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開拓:ベヒーモスとの再戦でした!

お待たせ致しました!!主人公視点での戦闘パートです。

次話は事後処理のお話を一話・二話続けて、次編に突入致します!!

一万二千文字の大盤振る舞いです。是非お楽しみ下さいませ!!(誤字脱字ありましたら報告お願い致します)

次話投稿は一週間以内です!


 しっかし・・・まぁ、ステータスはかなり上がってるし、なんだか厄介なスキルもあるな。

 アンデッドについては、ユリィタさんに嫌というほど教わったおかげで、核を潰さないと死なないという事、弱点、構成といった部分は頭に叩き込んでいる。

 で、このアンデッドベヒーモスを倒すには、硬い頭部を破壊して、中にある核を潰さないといけない。



 ベヒーモス:アンデッドLV3


 称号

 呪狂獣


 HP:1800

 MP:450

 STR:1250

 VIT:1351

 AGL:410

 MGI:789

 LUC:8


 位階:B


 スキル:呪詛、狂呪カース、アンデッドブレス、破咆哮

 エクストラスキル:なし

 専有スキル:赫呪狂走



 ステータスやアンデッド云々言う前に・・・スプラッタとかが苦手な俺には、こいつの姿形は精神にくるんだよねぇ。

 勿論ステータスがかなり高いことに焦ってるし、もともと小心者の俺がベヒーモスに向かい合って睨み合っていることも怖い。

 リアルジュラ○ックパークが目の前で展開されている今の現状、ビビらないほうがおかしいだろう。

 しかもまぁ、殺気やら、爪の輝きなどが作り物でないだけあって、迫力満点となれば、誰だって腰が引ける。


 人型と化したスライムは、深く溜息を吐く。

 ジメジメとした地下通路で、それも突如として魔物退治へと依頼がシフトしてしまえばため息も付きたくなるのも頷ける。

 目の前に立ちはだかるベヒーモスを、面倒くさそうな目で睨みつけているこのスライムはゲンナリとした表情を浮かべる。


 異世界に行ってやりたかった事は断じてこんなのじゃないんだ!!

 いや、確かに剣と魔法で冒険、数々の偉業を成し遂げ、英雄譚として語り継がれていく様な活躍をしていくのも醍醐味の一つだろう。


 しかし、現状を鑑みて自分を見直してみよう。

 生まれ落ちた瞬間にスライムと知って絶望して、あまつさえ死にかけて、無双とは無縁の泥臭さ、今は強くなったとは言え、変な貴族と競馬をやたら語り合って、そしてヤクザとドンパチやっているのが現状だ。


 俺が求めていたのは、女の子と共に冒険し、俺が無双して行くのを傍で見ていた女の子がベタ惚れしていく展開なのだ。

 そして最後にラスボスを討ち果たして、俺達の生活はこれからだ!!・・・なーんて。


 スライムに転生した時点でもう諦めてるけどね。


 さて、このベヒーモスのステータスを見るに、前のあれよりはかなり強くなっているのは間違いない。

 えっと、呪詛とかキョウジュ?って何だ。


 “呪詛:呪いの言葉により、精神を蝕む。効果は状態異常:狂呪カースの効力の増加。狂呪カース・・・発狂・継続的な精神(MP)ダメージを及ぼす。精神(MP)ダメージが総量を越えると狂死する。ベヒーモスの体から発されるオーラにそれらが含まれている模様。尚、抵抗レジストに成功しています。”


「うん。まぁ、大方予想通り。唯、その体から発されているオーラは知らなかったけどな。・・・成る程、『状態異常:狂呪カース付与』か・・・一応抵抗レジストできたんだな。後ナビちゃん久しぶり」


 “お久しぶりです”


「んぁ!?」


 あぇ?ナビちゃん?今なんか言った?


 “・・・・・・・・・”


 あれ?気のせいか・・・。なんか喋ってた気がするんだけど。

 まぁいいや。今は、目の前のことに集中しようかな・・・。


 はてさて、目の前に立っている悪役が何か言っているわけだが・・・なになに、「お前の運命もここで終わりだ。最後に泣き喚く声を聞かせて貰うとしよう」、だってさ。

 やっぱり異世界人ってのはフラグを建設するのが好きなようだ。どうしてこうも、自分が窮地に陥るであろう言葉を口にしてしまうんだろうね?


