表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/271

開拓:カナンバザールでした!

ユキは残念系美女!

次話投稿は一週間以内です!

 少しばかり雲が多いこの日、街はミールの祝祭が終わって初めてここに来た時よりも幾分穏やかである。

 とは言っても、元々この街は商売が栄えている。

 人通りは多く、場所によってはミールの祝祭の時と同じくらい賑わっている所さえある。


 そして、さすが異世界である。売っている物は、食材や日用品だけではなく、ポーションや毒消しなどが置いてあるアイテム屋。様々な武器が置いていて、看板に巨大なモーニングスターを引っ提げた武器屋。一際光り輝く鎧を表に出した防具屋・・・。

 前世オタクの俺には非常に興味をそそられる物が多数並べられている。


 というわけで今現在足を運んでいるのは、バザール?である。

 なぜならば、懐がかなりの金額でホクホクであるからだ。


 あの護衛依頼から二日、今日の朝になって漸くベヒーモスの素材がギルドへと運び込まれた。

 かなりの量になったそうで、馬車三台分の素材が手に入ったそうだ。


 ベヒーモスの素材はかなり貴重なそうで、最後に取られたのが大凡二年前であったという。そうなると、ベヒーモスの素材の売価は上がるわけで、相場の1.3倍ほどの値段で売れた。


 ベヒーモスは主に、皮、牙、角、魔石、肉とかなりの部位が換金対象となる。

 残念な事に、皮の方は損傷が激しくあまりいい値段では買い取れないとのことだった。ベテランの冒険者は、如何に素材を傷つけずに魔物を倒すかと言ったことも念頭に置いて戦闘を行うらしい。いい勉強になった。

 牙や角は損傷もなくそのまま売却した。


 ここで、魔石なわけだけどかなり純度が良かったそうで、相場の1.5倍程の値段で売ることができた。

 魔石は「魔道具」と呼ばれるものに使用されるそうで、まぁ所謂「電池」の様な役割を果たすものである。回数には限りがあるが、専門の魔法使いからの充電も可能であるという。


 肉はどうするかと聞かれたが、そのまま売却することにした。

 持っていても調理方法を知らないし、冷蔵庫もないし直ぐに腐らせてしまうしね。魔道具には冷蔵庫の様な物もあるらしいが、貴族様しか買えない程に高価であるらしい。


 ギルドに所属している者は、討伐した魔物の素材はギルドへと優先的に回したほうがいいらしい。

 サテラさんに聞いた所、そうするとギルドの覚えが良かったり、評価につながるとの事だった。しかし、全部渡さなくてもいいらしく、倒した魔物によっては防具や武器、薬などの素材がある為、自分で所持することもありなのだという。


 今の所、別に武器やアイテムに困っているわけでもないので、そのまま全部売却する事にした。


 結果財布の中身は大金貨8枚、金貨6枚、大銀貨1枚、銀貨3枚となっている。占めて868000円程である。

 この額は一般家庭において、四人で1年暮らすのならちょっぴり贅沢ができるほどで、普段と変わらぬ生活すれば2年ももつほどの金額であるらしい・・・貨幣については前世と変わらないが、相場・物価などは前世よりも遥かに下みたいだ。この額であれば、冒険者において装備の準備やアイテムの準備であっても余裕で賄えるほどであるそうだ・・・ま、まさかの小金持ちスタートに驚いている。


