう言うと、ビクッとしてミリエラの後ろへとそそくさと隠れてしまった。
わかるよ。そこは安全だとなんとなく思うよね? 俺もサテラさんに怒られた時はそこへ隠れたよ・・・無言の圧力でスゴスゴと出てきたけど。
まぁ、この子がいるってことは誤解は解けたってことだ。
自分が牢屋に軟禁されていた理由は、実は様々な偶然と仲間の裏切りによるものだったのだ。
命からがらゴーレムとの死闘を勝ち抜き、皆と合流して、ダンジョンから脱出しようとしたその時だ。
カテナさんがいらぬフラグを立てたその一瞬の隙に、ダンジョンの崩落が急に始まってしまったのだ。迫り来る岩なだれと、逃げ道が塞がれている恐怖に必死に戦い、ゴーレム戦でヘトヘトになった体に鞭打ってダンジョンを駆け抜けた・・・。
そして、命からがら外へと飛び出したら、そこには多数の兵士と冒険者達が、地面を埋め尽くさんばかりに転がっていた魔物を処理している最中だった。
初めは俺たちの姿にキョトンとしていたのだが、俺が偶々ボロボロになったこの子を担いでいたのが災いしたのだ。
一人の兵士が歩み寄ってきて、戸惑いながらも事情を聞こうとしたのだろう・・・しかし、その瞬間どこから取り出したのか顔まで隠せるローブに身を包んだカテナさんと、全身鎧のハイネさんが勢いよく飛び出し逃げ出したのだ。
それを止めようと何人かの兵士が畳み掛けるようにしたのだが、二人は魔法とお得意の連携を活かして逃げた。
・・・そして残るは、ボロボロになったモミジとこの子だけだ。
ここから推察すると、こうなる。
俺と逃げた二人は、モミジと少女をダンジョン内でなにがしかをした変態野郎であり、偶然偶々氾濫に巻き込まれなかった最低の屑野郎だということに至る。
そっからは俺を捉えようと躍起になってあれよあれよと大騒ぎ、俺はとっつかまるは、モミジと少女とはぐれるはでどうしようもなかったわけだ。
そして牢屋に軟禁されて、身元を確かめられていたのだ。
それが紆余曲折あってサテラの耳に届いて迎えに来てくれたのだろう。
俺は無実だ!!
「はぁ、アタライ・・・様にお礼を言っておきなさいよ。ここに取り次いでくれたのはアタライ様なんだから」
「あ? えっと、ありがとうございます?」
どうやら、この筋肉モリモリのおじさんがどうにかしてここの兵士と話を付けてくれたようだ。
アタライって人らしい装備を見るからに騎士であり、その顔に刻まれた傷や皺には威厳や貫禄というものが感じられる・・・まぁ、というよりもこんな筋肉モリモリのいかついおっさんが一般人なわけがない。
「おぬしが『金色』か?」
「え? あぁ、そう呼ばれてますね」
「・・・あのハルウよりも強いとは思えんな」
アタライはこちらの顔をじっと覗き込み、ハルウと見比べて見劣りするとハッキリと告げた。
まぁ、なりはどこからどう見ても軟弱であるし、とてもではないが強そうとは言えないな。
と、そう考えた瞬間、自分の体を見て異常がないかを確認する・・・どうやら変化の魔法は消えていなかったらしい。
逃げている最中にもしもの時の為と掛けておいてよかった・・・じゃなければ今頃、背中から触手を這わした謎の魔物討伐騒ぎが起こっていただろう。
「さて、ここではなんだ、私の屋敷にいったん戻ろう」
「何から何まで世話になるわね」
「ふん。乗りかかった船だ。最後まで付き合おう」
暗闇の底から抜け出し、自分が今まで捕らわれていた地下牢を後にする。
牢屋から出た後は裏路地やら細道を使って、余計な騒ぎを起こさぬように人目を忍んで行動するようにしている・・・のだが、ハルウとナーヴィの間に挟まれているミリエラが、先ほどからやけにオドオドしている理由がわからない。
キョロキョロと常に周りを見渡しては、少しでも人の気配があるとハルウの後ろへとそそくさと隠れてしまう。
・・・何かあったのか?