「やれ!アンデッドベヒーモス!!」


 アンデッドベヒーモスはゆっくりと前足を上げる。

 大樹を思わせる野太い脚、何者をも切り裂けるであろう鈍色に光る巨大な爪、目の前の獲物を屠らんとして放出される殺気、その全てが目の前の魔族に襲いかかる。

 そして、当の魔族は


「なぁディーレさん。このベヒーモス、あいつらに倒させたほうがよくない?」

『流石にステータスを考えれば無理ね』

「全員でも無理かなぁ?」

『あれの頭部を破壊して、核を潰すのは難しいわ。ヨウキちゃんのスキルは溜めもあるし隙が大きいしね』

「そっかぁ」


 余裕をかましていたわけだ。

 目の前にいる驚異に、何も感じていない・・・ビビっていると言っても、彼の脳内には危機的意識が全く訪れない。


 それもそうだろう。自分のステータスを思い返してみると、その理由も自ずとわかってくる。


 魔法粘液生物(LV8)


 HP:2541

 MP:2891

 STR:989

 VIT:3201

 AGL:1629

 MGI:400

 LUC:?


 位階:A


 とまぁ、自分のステータスとアンデッドベヒーモスのステータスを比べるとこちらに優位性があることが分かるだろう。


 そして・・・よく見ると名前が変わっている。

 俺の元の個体名は『魔法粘液生物:[並列]:龍狐』っていう、なんだかよくわからない名前なわけだ。

 それが、今は綺麗に『魔法粘液生物』となっているのだ。


 これがわかったのはついちょっと前、森に行った時の事だ。

 森に帰って全員に出動命令を下した後、軽く組手をすることになったんだが・・・「軽く」っていているのにヨウキがエクストラスキルをぶっぱなして、それを受け止めようとした時に偶然、魔法粘液生物へと『形態移行』したのだ。


 自分でも驚いたんだが、これがかなり使い勝手がいい。

 簡単に言ってしまうと、魔法粘液生物・・・つまりはスライムの形態は魔法重視且つ防御が高い魔物へと形態を変える事ができるのだ。

 因みに、普通魔法が使える者は、防御が低いと思われがちだ。しかし、昔友人から聞いた話では、「日本」でいうスライムは「ドラ○エ」を始めとした色々なゲームで雑魚キャラとして扱われているが、外国では物理攻撃が全く効かない厄介極まりない敵だというのだ。

 恐らく後者、つまりは外国の方のスライムが自分に適用されたのだろう。


 こんなことが出来るなんて知らなかった俺は、配下達全員を実験台にして、この体の戦い方を試しに試したのだ。

 うん?勿論、配下全員死屍累々だったけどね。


 で・・・。

 現在、振り下ろされたアンデッドベヒーモスの脚と爪を難なく防いでいるわけだ。

 全然痛くないし、痒くもない。衝撃もないし、変わったことといえば地面がへっこんだことくらい。

 後は、腐り落ちた肉が滴っているのが気持ち悪いことくらいか。


 スライム形態時は、身体を自由自在に変形することができ、ここに潜入した時のように液体状になったり、どんな姿にでもなれるってなわけだ。

 因みに、どちらにも属していない[並列]時は、どっちつかずで能力ステータスもオールラウンダーになる。


「成る程。アンデッド化しているとステータスも上昇してるのか・・・にしても、ほんっと面白い身体だなぁ。攻撃と防御で入れ替わるといいんだな」


 手を盾状に変形させ、ベヒーモスの豪腕を受け止め、そんな事を呟く。


 さて・・・と、防御があるなら攻撃があるのが筋ってもんなんだけど、ちょっとこの形態のまんまで試してみるか。


 やがて、俺が生きていることに気づいた黒翼の主力達は驚愕に目を見開き、愕然とした様子で、アンデッドベヒーモスの目前に立つ魔族の姿を瞳に焼き付ける。

 怪我一つなく、恐れもなく、淡々と作業をこなすかのように、アンデッドベヒーモスの一撃をなかったことにした化物を前にして、黒翼のメンバーは言葉を上げることができなかった。


 アンデッドベヒーモスがニ、三歩後退したのを尻目に、ノソノソと地面に空いたクレーターから這い出る。

 自らの手の形状を盾から剣、槍、そして盾と、せわしなく様相を変えている。


「なんかクセになるなこれ」

『人前で出したらダメよ?』

「銃とか・・・構造がわからんなぁ」

「ジュウ?」


 さてと、またまた黒翼がブツブツ言ってるけど、この展開ならそろそろ・・・。


「えーい、何をしている!!殺せ!早く殺せ!!」


 GUUUUUUOOOOOOOOO!!!!!