 で、バザールに来ている理由は明日に備えての準備である。

 一人で行くのは流石に気が引けたため、サテラとユキとで一緒に行くことになった。


 本当はサテラと二人で行く予定だったんだけど、これにキクとユキが猛抗議。私も連れてけと聞かなかったわけで、ユキを連れて行く事にした。

 護衛依頼にキクを連れて行ったし、次はユキという事で決めた。キクはちょっと機嫌を損ねてしまったが、軽く指で髪をブラッシングしてやると機嫌を治した。


「ここで買うのは傷薬と武器の手入れ用品、後は食べ物と軽い調理用具ね」


 そう言うと、サテラはなれたように人ごみの中を通り抜け、目的の店へと歩いていく。

 ユキはスルスルと人ごみを避けながら移動していて、横切られた人達はその美しさに二度見することになる。

 一方俺は色んな人にぶつかりながらかき分けている状況である・・・なんだろう前世の電車内を思い出す。


 そして、ここまた異世界の常識が覆されたことが一つ。

 この世界ではポーションが非常に高い!一番効果の低いポーションでも金貨三枚に大銀貨一枚という値段であった。


 ゲームの中では安価で直ぐ様HPの回復が出来る、初めの頃の冒険には必需品のポーションがものすごい高いのである。

 何故ポーションがこんなに高いのかをサテラに聞くと、キョトンとした顔で当たり前じゃない?って言われてしまった。


 まぁ、よくよく考えてみればその値段になるのも頷ける。

 サテラから聞いた話では、ポーションは傷ついた体を一瞬で癒せる魔法のアイテムであり、効果の高いものだと全身をなます切りにされたとしても直ぐ様回復する程であるらしい。うん、そう聞くと物凄い高価であるのにも納得だ。

 因みに効果の高いものは白金貨一枚・・・つまり100万円するらしい。しかもそれより上があるというのだから恐ろしいな。

 ポーションは念の為に一つ持っておくというのがベテラン冒険者の定石らしい。


 傷薬はその名のとおりただの傷薬である。傷の上に塗ると出血が少し治まったり、バイ菌が入るのを防ぐ・・・なんだろう、異世界チックじゃないな。

 まぁ、冒険においては必需品だそうだ。


 人ごみを掻き分けて、漸く店へと辿り着いた俺は、アイテムの品揃えに面食らう。簡単に傷薬といったがそれもかなりの種類が有り、一般的な物で「傷を負った時に使う傷薬」、「火傷を負った時に使う傷薬」というもので、特殊な物だと「酸で爛れた肌に塗る傷薬」なんてものがある。


 サテラは的確にパッパッと商品を選び、店主へとお金を払っている・・・しかし、そこでサテラは少し顔を歪めた。

 しかし、歪めた顔はすぐに鳴りを潜め、そのままこちらへと戻って来た。


「何かあった?」

「ん?・・・あぁ、何もないよ」


 困った顔で笑いかけるサテラに、何かあるのは間違いないと思うけど、本人が話したくないのならあまり追求するのも良くないか・・・。


 ユキは店の傍らで興味深げに辺りをキョロキョロと見回している。それと同時に、昔の癖が出ているのだろう、周囲の警戒に努めているのが目に見えてわかる。


 サテラは会計を終わらせ、次の店へ行こうと歩みを進める。

 キョロキョロと辺りを見回しているユキの手を取って、迷わない様にサテラについて行く。途中後ろを振り返ると、ユキが顔を真っ赤に染めて口をパクパクさせていた・・・金魚?


 次は食べ物と調理用具である。

 食べ物はといえば、黒パンと干し肉が鉄板であるそうだ。やはり、保存が利いて長期的な依頼を受けるには一番いい食料なのだとか。

 黒パンは美味しくないし干し肉も美味しくない。加えて、スープも作るけど塩の味しかしない・・・前世のコンソメスープが非常に恋しい。


 干し肉は街の近くにあるダンジョンの、浅い階層に生息する「ボア」と呼ばれる魔物の肉を使っているそうだ。猪・・・なのかな?


 調理用具は小さな鍋だけを買っていくことにしてその場を後にするが、やっぱりサテラの顔がどこか優れない。

 やっぱり、貴族との依頼って事で気乗りしないんだろう。悪い事したな・・・。


「やっぱり、貴族との依頼は嫌かな?」

「え、なんで?」

「さっきから、時々嫌な顔するからさ」

「あぁ、違うわよ。ちょっと、値段が普段より高くてね」


 値段が普段より高い?この世界にも不況だったりすることがあるのだろうか?

