開拓:人族の街へでした!
遅れてしまい本当に申し訳ございません!!
本日二話投稿です。第三十五話と第三十六話、是非お楽しみください!
次話投稿は一週間以内です!
燦燦と降り注ぐ太陽の日差しの中、見渡す限り広がるのは影一つ落ちていない広大な平原。
踏み固められたかのような硬い土、申し訳程度に生えた草花が風にユラユラと揺られている。
風は遮るものなどないためか、好き放題に俺達の体にぶつかっていく。
肥沃な土壌、乱立した木々、鬱蒼とした森とは全くかけ離れた場所。
ここは、ユガの森から西へ移動した場所に広がるエデラー平原と呼ばれる場所であるらしい。
その平原は見渡しもよく影など一つも落ちていない。・・・いやよく見てみると、その平原に唯一存在する影は五つある。
一人は赤く長い髪を三つ編みに一本に束ねた冒険者。一人はローブを着込み、フードを目深に被った金髪碧眼の美少女。一人は白い髪の毛を後ろに流し、スラっとした体型に顔に微笑を浮かばせているお姉さん系美女。一人はセミロングの髪の毛に小柄で華奢な体つきの少女。
そして最後にザ・普通の自分である。
サテラ、ミリエラ、ユキ、キク、俺の五人は現在人族の街へ向かっている最中であり、黙々と歩みを進めている。
サテラに聞いた話ではユガの森から人族の住む街までは、約一日掛かるという話であった。
ユガの森から出発して、一応日は跨いでいるのだがまだ目的地は見えない。
「マスターお疲れではありませんか?なんでしたら私の背中に・・・」
「うーん、やめとくよ。大丈夫だとは思うけどもしかしたら人とすれ違うかも知れないからな」
そう言うと、ユキは残念そうに俯いてしまう・・・やめてくれ聞いてあげたくなっちゃうじゃないか。
俺達がここまで順調に歩けているのは、ディーレの疲労回復魔法のおかげだ。
かなり歩いて疲れたのに、それを掛けるとたちまち疲れがなくなって再び歩けるようになる。
まぁ、眠気だったり精神的な疲労は回復しないんだけどね。
「主人・・・無理してない?」
「してないしてない」
キクが心配そうに顔を覗き込んでくる。
大丈夫と手を振ると、ならいいと左手にくっついてくる。すると、即座に右手にユキがくっついてくる・・・歩きにくい。
「ユガちゃんは皆に信頼されてるねぇ」
「あー・・・そうだねぇ」
そう言ってきたのはミリエラで、目深にかぶったフードから覗く端正な顔立ちから笑みが溢れている。
しかし・・・ちょっと疲れてそうかな?
「かなり歩いたし、そろそろ休憩しよう。多分あとちょっとで付くと思うから」
そう告げたのはサテラでミリエラの疲れに目聡く気づいたようだ。
歩いていた場所から少し離れた場所に行き、見通しのいい場所で休憩をとることにした。
エデラー平原は比較的穏やかな場所で、魔物があまり生息していない。人通りも少なく、どこで休憩を取っても大体安全である。
仮に魔物が現れたとしても、見渡しがいいので即座に発見、対処することが可能だ。
ミリエラは肩から下げたポシェットに手をいれ、里から持ってきたお菓子を取り出すと全員に配る。
エルフ達が好んで食べる物で、森で採れた果物を擂り潰し水を加えこねたものだ。
俺はこの姿になってから味が感じ取れるようになってたんだ!!
