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鬼畜な悪役豚貴族に転生したので、生きるためにシナリオから逃れます  作者: 福音希望
第二章 鬼畜な悪役豚貴族は家族と交流する
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閑話2 悔しがる義弟は成長する


(ガンッ)

「くそっ!」


 シオンは自室に戻ると、壁を思いっきり殴りつけた。

 8歳の少年が殴った程度で壁は壊れることはない。

 むしろ彼の手にダメージが残る結果だった。


「物に当たるのは良くないですよ」


 背後からセバスが声を掛ける。

 彼ならシオンの行動を止めることは可能だった。

 だが、悔しさを発散させた方が良いと判断したので、あえて止めなかったのだ。


「あいつに負けたんだぞ」

「負けてはいないでしょう。ダブルノックアウトによる引き分けですね」


 間違いはしっかりと訂正される。

 1勝1敗1分け──完全な引き分けである。

 だが、シオンはそれを認めていない。


「僕の【ファイアランス】にまで対応されていた。【魔力切れ】が起こっていなかったら、3本目で負けていたのは僕だった」

「たらればで考えるのはよろしくないですよ。引き分けという結果は事実なのですから」

「・・・・・・」


 セバスの言い分は正論である。

 だが、シオンとしても譲れないものがある。

 彼としてはもっと圧倒的に勝つつもりだったのだ。

 それをセバスもわかっているようだ。


「まあ、仕方がないですね。下に見ていた相手にあそこまでやられたら、悔しくもなるでしょう」

「なっ⁉」


 とんでもない指摘にシオンは目を見開く。

 まさかそんなことを言われるとは思っていなかった。


「事実でしょう? シオン様はポール様のことを下に見ていたはずです」

「・・・・・・」


 セバスの指摘にシオンは何も言えない。

 人を見下すことは決して良いことではない。

 だが、あのポールだけは別だった。

 見下されても仕方がない人間──だと思っていた。


「見下して痛い目に遭ったのだったら、対等な相手と見ないといけませんね」

「・・・・・・そんなことできるわけがない」

「安心してください。すでに対等に見ていますよ」

「何?」


 理解できず、思わず聞き返してしまった。

 そんなシオンの反応にセバスは笑みを浮かべる。


「悔しいと思っているのなら、対等に思っている証拠です。下に見ていたら、負けたとしても気にすることはないでしょうから」

「・・・・・・そう」


 自分の気持ちを素直に受け入れることができた。

 悔しい気持ちはあるが、人を見下すよりよっぽど良い。

 そういう意味ではポールに感謝しないといけないだろう。

 まだ素直にはなれないが・・・・・・


「ポール様が良い方向に変わって良かったですね。シオン様の成長に繋がりますから」

「どういうこと?」

「対等に競い合うことのできる存在が成長する要素の一つだと私は考えています。もちろん才能も大事ではありますが、1人だけでは成長し続けるのは難しいはずです」

「そうなんだね」


 セバスの説明を聞き、シオンは納得することができた。

 今まで魔法の授業の教師は自分のことを天才だと評価してくれていた。

 もちろん自分に才能があるのは分かっていたし、褒められるのは嬉しかった。

 だが、その環境のせいで気づいていなかったことがあった。

 思ったよりも成長していなかったこと。

 自分にはもっと成長できる可能性があったこと。

 ポールと戦い、敗北しなければ気づけなかったことだろう。


「では、これからもっと頑張らないといけませんね」

「ああ、そうだね。次こそは完膚なきまでに勝ってやる」

「その意気です」


 元気になったシオンを見て、セバスは笑みを浮かべる。

 子供の成長というのは嬉しいものだからだ。







作者のやる気につながるので、読んでくださった方は是非とも評価やブックマークをお願いします。

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