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第20話 "自分らしさ"を探す日

寒さが日に日に深まり、

街は少しずつクリスマスの雰囲気に包まれてきた。


そんな週末、

俺たち三人は近くの公園で待ち合わせしていた。


「遅れてごめん!」

息を弾ませて駆けてきた凛は、

鮮やかなマフラーと、どこか誇らしげな笑顔。


「大丈夫、私たちも今来たとこ」

天宮さんが穏やかに微笑む。


「今日は何する?」

俺が尋ねると、凛が腕を組んで考える仕草。


「みんなで“新しい挑戦”する日でしょ?

だからさ、今日は順番に“普段やらないこと”をやってみるの!」


「たとえば?」

天宮さんが首をかしげる。


「たとえば――」

凛は公園の片隅に置かれたレンタル自転車に目を向ける。

「みんなでサイクリングとか、どう?」


「え、私、自転車なんて中学ぶりかも……」

天宮さんが苦笑い。


「じゃあ今日はまずサイクリングで決定!」

凛が勢いよく自転車を押してくる。


俺も久しぶりにサドルにまたがり、

「なんか、修学旅行みたいだな」と思わず口にする。


「それいい!今日は“修学旅行ごっこ”ってことで!」

凛が楽しそうにペダルを踏み出す。


三人で並んで走ると、

冬の空気が頬を打つ。

でも、不思議と心はポカポカしていた。


◇ ◇ ◇


河川敷の道をサイクリングしながら、

それぞれが近況を話しはじめる。


「凛ちゃん、演劇部の次の公演ってもう決まったの?」

天宮さんが尋ねる。


「うん、来月だよ!

今度は主役じゃなくて“ちょっと変わった脇役”なんだ。

でも、裏方の仕事も任されたから、やることいっぱい!」


「裏方って大変そうだけど、凛ちゃんなら楽しそう」


「うん、表も裏も両方知ると、舞台ってもっと面白くなるんだよ」


凛の瞳は、生き生きと輝いている。


「天宮さんはどう? 最近“やってみたいこと”見つかった?」


「うーん、料理にちょっと興味出てきたかな。

この前は家でカレー作ったんだけど、失敗しちゃった……」


「え、どんな風に?」


「辛さ調整が全然できなくて、お父さんが涙目で食べてたの」


三人で吹き出してしまう。

笑い合う声が、冬空に響いた。


◇ ◇ ◇


休憩がてら河原のベンチに腰かけ、

温かいココアの缶を分け合う。


「祐くんは何か挑戦してみたいことないの?」

天宮さんが聞く。


「うーん……最近はみんなに引っ張られてばっかりだけど、

本当はギター弾いてみたいって思ってた」


「ギター?カッコいい!」

凛が目を輝かせる。


「うちに父さんの古いギターがあるんだけど、

なかなか手を出せなくて……」


「じゃあ今度、みんなで音楽やってみるのもありだね!」

天宮さんが提案し、

凛も「合奏とか!いいじゃん!」と賛成。


「よし、“新しい挑戦プロジェクト”だ!」

三人でグータッチして、

また自転車で走り出す。


冬の空は澄みきって高く、

新しい挑戦の予感が胸をあたためていた。


◇ ◇ ◇


公園を出て、駅前のレンタルスペースへ移動することになった。

「せっかくだからギター見せてよ!」という凛と天宮さんのリクエストで、

俺は家から父の古いアコースティックギターを持ってきていた。


三人で机を囲んで座り、

ケースを開けると、木の香りがほんのり広がる。


「これが……祐くんのお父さんのギター?」

天宮さんが目を丸くする。


「うん。高校時代の文化祭で弾いたやつらしい」


「すごい!弾けるの?」


「……いや、実はまだ全然。

コードもなんとなくしか知らなくてさ」


「じゃあ、今ここで初チャレンジ!」

凛がワクワク顔で身を乗り出す。


俺は少し照れながら、

ネットで見たコード表を思い出しながら、

なんとか“C”の押さえ方を試してみる。


「難しいな、これ……指がつりそう」


天宮さんがそっと隣に座り、

「ここ、人差し指でしょ?」と

優しく指を添えてくれる。


「こう……?」


「うん、合ってる合ってる!じゃあ鳴らしてみて」


おそるおそる弦をはじくと、

ポロンと、たどたどしいながらも

ちゃんと“音楽のはじまり”の音が響いた。


凛が大きな拍手。


「初音、出たじゃん!すごいよ祐くん!」


「ありがとう……でも、ギターって難しいな」


「最初はみんなそんなもんだよ」

天宮さんが優しく微笑む。


◇ ◇ ◇


しばらくギターの練習に夢中になったあと、

今度は天宮さんが「じゃあ、私はお菓子作りにチャレンジしてみる」と言い出す。


凛がコンビニで買ってきたホットケーキミックスを取り出し、

簡易キッチンを借りて“即席パンケーキ作り大会”がスタート。


「うまく焼けるかな……」

天宮さんはドキドキしながらフライパンを手に取る。


「焦がさないように気をつけてね!」

凛が横からはしゃぐ。


ひっくり返すタイミングに緊張が走り――

「せーのっ!」

ポン、とひっくり返すと、思った以上にきれいな焼き色が。


「やった!うまくいった!」


「さすが、天宮さん!」


みんなで拍手。


焼き上がったパンケーキはふわふわで、

三人で分け合って食べると、

「お店みたい!」と凛が大はしゃぎ。


「みんなで何か作るって、

本当に楽しいんだね」


天宮さんがほっとしたように微笑む。


◇ ◇ ◇


夕方になり、公園のベンチで最後のティータイム。


「今日はいろいろ挑戦できて楽しかった!」

凛がココアをすすりながら言う。


「自分の“得意”とか“好き”とか、

こうして探していけるんだなって思った」


天宮さんがしみじみとつぶやく。


俺も同じ気持ちだった。


「またみんなで新しいことにチャレンジしたいね」

「今度は音楽バンドごっことか、どう?」


「いいね!ライブやろう!」

「いや、まずはギター練習からだろ!」


三人で笑い合い、

夕焼けの中で“未来の約束”を交わした。


◇ ◇ ◇


夜、

スマホを開くとグループLINEが賑やかだ。


【天宮さん】

「今日はありがとう!

みんなでやると、何でも楽しくなるね!」


【凛】

「私もパンケーキ初めて焼いた!

また挑戦大会やろうよ!」


“自分らしさ”を探して進む毎日。

そのひとつひとつが、

きっと三人の青春の宝物になる。

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