王都:氾濫③でした!
王都混乱、冒険者緊急招集!!
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その日、王都は騒然とする。
突如発布されたダンジョン探索の禁止令、緊急クエストの実施。
街中に響く甲高い音は、各所に設けられた鐘が鳴らされる音だ。
それは街中の冒険者に緊急クエストが出された事を知らす合図であり、ただならぬ事態が起こった事を告げている
街中を行き交う人は一斉に身を潜め、いつもは賑わっている中央通りの屋台は大急ぎで店じまいを始めている。
街中は慌てふためく人の足音と、喧騒に包まれる包まれる。
カーンカーンと絶えることなく響く鐘の音に、冒険者達は急いでギルドへと向かう。
宿で眠っていた冒険者も、食事を取っていた冒険者も、今からダンジョンへ向かおうとしていた冒険者も・・・全てがギルドへと向かって行った。
冒険者達はランクを問わずギルドに集められ、いったい何事だとギルド直轄の広場は困惑に包まれる。
しかし、高ランクの冒険者は互いに情報を交換しあい、今回の緊急クエストを把握しようと動いている。
無論、ここには冒険者だけでなく、騎士達も例外なく集結している。
違いと言えば、『レェベン』・『ヴォルドス』・『ゲドモンズ』騎士爵から、全ての騎士に今回のダンジョンでの捜索についての情報が回っている。
鐘が鳴り始めてから一の刻が過ぎ、漸けたたましい鐘の音が鳴り止んだ。
そして、ギルドの門扉がゆっくりと開かれる。
そこからは壮年のギルド長と『クリフ・ラウル・ルアネィド:レェベン』・・・つまり、僕が並んで広場へと歩く。
人だかりにゆっくりと足を進めると人垣は割れてゆき、僕とギルド長を広場の中心へと誘った。
広場の中心に立つと、統率が取れておらず雑多に並んだ冒険者と、きちんと整列し階級毎に整列した騎士達を見渡すことができる。
そして、今回の緊急クエストの内容について紡がれる。
「冒険者の諸君らはもうわかっているとは思うが、緊急クエストの発布である」
ギルド長の重く鋭い声が広場を駆け巡り、全ての者の耳へと届けられる。
緊張した素人冒険者、微動だにしない数々の死線を潜り抜けた冒険者・・・その誰もがギルド長の言葉に集中する。
「内容は、『ダンジョン氾濫における、魔物の討伐』である。此度出現した豊穣のダンジョンが何らかの原因によって氾濫を起こしているとの情報を得た。中にはレッドオーガやサイクロプス等の凶悪な魔物が存在する」
その言葉に一気にザワザワと広場が喧騒に包まれる。
氾濫の言葉に、信じられないと目を大きく見開く者、あまりにも凶悪な魔物に顔を歪める者、パーティーで相談しあう者など様々だ。
騎士達も改めて聞かされるそれに、緊張を隠し得ない。
やはり見習いが多く、帝都への遠征によって多くの熟練騎士が不在になっているのだ・・・無理もないだろう。
冒険者達もその例に漏れず、大半の者達が緊急クエストの内容に狼狽えている。
そして・・・現状は予想していたよりも酷い状況にある。
まさか、こんなにもBランク冒険者の数が少ないなんてね。
この状況の最中、ダンジョンの氾濫に狼狽えずにいるのはBランク冒険者のみ・・・数えてみればたった三十名程だ。
Bランク以下の冒険者達も合わせて、たったの三百名程・・・普段ならそれの倍近くは王都にいるはずなのだ。
王都には当然当然多くの冒険者達がいる筈だ。しかし、不運にも時期が最悪に近い。
よりにもよって、帝都遠征と帝都闘技祭が同時に行われるなんてね。
帝都遠征によって騎士達の数は少なく、特に今回は例年と違ってより数が少ない。
帝都闘技祭の開催は毎年この時期に行われ、各国の腕自慢がこぞって参加する。優勝を夢見て、毎年この時期は冒険者達が帝都へと赴くのだ。
まずいな。
この人数では抑えきれない可能性がある。
魔物の数は未知数であり、確認しただけでもBクラス以上の魔物がいる。
そして何よりも・・・A-ランク『地龍』の存在がある。
