幕間:ハーピーの観察日記でした!
大変長らくお待たせ致しました!!
快調致しましたので、もう大丈夫だと思います!!
急いで書いたので、かなりやっつけになっていますが大目に見てくださると幸いです・・・。
次話投稿は一週間以内です。
意識が定まらない。
そこに広がっているのは真っ暗な暗闇の様であり、森の樹海にも見受けられる。
翼を動かして空を飛ぼうとするが・・・どうにも上手く翼が動かない。足も同様に動かしにくいが、まだ動くだけましだ。
そうして何故か樹海の方に向かって歩いていく。何かに引っ張られるようにして足を動かしていくと、大きく開けた場所に辿り着いた。
周りを見渡してみても、特にこれといって変わったものはない・・・が、ザワザワと胸の中を何かが蠢く。この気配は間違いなく、自分と敵対する何者かがこの空間に存在する。
鋭く尖った爪を剥き出しにし、辺りに油断なく警戒していると・・・森の奥から仲間が一匹此方へと歩いてくる。
それは昔から仲が良かった者であり、共に修行に励み、苦楽を共にした唯一無二の仲間だ。
・・・しかし、その仲間の姿を見た途端、全身から血の気が引いた。
血塗れになったその全身、喉からは頼りないヒューヒューとした呼吸が漏れ、眼の焦点は虚ろに虚空を彷徨っている。
どうしたと口を開こうとするが、上手く言葉が紡げずどうしてか身体の底から恐怖が込み上げてくる。
血塗れになった仲間が小さく口を動かし告げた。
「リーダー、どうして助けてくれなかったんですか?」
その瞬間、仲間の背後に死んでいった同胞の姿が浮かび上がる。その誰もが自分を非難するような眼をしており、そして誰もが血塗れの姿であった。
必死に弁明しようとするも上手く口が動かず、言葉を紡ぐ事が出来ない。
何故こんな時に、考えた瞬間・・・答えがわかってしまったのだ。
恐怖でカチカチと歯が打ち鳴らされているせいで、自分は上手く喋れないのだと。翼がもがれているせいで、自分は上手く飛べないのだと。
腹の奥底から込み上げる恐怖に、仲間達の惨状に叫び声を上げる事もできずただ恐怖を感じている・・・と、耳元に悪魔でさえ震え上がらせる声が響いた。
「次はお前だ」
ガバッと勢いよく起き上がると、頭部にとてつもない衝撃と痛みが訪れ、フカフカと柔らかな寝床の上でのたうち回ってしまう。いったい何が起こったのかとズキズキと痛む額を押さえ、身を起こしてみると、真っ白で自分の身体を包み込もうとする寝床の下に、長年自分に着いて来た仲間が延びてしまっている。
誰がこんなことをしたかと言えば、頭部に走る痛みがはっきりと物語っている。
・・・仲間の額からは煙が立ち上がり、白目を向いていることから間違いなく自分の額から繰り出されたヘッドバッドを諸に受けてしまったのだろう。
「す、すまない!!大事ないか!?」
あたふたと仲間の肩を前後に揺すると、どうやら死んではいないようで、うーんと呻き声を上げている。
ふぅと安心してため息を漏らすと、ガチャリと物音が響き、咄嗟に足の爪を剥き出しにして敵意を剥き出しにする。
部屋と外とを隔てていた壁がゆっくりと開けられ、その奥から爪なしの仲間が現れる。
敵意を向けられていることにおろおろとして、頭を下げながら立っている場所の下に食事を置いていく。
どうやらかなり心配させてしまったようで、自分は看病してもらっていたのだとわかった・・・赤子じゃあるまいし、情けない。
敵意を向けてしまった仲間に謝り、食事を口に運ぶ。
・・・今まで自分が何を食って生きてきたのだと、考えさせる程にこの用意された食事は幸福間を与える。
舌いっぱいに広がる何かは、自然とほぅとため息を吐いてしまう程美味しいのだ。
いつまでも微睡みの中にいてしまう暖かな寝床に、今まで食したこともない暖かな食事、何時も気を張っていなくてもいい環境に慣れてきてしまっている。
「・・・他の仲間達はどうしている?」