「歩きづらい」
「あ、えと、ごめんなさい、でも、その・・・」
「・・・・・・・・・」
いつもならもっと強く拒否する筈のハルウでさえ、そのミリエラを庇うようにしているのだから、これはもう何かあったとしか思えない。
・・・まさか、ミリエラは誰かに襲われでもしたのか?
ザワッと空間の軋むような圧力が自分の内から漏れ出る。
アッと思って止めたが時既に遅く、足元に漂った圧力が全員の足を止める。
バッと後ろに振り返ったアタライは、こちらから距離を取るように体を動かすが、圧力によって縫い付けられているのか思った様に足を動かせない。
ハルウ、ナーヴィ、モミジも何処か怯えたような顔でこちらを振り返るんだから溜まったもんじゃない。
サテラも同様に何事だとゆっくりと後ろに振り返った。
当の本人のミリエラは何が起こったのかわからず、全員の足が止まったことに驚いている。
「あぁ、あの、いやぁ・・・ミリエラが妙にオドオドしているもんで、何かあったのかなぁ・・・って?」
「・・・それなら、着いてから話すわ」
あははと誤魔化すが、俺を知っているサテラやハルウ達ならともかく、こっちのアタライって人はそうもいかないようで、此方をじっと見つめてくる・・・居たたまれない。
人気のない裏路地から抜け、通りを歩いていくとそこには小奇麗な屋敷がずらりと並んでおり、ここが只の場所ではないことを如実に物語っている。
恐らく貴族や騎士様とかが暮らす様な、上流階級御用達の土地なのだろう。
そうして歩いていくと、大きな屋敷の前に到着する。オィエトの屋敷よりも荘厳な雰囲気が漂っているな・・・当たり前か。
アタライが前に歩み出て門へ近づくと、奥から何名もの騎士が急いで駆け寄ってきている。予想通り、アタライは騎士の中でも上のほうに位置する人だったらしい・・・呼ぶ時は様を付けたほうがいいだろう。
屋敷へと通され、長い廊下を歩いて行き、途中にあるドアの前で立ち止まる。アタライはドアノブを回し、その中に入って行く。そこは、全員が入れるような大きな部屋であり、見事な調度品がずらりと並べられていた。
中には既に何人かの騎士がいて、長細い机に並列して座っていた。
自分達も勧められるままに椅子へと付き、俺は名前も知らない騎士と対面させられる事になる。
見た目は好青年ではあるけど・・・どうしてか、青年の浮かべた顔の奥に黒い物があるような気がして仕方がない。
そうしてハルウ達以外の全員が椅子につき(どうやら、椅子が気に食わないらしい)、俺の前に座っていた青年が口を開く。
「アタライ様の屋敷を借りて、今回の騒動についての報告会を行う・・・本来は王城にて行われる物であるが、今回は事が事なだけにこの場で行わせていただきます」
青年は席に着いた自分達を見渡しながら、大きな声でそう告げる。
「まずは、自己紹介とさせて頂こう。『クリフ・ラウル・ルアネィド:レェベン』だ。今回の王都守衛隊長を任じられ、ダンジョンで起こった氾濫の指揮官も努めた者だ」
・・・・・・・・・レェベンって!?
まさかと思ってサテラのほうへちらっと視線を向けてみると、目が合った自分に軽くコクリと頷く。どうやらこの好青年・・・クリフさん?はサテラの親類であるらしい。
「次いで紹介させて頂こう。ゲドモンズ騎士爵、一番隊隊長『ダオン・フィド・アプルィト:ゲドモンズ』である」
・・・よくはわからないが、ゲドモンズ?って所の偉い人らしい。
「ヴォルドス騎士爵筆頭、『テオドラ・フォルティ・アタライ:ヴォルドス』だ」
筋肉モリモリおじさん騎士の名前だ。にしても覚えにくいよな・・・外国の人の名前って。
三名の紹介が終わると、次はそちらの番だぞとでも言いたげに視線が自分の方へと投げられる。
・・・何で俺?
サテラの方へ視線を投げかけると・・・そっぽ向いている。
そういえば自己紹介していない騎士もいて、恐らくこれは代表同士が挨拶するものなのだろう・・・。
しょ、正直に話した方がいいのかな?