 はい。頂きましたぁ。

 さすが一級フラグ建築マスター、ベッタベタ悪役、異世界展開待ったなし。


 まぁ、強くなったとしてもディーレさんの魔法で一発だし、負ける気がしない。それに、龍狐もまだ試したいしね。

 打撃とか攻撃魔法よりになる龍狐形態は未だ上手く扱えないしね。


『ん?貴方魔法使うつもりなの?』

「え?じゃないとアンデッドベヒーモス倒せなくない?」

『・・・うーん、あのね』


 アンデッドベヒーモスの口内から禍々しい色の炎が漏れ出る。口の端から伸び出る手は何かを掻き毟るように蠢き、顔の様な物は苦痛に歪む。


 身体全体を覆っていたオーラが爆発的に膨れ上がり、怨嗟の炎がちは走り、迸る。


 何もない空間から数十体ものアンデッドが生まれる。軋む骨をカタカタ、キシキシと響かせるスケルトン。

 脳内に直接声を届かせる呻き声を上げる半透明、非実態のレイス。

 人の肉体が腐り落ち、虚ろな瞳を虚空に彷徨わせたゾンビ。


 その群れが地下空間を埋め尽くし、生者の匂いに惹かれたのか、スケルトンは顎をカタカタと打ち合わせ、レイスは生者の姿を認めると口端を釣り上げ、ゾンビはゆったりとした歩みでこちらへと一歩また一歩と近づく。


『私の魔法は確かに強力よ』


 ゾンビはゆっくりと生者に歩み寄る。


『だから、こんな場所で放ったらここは崩落しちゃうわね』


 ゾンビは不揃いな爪が生えた手を振り上げる。開けられた口からは涎が巻き散らかされ、呪詛めいた呻き声が漏れ出る。


『つまり、ここにいる皆も巻き込んじゃうし、地上に居る人にも被害が届くわ』

「つまり?」


 振り上げたゾンビの腕が振り下ろされる。


『力を行使できるのは貴方の力だけね』

「・・・」


 まるで、玩具おもちゃのように、何かが宙を舞う。赤色の噴水が辺りを染め、薄暗い地下通路に灯る光が、幻想的な赤を一瞬だけ映し出したのだ。


「うぎゃあああああぁぁぁぁぁあああぁぁあ!!!!!!!」


 あぁ、ダメダコリャ・・・いつものだ。

 余裕をかましていた魔族の頬を冷や汗が伝った。






「どうして・・・どうしてこうなった!?」


 ほら、またこれだよ!!上手く事が運んでるなぁ、と思った矢先に絶対何があるのが俺の人生なんだよ!!


「まずい・・・非常にまずい!!全員容疑者確保!!」


 その号令とともに、闇に躍り出た配下達を横目に、さっきよりもこちらへと殺気を迸らせるアンデッドベヒーモスへと目を向ける。

 完全にぶちきれているようで、瞳は赤く、紅く、朱く染めあがり、口端から零れ出るえんさのオーラは留まる事を知らず・・・いや、先程よりも勢いを強め吹き出している。


 カモン蜘蛛ちゃん!!


「オヨビデショウカ?」


 気配だけは感じていたのだが、やっぱりいたのか。さっき聞いた限りではどうやら「中忍蜘蛛」という奇々怪々なアメイジングスパイダー忍者と化したハンゾーは、斥候や暗殺を得意とするらしい。