「ソウカイ様から招集が掛かり、皆一同に介しております」
「爪なしも参加しているのか?」
「はい。爪なし・子供達も参加しています」
ソウカイ・・・我々が匿われているこの場所で、かなりの上にいる人物である。
聞いた話によれば武に秀でており、赤眼に次ぐこの里最強角の一柱である。
自分が守らなくてはならないはずの爪なしに介護されているというやるせなさを感じつつ、身支度を整える。どうやら、仲間達はソウカイに呼ばれているらしく、リーダーである自分が目を覚ましたら連れてくるように仰せつかったそうだ。
延びている仲間はそのまま、自分が寝ていた寝床に静かに乗せる。
自分がいた縄張り?を抜けると、そこには人間とエルフ、見たことのない魔物達で溢れ返っていた。
・・・やはり、慣れない。他の部族と共存するなど考えたこともなく、まして人間やらエルフやらが闊歩しているなど想像を絶するというものだ。
食事を持ってきた爪なしも、やはりこの現状に慣れずにいるそうで、キョロキョロと辺りに油断なく視線を巡らしていく。
・・・と、 視界に現在私が一番会いたくない者共が現れる。
「あ! ハーピーのお姉ちゃんだ!!」
「モフモフさせてー!!」
「モフモフー!!」
この縄張りに住む人間は恐れを知らないのか、自分の翼を触らせろと群がってくるのだ。
一度逃げようとしたのだが、その中の一人がハーピーの幼子の様に瞳を潤ませるものだから逃げることも叶わないのだ。
そして結局。
「やわらかーい!」
「もっともふりたーい!!」
「おねえちゃんかがんでかがんでぇ!!」
「あ、いや、うむ・・・」
そんな私の姿をみて、爪なしも微笑ましい何かを見るように、クスクス笑っている。
見てないで助けてほしい。
「うふふ。こうなるとリーダーも形無しですね」
「う、あっ、くそ、やめろ、そこを触るでない!」
抵抗を試みるも子供の無邪気さに成す術なく揉みくちゃにされていると、一人の子供が空中に持ち上げられる。
そこにいたのは大柄な人間・・・の姿をした魔物の姿があった。額から伸びた一本の角がギラリと輝き、顔の近くまで持ち上げられた子供に突き刺さってしまいそうだ。
無愛想な顔には何をやっているんだという表情が浮かび、子供と此方を見下ろしている。
「あ、フゲンのにぃに!」
「こいつはちょっと用事があるんだ。はやく散りやがれ」
それまでいくらやめろと言っても聞かなかった子供が自分の翼から手を離す。
子供達はフゲン・・・と呼ばれた大きな魔物に文句を言っていたが、ギロリとにらまれた瞬間に蜘蛛の子散らすように逃げていった。
「ソウカイのじじいが待ってる。はやく行け」
フゲン・・・ソウカイと呼ばれた者に次ぐ、この里のボスの従僕の一人である。
単純な力の勝負であれば誰も右に出る者がおらず、あのボアタウルスでさえ一撃で屠ったと聞く。どうやら自分を助けてくれたらしい。
立ち上がり、乱れた翼を整えそそくさとその場所から離れる・・・あまり関わり合いにはなりたくない。
そうして爪なしに連れられ、仲間達の下へと向かうと・・・そこには人間とエルフ、そして恐らくソウカイであろう魔物が仲間達に何かを話している様子だった。
「来たな」
ソウカイは後ろへ振り向くこともなく、そう告げた。
仲間達は自分の顔をみると、助けを乞うかの様な顔をしてカタカタと震えている。
何かされたのかと全員に目を這わせるが、別段どうもしていない。
「初に眼にかかる。現在里を任されている『ソウカイ』だ。宜しく頼む」
「・・・」
顔に微笑みを称えるその者は、自分に語り掛ける・・・この里のリーダーやその直系の従僕には名前?を付けられるらしく、その呼称で呼ばれるらしい。
「疲れているところすまないが、この者達に儂らが話を聞こうにもいっこうに口を利かんでな。貴殿に参っていただいたのだが宜しいか?」
「・・・あぁ」
ソウカイはそれは良かったと笑みを称えるが、その顔からは想像も出来ないが一切の油断や隙といったものが窺えない。
