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開拓:侵入でした!

戦闘パート?身に覚えがな・・・ごめんなさい。

次話戦闘パートです!!思いのほか長くなってしまいました・・・。

次話投稿は一週間以内です!

 ジュルジュル・・・ジュルジュル・・・ジュルジュル。


 薄暗い地下道を這う様にして突き進む影・・・粘液が一つ。

 粘液は一つ溜息を吐き、ゴポッというあぶくを身体から吐き出す。


 そんな粘液の頭の中に浮かぶ言葉は、早く帰りたいの一言である。

 粘液はもう一つ盛大な溜息を吐き、ブクブクと自らの身体に気泡を浮かべる。


『もう・・・元気ないわね。どうしたのよ』

「いやぁ、すっかり人じゃなくなったなぁ・・・なんて」

『・・・?元々人じゃなくてスライムじゃない?寧ろ昔の姿に戻れて良かったんじゃないの?』


 傍から見れば独り言をブツブツと呟く、奇妙珍怪な粘液が、カナンの街を走る地下道をトボトボと進んでいるのだ。

 そんな粘液は、現在盛大な心労を抱えており、自分の姿を見ては嘆いている。


 自分の粘液な身体を見て溜息をつくのが、ユガ大森林東西南部を縄張りとするヌシ、通称「ユガ」として生を受けたスライム。

 そして、そんな粘液を見て、小さな妖精となって姿を現した水の最上位精霊「ディーレ」である。


 片や英雄譚にも登場する莫大なまでの力を持った伝説の精霊。片や駆け出しの冒険者でも倒せる・・・時には子供にさえ倒される踏み台こと最弱の魔物、スライム。


 そんなアンバランスな二匹は、『黒翼』のアジトである地下道を進んでいるのである。


 カナンバザールの軒並みに、平然と並べられた一軒家の中にあった地下へと通じる扉を潜り、密偵として調査をしているのだ。


「この身体って確かに便利だよ。土とかに染み込んで気付かれないように動くこともできるし、水に紛れればほぼ見つかることはないし・・・。唯、もう人じゃないっていうのが心に来るんだよ。特にスライムって真実がさ・・・」