帝都遠征に向かった騎士達へは、早馬が送られているが、恐らく此方に辿り着くには早くても四日・・・遅ければ五日掛かってしまう。
ここに集まった全員の任務・依頼は、無論魔物の討伐に変わりはない。
ただ
「今回、王都守衛隊長を担っているクリフ・ラウル・ルアネィド:レェベンだ。皆、安心して欲しい。現在、帝都遠征へと向かった本隊に早馬を飛ばし、救援を要請している。我々は魔物を全滅させる必要はない。本隊が到着するまでの間魔物を抑え切れれば我々の勝利だ。本隊が到着次第、王国騎士長並びに騎士長直轄の騎士達が討伐掛かる。我々はできうる限り時間を稼ぐのが重要である」
そう。
僕達の優先目標は、本隊到着まで魔物の襲来を防ぎ切ることだ。それさえ出来れば、後は王都の豪雄・王国騎士長が討伐に加わる。
その時点で僕達の勝利だ。
その言葉に、広場からはおぉと小さく歓声が上がる。やはり騎士だけでなく冒険者にも王国騎士長の名は知れ渡っている。
今の時点で重要なのは士気の低下を防ぎ、どれだけ士気を上昇させられるかだ。
士気が下がっていれば、強大な魔物を前に恐慌状態に陥りかねない・・・それだけは、絶対に避けねばならない。
その為には、希望や安寧を心に与える必要があり、そして最後に・・・
「報酬はギルド並びに王都からも支給される。倒した魔物や貢献度合いによっては報酬を弾むことをレェベンの名の元に約束しよう」
欲を突くことが出来れば、何とか士気は保てる筈だ。
先程まで暗い空気が渦巻いていた広場に、活気が宿る。何とか作戦は成功したが、ここから維持し続ける為には気を抜く暇などない。
こちらは『地龍』が現れた事を伏せているのだ。
ここで地龍の存在を話してしまっては士気の低下は免れない、かと言って知らされずに、突如襲来されれば恐慌状態にも陥りかねない。
どうしようかと迷ったが、結果は言わないことにした。
もしも襲来した場合は僕達騎士が、全勢力をあげて討伐に掛かる。レェベン・ヴォルドス・ゲドモンズ、恐らく死傷者は多く出るだろうが・・・。
そうこうしている内に、ギルド長は依頼についての話を進め、支給品や装備品などの説明を事細かに説明している。
冒険者達はそれについて互いに意見を交換しあっている・・・流石にいつもは飯の種を競っていても、ダンジョンの氾濫となれば団結せざるを得ないのだろう。
・・・・・・・・・そういえば、アタライ様はどうされたのだろうか。
緊急クエストの発布にあたって、ギルドと話し合いを行ったのは僕とギルド長、そしてアタライ様だった。
僕達はダンジョンで地龍に遭遇した後、脇目も降らず逃走した。幸い追ってくる事はなかったが、緊急事態には変わりない。
僕は直ぐ様王城に帰還し、各所に通達。
アタライ様は騎士爵へと早馬を回し、現在王都に残っている騎士達を集めた。そして、ギルドへと報告し、真っ先に準備を整えたのがアタライ様だ。
王都からは正式に緊急クエスト発布の依頼が出され、ギルド・王都守衛隊長、数々の実績からアタライ様が話し合いへと参加した。
魔物が発生した場所や数、どんな魔物がいたか等を報告し、それを攻略するための作戦会議を行った。
支給品の数、現状の冒険者・騎士の数、全て心許ない・・・事もここでわかった。
援軍要請を近くの街へ既に送っているが、準備から到着までは三日を要するとのことだ。
流石に大量の魔物・・・それも、BランクやA-ランクの魔物が紛れているとなれば、慎重に動かざるを得ないのだろう。
そして話し合いが終わると、アタライ様とギルド長だけで何かを話し合い、急用があると二の刻程前に離れたのだけど・・・何だか胸騒ぎがする。
「さて、冒険者の諸君にはもう一つ告げねばならない事がある」
一通りの説明を終えたギルド長がそう告げる。
隣で聞いていた僕は、他にも話すことがあるのかと首を傾ける。事前に聞いていた内容では、さっきの話で終わりのはずなんだけど・・・。
「今回の緊急クエストには『地龍』が一匹目撃されている」
ギルド長から紡がれた言葉に、僕は驚きのあまり目を見開いた。
(ッそれは士気の低下に繋がると、話さないはず!?)