長い棒状の何かを二本腰に下げ、それの近くに自然と手を置き、薄く開けられた瞳はじっと此方を見据えている。
「主人は貴殿らの事をハーピーと呼んでいたが相違ないか?」
「相違ない」
「この里に住むに至って、貴殿らの事を知りたいんだ。よいかな?」
仲間達は自分が気を失っている間に色々と聞かれたらしいが、自分が居なかった為に何も話さなかったそうだ。
それで自分達がどうにかされるのではないかと怯えていた訳だ・・・。
質問は簡単なものだ。どこを縄張りにしていたか、主の存在が我々にいるかどうか、崇拝するものはあるかどうかだ。
我々ハーピーは群れにて行動し、リーダーの命令をもとに行動する種族だ。
リーダーは群れで一番強い者がなる。自分がリーダーに選ばれた理由は・・・ボアタウルスの襲撃により前のリーダーがやられてしまったからだ。
後は縄張りを作って縄張りに近づく獲物を取って食らい、獲物がなければそこいらの木の実を取って食べるだけだ。
「ふむ。雌が生まれやすいなどはないか?」
「・・・よく知っているな」
「主人が話していたのでな」
どうやら、この縄張りを統べるあの恐ろしい存在は私達の事を知っているようだ。
・・・しかし、どうも腑に落ちないのが、この縄張りは平和過ぎる。
恐怖に支配されているわけでもなく、あの恐ろしい魔物が支配しているとは考えられない。
「貴方に聞きたい」
覚悟を決めて一つ。
自分達・・・ハーピーの行く末はいったいどうなるのかを
「私達はこの里の者の食料とされるのか? それともオーク達の様に、私達を苗床と使うのか?」
問う。
ハーピーの事を知っている魔物、それでいて自分達を生かす理由が見つからない。
オークのように繁殖や非常食として扱うのか、それともハーピーを駒使いのように扱い、最後はみじたらしく死ぬ運命にあるのか・・・だ。
「・・・ふむ。もっともらしい考えだ。魔物の末路などそんなものだろうな。しかし、我らが主人は慈悲深い方だ。元々死ぬ運命にある我々を救い、力と知恵、縄張りを与えた。そんな主君がそんな真似をするとは思えん」
「えっと、たぶんユガはそんな事しないと思う。ああ見えて、変に優しいし、魔族だけど人間と変わりないし・・・。一度仲間だって認識した人には優しいわよ」
「少し・・・変わっているが、一度仲間だと認めれば自分がどれ程傷つこうが守る。そんな仲間思いなあれがそんな事するはずがなかろうに」
・・・どうやら、この縄張りの主は相当信頼されているらしい。まぁ、そうでなければこうも他種族の者達を纏めることなどできはしないだろう。
赤毛の人間とエルフの雄からも信頼されているらしい。
確かに、誰に聞いても「素晴らしいお方」「誰よりも強く気高きお方」「いとおしいお方」「少し変わった魔物」等と言われている。
「・・・そうか」
全てを信じるわけではない。しかし、現状この縄張りに守られている事は間違いなく、殺そうと思えばいつでも殺せる状況にあった。
捨て駒にする・・・と言っても、あれ程までに強い者がいる中で、わざわざハーピーを捉える理由にもならない。
「主君曰く『ハーピーは希少価値だ!!』とも仰せつかっている。此方から危害を加えることはないだろう」
どうやら危害を加える事はないようで、話を聞いていると主の命令によってこの縄張りに配下となるものを集めているそうだ。
主の下についたものは、そのどれもが繁栄と庇護を受ける事ができるらしい。
しかし、故に価値観の違いがあり、それを各々の種族から聞いているらしいが・・・特にこれといった違いはない。
「ならば我々は何をすればいい?」
このまま縄張りの世話になってばかりではハーピーの名折れだ。とは言っても、戦闘に参加できるのは自分と延びている仲間だけ、他は爪折れや子供達だけだ。それに戦力には困っていなさそうだ・・・。
となれば、自分達に何ができると言うのだろうか?
