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ソシャゲの序盤で死ぬヒロインにTS転生したけど、とりあえず主人公くんをいじりたい  作者: あまぐりムリーパー
贖罪の獣と常夏サバイバル

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主人公くん、怪しい女の子と再び出会う

 いつの間にか、蒼空さんがいない。木陰にでもいるのかな。


 出現した深禍は小さな魚ばかりだから、琴塚さんと椎柴さんが倒している。


 ……遊んでていいって行ったけど、さすがにあの中で遊ぶ勇気はないな。


 そういえば、電気流したらすぐじゃない?って思ったんだけど、いたずらに魚を殺すのも嫌ってことらしい。

 ……確かに、魚がかわいそうか。


 ――不意に、背筋にぞわりと嫌な感覚がした。


 これは、深禍が出現するときの感覚。


「篠崎くん!」

「うん、琴塚さんたちの方へ行こう」


 ぐいっ、と希沙さんに引っ張られるようにして走った。


 あの魚たちが本当の敵ってわけじゃなくて、おまけだったってこと?


 ……意外と余裕だなと思ったけど、そう簡単には行かないみたいだ。


 海の方へ進もうとしたときに、空から黒い何かが降ってくる。


 大きな口と牙、毛深い四肢。

 獣の深禍か。


「そっち大丈夫?魚はもう湧かなくなったけど……ってもういるじゃない」

「……獣の深禍?」


 琴塚さんと椎柴さんも、向こうからやってきてくれた。


 ……でも、琴塚さんの顔が強張っている。


 ――グルルルル


 不快な音がした。深禍の音だ。


 考えている場合じゃない。先にこれをなんとかしないと。


「いくよー、みんな!《ソウルフレイム》」

「そうね。《斬撃領域(スラッシュテリトリー)》」

「……《マジックワード》」


 みんな、それぞれスキルを発動する。


 まずい、コネクトリンクしてないんだけど。


 深禍の足元が凍りついて、希沙さんの殴打と爆撃、椎柴さんの発生させた斬撃によって、深禍が切り裂かれていく。


 ……すぐに倒せてしまった。実はこのチーム、結構強いんじゃ。


「……篠崎渚」


 バラバラに砕けた深禍の合間を通って、琴塚さんが近づいてきた。……さっき強張っていたなと思ったけど、やっぱり表情がいつもより固い。


「どうしたの、琴塚さん」

「……獣の深禍はまずいわ」

「……あっ」


 椎柴さんも何か気付いたみたいだ。


 希沙さんの方を見る。肩をすくめられた。わからないのは僕たちだけみたいだ。


 深禍の種類で何かあったかな。


 気になることと言えば、この前は虫の深禍ばかりだったけど。


「深禍の種類っていろいろいるけれど、獣だけは別よ。あれは()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「第四深禍災害でしか……?」


 第四深禍災害は、この前の第五と蒼空さんたちを襲った第三の間に発生したものだ。


 ……確か、巨大な混合型深禍が発生してそれを倒しきれなかったという話だったはず。


「確か、何十もの獣の深禍が集まっている混合型深禍で、そこから溢れて来たのが獣の深禍になる……みたいなやつだったかしら?」

「そうね」


 椎柴さんの言葉に、琴塚さんが頷いた。


 ……つまり、第四深禍の元凶から出てきたのがこれってこと?


「ふーん、そうなんだ。でも、第四深禍災害って、倒せなかったけど大丈夫なの?」

「あれは、一定範囲から動かないのよ。だから、その地域だけ封鎖していればいいの」

「で、なんで倒せなかったの?」

「でかすぎたのよ。生半可な力だと傷つきもしないし、あいつの周囲では獣の深禍が勝手に発生するの」


 そんなに大きかったのか。第五深禍災害の最後に出てきた深禍も相当だったけど、あれ以上だったりする……?


 と、その時にふと思った。


「獣の深禍って、その混合型深禍の近くでしか発生しないんだよね?」

「そうよ」

「……ここってその近くだったりする?」

「少しは近いかもしれない、ぐらいね」

「だから、本来はここでは発生しないってこと?」

「そうね。――例えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 全員が思わず息を飲んだ。


 倒しきれないけど、動かないから安全だったやつが、もし動いてしまったなら?