 特に移動速度や、情報伝達の速度が異常とも言える程早い。しかも、こう見えて意外と常識人・・・常識魔物なのだ。


「配下達、並びにここの地下通路の上にいる人・魔物の退避。後、安全に退避できるようにサポートもお願いする。できるかな?」

「ギョイニ」


 OH…NINJA・・・なんて言ってる場合じゃないか。

 取り敢えずは、内の忍者達に任せて退避してもらおうか。んで、それまで俺が持ちこたえなきゃならんということだよね。


「んじゃま。始めるか・・・やってやんよ!!」

『やるのね』

「ふぁ!?」


 精霊顕現。ディーレさんの元の姿・・・小さな妖精だった姿は何処へやら、美の化身、口では言い表せないほどに神々しい。

 まさに天使の如く空中から舞い降りる様に、その場にいた全ての者は息を呑む。それはアンデッドであっても例外ではない。

 その姿に、圧倒される。英雄を超え、伝説を超えた存在へと敬意を表するように。


 ユガが掲げた手に、開かれた掌に、ゆったりと口づけを落とし深蒼の天使は儚く、そこに居たという痕跡を感じさせず、消え去っていったのだ。

 身体全体は蒼く染まり、閉じられた目が開かれる。

 天使の加護を受けた魔族は告げる。


「勘弁してくれませんかね」


 説明しよう!!今の流れは要約すればこんな感じだ。

 ディーレさんに小規模な魔力を送り、帰ってきた魔力をさらに練り上げる。

 腕全体へと流れる奔流にイメージを通し、蒼く光り輝くそれを地面へと突き刺し、意識を地面へと這わせ、突き貫く槍を作り出す。

 それをド派手に演出したのが今の一演劇である!!!!


 えぇい、どうにでもなれ!!


「専有スキル:刺し貫く蒼き槍スライム・ファランクス!!」


 ディーレさんから受け取った魔力を全て注ぎ込んだ、魔法の槍は、アンデッドベヒーモスの体中を貫き、串刺し状態で宙へと持ち上げる。

 それだけでは終わらないとばかりに、貫いた槍からは、木の枝の様にまた幾本もの槍が突き出し、アンデッドベヒーモスの内部を刺し貫く・・・。


 しかし、肝心のコアが収まっているであろう頭部に槍が突き立とうと接触した瞬間、弾かれ、半ばから折れてしまったのだ。身体の一部である槍が折られたとしても、所詮は粘液状であるからして、痛くはない。

 折れた槍はゼリー状の液体へと変わり、地面に吸い込まれまた体の一部へと戻る。


「それにしても厄介だなぁ」


 少年からは自然と溜め息が漏れ、げんなりとした表情を浮かべる。

 仮にもディーレの伝説級の精霊が練り上げた魔力をつかって繰り出した魔法を、こいつは弾き返すばかりか折ったのだ。


 アンデッドベヒーモスからお返しとばかりに攻撃が繰り出される。


 ステータス差から簡単に・・・とは言えないが、余裕を持って回避することはできる。この体の防御力をもってすれば、アンデッドベヒーモスの攻撃程度ならば耐え切ることも簡単だ。

 油断は禁物だとは言え、このステータス差は簡単に埋めれるものじゃない。


 そんなことを考えながら、悠々と回避した次の瞬間、ユガの目が見開かれる。

 アンデッドベヒーモスの馬鹿げた力に、遠心力が加わった尻尾のなぎ払いが、再び盾へと変えた手に直撃する。


 地面を削り、押し出されたユガは冷や汗を流し、その中性的な顔に微笑を浮かべる。


「うっへぇ、やっぱ強いなぁ」


 アンデッドベヒーモスの瞳に怒りの炎が灯る。

 体制が不自然なまでに、上へと持ち上がり、凶悪な顎がカパァと開かれる。


 確か、これは・・・


 破咆哮が放たれ、ユガへと直撃する。

 脳を直接揺さぶるような音波の波状攻撃をその身体に一身に受けながらも、ユガは全く動じない。


 この身体になってからわかったのは、打撃・斬撃・衝撃の攻撃にはかなりの耐性がつき、刺突に関しては全くの無意味だということを確認済みである。

 魔法攻撃に関してはてんで駄目で、ヨウキの一撃で死に掛けたのは良い思い出だ。


「そんなんじゃぁ俺は、倒せないぞ」


 尻尾を掴み、一本背負いの要領で後ろへと投げ飛ばす。


 これで終わらすわけないのはわかるよなぁ。

 喰らえや、アニメでよくある必殺技の内の一つ!!


 しっぽを脇に挟み、そのまま引き摺る様にして、回転させる。

 ステータスによって齎される馬鹿力と、遠心力を利用した大回転。


「ジャイアントォ・・・・・・スイィィィィィング!!」


 ブンッと再び投げ飛ばし、アンデッドベヒーモスを壁に激突させる。

 破砕音と地下の一部が崩れ、破砕音が地下通路いっぱいに広がる。


 さすがに、頭部からいったし壊れてて欲しいんだけど・・・。

 っかし、やりすぎたなぁ。煙でなんにもみえなっ!?