木の実でも取ってこいといわれれば、出来ないことはないがそれはエルフが魔法で取っているのを見ている。
「主君から、貴殿らには記録?という物をつけて欲しいと賜っている。里や周辺の偵察を忍蜘蛛達と行い、里で何があったか等をサテラに報告すればいい。ただ、お主と・・・何処にいったのやらわからんが、もう一匹のハーピーは今後訓練にも参加してもらう。詳細はサテラから聞いてくれ」
「・・・わかった」
こうして、私達ハーピーは森の主の縄張りに住むことになった。
「で、それで終わりか?」
「クッ・・・」
ボロボロになった体に鞭を打って立ち上がる・・・やはり、この縄張りに住む者達の強さは異常だ。どれだけ爪で引き裂こうと試みても、一向に当たる気配がなく、それどころかこちらが返し技を食らって地面に沈められる事が大半だ。
このフゲンと言う者が自分の訓練に当てられたのだが、私の攻撃の一切が通用しない。フゲンと呼ばれるこの男は、先程から一歩も動いていない。
本気で掛かってこいと言われ全力で戦ってはいるのだが、まるで巨木と戦っているかの様な錯覚に陥ってしまう程ビクともしないのだ。
立ち上がり再度爪を剥き出しに飛び掛かろうとするが、足が縺れ言う事を聞かず倒れてしまう。
「今日はここで終わるか?」
「まだだ!!」
倒れた姿勢のまま地面を蹴り、フゲンへと向かっていく。勢いそのままに体当たりを仕掛け、まともに直撃するが全く効いた様子がない。
そのまま胴体を片手で掴まれ、地面に投げ返される。全身に強い衝撃が走り、肺の空気が一気に外へ吐き出される。
そのまま身体を動かす事ができず、その日の訓練は終わった・・・。
「リーダーもボロボロですね」
「一矢報いることも敵わなかった」
この縄張り・・・里?に居座ってからというもの毎日がこの調子だ。訓練が終われば里の空を飛んで見回りと共に、各人が何をしているかや里がどういった様子であるかをサテラと呼ばれる人間に報告する。
爪なしは里での手伝いに従事しており、私達は訓練と哨戒を行うだけだ。
その訓練がかなり厳しいものだが・・・自然と力が付いてきている事がわかる。今の私達ならばボアタウロスを退けるくらいなら出来る気さえしてきている。
「今日もキク様に絞られました・・・まだ体中が痛いのです」
「泣き言を言うな。自分達が強くならねば、何れ成長する子供や生まれゆく同族達に示しがつかないだろう」
・・・と、斯く言う私もかなり体中が痛いのだが、我慢するしかない。
哨戒を終えて里に降り、いつもの場所へと向かう。
木にできた扉をノックすると、中からどうぞ声が掛かる。このドアというものがはじめは厄介で回すことに苦労したが、今では簡単に爪で回すことができる・・・足でドアを開けていると、偶に視線を感じるが何か間違っているのだろうか?
中には真っ赤な髪をした人間がいて、机?の上で紙と呼ばれる物に何かを書いている。
「いつものね? それじゃあ報告をお願い」
「わかった。特にこれといって変わった事はないが、沢の方でハルウ・・・様達が水浴びをしていた。それとコクヨウ様とショウゲツ様が競い合うようにして魔物を倒していた。フゲン様が仕事をこっそり抜け出していました」
「はぁ・・・またコクヨウとショウゲツがバカしているのね。後でユキさんに言っておかないと。フゲンは後でヨウキに締めてもらうしかないわね」
つらつらと里で起きていた事を告げると、人間が紙に何かをサラサラと書いていく。書き終わるとフゥと息を吐き、グッと背伸びをしてもう大丈夫と告げる。
それを聞き届けると、部屋を出て私達ハーピーに与えられた縄張りまで戻る。
・・・それが、今私達が行っている新しい縄張りでの暮らし方だ。
『ハーピー観察日記』と称して、これから後書きに里での、一幕を箇条書きで載せていこうと思います!!
読者の皆様には大半お待たせしてしまい申し訳ございません。
皆様も手洗いうがいをしっかりしましょう・・・今年のインフルは油断なりません。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!