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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
贖罪の獣と常夏サバイバル

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TS娘はちょっと眠い

 眠気がまだ、残ってる。頭に引っ付くようにだるい。


 そっと、私の頬に何かが触れた。指で頬をなぞられてる。くすぐったい。


 まだ眠いけど、目を開ける。怜菜がこちらをじっと見ながら髪をゆっくりと撫でていた。


 よく見ると、口角が少しだけ上がって、表情が緩んでいる。微笑んでる怜菜はなんかちょっと、母親っぽいというか。

 あまり、同年代とは思えないぐらいには大人びているというか。


 というか、気付いてないうちに寝てしまったらしい。


 いや、待って。……渚くんに抱きついて寝てなかった?しかも、水着で?

 意外と鍛えてるみたいで腹筋の感触がちょっと固かったな。


 ……じゃなくてさ。

 えっ、俺何してんの?


 何がやばいって、寝たままなんか水着から着替えさせられてるんだよね。どうやったんだよ、本当に。器用すぎないか?


「おはよう」


 バカなことを考えているので起きてしまった。

 驚いたように目をぱちくりと瞬きした後、怜菜は手を引っ込めた。


「よく寝れたかしら」


 何事もなかったかのように、無表情を装って怜菜は語りかけてくる。見られたくないんだ。しょうがないので、触れないであげるか。


「怜菜、よく私を着替えさせることできたね」

「寝てるときのあなたはおとなしいから」

「よく私起きなかったな……」


 本当に、なんで起きなかったのかと考え込む。もしかして、アバドン状態なの関係ある?

 今の私の体はアバドン状態なわけで、通常とは違う。


 何回か検査してもらったけど、あんまり異常はなかったはずなんだよね。

 じゃあ、あんまり関係ないのかな。


「よほど、疲れてたのかしら?」

「別に、そんなことないけど」

「じゃあよっぽど、篠崎渚に安心してたのね?」


 くすり、と怜菜は笑う。……みんな、すぐに渚くんの話にくっつけるよね。


「なにそれ。犬じゃないんだから」

「まあ、どちらかというと猫よね」

「そういうことじゃないんだけど……っていうか、他のみんなは?」

「黒河希沙は部屋で休むらしいわ」


 待機命令が出た影響で、私たちはこの付近の宿泊施設で休むことになった。今いるここも、その部屋で、希沙も自分の部屋に戻ったってことだと思う。


「他の二人は?」

「デートでもしてるんじゃないかしら」

「……怜菜って意外とすぐ恋愛にくっつけるタイプなの?」

「そういうわけではないけれど。あなたは、篠崎渚が他の人とデートしてたりすると、どう思うのか少し気になったのよ」


 真顔でそんなことを告げる怜菜にたじろいでしまった。

 椅子に座ったまま、怜菜は足を組み直す。


 怜菜の表情は読みづらくて、よく見ていないとわからない。でも、少しだけわかるようになってきた。

 今の怜菜はたぶん、普通に興味で聞いてるよね。


 ……嫉妬するか気になるってこと?


 まあなんだ。もやっとはするけども。

 そういうのじゃなくて、人の中学時代とかこそっと聞いたりしてんじゃないの?みたいなことだからね。


 ただそれを正直に答える気にはならなかったので、はぐらかすことにした。口許を緩めて、ふわりと笑う。


「少なくとも、壁ドンみたいなことしてた怜菜にはびっくりしたかな」

「……それは別に気にしなくていいのよ」

「ふうん。怜菜も渚くんのこと好きなのかなと思ったんだけど」

「怜菜()、って言ったわよね?それって」

「言い間違えだから」

「本当かしらね」

「うるさいな、水着見せつけ女」

「だまらっしゃい」

「ふみゅっ」


 怜菜の手がしなやかに伸びて、両頬を手で挟まれた。……喋れないんだけど。


 そのまま、感触を楽しむように、ふにふにといじられてる。


「柔らかいわね」

「……本当にいつまで触ってるの」


 ようやく解放された。なんなの、本当に。


「あなたって、なんか柔らかそうだから」

「急に何?」

「ふと思っただけだけれど。どうせなら、抱っこしてもいいって言われてた時にそのまま抱きしめておけばよかったわね」

「もういいよ、その話は!」


 こっちはメンタル弱ってたときのことは気にしてるんだから、いじるんじゃない!


 うう、やっぱりメンタルを鍛えてああいうことをなくさないと。


「っていうかさ、怜菜もだいぶ変わったね」

「そう?」

「最初の時は三重ぐらい壁があるぐらいの気持ちだったよね」

「……最初のあなたは気味が悪かったもの」

「あはは、ごめんね」


 ……最初の時は、こっちもガチガチだったけどね?


 そういえば、泊まる部屋って一人一部屋だったはずだよね。


「ここって私の部屋?」

「そうね。私もここで寝てもいいけれど」

「こら、抱き枕にしようとしないで」

「バレてしまったわ」


 こんな茶目っ気ありましたか、あなた?

 まあ、それだけ気を許してくれてるんだろうけど。


 ……水着見せつけてたから、ある意味渚くんにも気を許してるのかな?


 私たち以外のチームで、ここに来てたらたぶん同じように泊まってると思うけど、他にもいるのかな。見かけなかったし。


 ……もしかして、マヒロってここに泊まってる?


 まあ、転生者としてちょっと気にかけてるんだけどね。なんか病んでそうだし、人を捕まえようとしてくるから、どこまで気にかけていいかもわからないんだけど。


 第四深禍災害の討伐ってかなり面倒だから、ちょっとだけ話しておきたいこともあるしね。


 いたら、話してみようかな。


「さて、そろそろお暇するわね」

「しっしっ」

「やっぱりあなたって可愛いわ」

「えっ」


 威嚇気味に、手を振ったら予想外の言葉が出てきた。


 なに、可愛いって。それを聞く間もなく出ていってしまった。


 ……なんか、可愛いって言われるのも抵抗なくなってきたな。

 明上蒼空である以上、仕方ないか。ゲーム上のストーリーでも、あざといことしてたから。


 まあいいや。後で、デートしたかもしんないお二人の様子でも見とくか。


◇◇◇


 飯島夏音の電話で、少しだけ落ち着いた西園マヒロは部屋の一室にいた。蒼空たちと同じ宿泊施に。


 あまり、顔を合わせたくはないがこの付近では他に泊まれる場所もない。


 それに、蒼空に話しておきたいこともある。あるけど、心が揺れていてなかなか踏ん切りが付かない。


 捕まえようとしてしまった。なんであんなこと。なんて、ぐるぐると考えていても仕方ないのに。


 ……コネクトリンクとマジックワードを使うのを見せてしまったので、変な人だと思われかねない。変な人だけど。


 怖い。人と話すのは苦手だ。視線を見るだけで気持ち悪くなる。


 とりあえず、部屋から出よう。気分転換がしたい。


 そう思って扉を開くと、赤い髪が揺れるのが見えた。


「あっ」

「ひぃっ」


 直ぐ様部屋に戻ろうとしたのに、腕を掴まれてしまった。


「えーっと、マヒロだっけ?まっひー、ちょっと暇だから一緒に来てよ」

「ご、強引すぎるぅ……」


 たまたま鉢合わせた黒河希沙に、ずるずると引きずられて連れていかれてしまった。

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