 破砕により巻き起こった煙を引き裂いて、中からこちらへと猛突進アンデッドベヒーモスが視界に入る。

 回避も間に合わない、防御も間に合わない。


 アンデッドベヒーモスの頭部には罅が入り、所々欠け落ちている部分が伺える。そしてその欠け落ちた隙間から、赤黒い塊が見えた。


「あれがコアか」


 その言葉を最後に、ユガは壁へと打ち付けられる。

 先程自分がアンデッドベヒーモスを投げ飛ばし、壁に打ち付けた時よりも大きな破砕音が地下通路を包み、大きな石の礫が周囲へとばらまかれる。


 幸い、配下達や容疑者に被害入ってないみたいだ。蜘蛛ちゃん達の健闘が伺えるな・・・天井から放たれた蜘蛛の糸が致命傷となる一撃を全て絡め取って、他のアンデッドへと進路を変更させている。


「グッ!?」


 痛ッテエエエェェェ!!!!

 余裕をかましてはいたが、後からジンジンと体中を苛む痛みの波に、まなじりから涙を溢れさせる。


 こなくそ、やりやがったなぁ!!

 アンデッド言うのが、イマイチよく理解できなかったがこういうことか。


 コアを破壊しない限り、アンデッドはやっぱり死なない。特にこの個体は砕け散った水晶から未だ漏れ出る闇色のオーラによって、身体を強化されている。

 普通のアンデッドならば、身体機能を損傷させればなんとか勝てるという話は聞いたんだけど・・・。


 そしてギルド長から聞かされた話を反芻する。

 痛みを感じず、恐怖を感じない。故に奴らに生半可な攻撃も通用しないし、油断してはならない・・・だったかな?


 どれだけ痛めつけても駄目なのか。なんとなくは理解していたけど、実感がなかったんだよなぁ。


 まぁ、頭部に罅も入ってるし、後一歩じゃないかな?


 アンデッドベヒーモスの突進の際、辛うじて身を翻すことで角の串刺しを免れたのが功を奏した。

 両腕で二本の角を掴み中空へと持ち上げる・・・そして下へと振り下ろし叩きつける。


「成る程・・・やっぱりコアを破壊しなきゃダメなのか、面倒くさいなぁ」


 やっぱり、魔法粘液生物じゃ決め手に欠けるか。

 そんじゃ、ここで奥の手と行きますかね。


「このままじゃ埓が明かないか。並列移行モードチェンジ:龍狐」


 人の形をとっていたモノは不定形の粘液と姿を変え、再び人のそれへと変わる。

 しかし、その姿は人とは違う。頭部から生える狐の耳、臀部から除くユラユラと左右に振れる尻尾、それらはその者が魔族であることを如実に物語っている。


 瞳は縦に割れており、金の瞳がその場にいる者全てを射抜く。髪の色は紺色から、金色の髪が薄暗い空間で淡い光を反射させる。

 身体は金色と蒼の光に包まれ、いっそその姿はまさに神の使いが如く精錬されている。


 龍狐(LV8)


 HP:3200

 MP:3211

 STR:2690

 VIT:1581

 AGL:2387

 MGI:1631

 LUC:?


 位階:A


「妖術:『雷纏』、ぶっとべぇぇぇ!!!!!」


 少年の姿は一瞬にしてアンデッドベヒーモスの眼前へと迫り、雷霆を纏わせた拳がアンデッドベヒーモスの眉間へと叩き込まれる。

 骨が割れ砕ける音があたりに響き、稲光がアンデッドベヒーモスの身体を駆け巡る音が響き渡る。

 腐肉が焼け落ち、辺りに鼻を突く匂いが充満する。


 しかし、ユガはそんなものを気にした様子もなく、連撃をアンデッドベヒーモスへと叩き込んでいく。


 GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!