ギルド長の言葉は無惨にも広場全域に響き渡る。
冒険者は顔面蒼白となり、今回の氾濫がただ事ではないことを理解した。
それと同時に、彼らの脳裏に恐怖が襲来する。
Aランクの魔物・・・国家戦力の半分、またはAランク級の冒険者数名を必要とする最悪の魔物。Bランクの壁を越えた魔物は、英雄の領域に足を踏み込んだ者でさえ、足を掬われかねない。
現れた地龍は『A-ランク』ではあるが、Bランクの冒険者が百人いて、物資も完璧に整った状態で、死傷者を出しながらも漸く勝てる相手だ。
そんな化物が存在する事が露見すれば、必然的にこうなることは予想できる。
そんな魔物と相まみえる筈がないと、希望的観測を出す者ならまだましだ。どうにかして逃げる算段を立てる者、恐怖に身体が震え冒険者である身を呪う者、その場からこっそり逃げ出そうとする者など様々だ。
それは騎士であっても一緒だ。
見習いが多い現状で、地龍に対抗することは難しい。恐怖に怯える者、神に祈りを捧げる者もいる。
微動だにせずに己の力を信じ、氾濫に真っ向から挑もうとする者など、広場に集まった騎士の中でたった百名にも満たない。
士気は地に落ちた。
全員が恐怖に囚われ、己の保身へと走り始める者が出てくる。
僕は隣に立つギルド長へ非難の視線を注ぐ。
しかし・・ギルド長は、続く言葉を紡いだ。
「だが安心して欲しい。我々に隣街から強力な助っ人が来ている」
恐怖に囚われていた広場が一斉にシンと静まり返る。
人垣が自然と割れ、そこには鎧に身を包んだアタライ様が現れる。
その姿に冒険者達は希望に満ちた瞳で胸元に光る紋章へと視線を向ける。そして、誰もが失望に目を逸らし、中には悪態を吐きながらがなりたてる者もいる。
強力な助っ人として呼ばれた騎士の登場に、冒険者達は王国直轄騎士団員を思い浮かべたのだろう。胸に光る白金の龍を象った王国の紋章は・・・しかし、アタライ様の胸元には輝いていなかった。
胸元に光っているのはヴォルドス家の紋章であり、期待していた物でなかった冒険者達の落胆は大きい。
アタライ様の武勇を知っている者でさえ、やはり地龍の存在をかき消すには遠い存在なのだ。
そして、アタライ様が人垣を割り、広場の中央へと歩いてくる。
そしてギルド長の前に立ち、一言二言交わす。
そして
「ふん、随分威勢のいい輩もいるが今日は不問にしよう。それとだ・・・・・・・・・強力な助っ人は俺ではない」
アタライ様から紡がれた言葉に、今まで失望に彩られていた冒険者の顔が一斉にキョトンとした物になる。
広場に集まった群衆が全員自分に視線を投げかけているのを確認した後、アタライ様はニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、叫んだ。
「俺はお前達が邪魔だったから道を開けだまでだ。 さぁ、来るがいい!!」
そして全員が、アタライが先ほど通ってきた道へと目を向ける。
そこには、割った人垣を悠々と歩く一人の姿。
しかし、全員が言葉を失くす。
一切の呼吸音さえ途絶え、恐怖に彩られていた者達はその瞬間、全ての感情が抜け落ちる。
広場にいた全員の視線は、昼の光に照らし出され、煌々と輝く一人の人物へと注がれた。
まるで天使の様に光を放ち、鮮やかな長い金の髪を振り乱し、さりとて一切の揺るぎのない歩みを見せる人物。顔立ちはまるで人間とは思えないような造形だ・・・美しすぎる。
聖母を思わせる優しげな瞳、整った鼻筋、陽の光に照らし出された薄いピンク色をした唇。真っ白な肌は純白のローブを思わせる程にきめ細かく、もはや美術品のそれである。
黄金の線が走った白銀の鎧に身を包み、腰に帯びた剣は黄金を基調とした見事な装飾が施された鞘に包まれ、白銀の脚絆は一切の音を立てることなく、静かに彼女の足取りを広場の中央へと誘っている。
その卓越した身のこなし、そして・・・柔らかな瞳の中に宿る、不屈の闘志。
それを一言で表すのなら・・・・・・・・・
『金色の戦乙女』
そして、何もかもが時間という概念を忘れ去り、彼女が歩く空間だけが唯一時の流れを感じさせる。天使の凱旋・・・それを感じさせるその姿に、誰もが見蕩れている。
彼女が広場の中心へと佇む。
ギルド長、アタライ様、そして僕へと優雅な一礼を魅せる。
そして、彼女は群衆へと振り返る。ふわりと金色の髪が空中に揺らめき、近くにいた僕らに馨しい香りを届ける。