『あら?私はそんな貴方が好きよ。それなのに、自分の事を卑下するだなんて・・・私悲しいわ』


 ディーレは少し悲しそうな表情を浮かべ、地下道の土に身を半分染みこませたスライムに視線を送る。

 瞳を潤ませ、整った顔立ちに浮かぶ憂いに満ちた表情を浮かべるディーレに、顔を赤く・・・土から出てる体表を赤く染めながら、ありがとうと呟く。


 人間でなくなってもその感性や、考え方等は前世の頃からあまり変わりがない。美女に言い寄られれば顔が赤くなるし、胸が大きな女性がいれば真っ赤になるし。


 そう考えたところで、まさか俺・・・変態!スライムなだけにと、悟りを開こうとした時、前方から微かに人の話し声が耳に届く。


「アンデッド共の世話も苦労するぜ。まぁ、それも今日で終わりだ」

「とうとう動くのか・・・カナンの街にアンデッドを放つなんてえげつねぇ事を考えつくもんだな」

「アンデッド共のせいで、ずっとここから出られなかったからな。アンデッド共が暴れてる隙に金品と女も奪っていくか」

「お!いいじゃねぇか。そういやぁ、最近この街に胸のでかい金髪の女が来たって話だぜ・・・確かミリ・・・なんとかって名前だったな」

「ほう。そいつを探し出して、気絶でもさせて攫えばいい。ボスに言っておけばどうとでもなるだろうしな」


 地下道を進む男二人は、言わずもがな黒翼のメンバーである。

 ユガは黒翼のメンバーが話していた内容を反芻し、襲撃の内容を示唆する。


 ユガ達一行は、この地下道に斥候・密偵として大蜘蛛達を解き放っている。

 この薄暗い地下道に大蜘蛛達は完璧に溶け込んでいるようで、今も自分の傍に一匹潜んでいるそうなのだが、薄らとした気配しか感じられず、姿形は全く見えない。


 そんな大蜘蛛達から得られる情報はどれも頭が痛いものであった。

 まず耳を疑ったのは、カナンの街を死都とする計画だ。ギルド長並びにユリィタさんもこれには相当驚いていた。それも、決行の時が近いと知って、かなり狼狽していた。

 衛兵の手配も唯でさえ、かなり切羽詰まっていたというのに、そんな情報が齎されたのだからギルド職員全員が書類仕事に追われていた。


 そして、ギルドの職員が黒翼と繋がっていた事も明らかとなり。その職員は黒翼に情報とあるモノを提供したそうなのだ。


 そう・・・これがまさかのアレであるのだ。

 ベヒーモスの死体・・・書類上ではとある貴族が購入したとあるのだが、実際は黒翼の頭でもある『デイドリッヒ』が賄賂で購入していた。

 職員に多大な金を掴ませ、ギルドには適当な金を払っていた。


 で、黒翼の切り札としてアンデッド化したベヒーモスが裏で待ち伏せているみたいだ。アンデッドと化したベヒーモスはステータスも大幅に上がっているが、ユガ大森林主力メンバー全員がいる状態で俺達が負けるわけもないだろう。


 というのも、現在進行形で表の方では既に制圧が始まっているのだ。

 カナンの街に残っていた黒翼のメンバーは既に、ナーヴィを主軸としたソウカイ、キク、ルリ、コトヒラによって捕らえられている。

 それもユリィタさんが提示したターゲットを迅速且つ、丁寧に捕らえている為、今の所黒翼のメンバーに感づかれずにすんでいる。


 しかし、あのリザードマンの・・・グリスト?って奴は独自の情報網で、ギルドに情報が流れたのを知ったみたいだが、短期間で準備はできないだろうと高を括っている。


 うむ。ギルドと俺達が密かに作り上げた計画は完璧に進んでいる。

 ってなわけで、少しは制裁してもいいと思うわけだ。


 地面から闇色の触手を一本だけ覗かせ、自分の上を通過した黒翼のメンバーの足元に直撃させる。

 薄暗い地下通路では闇に溶け込んだ触手を視認することなど叶わず・・・例え、視界が良好であったとしてもあまりの速さに捉えることができないであろう。

 高速で振るわれた触手は、男の脚を払う。


 直後、ズベシャという音が地下通路に響き、男達からは苦悶の呻き声が漏れる。


「ははは、何やってんだ」

「いってぇ、いや!?何かに脚を・・・」

「何かってなんだよ。お前も大概間抜けだな」

「うるせぇ!!・・・ったく」


 もう一発と。


「ブッ!?」

「ほら見ろ!!お前だって転んでんじゃねーか間抜け!!」

「な、なんだ!?」


 二人は何に躓いたのか下を見るが、そこには特に何もなく、ジメっとした道があるだけであった。

 地下通路に魔族であるスライムが忍び込んでいるなんて露ほども思わない男達は、きっとどこかに空いた穴にでも足を突っ込んだのだろうとお互い笑いあった。


『もう、バレたらどうするのよ』

「ナイス、ゴシュジン」

「巨乳エルフには指一本触れさせはしないからな!!」

『はぁ・・・ほんとにエッチなんだから』


 いつの間にやら、横に並んでいた大蜘蛛は脚の一本を上げて、こちらに向けている・・・うん、たぶんだけど親指を立てている感覚なのだろう。


 ディーレは頬を膨らませながらも、仕方ないと、もう達観している。仕方ないんだ・・・エルフで巨乳は男の浪漫なんですよ!!それを踏み躙るのは何人たりとも許しはしない。


「んで、見つけた?」

「ハイ。ブラボーチテンカラ、ホドチカイバショニ、テキシュリョウハッケン」


 アジトの出入り口はそれぞれ、アルファ・ブラボー・チャーリー・デルタと呼称している。なんでって?かっこいいから・・・なんてのは冗談で、単に隠語で話したほうがいいと思って無難なのがそれだったからだ。