 しかし、そんな一方的な打撃を黙って受け入れる様な魔物ではない。

 アンデッドベヒーモスも反撃へと転じ、破咆哮を繰り出しユガを数メートル吹き飛ばす。


 そして、決戦の火蓋は切られた。


 アンデッドベヒーモスの体が隆起し、腐食した皮膚は赤黒く変色し、硬質な色を帯びる。

 ベヒーモスの特性はアンデッドベヒーモスへも引き継がれる。『狂獣』の肩書きを違えることなく、その凶悪な存在は更に狂悪な存在へと変貌を遂げる。


 アンデッドと化した事で専有スキルへと昇華した『赫呪狂走カースベヒーモス)』が発動される。

 割れて砕け散っても尚、怨嗟のオーラを垂れ流していた水晶は空中へと浮かびあがり、最後とばかりにありったけのオーラが吹き荒れる。

 暗闇に広がる闇色の光に取り巻かれたアンデッドベヒーモスは、地下空間に響き渡る雄叫びを上げる。


 アンデッドベヒーモスの額から伸びる双角は、自分の体を安々と上回る程に巨大化し、金属の様な光沢を帯びたそれは、全てを切り裂き、貫く鋭利な武器へと変貌する。

 身体中を隆起させ、一回りも二回りも巨大化し、凶悪さを増したその脚は自分を蟻を踏み潰す様に殺すことができるだろう。

 骨の顎から覗く鈍色の光を放つ牙は、何者をも噛み砕かんと獲物を求め、俺の姿を見つけると鈍色の光を一層強く視界に叩きつける。


「やっぱりあるよねぇ。それ・・・」


 GYUUUUUUUUUURYUUUUUUOOOOOOOOOOO!!!!!!!


 狂走に陥ったアンデッドベヒーモスから繰り出される爪擊、たたきつぶさんと振り下ろされる強大な脚。

 尻尾の薙ぎ払いを紙一重で避けるが、徐々にその攻撃のスピードは増して行き、自分の体を掠めていく。



 ベヒーモス:アンデッド(赫呪狂走)


 称号

 呪狂獣


 HP:3652

 MP:720

 STR:3891

 VIT:3241

 AGL:1298

 MGI:2301

 LUC:2


 位階:A



 周囲掌握によって算出されたアンデッドベヒーモスのステータスに絶句し、冷や汗を辺りに撒き散らしていく。


「ステータスが殆ど上回ってるな・・・やっばい」


 アンデッドベヒーモスの一撃の間を縫って、反撃に転じるがなまじステータス差が拮抗しているだけあって決定打に至らない。

 罅割れていたはずの骨の頭部は完全に塞がっており、どれだけ全力で殴ろうが蹴りつけようが傷一つつくことはない。


 しかし、アンデッドベヒーモスから放たれる攻撃は、徐々に自分の体力を削っていく。体に刻まれる傷は痛みを伴い、動きを緩慢なモノへと変えてゆく。

 対してアンデッドベヒーモスは痛みを感じることはなく、恐怖がないだけに常に全力を持ってこちらを果敢に攻め立ててくる。


 このままじゃ俺の体力が尽きるほうが早いか。


「妖術:『雷纏』!!」


 雷霆が辺りを光一色に染め上げ、稲妻の奔流がアンデッドベヒーモスへと叩き込まれていく。

 バキバキと何かを割れ砕く音があたりに響き渡り、周囲にはユガの身から吹き出す赤い血が飛散する。


 雷霆を纏った拳がアンデッドベヒーモスに直撃する中、自分の頬を掠め過ぎていく爪に冷や汗を撒き散らし、自らが辺りに撒き散らす血飛沫に口端を吊り上げる。

 瞳に炎を灯し、自らの身がたぎっていくのが分かる。

 ミシミシと唸りを上げるアンデッドベヒーモスの頭部をこれでもかと言わんばかりの連撃が襲う。

 これには堪らず、アンデッドベヒーモスが一歩後退する。


 しめたとばかりに拳を振り上げるが、アンデッドベヒーモスの瞳がギラリと光る。

 己の角を振り翳し、こちらへと突き刺さんと突き出してくる。空気を切り裂く音と共に、これくらいならと防御の姿勢をとるが・・・己の身を走る悪寒が瞬時に脳天まで突き抜ける。