 サテラさんはさっきと同じで困った顔を見せながら、笑っている。


 そういえば、俺の母さんも家計簿を見ながらため息をついていた覚えがある。その頃は「不況だものねぇ」が口癖となっていたな。

 やはり女性というのはそういうことに敏感なんだろう。


 そして、買い物を終わらせた後は、サテラは宿へと戻り、俺とユキは少しだけ街を歩くことにした。

 明日の依頼の準備にお金を使ってはいたがまだまだ余裕はある。

 買い物の途中に見かけた、食べ物が並べられた露店から流れてくる匂いにフラフラと誘われながら辿り着いたのは、焼いた肉を串に刺して売っている露店であった。


 ちょうどお腹が空いていたし、夜までまだ時間があるからと、ユキの分と合わせて六本購入する。

 店の前に掛けられた値札を見ると一本大銅貨一枚であった。合計して大銅貨六枚を渡そうとすると・・・。


「・・・大銅貨九枚だ」


 店主はそう告げると、視線を少し右へと逸らす。

 それに首を傾げながらも、サテラはこの事を言っていたんだなと、不況を嘆きながら仕方なくお金を出す。


 手に持った六本の内三本をユキに渡す。広場のベンチに腰掛けながら、俺とユキでそれを貪るようにして食べる。

 肉は熱々で肉汁は滴り落ち、少し固めの肉は俺にとっては丁度いい歯応えになっている。味は、鳥っぽいかな?少し癖はあるけど、美味しい。これに、ご飯があると最高なんだろうなぁ・・・。


 そうこうしながら肉を食べ終え、再び何かないかと街の中を探索する。

 うん・・・美味そうな匂いにまたもフラフラと誘われていったのは言うまでもない。トウモロコシの様な物や、ソーセージに似た物、魚の切り身等様々な物がある。

 旨いもの廻りになっている。


 唯、やっぱりお金が表示されている金額よりも高い。

 そして、ほぼ全員が目を逸らしたり、眉を潜めたりするのだから、少しずつではあるが何かがおかしいと思い始める。


「マスター、先程から人間の様子が何やら不穏です」

「うーん、やっぱりそう思う?」

「明らかにマスターと私の事を意識しています」


 ユキは初めの方から気づいていたらしいけど、俺が気を悪くしないように黙っていてくれたそうだ。しかし、まぁこれだけあからさまに何かされているとなると流石にユキも腹に据え兼ねたそうだ。


 不況ってわけでもなさそうだし・・・あ、もしかして魔族だから敬遠されてるとかかな?

 いや、でもテイルさん達からはカナンの街では、差別は殆どないって話だったんだけどな・・・。

 まぁ、あんま深く考えないようにしよっか・・・。


 それから、俺とユキはバザールのハズレ付近まで歩いていく。

 中心付近よりは閑散としているが、それでも少しは賑わっている。


 露天料理は、異世界の食べ物ってことで最初はドキドキしたが、食べてみると前世で食べたものとそう変わりはない。しかし、味付けが塩だけだったり、魚は少し泥臭かったりで前世を知っている俺からしてみるとすごく美味しいとまではいかなかった。