陽光に照らし出され、キラキラと反射する光に身を包まれた彼女は、その小さな口を開いた。
「・・・お初にお目に掛かりましゅ」
・・・・・・・・・噛んだ。
彼女はその整った顔を真っ赤に染め上げ、フラフラと覚束無い足で群衆の視線に晒されている。そして、その足はまるで踊狂鳥の様に、どんどん酷くなっていく。
ギルド長とアタライ様へと視線を投げ掛けると、二人とも真剣な眼差しで彼女を見つめている。
「・・・コホン。初めまして、たまたま隣町カナンより観光に来ていた冒険者の・・・『金色』です」
その言葉が紡がれた瞬間、冒険者の目が大きく見開かれ、広場にザワザワと声が響き始める。
『金色』・・・噂だけではあれども、僕達騎士団にもその情報は寄せられている。
曰く、Bランクの魔物『ベヒーモス』を一撃で屠り、カナンに蔓延っていた組織『黒翼』を一夜の内に滅ぼしたと言われる冒険者だ。
そんなこと有り得ないと思いながらも、カナンからやってくる冒険者達は皆一様にそれを知っていて、情報に全く差異がなく・・・その噂も完璧にデマだとも言えないのだ。
そして、実際僕の目の前に『金色』と名乗る者が今現れたのだ。
街に突如として出現したベヒーモスを、金色に輝く人間が光の一縋を下し絶命させた。
そんな噂から、付けられた二つ名が『金色』
なるほど・・・これは金色と呼ばれても差し支えないだろう。金色に輝く髪、陽光を反射する白銀に金をあしらった鎧や剣、どれもが『金色』に当て嵌まる。
ギルド長が手を挙げると、ざわざわとしていた広場は一瞬にして静まり返る。
「カナンの街を救った冒険者『金色』に助勢してもらう。そして、噂になったベヒーモスや組織の壊滅は・・・事実だ」
その言葉に、広場にいた全員が息を飲む。
今まで半信半疑だった者、デマだと信じていなかった者は、ギルド長のその言葉に事実だと告げられたのだ。中には士気を上昇させようとしているのかと疑う者もいたが、ギルド長の纏う雰囲気が嘘を言っていないという事を感じ取った。
しかし、それだけではやはり、この場の全員の不安を払拭させる事はできない。
この場に集まった者は噂は耳にしていても本当の実力を知らず、ベヒーモスと一線を画す地龍に太刀打ちできる所を想像できない・・・それに、彼女は女性であり細身だ。
とてもではないが、地龍に勝てるとは思えないだろう。
すると、彼女は広場の不安を感じ取ったのか、キョロキョロと辺りを見回す。
「皆さん、多分・・・私が戦えるとと思っていらっしゃらないと思います。だから、い、今から魔法を使用します。皆さん離れてもらえますか?」
魔法・・・その言葉に冒険者達はまたざわざわとし始め、取り敢えずと彼女から距離を取った。
魔法は才能が有る者しか使えない・・・才能があったとしても誰かに師事しなければ、扱う事は殆ど出来ず、それには庶民では決して払う事が出来ない金が要る。
それを彼女は使うというのだから驚きだ。
だが、騎士にも数は少ないが魔法を扱える者はいる。いま広場にいる中でも数人はファイアーボールやブリーズボールを使える者はいる。
さすがに中級魔法、ファイアピラーやウィンドボール等を扱える者はいない・・・もし、それが扱えるのであれば、戦力は大幅に上がるだろう。
しかし・・・彼女は剣を帯刀している事から、初級魔法の行使だろう。無論それだけでも戦力は上がるのだが、少し心許ない。
まぁ、そこまで望むのは欲張りであるだr・・・・
「水の流れは初めに清く」
『清らかな水は激しさを増す激流に』
「成長するは大いなる姿」
『思い描く、龍に至った一匹の生』
「滝を登りし、矮小な生」
『至った者は、その名を変えた』
「紡げ、その名を」
『叫べ、その名を』
彼女を中心に大きな魔法陣が展開される。大地は揺れ、彼女の周りを魔力の粒子が立ち登り、青い光が広場全体を埋め尽くすように彼女から吹き荒れる。
彼女胸の前で組んだ両手が解け、そこから一匹の魚?の様な物が勢いよく飛び出した。
それは蒼い魔力の奔流に逆らうかの様に泳ぎ始める。時に激流に揉まれる様に流され、それでも諦めることなく放り出した彼女の下へと至ろうと藻掻く。
冒険者達の間を縫う様に泳ぎ狂い、騎士達の銀に煌く鎧の間をスイスイと泳ぎ回り、やがて一匹の魚は彼女の上空に吹き荒れる青い魔力の本流へと至る。