『ダメ!!!』

「ふえ!?」


 妖精へと姿を変えたディーレが横から俺の身体を突き飛ばした。


 次の瞬間、俺の背後にあった通路の壁は、まるでそこに硬い壁があったと思わせない程、いとも容易く切り裂かれたのだ。

 壁から引き抜かれた角は、一瞬宙を彷徨い、またも俺の心を刺し貫かんと迫る。それを、体を捻り回転することで回避し、またカウンターを決めていく。


 ユガは顔に笑みを浮かべる。

 これほどまでに危機的な状況に陥っているというのに、その魔族の瞳から漏れ出る殺気は、ギラギラと獲物を見つめる眼へと変貌していく。


 今の状況であるならば、軍配はユガに上がるであろう。決定打は無いにしろ、徐々にだがコアに一歩ずつ近づいているのだ。


 頭部の骨は欠け落ち、後一歩でコアが露出してしまう。コアに一撃でも食らってしまえば絶命するアンデッド。

 対して、多くの傷を負っているとは言えその全てが掠り傷であるユガとを比べると、どちらに勝敗がつくかはわかる。


 そして、業を煮やしたアンデッドベヒーモスが動く。

 今のままでは目の前に立ち、薄気味の悪い笑みを浮かべる魔族へと憎しみの瞳を向ける。


 アンデッドベヒーモスの口の端からは、赤々とした灼熱の炎が漏れる。

 口を開いたアンデッドベヒーモスの口内には炎が渦巻き、次の瞬間には口内から炎の塊が放たれる。


 炎塊はユガを焼き尽くさんと一直線に放たれ、空気を焼き焦がし、周りのアンデッドを全て塵へと変えながら高速で突き進む。


 ユガは後ろへと大きく跳躍し、着地地点にあったゾンビの頭部を蹴り砕いてもう一度後方へと飛び退る。

 肌をチリチリと焼き付けた炎塊は、地面に触れると同時に爆砕し、周囲に熱風を撒き散らす。熱風に直に当てられたアンデッド達は燃え上がり、やがて灰へと生まれ変わった。


 炎の波が通路を這い回り、ゾンビへと燃え移ったことで薄暗かった地下通路は、赤々とした光に照らし出される。


 やがて炎の波が収まり、炎塊を避けたユガが姿を現す。

 その傍に、闇色に甲殻を輝かせ、紅い複眼を光らせる蜘蛛が姿を現していた。


「アルジ・・・カンリョウシマシタ。アトワ、アルジノ、ミココロノママニ」

「了解。帰ったらハニーフルーツの山盛りを用意しておこう」

「・・・」


 中忍蜘蛛は、路の中を縦横無尽に駆け、ウキウキとした顔で地上へと戻っていく。


 地下通路は数体のアンデッドを残し、今までローブを羽織っていた配下達の姿はなく、容疑者ABCの姿もなくなっている。命令通り、ちゃんと逃げ切れたようだ。


 もう一度配下がいないことを確認して、思い残すことは何もなく、目を閉じる。


「ディーレさん。行くよ」

『わかったわ』


 身体の内に流れる水流(魔力)に耳を澄ませ、イメージを浸透させる。

 澄んだ川が突如として迫り来る鉄砲水へと変わる。体中を巡り巡る魔力が爆発するかの様に体外へと排出される。


 外に漏れでた魔力をもう一度体内へ取り入れ、魔力を圧縮する。

 また体外へと放出し、圧縮する。


 そして練りに練った魔力の圧縮塊をディーレへと渡す。

 すると。また膨大になった魔力がこちらへと流れ込む・・・それの繰り返し。


『もういいね』

「んじゃ行きますか」


 蒼く輝く魔力を体外へと放出し、最後のイメージを浮かべる。


コドモの流れは初めに清く」

『清らかなコドモは激しさを増す激流に』

「成長するは大いなる姿」

『思い描く、龍に至った一匹の生』

「滝を登りし、矮小な生」

『至った者は、その名を変えた』

「紡げ、その名を」

「叫べ、その名を」


「『水天滅激龍セイリュウ!!!!』」


 視界は青一色へと染め上がり、自分でもどうなっているのかわからない。

 唯、ものすごい勢いで上へと押し流されているのかが分かる。


 ディーレさーーーーーーんやりすぎでわあああぁぁぁ?

