回収会議
中華民国 北京・総統府 1916年3月初頭
玉座のような大椅子に袁世凱が静かに座していた。広間には少数の側近と幕僚のみが集められている。外はまだ早春の寒風が吹いていたが、室内の空気はそれ以上に冷えていた。
袁の目の前に、ドイツ帝国から届いた一通の暗号電報が広げられている。
袁世凱(沈黙のまま書簡に目を走らせながら)
「……ドイツは、我が国が対日参戦するならば、戦後、満洲及び青島の領有を認める……とな。」
楊度(政務顧問)
「総統、これは……信じるに値するのでしょうか? 青島は確かにドイツの租借地でしたが、すでに日本が占領しております。」
段祺瑞(陸軍総長)
「だが、これは好機とも言えましょう。これまで日本は欧州戦争に乗じて、我らの顔を踏みにじり、満洲をも事実上の属州と化している。このまま見過ごせば、中華に未来はありません。」
袁世凱(目を閉じて)
「……我が国は国際的に孤立している。日本の影に怯えるまま、列強の傀儡で終わってよいのか? ドイツと手を結ぶことは、もはや選択肢ではなく、生き残るための唯一の道だ。」
陳宦(参謀本部副総長)
「しかし、兵站は脆弱であります。補給線も、歩兵の訓練水準も、日軍に劣る部分は否めません。もし戦線が長引けば、我らは——」
段祺瑞(語気を強めて)
「それは訓練と意志で補える。我らには“国家を取り戻す”という大義がある!」
楊度(やや抑えた口調で)
「……この“ツェンメルマン電報”、確かに正式な外交ルートではありません。しかしドイツは我らに再び“列強”としての地位を与えようとしている。これは、袁公が“中華皇帝”として即位するにふさわしい条件でもあります。」
袁世凱(目を開き、静かに立ち上がる)
「——よかろう。」
(しばし沈黙)
「時は来た。日本が我らを侮辱した以上、戦いに臨む覚悟はできている。全国に動員令を発し、満洲奪回の戦端を開け。」
段祺瑞・陳宦
「はっ!」
袁世凱(低くつぶやくように)
「……これは“第二の甲午”ではない。“乾隆の遺業”を我が手で復するのだ。」
こうして、1916年3月、中華民国政府は対日宣戦布告を決定し、3ヶ月後、満洲国境に向けて中華民国軍が進軍することとなる。