「えっと、パーティーユルバーレに所属しています。『ユガ』です・・・あぁっと、魔族です」
最後の言葉にザワッと騎士たちが小さな声で話し合いを始めるが、クリフさんの咳払いで一斉に静まった。や、やっぱり魔族だって紹介したのはまずかったかな?
「うん。それじゃあ、今回の騒動の原因を知っているかな?」
全員の視線が此方へと刺さる。
答えようによってはそれが運命を左右する気がしてならないのだけど・・・。
・・・さて、どう答えたものか。
勿論知ってはいる。
正確に答えれば、完璧に事細かに話せる自信もある・・・けど、それだと今表でメイドさんに引き取られているあの女の子についても喋らなきゃいけなくなってしまう。
ここは異世界だ・・・死刑とかも簡単に行われてしまうかもしれないし、もし正直に喋ってあの女の子が死刑になってしまったりしたら・・・。
カテナさんやハイネさんのことも言わない方がいいだろう。
「いや・・・知らないです」
「・・・報告によれば、君はそこにいる女性ともう二人の人とダンジョンの崩落から逃げてきたそうだね? その二人は一体誰なんだい? 何も逃げる必要はなかったと思うけれど。それに、あれだけの氾濫に巻き込まれてどうして無傷なの? そして君が連れ出したあの少女はいったい何者なんだい?」
・・・・・・ま、まずい、全部ばれてやがる!?
こここ、これはまずいぞ、どうやって掻い潜ればいいんだ!?
嘘つくのも一苦労なんだが、この青年に嘘が通じる気もしないし・・・どうすればいい。
何か・・・何か話を逸らす方法は・・・ハッ!?
「無傷ではありませんでしたよ」
これしかない・・・話を逸らす方法はこれしかないんだ!!
「ゴーレムと一人で戦いました」
その言葉にまたザワザワと場が騒ぎ始める。
「・・・仲間達と戦わなかったのかい?」
「中で逸れてしまって・・・他にも数百体程の魔物との交戦も果たしました」
「あ、ありえない!!」
そう話していると一人の騎士が立ち上がり激昂する。
「そんな魔物の軍勢にたった一人で立ち向かえる筈がなかろう!! 我々騎士の前で嘘を申すでない小僧!! 絞首刑にされたいか!!」
や、やっぱり死刑があるのか・・・これは、いよいよ本当の事を話せなくなってきたぞ。
でも、ちょっとは話の注目を逸らすことができた!!
「いいえ、嘘ではありません。数百体の魔物を相手取り、暴走状態に陥ったゴーレムとも戦って勝利しました」
その瞬間・・・ピタッと空気が止まる。
そして・・・その部屋に何人もの笑い声が響く。
「ハッハッハ!! それ見たことか、こいつが嘘をついているのは確定したぞ!!」
「だれが暴走したゴーレムをたった一人で倒せるというのか、この痴れ者が!!」
口々に悪口が飛んでくる・・・うーん、これもちょっと悪い方向に話が進んでるなぁ。
ハルウ達がもたれ掛かっていた壁からスッと離れ、剣呑な雰囲気を漂わせながら此方へと歩み寄る。
それを何とか手で制し、どうしたものかと思慮に耽る。
「・・・なら、証拠をお見せしましょう」
そうして椅子から立ち上がり、意識を集中させる。
内から湧き上がってくる力の波動に集中し、変化の術を解く・・・すると、今まで笑い声が支配して異空間が静寂に支配される。
浅黒い肌、左右非対称のオッドアイ、右手に埋め込まれた水色に光り輝くコア・・・あ、さすがに背中のウネウネ触手は隠してます。
今までそこにいた普通の青年は姿を消し、正真正銘の魔族が人間の目の前に現れた・・・まぁ俺だけど。
『そこまでしなくても、ちょっと私に派手な魔法を使わせれば信じたんじゃないかしら?』
いつの間にか起きていたディーレがそんなことを告げてくるが、今はインパクトが重要なのだ。
「信じていただけましたか?」
これで見かけ倒しのこけおどしだ、なんて言われたら困るんだけど・・・流石に騎士として技量を積んだ身であるのだろう。
自分から嫌でも漏れ出る圧迫感に気圧され、そして彼我の実力の差を勘で把握してしまっている。
ここで、話しておかなければ!!