『やりすぎくらいがちょうどいいのよ』

「お願いですから俺の身も案じてはくれませんかねぇぇぇ!!!」


 そして突如、瞼を射す光が襲いかかる。


 地上へと回転しながら飛び出した俺は、空中へと身を投げ出される。

 アンデッドベヒーモスも同様に上空へと打ち上げられ、滞空している。


 地面に空いた大穴から昇る水龍は、他のアンデッド達を天高くまで連れ去っていった。

 アンデッドベヒーモスは、頭部の骨の左半分を欠損させ、コアを剥き出しにしている。


 しかし・・・アンデッドベヒーモスはこちらを見据え、開けられた口内には轟々と燃え盛る炎塊が姿を見せていたのだ。

 炎塊は先程よりもさらに大きさを増し、灼熱の炎と化している。


 身動きがとれない、こちらにアンデッドベヒーモスの口内から炎塊が吐き出される。未だ空中に漂う水飛沫を一瞬で蒸発させながら、こちらへと突き進む。


「ディーレさん!!」

『ん』


 まぁ、それでもアンデッドベヒーモスに勝ち目なんてないんだ。

 奴が吐き出したのは、そこにある物全てを焼き尽くす大炎塊であろう。

 されど自分の眼前へと迫る灼熱の球体に臆しはしない。


 なぜなら・・・俺の傍にはいつもディーレがいるからだ。


 地下で一度姿を現した麗しの天使が微笑を湛え、自分の手をそっと握る。

 莫大な魔力の圧縮と最上級精霊の加護が一挙に押し寄せ・・・


 天使と口付けを交わ・・・・・・・・・す!?!?!?!?


「ふぁ!?」

「うふふ」


 悪戯な笑みを浮かべる天使から注がれた精霊魔法を大炎塊へと突きつける。


 手に現れたのは蒼銀に光り輝く弓、水の様に透き通り輝きを放つ不定形の弓。


『私は愛す。貴方を愛す』

「その意思はどこまでも続く」

『一度放たれれば止まらない』

「その弓は放たれればもう止まらない」

『放て』

「弓よ」


水霊之愛弓アルマ・ディレ


 放たれた矢は膨大な魔力の光を後に引き、大炎塊へと直撃する。

 爆発・・・競り合い、そんなものは起こらない。唯、それを貫き、灼熱の温度さえ超える天使の愛を持って消し去っただけ。天使の愛を唯の炎が超え得るはずもないのだから。


 その矢は、空気を切り裂き、アンデッドベヒーモスへと迫る。

 矢を弾き返そうと脚を振り下ろす。硬い岩盤をもバターの様に切り裂く爪を矢へ突き立てる・・・が、矢は止まらない。


 硬質な音が空気中に響き渡り、爪の破片が陽の光を反射し、飛散する。脚を貫き、頭部へと迫る。


 額から生えた二本の角を振り回し、矢へと角を直撃させる。ピシッという音が響き、また角が割れる。


『馬鹿ね。そんなもので、落とせるわけないじゃない。私の口付けはそんなもので超えることなんてできないわよ』


 頭部へと矢は突き刺さる。硬い頭蓋骨を難なく通り抜け、その奥にあるコアへと矢は突き立った。

 小気味の良い音をたてて、コアは砕け散る。


 OOOOOOOOOOOONNNNNNNNNNNNNN!!!!!!!!!


 痛みか・・・はたまた己の身が消滅していくことへの恐怖か。アンデッドベヒーモスは空中でもがき、ちてボロボロになっていく。

 ボロボロになった腐肉は地面へと辿り着く前に灰へと変わり、カナンの空気へと消えていく。


 そして遂に、アンデッドベヒーモスの頭部が完全に消滅した。


 だが、矢はまだ止まらない。

 アンデッドベヒーモスの体内から溢れ出た、闇色のオーラの中へと吸い込まれるようにして矢は消えていった。


 やがて、憎しみ、憎悪、憤怒、嫉妬、といった呪詛を撒き散らしていた闇色のオーラは蒼い光に包まれる。

 闇色のオーラに囚われ、苦悶の表情を浮かべていた顔は穏やかな表情へと変わり、蠢いていた魔物の様なモノは天へと駆け昇る。何かを掻き毟っていた手は青い空へと手を伸ばし消えていった。


「えっと・・・南無阿弥陀仏?だっけか?」

『何それ?』

「えっと死者を極楽にどうたらこうたらする呪文みたいなもんだよ」

『ふーん・・・ナムアミダブツ、これでいいのかしら?』


 青く澄み渡り、清浄な空気が支配する空へ消えていく、浄化された何かを見つめながら、俺は後頭部から地面に激突した。

ラストスパートでございます!!『開拓編』終了まであとちょっと、皆様お楽しみください。


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!


※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。

方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。


わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!

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