 俺はアルファ地点から徐々に進んでいたわけだが、なんといってもこの地下通路バカみたいに広いのだ。

 ギルド長から教えてもらった情報によると、黒翼の元の組織・・・つまりは王都にある本部に高名な土魔法の使い手がいたらしく、それが作ったのではないかとのことだ。


「ほんっとに面倒くさいな・・・」

『頑張りなさい』

「はい」






 はい。到着致しました。


『よく頑張りました』

「早く帰ってディーレさんの膝枕が欲しいです」

『終わったら好きなだけしてあげるからもうちょっと頑張りなさい』

「言質はとった!!」


 ディーレは、頬を赤らめながら俺のやる気を向上させる条件を出してくる。さすが、この異世界で一番長く一緒にいるだけあって、俺の扱い方をわかっていらっしゃる。


 忍ばせた大蜘蛛達の情報によると、もう既に黒翼の主力メンバーが集結しているとのこと。

 現に扉の前に立って・・・染み込んでいる自分の耳には中から人の声が聞こえている。


 扉の隙間から侵入することは容易なのだが、この身体は非常に便利な機能もあるのだ。

 このスライムの身体は腕、もとい触手を伸ばせるのは勿論の事、実は体のどの部分も伸縮自在なのだ。


 つまりだ・・・


「・・・ハ・・ハ!」


「・・・ツの馬鹿・・・は・・・きだな」


「違いない」

「ふん・・・グリスト、例の物は用意できているか?」

「あぁ、これだろう?手に入れるのにはなかなか苦労したがな」


 こうやって、扉の隙間から耳だけを出すこともできるわけだ。因みに、スライムなので耳の形状は触手と何ら変わりません・・・悲しい。


 さて、中では黒翼の主力メンバーが一堂に会するこの場所では、襲撃に関する概要が話されている。


「・・・あれはなんだ?」


 デイドリッヒの手に収められ紫色の光を放つ物。その物の中には人の顔だったり魔物のような何かが蠢いているのが見られる。


 まぁ、大方アンデッド生成装置みたいなやつじゃないかな?

 黒翼の計画はカナンの街をアンデッドだらけにして、本当のゴーストタウンにしてしまおうっていうもんだし、アンデッドを作り出したり、アンデッドを強化するものであってるだろう。


「さすがだなグリスト。して・・・あれの準備はどうなのだ?」

「あれなら俺がギルドの伝手に頼んで用意したぜ・・・いやぁ、まさかこんな時にあれが来るとは思わなかったがな」

「ふむ。完璧だな。これで計画は滞りなく完遂されるだろう」


 うっわぁ、べったべたな悪役発言、それに死亡フラグまで立てやがった。

 俺も同じてつを一度踏んだとは言え、ここまで完璧死亡フラグを立てたことはないな。

 アレってのは、アンデッド化したベヒーモスのことだろうし、大蜘蛛達の情報リークによるダダ漏れのお粗末計画。

 異世界の悪者ってのはどうしてこうもフラグクリエイターなんだろうか。


「ブハハ!俺はとりあえず暴れたらいいんだろう?俺が取った女と金は全てもらうぞ!!」


 まぁ、このブラッハっていうデミオークも大したことなさそうだな。えっと、グリストとゲデインって奴よりかは強いけど、所詮オークだしなぁ。

 いや、でも人間の知能を持ってるだけで侮れないかな・・・でもまぁ、ヨウキなら一捻りに出来るでしょ。


 さてと、そろそろ大蜘蛛達も帰ってくるんじゃないかな?


「ブハハハハ!!!ゲデインの子飼いが言ってたサミエル・・・とか言ったか?あいつも俺が貰うぞ。少しは俺を楽しませてくれそうだ」

「お前に目を付けられちまったら文句も言えないか・・・」

「ブハハ!! 血が騒ぐ、今夜も女で楽しむとしよう!!!」


 ・・・ほっほーう。


 赤髪スレンダークール系戦士のサテラに・・・どう楽しませてもらうのか是非ともご教授頂きたいね。


「アルジ、モドリマシt・・・ヒッ!?」

「フ、フフフフフフフ」

『戻ってきなさい。蜘蛛ちゃんが怯えてるわよ・・・ダメね聞こえてないわ』


 怒気を孕み、形状をいびつな形へと変えるスライムは、狭い範囲に濃密な殺気を垂れ流し、傍に近づいていた大蜘蛛を恐怖へと引きずり込む。


 この姿かたちになってからというもの、どうも配下だったり自分の身近にいる人を貶されるとイラつくんだよなぁ。


 ドシャン!!