 それは、とてもまずいんじゃ。


「わかったかしら。緊急事態ってことよ」


 本当に、緊急事態だ。早く学校の方に連絡しないと。


 それにしても――


「今さらなんだけど、琴塚さん詳しいね」

「……そうね。一つだけ言うとすると、私がカースシーカーに発現したきっかけは、獣の深禍と戦ったことよ」


 ……琴塚さんも実は結構、ヘビーな過去を送ってたりする?


 琴塚さんの顔を見た。そこにはいつもの読み取りづらい表情があるだけで、その裏側まではわからない。


「にしても、蒼空ちゃんどこに行ったの?」

「……確かに、明上のやつはどこ?」


 そういえば、木陰で休んでるのかなと思ったけどいないな。


 探してこようか……と思ったときに、ざくざくと砂を踏む音がした。


「ご、ごめんみんな。深禍が来てたみたいだけど大丈夫?」


 蒼空さん、無事だったのか……と声の方を振り返った時に、蒼空さんの後ろに誰かがいる。


 ……というか、蒼空さんに抱きついて歩いている。えっ、どういう状況?


 他のみんなも、困惑して眺めている。


「あの、蒼空さん……その人は?」

「えっ、なんか……なんだろう?」

「ボ、ボクはその……明上さんのファンなので」


 困ったように小首を傾げた。


 ……見覚えのある、帽子とチョーカー。今日、着替えを待っている間に会った人か。


 ファンって、前から知り合いだったとか?


「あれ、この前水着買いにいったときにいたよね」

「わっ、黒河希沙だ……」


 跳び跳ねて、蒼空さんの後ろに隠れた。人見知りなのかな?

 希沙さんのことも知っているのか。


「マヒロ、そろそろ離れてくれない?」

「ひぃん、ごめんなさい……」


 明上さんから離れて、改めて僕たちの前に姿を現した。


「そ、その……ボクは西園マヒロって言って…………やっぱり無理!」

「ちょっと、マヒロ?」

「ごっ、ごめん、人怖いぃ……《マジックワード》――"ウィンド"」


 自己紹介を始めたかと思えば、蒼空さんの制止も聞かずに急に走り出してしまった。


 ただ、問題はそこじゃない。


「私の、スキル?」


 ……そう、琴塚さんと同じスキルを使っている。同じスキルを持つカースシーカーは、確かいないはず。


「……私もよくわからないんだけど、不思議な子っていうか」

「ふーん、確かに不思議だけどね」

「でも、コネクトリンクも使ってたんだよね」


 ……コネクトリンクも?

 そういえば、コネクトリンクを使えるカースシーカーもいるって聞いたことあるけど。……そういうのじゃない気がする。


 一度それは置いておこう。まず、蒼空さんに情報共有しないと。


「実はね――」


 僕は、蒼空さんに今までのことを話し始めた。


◇◇◇


 ――逃げちゃった、逃げちゃった、逃げちゃった。


 風に乗って、走りながら西園マヒロは考える。


 伝えないといけないことがあったのに、明上さんに変なことだけ言って帰ってきてしまった。

 辛そうな目に合ってる彼女をなんとかしてあげたいとか、勝手にわけわかんないこと言っちゃったし。


 捕まえたいと思ったのは本当だ。あの子とずっと二人で閉じこもっていたかった。

 でも、他にも言わないといけないことあったのに。


 いつも、こうだ。ボクには何もうまくできない。


 トイレの個室に籠って、踞るように座った。


 ひとりぼっちの場所は好きだ。何も気にしなくていいから。


 何かを考えようとしたときに、怒鳴り付ける声とか押さえつけてくる大きな腕が頭をよぎる。

 震えが止まらない。


 別に、誰も悪くないのに。勝手に変なことを思い出してこうなってしまう。


 本当に嫌だ。


「こんなところ、同士の明上さんに見せられないし……」


 一人、ポツリと呟いた。


 少しだけ垣間見た明上蒼空の過去は壮絶だった。


 これに比べたら、自分のことなんてどうでもいいんだから。


 震えが止まるまで、待った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


TIPS:深禍災害はあくまでも日本での発生事例のことを指しています

まとめると以下のようになります

第一、第二は全国に多発

第三は局所的に集中して発生

第四は巨大な混合型深禍が発生

第五は一部に集中して発生、巨大な混合型深禍も出現

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