「偶々、ダンジョンに潜っていたら、偶々少女が氾濫に巻き込まれたようで、それを救っただけの事です。私は見ての通り魔族・・・世情に疎く、ゴーレムを暴走させてしまいましたがこの通りなもので、倒せてしまいました。そしてまた偶然が起きて崩落が始まったのです。仲間達と奇跡的に合流を果たし、逃げていたのですが・・・あの二人に関しましては、そのご察し頂けると嬉しいのですが」
そして、俺は逃げた二人について語る。
俺を裏切った二人にはちょっとばかしお仕置きとして言っておかなければ。
「実は・・・その、漏らしてしまっていまして、みっともない姿を見せたくなかったそうで・・・」
「は、はぁ・・・」
二人には文字通り汚名を被って貰うことにしよう。
正直に言えば無茶苦茶な言い訳ではあるけど、現状の雰囲気と圧力でいけば行ける・・・筈だ。
どうだと周りを見渡してみれば、やはり自分の姿とダンジョン内での戦闘に注目している。
「わかった。それでは君は今回の一件に関しては何も知らないんだね?」
「・・・はい」
「協力感謝します。それにしても最近は物騒でね・・・スラムには変なローブを着こんだ三人組が現れたり、王都の宿では『吸魔石』であろう物を拾い帰った冒険者が小さい子供に襲われたりしていてね」
ニッコリと自分に微笑み返してくるクリフさんの笑顔が真っ黒にしか見えない・・・。
・・・やっべぇ、これは完全にばれてる。恐らく自分が話しをはぐらかしたのもばれているだろう。
ハハハ、と乾いた笑い声を出し、クリフさんから目を逸らす。
それ以降は騎士達の質問をそれとなく躱しつつ、淡々と応答していく。
スラムに捕らわれたと聞いて、どこの派閥だとか、噂はないか、変な動きはないか・・・と、様々な事を聞かれたが、具合の悪いことを聞かれれば「魔族で疎い」で突き通した。
「・・・それでは、これまでの事は報告書として王都に提出致します。今回の氾濫は前例のない豊穣のダンジョンでのもの、前例がないだけに対処の方も難しく、異例の出来事に対処が遅れたこと大変申し訳ない・・・。皆様今日はありがとうございました」
その言葉を皮切りに、騎士達は席を立っていく。
どこか納得しかねている騎士もいたが、しっかりと話しを纏められては言い出し辛いだろう。それに、ことを知っているのは俺達と・・・多分ではあるがクリフさん、アタライさん、そしてゲドモンズ?の隊長さんだけだろう。
その三人は終始、顔色を変えることなく報告を淡々と行っていたし、どうやら示し合わせていたみたいだ。
俺もそれに救われたという事だ・・・もし三人が本気で事情を聴きだしに掛かっていたのなら、俺の嘘はいとも簡単にばれていたでだろう。
「兄さん、お疲れ様」
「ふぅ・・・あぁでもしないと納得しない騎士もいたんでね。こんな形を取らして貰ったけど、これっきりにして欲しいね」
「ふん・・・ゲドモンズの所は隊長格以外、頭の固い者が多くて困るな」
クリフさんは改めてこちらに向き直り、真剣な眼差しで問いかける。
「それで、本当の事を話して欲しい。君の仲間や友人には手出ししないと王国騎士の名の下に誓ってもいい」
「・・・・・・・・・実は」
ちょっと悩んだが。
サテラのお兄さんの目が真剣だったこと、サテラがコクリと頷いた事で言う事にした。信用にあたいする人みたいだ。
包み隠さず今回の一件に関わった者や、何があったのかを告げる。少女については言うのを躊躇われたが、「あの少女にも手出しはしない。約束する」と言われてしまえば・・・もう仕方ない。
「というのが、今回の騒動の発端だと思います」
「・・・やはり、スラムが絡んでいたか。それにしてもスラムが二分しているとは聞いていたが、東のスラムが今回の氾濫の発端であり、西のスラムはそれを抑えようとしていたって事になるな。いったい目的は何なんだ・・・調査を進める必要があるな」
実はカテナとハイネについては名前に関しては伏せた。
二人は俺をさらったし最後にはあっという間に逃げてしまったけど・・・少しの間でも一緒に戦った仲間だし、悪いことだって俺の目が届く範囲ではしていなかった。