あぁ・・・甘い。前世では当たり前の様にあったお菓子・・・。甘味という久しぶりな感覚が俺の口に戻ってきた。
スライムに転生してから、物を食べることができるのかと樹に自生していた果物を食べようとしたことがある。
結果は・・・ジュゥーという小気味の良い音を上げて体の中で溶けて消えた。なんの感覚もなく唯溶けて消えた。あの時は泣いたなぁ・・・。
感傷に浸っていた俺はふと周りを見てみる。
ミリエラは食べ終わって直ぐに眠ってしまっていて、ユキとキクは俺に寄り添うようにしてこっくりこっくりと舟を漕いでいる。
サテラだけは、腰に携えていたロングソードを抜いて手入れをしている。
ジッと見ていると、視線に気がついたのか何?と首をかしげる。
「あぁ、ごめん。何でもないよ」
「そう? フフフ、二人ともよく寝てるね」
サテラはユキとキクを交互に見てクスクスと笑う。
手入れが終わったようでロングソードを鞘に戻して、こちらへと向き直る。
「それにしても一昨日は大変だったわね」
「あぁ・・・全くだよほんとに・・・」
サテラは困ったような顔で笑いながら、俺に話しかける。
そう、一昨日の事なんだがどこから出回ったのか、俺が人族の街へ行くという情報が配下達に流れた。それも、二人だけ連れて行くというのを・・・。
家に戻ろうと会議室からでて歩いていると広場に出た瞬間配下の大群に飲み込まれた。
何事かと問いただすと、ソウカイ曰く誰が俺についていくかというのに相当揉めたらしい。
最初は腕っ節で解決しようとしたのらしいのだが、コクヨウとショウゲツの喧嘩を俺が怒ったということで却下され。頭の良さで対決しようとしたら、大半がそれを却下して・・・脳筋配下・・・。
当然話し合いなんかでは解決できなかった。
そうして、どうしようもなくなったので俺に縋り付いてき来たのだ。
んで、どうやって選定したのかというと。腕っ節で決めました・・・。
エルフ達の迷惑にならないように西部の方に全員で遠征して、俺・ディーレ対配下全員というデスマッチを開催した。
全員所定の位置に付かせた後、開戦したんだが、全員の熱気が凄い事になっていた。
まぁ、突進してきた奴らは全員ディーレさんの水で押し流してやったんだけどね。
初撃で半分が脱落し、続いて第二撃は全員が纏まって波状攻撃を仕掛けてきた
俺はいい機会だとばかりに進化した自分の実力を計ることにした。すると、思いもよらないことが起きた。
「マルチウィップ」が使えたのだ。手の部分から触手が伸び、攻撃してきた配下達を薙ぎ払った。
俺の個体名は『魔法粘液生物:[並列]:龍狐』である。「並列」というのは存在を思うように行き来できるというのがわかった。
つまり、俺はスライムのようにもなれるし、人間・・・魔族形態にもなれるってことだ。
そして配下達は俺のマルチウィップに呆気を取られ、これまた半数が脱落した。
ここで、俺が戦っていると向こうの方にエルフ達の姿が見えたんだよなぁ。なんだか全員やけに盛り上がっているみたいだった。
後で聞いた話によると、娯楽代わりとして見物していたそうだ。賭け事まで行われていたことには驚いた。
因みにハルウ達は参加しておらず、エルフ達に危害が及ばないように四隅にお座りして周りを警戒していたそうだ。
そうしていると、漸くコクヨウとショウゲツ達が動いた。
全員が他の配下達とは圧倒的にステータスが勝っているので苦労はしたがディーレと俺の水魔法を駆使した勢いに押され、数十分後に全員地に伏した・・・あれ、俺が勝ったらダメじゃないかと、今考えると思うんだが当時は勝利の余韻に浸っていた。
で、結局一番健闘したキクと無言の圧力で周囲を圧倒したユキが選抜されたわけだ。
「あの時は本当に大変だったよ」
「ミリエラもエルフ達全員に説教して回ってたわね」
しかし、その選抜戦のおかげなのかエルフ達と配下達の仲が急速に深まった。見物していたエルフの中に、試合が終わってから直接話に行くという者が出たのだ。
配下達も初めは戸惑っていたけど、今では結構打ち解け合ってきている。お茶に誘われたり、一緒に子供達と遊んでいる配下までいるのだから驚きだ。
「そういえば・・・」
「どうかしたの?」
俺がエルフ達と交流してから不思議に思ったことがある。
俺はユガの森でスライムとして過ごしていたが、サテラ以外の冒険者にあったことがないのだ。
街から少しは離れてはいるとは言え、冒険者がもっとやってきてもいいのではないかと思うわけだ。
鬼達が持っている武器も冒険者が捨てていったものや、冒険者の成れの果てから取ったものだと聞いている。
襲ったことはあるのか?と聞いてみると、「ない」ときっぱり答えた。
ベテランの冒険者が来ないのは何となくわかるけど、初心者には丁度良いレベル帯の魔物が出ると思うんだけど・・・。
それに討伐・採集依頼等が出てもおかしくないだろう。
今回のような規模が大きいオークの群れなども出現しているわけだし。
とサテラに疑問をぶつけてみた。
「あぁそれね、実入りが少ないからよ」
「素材は豊富だと思うんだけど?」
「えっと大体の都市周辺には『ダンジョン』っていうのがあるの。そこは魔物だけじゃなくあらゆる素材が密集していて、大半の冒険者がダンジョンに向かうわ。けれど、冒険者にはランクって言うものがあって、F~Eはダンジョンに入ることはできないのよ」
「成る程。つまりは、D〜の冒険者はダンジョンに向かっちゃうわけでこっちに来ないと。でも逆にF〜Eは来るんじゃないの?」
