全てを萌えさせる焔-5
「えへへ、友達と食べると余計美味しく感じちゃうね!」
おいおい、何だこの天使…。私のクラスにこんな逸材がいたとは…。
ケバブをパンでサンドしたものを美味しそうに頬張る秋月さん。
なんと愛らしく、なんと小動物チックなのだろうか。
「うはぁ、うめぇ!! ケバブやべぇ!! ほら、陽菜ちゃんももっと食べなよ!!」
それなのにこの人ときたら…。仮にも美少女なのですから、あまりはしたない真似はしない方がいいと思います。
「もうお腹一杯ですよ…。…ほら、小雪さんほっぺにソースが付いてますから…」
全くこの人は…。ちゃんとハンカチ持ってきてて良かったです、本当に。
持参したハンカチで小雪さんのほっぺを拭く。これじゃ私がお母さんみたいになってますね。
「…クスッ。小雪さんと陽菜さんはとても仲が良いんだね」
その光景を見てた秋月さんからはそんな感想が出てくる。まぁ、仲良いことにはきっと変わりないですよ。
「でしょでしょ!? 陽菜ちゃんとはもう十年来のブラザーだからね!!」
「せめてシスターにしましょうよ、そこは。しかもこの間会ったばかりですから」
「あはは!! 本当に仲が良いんだね。僕も二人ともっと仲良くなりたいなぁ。…いいかな?」
…おいおい、何だこの天使。もう三回目になりますけど、何だこの天使は!?
これはまさしく見るもの全てを、触れたもの全てを萌えさせる『焔』…!!
「もっちろんだよ、ほむほむ!! ウィアーザワールド!!」
「そうですね。きっと、もっと仲良くなれると思いますよ」
そもそもこの人がいる時点で特に心配することなんてないんですよね。きっとこの人ならどんな人でも仲良くなれる。近くにいる人すら巻き込んで。
「…うん!! ありがとう、小雪さん、陽菜さん!!」
そう、とびっきりの笑顔を見せてお礼を言う秋月さん。それは見るもの全てを魅力してしまうような、そんな純粋な笑顔。
「…あれ、ケバブがもう無い」
そして気付けば十人前あったケバブはその場から忽然と消えており、残ってるのはケバブを回してた装置的なものだけ。
「あれー? 私もまだそんなに食べてないはずなんだけど…もしかして…」
どうやら小雪さんもあまり多くは食べていなかったらしく、勿論私もそんなに食べてはいない。
ということは、ほぼ全てのケバブを食べたのは…
「…美味しかったから、つい…」
私と小雪さんの目に止まったのは、照れて顔を俯かせる秋月さん。
「「…天使かよ、マジで…」」
会って初めて、私達の感情は完璧な一致を見せたのは言うまでもない。