でも、二人はスラムの出であるし、過去にどんな前科があるかわからない。それを騎士に言うって事は、二人を危険にさらすという事であるからだ。
「手出しはしない」とはいっても、二人が何らかの脅威だと把握されれば・・・恐らく秘密裏に消される事だってあるだろう。
「まぁ、事情は大体分かった。協力感謝する・・・そして最後に一つだけ」
クリフさんははぁ、と溜め息を吐き此方へと歩み寄る。
そして小さな声で告げる。
「妹のサテラを宜しく頼む。今回の一件でも・・・家の者は認めなかったんだ」
「・・・わかりました」
そう言い残してクリフさんは部屋を後にした。
・・・・・・・・・サテラはどうやら家から拒絶されたらしい、名前も抹消まではいかずとも、もはやいない者として扱われているらしく、レェベンの名を冠することも禁じられたそうだ。
サテラ自身はもう気にしていないと言い張っているそうだが、やはり複雑なんだろう・・・。
「今回の一件はありがとう、アタライ」
「借りを返しただけだ。気にする必要もない」
サテラがアタライにお礼を言う。
さっきの報告会ではあまり表には立たなかったが、裏の方ではかなり尽力していたらしい。
サテラやハルウもかなりお世話になったらしく、スラムでの一件や氾濫の時などもかなり力を借りていたらしい。
・・・さて、聞いたところによると、あの氾濫のせいでこれから王都はかなり忙しくなるらしい。
豊穣のダンジョンもなくなり、活気もなくなるらしく・・・まぁ、言ってしまえば王都に滞在する意味がなくなってしまったのだ。
「さて、次はどこに行こうか・・・」
ボソッと声を漏らしたつもりだが、それをアタライは聞いていたらしく、サテラとの話を切り上げ此方へと歩み寄ってくる。
うっ・・・筋肉の壁が迫ってくる圧迫感が半端ない。
「お前達は旅をしているのだったな?」
「えぇ・・・まぁ」
「・・・そろそろ帝都で、バーバリアスの祝祭が開かれる。帝都に行くといいだろう・・・通行証は俺が出してやる」
王都に行く前は、帝都に向かおうと思っていたが、丁度帝都では祭りが行われるらしい。
・・・帝都に入るには通行証やら身分証が必要なようで、通常のギルドカードでは入国審査に物凄く時間が掛かるようだ。
というのも、バーバリアスの祝祭というのは、英雄『バーバリアス』を讃える祭りらしく、斧と剣を持った戦士だったらしい・・・で、バーバリアスの祝祭では武器や防具の店が多く立ち並び、賭け事などが盛んに行われるらしい。
となると、帝都にやってくる冒険者の数が天井知らずとなり、中には荒くれ者や前科持ちなんかもいるだろう。そういうのを捌く為に城門では昼夜問わず作業が行われ、それでも尚毎回入国にかなりの時間が掛かるとか。
しかし、招待状だったり、貴族の通行証・通行許可状があれば直ぐに通れるらしい。
それをアタライは用意してくれるそうだ。
「いいんですか?」
「あぁ。ただし、一つだけ頼みごとがある」
「なんでしょう?」
「ハルウの小僧に教えていたジュウドウ?とやらを教えて欲しい」
おぉう・・・俺も齧った程度だし、適当に皆に教えていただけなんだけど・・・そ、それを教えて欲しいと?
ま、まぁいいけど。
「は、はい」
「うむ。では頼む」
そう言うと、用は無いとばかりに後ろに歩き去っていく。
まぁ、ともかく、次に目指す場所が決まった・・・『帝都』だ。
一度里に戻ってから準備を進めなくては・・・とそう考えた瞬間、サテラが此方へと歩み寄りガシッと肩を掴む。
そして、なんだか冷たい空気が場を支配し、いやぁな予感が身体を駆けずり回り・・・ゆっくりとサテラの目を覗き込む。
そこには・・・
「さて、これはどういう事か説明してもらってもいい?」
綺麗で透き通るような紫の瞳をしたサテラがそこに立っていた・・・。
サテラの瞳が紫に変わったのを初めて見た主人公・・・さて次回はどうなることやら。
次章は『帝都』編予定です。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
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