 ユキは満足しているようだしいいや。


 と、少し腹も膨れてきところで目に付いたのは・・・


「スープってまだ飲んだことないな」

「すーぷ?とは何ですかマスター」

「うーん・・・沸騰した水の中に肉とか野菜とかを放り込んで出汁をとった物かな?食べてみたい?」


 そう聞くと、ユキは一度だけ頷いてウキウキとした顔で、俺の手を取って店へと歩みを進める。可愛い。


「すいません、スープ貰えますか?」

「おう!毎度あ・・・り」


 その主人も一度だけ目を見開き、俺とユキの顔を交互に見る。ユキはそれが不快で眉を顰めるが、俺はもう慣れた。


 そこの主人は日に焼けた肌で、丸坊主、口に髭を蓄えた強面の人だった。なんだろう武器屋に転職すると売れそうな気がする。


「・・・兄ちゃん。ユガってぇ名前か?」

「・・・はい」


 店の主人は「そうか」とだけ告げ、大きな寸胴鍋の中に入ったスープを掬い取り、こちらへと渡すと、じっとこちらを見てくる。な、何なんだろう怖い・・・。


 一つをユキへと渡すと、強面のオヤジが凝視しているのにも構わず、一気にスープを飲み干し、満足気な顔を浮かべる。


「ほら、口の周りについてる」

「うにゅ・・・ありがとうございます。マスター」


 これが所謂残念美人である。

 肩に下げたバッグからハンカチを取り出し、ユキの口の周りについたスープを拭い取っていく。

 見た目は超絶クールなお姉さんなんだが、中身は結構大雑把で子供っぽいんだよなぁ。


「ふ・・・ハハハハハ!!」


 そんなやりとりをしていると、突然店の主人が豪快に笑い声を上げる。驚いて目を丸くしていると、ユキも小首を傾げ、眉根を寄せている。


「あの・・・どうかしましたか?」

「あぁ、いや、すまんな。お前達を見てると馬鹿らしくなってきてな」


 そう言うと、もう一度スープを掬い取り、「サービスだ!!」と大きな器に波波とスープを注ぐ。

 突然の事に俺もユキも顔を見合わせて状況の把握に努めるが、一体何だというのか?


「あぁ・・・ここらの店の連中から、お前らには割増にして提供するように言われてんのさ。はじめは従おうとしたんだが、お前達を見ているとバカらしくなってきたんだ。最初は従おうと思っちまったし、そのスープでチャラにしてくれや」


 おぉう・・・何やら良からぬ事を聞いたような気がするがそのまま話を聞いていると、ここいらの店は商業ギルドにて統括されているそうで、そのギルドから俺達に対して割増にするようにお達しが来ているらしい。


 何故そんなことがされているのかを聞いてみたがそこまでは知らないそうだ。

 店の主人には子供がいるそうで、それと俺達を重ねてしまって、情が沸いたらしい。


 話をしてみると、この主人かなり気のいい人なのが分かった。顔が凶器であるのが悩みであり、生まれて九ヶ月になる娘は主人の顔を見ると途端に泣き出すという。

 それを聞いた俺は腹を抱えて大爆笑し、ユキはそっぽを向きながら笑いを堪えていた。


「バッキャロー!!こっちにとっては唯一の癒しがなくなるんだぞ!笑うんじゃねぇ!!」


 俺とユキは笑いを堪えながら、どうすれば改善するかを話し合い、ハゲがいけないんじゃないかという結論に至った。

 そして、主人の顔をみて、ふっさふさになった主人を想像すると、またも大爆笑。


 俺達の賑やかな雰囲気に釣られて、道を歩いていた他の人も立ち寄り始める。どうやらこの主人、強面のせいで今まで客足が遠のいていたそうだ。しかし、子供みたいな俺と美人のユキが楽しそうに話しているのを見てよってきたらしい

 集まって来たお客にホクホク顔の主人は、俺達に礼を言うと、スープ代として払った代金をこちらに投げて返し、「今日は大サービスだ!!」と笑っていた。


 悪いとは思ったが、好意を無下に断ることも失礼だと思い、受け取ることにした。


「マスター、人族は好きじゃない・・・けど、あれは別です。面白かった」

「人族にはいい人もいるって事わかった?」

「・・・はい」


 よし、これが目的で連れて来たっていうのもあるんだ。作戦成功だな。

 人間との垣根を取り払う、種族が違うからと憎み合ってもしかたないしな。


 そうして、俺達は宿へと戻った。

 その夜、食べ過ぎでご飯を残した俺とユキがサテラに呆れられたのは言うまでもない。


パーティー行動なんてありませんでした!!って事で閑話と・・・です!!

次話こそはパーティー行動です。ごめんなさい。


今週も読者様から応援メッセージが届いて本当に嬉しい限りです!!

楽しく読んで頂けると幸いです!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になり、今回の様に筆が踊りますので気軽にどうぞ!!


※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。

方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。


わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!

皆様が快適に読んで下さるよう誠心誠意努力します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