 ってなわけで、取り敢えず転ばしておこう。


『はぁ、こうも欲望に忠実だと怒る気もなくなるわね』

『ア、アノ・・・アルジ?』

「ふぅ、スッキリ。・・・って、あれ、いたの?」

「『・・・・・・・・・』」


 気が付くと、傍には複眼を全てジト目にした大蜘蛛・・・それもスパイダー忍者の「ハンゾー」が地下の闇に紛れ姿を現していた。

 闇に浮かぶ様にして赤い複眼は揺れ、見る者が見れば発狂するであろう異様な雰囲気を醸し出している。

 で、なんでジト目なんだろう?ディーレさんまでどことなく冷ややかな気を送り込んでくるんだけど。


「えっと、俺なんかしたかな?」

「『ベツニ・・・』」


 うん。取り敢えず謝っておこう。きっと俺が悪いんだから。


「えっと・・・冗談はさておき、準備は整ったかな?」

「シュウヘンノヒナンカンリョウ。ハイカノミナサマモショテイノイチニツイテオラレマス」


 扉から離れ、闇に紛れ俺とハンゾーの声は闇に溶け込んでいく。

 開け放たれた扉から出てくる醜悪な顔を引っさげたデミオークが現れる。欲情し、私欲に肥えた心を剥き出しにしたそれは、地下通路を進み、消えていく。

 女がいると思っている部屋には、コクヨウが待ち構えているとも知らずに。


「ワレワレモ、ソロソロ」


 そう言うや否や、地下通路の天井を埋め尽くすほどの赤き輝きが顕現する。


 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ

 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ

 キチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチキチ


 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ


 数え切れない程の赤き瞳の正体は、闇色に染まった体表を周囲に溶け込ました大蜘蛛の群れ。

 しなやかな脚は、されど鋭利さを持って天井という足場に食い込んでいる。

 強靭な顎が上げる、アルジに忠義を示す甘えた声が通路にこだまし、蜘蛛達の歓声が目の前に立つスライムの形をした化物へと注がれる。


 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル

 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル

 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル

 ニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュルニュル


 スライムの形は徐々に人型へと変貌し、その藍色の眼は周囲の蜘蛛達を見据える。

 それを機に、蜘蛛達の歓声は一斉に鳴りを潜める。されど、赤き瞳に浮かぶ忠義の炎は静まらない。


 蜘蛛達を一瞥した後、完全に人と化したスライム・・・ユガは告げる。


「行動開始。散って!!」

「ショウチ」


 赤く輝いていた通路は、まるで何事もなかった様に、一瞬で元の空虚な地下道へと姿を戻した。

 脚音もなく、風のうねりもなく、呼吸の音もなく、本当に何事もなかったかのような空間が唯、広がっている。


「おい」

「ハイ」

「あれ、ぜっっっっったい大蜘蛛ジャイアントスパイダーじゃないよな」

「センジツ、ワタシイガイ『シノビグモ』ニナリマシタ」

「・・・んじゃハンゾーは?」

「『チュウニングモ』となりました」


 俺の名前の付けるセンスは抜群なようだ。






 はてさて、現在地下通路にて待機中。


「暇だなぁ」

「後はルリ、シロタエのみです。お待たせして申し訳ございません」

「あぁ、そんなつもりで言ったんじゃないよ」


 コクヨウが申し訳ないと頭を深々と下げ謝罪する。

 暇・・・というよりは、なんだか異世界感がなくて妙に萎えてるというか・・・いや、エルフはいるし、魔物はいるし、魔法はあるしで異世界なんだろうけど、なんかこう、はっきりとした異世界ライフがないんだよなぁ。まぁ、いいんだけどね。


 黒翼のメンバーはほぼ全員捕獲済み、泳がせている主犯格の内ブラッハはヨウキが半殺しの末確保。


「えぐ・・・ひぐ・・・ウエエエェェェェ!!!!」

「ほら・・・もう泣かないの・・・ヨウキ姉元気出して」

「主君も許してくれてるよ。殺してなかったんだしセーフだよ!!寧ろ半殺しくらいがちょうどいい」


 ヨウキは俺の命令に背いたと、さっきからずっと泣いている。可愛くて撫でてあげたら、余計泣き出してしまい、配下から戦力外通告をもらってしまった・・・なんでだ?