登る・・・激流は容赦なく小さな魚を叩きつける。
されど、登る・・・登る・・・登る。
そして、彼女はそれを見つめ、柔らかな全てを包み込む慈愛の微笑を称える。
そして一匹の魚は激流の頂へと登り詰めた。
「水天滅激龍」
上空には巨大な蒼龍が出現する・・・魔力で編み出された巨大な龍は、僕達人間を睨めつける様に見渡し、やがて興味を失ったと彼女の周りをぐるぐると回り始める。
彼女は両手で龍の頭を撫で、何事かをポツリと呟くと、龍は大空へと駆けて行った。
その姿が小さく見えなくなるまで、龍は大空の彼方に消えていったのだ。
「「「「「・・・・・・・・・」」」」」
広場にいた全員が、マヌケに口を開け大空へと視線を向ける。要項に目をやられる事も気にせずに、昼の空を龍が消えた後も呆然と見上げる・・・無論僕もその中のひ一人だ。
「皆さん」
そして、全員が呆然とする中、透き通るような美声が脳内にこだまする、
視線を下ろし、胸の前で手を組む彼女に視線を向ける。
「私も頑張って戦います。私は戦いが怖いです・・・オーガもサイクロプス、地龍も怖い。だけど、私は頑張って戦います・・・だから!!」
冒険者、騎士全てが彼女へと目を向ける。
「私と一緒に・・・頑張ろ?」
その瞬間
ウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォ!!!!!!!!!
周囲一帯が震撼する程の歓声が広場を覆いつくす。
騎士も冒険者も一緒になって叫び始め、先程までの不安が一気に喪失し、あるのは喜悦と誇りのみ。
「作戦は完璧か・・・」
「言った通りだろう?」
ちらっと隣を見てみれば、ギルド長とアタライ様がそんな会話を交わしている。
恐らくこれは演出・・・ギルド長とアタライ様が考えたものなのだろう。
彼女が装備している鎧や剣なんかもアタライ様が貸出したものだろう・・・それも、多分彼女が装備しているのはとんでもない額の物だということが分かる。
冒険者達は彼女の操る魔法に希望を見出し・・・そして、彼女の美しさに見栄を刺激されたのだ。
彼女の前で情けない姿を晒してはいられない、彼女にいいところを見せてやろうと完全に冒険者達を・・・いや、冒険者と騎士達を手球に取ったのだ。
なんとなく情けない気持ちになりながらも、僕はオロオロとしている彼女へと目を向ける。
さきほど彼女が行使した魔法はとんでもない物だ・・・恐らくあれが魔物に牙を向けば大抵のものであれば一撃で絶命するのは間違いない。
いや、そもそもあれは魔法なのか・・・あんな魔法を一度も見た事がない。
現在遠征に向かってい宮廷魔法師達の使う上級魔法を見たことがあるが、それでもあんな馬鹿げた魔法を見た事はない。
渦巻く魔力の奔流は人の出せる技を超えている・・・。
まさか、彼女が使ったのは魔法の原初・・・『精霊魔法』なのか?
だが今はそんな事はいい・・・戦力は十分だ。
『金色』は確かな力量を示した、それにあんなに大規模な魔法?を放っても彼女から疲れは見えない。
よし・・・後僕がすることといえば。
「ギルド長、アタライ様」
並んだ二人の方をポンと叩く。
「あぁ・・・俺は家の用事があるのでまた後で」
「ワシもギルドの用事が・・・」
「確か、アタライ様は街の一角にある家で賭け事をやってらしたそうですね。それがバレて奥様に怒られたそうですが・・・あれ?おかしいですねつい先日例の家からアタライ様が出る所を目撃したと報告があったのですが?」
「・・・」
「あぁ、そうそう。ギルド長様は奥様と数年前に御結婚されてるそうですね・・・おや、つい先日娼館から出てきたところ騎士が目撃しているそうですが?」
「・・・」
二人は僕の手から逃れようとしていたが、その言葉を聞いて一瞬にしてピクリとも動かなくなる。
「お二方共、王国守衛隊長『クリフ・ラウル・ルアネィド:レェベン』が命じます。包み隠さず、全て話してくださいますね?」
ギルド長とアタライ様は何も言わずに、唯コクりと頷いた。
ん?『金色』がミリなんとかさんに似てる?気の性ですよ・・・。
宜しければ、本文下にある評価の方もくださると、私の活力になりますので是非ともお願い致します。遠慮なくこの物語の評価をして下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!