「今私達が向かっている場所は『カナン』っていう街なのだけれど、そこの近くにはユガ大森林よりも比較的安全で尚且つ安価な用意で行くことができる場所があるの」
ユガ大森林には『カナン』の街から一日掛かってしまうが、サテラが言う場所には大体二、三時間程度で着くらしい。それも、魔物も弱く素材もユガ大森林程ではないにしても豊富だそうだ。
カナンからユガ大森林に向かうには、かなりの労力と準備金が掛かってしまう。それに極稀に西部や東部から危険生物が流れ込んでくる場合があるため安全面でも少し問題がある。
採集できる素材に対して、それだけの労力が釣り合っていないせいでユガ大森林にはあまり冒険者は来ないのだそうだ。
それでも採れる素材が良質な素材なので、何日か滞在して素材を収集すると実入りはいいらしいが、それに伴って危険も増す。
例年、ユガ大森林に向かって帰ってこなかった冒険者は多いそうだ。
そうなると、近くの安全な場所に行って収集をしたほうが安全面からいってもいいだろう。
仮に魔物に襲われて負傷しても、通りかかりの冒険者などに救われるケースもあるらしい。
まぁ、そこまで安全面が保証されて素材も適度に採れるならそっちに行くな。
「私はあまり他の冒険者と関わり合いたくなくて、あえてユガ大森林に来ていたんだけど・・・ミリエラと会って気に入っちゃってね」
そう言って、サテラは隣で寝ているミリエラの頬を撫でる。
気持ちよかったのか、口許を弛ませながら気持ちよさそうに寝ているミリエラの笑顔に癒される。
「ダンジョンっていうのはどんな場所なんだ?」
「うーん・・・そうね。場所によって様々だけど、殆どのダンジョンは盛り上がった大地に扉があって、そこを潜るともう魔物の住処ね」
大きな都市には必ずと言っていい程ダンジョンがあるらしく、ダンジョンがある地域では商店が多く開かれ、交易品などが盛んに出回る。人族の中でも一番力を持っている都市『王都:シルヴェルキア』ではダンジョンを九つも領地に所有しているらしい。
ここでやっと人族の世界のことを把握することができた。
人族の住む領域は、総称して「アルテリア」と呼ばれているらしい。俺が習得した「アルテリア言語」は八割の人族が使用している公用語なのだそうだ。
俺がよく見る小説では、王国と帝国で二分されている事が多いが、この世界ではかなり多くの国が乱立しているらしい。争い事が頻発している国もあれば、穏やかに時を過ごす小国もあるそう・・・なんだか前世に似てるなぁ。
その中で一番大きな力を持っているのがさっきも言ったように「王都:シルヴェルキア」なのだ。盛んに交易が行われ、領地が一番広く、人口も一番多い王国なのだそうだ。戦争なども行っておらず、次いで二番目、三番目に大きな都市との交易に勤しんでいる平和であり強大な国なのであるそうだ。
カナンの街は、シルヴェルキアから東へ三日ほどの位置にあり、王都から流入する人や冒険者でかなり賑わっていて、「街」の中ではかなりの規模を持っているらしい。
因みに、二番目に栄えている都市が「帝都:テスタロト」であり、単純な戦力であるのなら国の中でもトップだという。三番目に栄えている都市が「聖都:キュイス」で、法王の命令は絶対であり至上であるとされている宗教国家だ。
いずれ行ってみたいと口にした俺だが、両方ともあまり魔族にいい印象を持っておらず、「聖都」に関しては酷い差別を受けてしまうそうで、奴隷として扱われていることもあるそうな・・・こわいこわい。
「さて、そろそろ出発しようか」
サテラはそう言うと、隣で寝ているミリエラを起こす。
俺もそれに習ってユキとキクを起こそうと試みるが・・・起きない。それどころか、キクは俺の肩に涎まで垂らしている始末。
・・・でもなんでだろう、怒れない・・・。
俺が起こすか起こすまいかでウンウン唸っていると、先にユキが目を覚ました。
猫が伸びをするようにグゥーっと体を伸ばすと、目をぱっちり開いて俺に微笑みかける。
「大好きです。マスター」
うん。どうやら寝惚けているらしい。
手から水を出して、顔に・・・かけるのは憚られたため、手元にかけると。ハッとした顔で頬を真っ赤に染める・・・可愛い。
そうしていると、今度はキクも起きる。キクは寝起きは良い筈なんだけど・・・。
「主人・・・大好き」
どうやら寝惚け(以下略・・・
二人とも漸く完全に目が覚めたようで、身支度を整えている。サテラとミリエラはもう用意できているようで、早く早くと急かしてくる。
準備ができた俺達は、またゆっくりと歩き始める。これまた、みんなで他愛もない話をしながら花を咲かせている。
それからほどなくして、俺達は少し小高い丘を登ると、初めて人族が住む都市『カナン』を見ることができた。
今回は自分のミスで投稿が遅れてしまい申し訳ございません!
今日は二話話投稿ですので、今回ばかりは許して頂けると嬉しいです・・・。
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になり、筆が踊りますので気軽にどうぞ!!
※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。
方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。
わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!
皆様が快適に読んで下さるよう誠心誠意努力します!