 キクとコトヒラに宥め役を任せているが、どうしてだろうニコニコと微笑んでいるはずのコトヒラが何か黒い気がするんだが・・・。


「さ、さすがコトヒラだぜ、シロタエの次に恐ぇ」

「腹に一物を抱えた者は怖いなぁ」


 あの強気なフゲンが何かに怯えている・・・一体どうしたのだろう?ソウカイは幼子の成長を見守る老師の様な顔をしている。


「こういうのも久々だなぁ。はぁ、森に帰りたい・・・」

「「「いつでもお待ちしております!!」」」

「ふぁ!?」


 なんとまぁこういう時の一体化はすごいものだけど、普段は統一性がなくて、てんでばらばらだからなぁ。

 緊張感の欠片もないのは俺がいるせいだそうだけど。


「主君、ルリただ今戻りました・・・」

「主人様。ただ今戻りましたわ」


 そうこうしている内に、ルリとシロタエが戻ってきた。これで準備は万端・・・なはずだけど。


「ルリ、どうした?」

「主君以外に、劣悪な視線を向けられました。非常に不愉快です」


 あぁ成る程。そういえば、ルリに任せたのはデイドリッヒの捕獲だったな。


 うん・・・デイドリッヒを捕獲しているようには見えないな。それどころか、なんだか帰り血を浴びている気さえするのは気のせいか。


「えっと、主人様。それについては私から説明が・・・」

「あ、ヨウキと一緒だね」

「デイドリッヒに無礼を働かれたので、天誅を下した。その際にグリストの介入により逃げられたとの事」

「・・・ルリ?」


 ルリはツーンとそっぽを向き、顔を真っ赤にしながら告げた。


「だって、主君以外は嫌だから」

「大いに許す!!」

「主人様・・・お優しいのは我々配下に取っては嬉しいのです。しかし、時には厳しくお叱りをするのも気を引き締めるのに良いかと愚考致します」


 って言われても、怒ったり注意するのって苦手なんだよなぁ。

 叱りつけるのもなんか嫌だし、体罰なんてもってのほか、そうなるとなぁ・・・うーん。

 やっぱあれしかないか。


「・・・わかった。んじゃ次から、ミスしたら一週間スキンシップをなくします」


「「「「「ッッッッッ!!!!!」」」」」


 今まで緩んでいた空気は、一瞬として張り詰めた空気に変わり、配下達全員の身体からは見えない殺気が立ち昇る。

 表面上ではさっきと何も変わらないまでも、纏う空気が一瞬にして殺伐としたモノへと変貌したのだ。


「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」


 なんということでしょう、コロコロと豊かだった表情は跡形も無くなり、無機質であり、冷酷であり、残酷なまでの無表情へと変わってしまったではありませんか!!

 コクヨウは刀を抜き放ち、油の曇がないかを入念にチェックし始める。ヨウキは、顔を真っ青にさせながら拳を打ち合わせ殺気を漲らせている。シロタエは身体・・・それも内部の中心にて魔力の圧縮作業に入っている。


 いつもと変わらず、何事もなく、そこに不動の姿勢を見せているユキでさえ、剣呑な空気を漂わせ、薄く見開かれた瞳からは何人たりとも逃すまいとする、コクヨウ、ショウゲツ達よりも凄まじい殺気が・・・。


「と・・・いうのは冗談で、一日ご飯抜きです」


 漂っていた殺伐とした空気は一掃され、さっきと同じ空気が戻る。

 うん。殺気で空間が断裂するんじゃないかって思う様な空気よりは幾分かマシだわ。


「冗談・・・なんですよね?」

「も、勿論」


 全員がホッとした顔をする。

 うん。次からは迂闊な発言は気を付ける様にしよう。


 で、そんな茶番を繰り返していると奥の通路から、人が三人走ってくる音が聞こえる。全員は顔を見合わせ、あいつらで間違いないということを目で語り合う。



 俺達がコイツラを泳がせたのは、正直に言ってしまえば、ちょっとした宣伝である。

 宣伝なんてしても大丈夫なのか、という質問に関してはギルド長サンタナさんと、アンネさんのお父さんデュルフ様が裏でコソコソやってくれているので、大丈夫だろう。


 黒翼のやつらは、俺達が人間の社会に馴染むため、俺達の縄張りを発展させるための踏み台となってもらおう。


 俺はゆっくりと地下の闇の中を這い、三人の前に現れる。


「スライム?」

「・・・チッなんだ驚かせやがって。デイドリッヒあんなの準備してなんになるn」

「知らん!あんなの知らんぞ!!」


 さてと、どういう登場シーンにしましょうかね。・・・やっぱりあれでいいか。


 スライムは徐々に人型を形取り、前々から考えていた言葉を告げる


「どうも、『ちいせぇガキ』です」


 皮肉気に、不敵な笑みを携えた魔族はそう答えた。


じ、次回こそは戦闘パート主人公視点でございます!!

少々お待ちを!!(汗)


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!


※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。

方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。


わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!

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